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運命の出会い・・・それは、魂の宿命か・・・・・・


暑さは相変わらずなのだが、その暑さの言い回しが変化するほどの月日が流れた。

しかし、まだカレンダーはめくられない。カレンダーをめくるのは後、2,3日後だ。

暑い夏がもうしばらく続いたら、どこか哀愁漂う季節が始まる。

哀愁の季節を前に、交錯する想いと、謀略が徐々に姿を見せはじめ

“寒さ”という言葉とともに、いくつもの悲しみと戦いを引き起こすことだろう。

そしてまた、明けない夜がやってくる・・・・・・



現れる運命の存在。だが、今はその存在に気づくことはなかった。

しかし闇が導いた運命の扉の先に魂の運命を感じた時、青年は“何か”を取り戻していく。

その“何か”の正体も解らぬまま、ただ青年は運命と時の流れに身を委ねていくだけ・・・





闇が導いた運命と新しき日常は、青年に何を取り戻させていくのだろうか・・・・・・?















PAS Chapter3 第9話 新しき日常

















 小汚く硬そうなベットの上で一人の青年が眠っている。その青年は目を閉じたまま目を覚ますと手探りで近くにあったポケギアを掴んだ。

そのポケギアの画面には日付と現在時刻がデジタル表記で画面の下部に表示されている。




・・・・・・“8月28日 8:26”




この日付と時刻は、普通に考えれば今日の日付と現在時刻と思われる。ここは、この表記を今日ということにしよう。

ポケギアの持ち主は寝そべった状態で大きく伸びをすると、ベットから起き上がり大きなあくびをする。

寝ぼけ眼でヨロヨロと歩きながら、部屋の隅のほうにある薄いドアを開けてドアの先へと消えていった。



それからしばらくして、ポケギアの持ち主である黒髪で黒い瞳をした青年は、寝巻きの半袖のシャツを脱いだ状態で

先ほどの薄いドアから多少すっきりしてに出てきた。おそらくあのドアの先は洗面所になっていて、洗顔などを済ませてきたのだろう。

シャツを脱いでいる青年は、真っ直ぐと部屋にあるクローゼットに向かうと、大きな白いバスタオルを取り出してそれを首にかけると

これまた小汚く、小さなテーブルの上においてある先ほどとは別のポケギアと、先ほどのポケギアを黒いグローブをした手に持ち

また部屋の隅にある薄いドアを開けて、ドアの先に消えていった。すると、数分しないうちに、キュッキュッキュッとバルブを回す音の後に

ザーッと水の流れる音と、バシャバシャと水が落ちて騒ぐ音が聞こえ始めた。

どうやら、あの薄いドアの先はバスルームもあるようだ。音から推測してシャワーを浴びているだろう。






キュッキュッキュッ・・・・






バルブを回す音が再び聞こえると、水の騒ぐ音は止み、しばらくするとパサパサと布が動く音が聞こえてくる。

薄いドアを再び開けて、おそらく先ほど使用したと思われるバスタオルを両肩に掛けただけの状態で

部屋に戻ってきた青年は真っ直ぐクローゼットの前に移動した。



細身ながらもかなりがっしりとした筋肉質の身体、というよりも、脂肪がついていない身体なのだろう。

この場合、脂肪がないからカッコいいとか、細いというのは少々おかしい。

確かにこの青年はそれなりのトレーニングを積んでいるかもしれないが、それにしても脂肪がない。

おそらく、そういう無駄なモノが身体につくことができないのだ。今のこの筋肉質の身体も

いつ、どこで、どんな状態で失うかが解らない。 大変な苦労が彼の背景にはある。

そしてこの身体、脂肪がないのもそうなのだが、もう一つ目を惹く特徴がある。 






それは・・・・・・傷痕。






いたるところに傷痕が残っている。背中には殆ど無いのだが、腕や肩、胸、腹、脚。

小さな火傷の痕や、鋭いもので切りつけられたような痕、何かが刺さったような痕・・・それはまるで傷痕の博覧会のようだ。



クローゼットから取り出した下着を身に着けると、部屋の隅のほうに掛けてある黒いスーツへと手を伸ばす。

ワイシャツとネクタイ、そして黒いスーツとズボンを慣れた手つきと動きで身に着けると、まだ暑い季節に不似合いな格好となった。

何か相当な覚悟と意味がなければ、この季節にこの格好は普通しないだろう。

今の自分を確かめるかのように黒いグローブの手をギュッと音がするほど握り締めると、青年は2つのポケギアを手にとって

そして、ボールホルダーを腰に巻きつけると、そこへとポケギアを引っ掛けておく。

今日もまた、自分自身の目的のために、くそ暑い格好をして終わりへと向かう夏の空の下へと出かけていくのだ

そして、青年が再びこの部屋に戻ってくるのは 午前2時過ぎ。いったい、どんなことをやっているのかは定かではない。

・・・青年の新しい日常はこうして日々続いてきたのだ。











 この日々に慣れるまでの間、青年はこの部屋がある建物、謎の古城の中で3人と新しき出会いをした。


一人は「蒼穹のスカイブルー」という、自分と大して年齢の違わない黒い髪に水色の瞳をした男。


もう一人が「鋼鉄のグレイ」という、これまた自分と大して年齢の違わない黒い髪に灰色の瞳をした男。


最後の一人が「博愛のピンク」という、自分の一つ下の年齢に薄い茶髪に淡い桃色の瞳をした女。


(ちなみにこの情報は彼らとの出会いの後、すぐにモーブから聞いたものである。)


先に挙げた二人の男は、とにかくなんだかよくわからない男たちだ。

スカイブルー(以後、スカイと呼ぶ)は翼を持ったポケモンと気持ちよく晴れた日の空が好きという

細身の身体をした変わり者で、よくこの古城の屋上で空を眺めている。

また、その話す言葉の真意が理解できないことが多い。 実際、初対面での第一声が



「・・・君は、空が好きか・・・・・・?」



と、まるでミュージカルの俳優のような口調と声でこんなことを聞いてくる。

瞳を見てみると異様に透き通っており、心からの言葉だと直感的に察する。余計によくわからない人間だ。

初対面がこの印象では、今になってもあの男への印象は変わらず“空が好きな変人”程度にしか思えない。



そしてもう一人の男、グレイ。

この男は、図体はでかいが気が小さいの典型的なタイプの男で、とにかくなにかオドオドしている。

落ち着いていない訳ではないが、気の小ささが全身から滲み出しているのは確かだ。

そしてこの男、しゃべるにはしゃべるのだが、そのしゃべり方や雰囲気はどこか、あの「念動のパープル」に近いものがある。

しかし、この男はさほど問題ではない。よくいるタイプの人間だと思うし、なにより、この気の小ささなら大事にはなりそうもない。

一番の問題は、この男が常に(といっても過言ではない)傍にいる女、そう、最後の一人である「博愛のピンク」。

この女とは、絶対に気が合わない。先そう断言しておこう。まず、初対面が最悪だった・・・。
















・・・8月21日(平日) 午後2時

彼女との、いや、あの女との出会いは今から一週間前にさかのぼる。

何とか慣れてきたここでの生活を、より一層よいものとするために、この古城内部の施設をもっと活用してみることにした。

こうしておけば、未だ会えていない“騎士”たちに出会うチャンスも増えるだろうし、何より、この古城と“円卓の騎士”という

集団についての情報を得ることにつながることは間違いないだろう。それに、誰かと友好関係を持っておけば、内情も探りやすくなる・・・

今日は、“あちら”の仕事ではなく、“こちら”の仕事をやろうというわけだ。 とりあえず、自分が一番興味がある場所、

この古城の中にいくつか存在するバトル場にいってみることにした。平日の昼下がりにバトル場を利用している奴がいるなら

そいつは相当なバトル好き。もしかしたら、自分と気が合うことも考えられる・・・・・・

石畳の回廊を一人、動きやすい格好で歩く。 仮に、誰もいないとしても、トレーニングは今後のためになることは間違いない。

先日渡された手書きの地図を頼りに、パタパタと石畳の回廊を歩み続ける。古城の中はひんやりと涼しい。

異様に長い回廊をしばらく歩くと、遠くの方でなにやら激しい音が聞こえてくる。・・・どうやら、推測どおり一戦交えている奴がいるようだ。

個人的な期待と、仕事としての期待の二つの期待が、胸をドキドキとさせる。ドキドキが足を早く動かし、音がするほうに向かう。




「“
すてみタックル”!!!」




鋼鉄の大きな扉の先で、少々甲高い女性の声が聞こえた。声の雰囲気から、おそらく決定打となる一撃なのだろう。

ドンッ!! と激しい激突音と同時に、しばらくしてからズシンとポケモンが倒れる音がした。どうやら、今の一撃で決着がついたようだ。

扉を挟みながらも、そこから得られる情報は多い。まず、中のバトル場ではトレーニングではなくバトルが行われていたということ。

次に、そのバトルにおいて女性のトレーナーが“
すてみタックル”で勝負を決めたということ。

この二つの情報と、聞こえてきた声から、この中にはトレーナーが二人以上いて、且つ、おそらく若い女トレーナーがいるということ。

すてみタックル”を使い、それを切り札とするポケモンをその女トレーナーが使うということだ。

もうしばらく聞き耳をたててみて内部の様子を探る必要もあるのだろうが、胸のドキドキがそれを拒む。

青年は鋼鉄の扉を、黒いグローブをした右手だけで開くと堂々と中へと入った。





 あんなにも涼しいはずの古城の中のはずなのに、この空間はとにかく熱気が漂い蒸し暑い。

バトル好きにこの余韻はたまらない。どんな血沸き肉踊るバトルが繰り広げられたのか、ワクワク想像してしまう。

ただ、この青年は普通のバトル好きではない。この余韻とその跡を見、感じればある程度のバトルの様子は想像ではなく、断定できる。

バトル場に残された跡や温度や湿度の差から放たれた技を、余韻の熱気からバトルの所要時間を・・・・・・

逆に、この青年のようにそこまでを感じ取れない、または理解できないのならば、おそらく、この青年の敵になることはないだろう。

そして、バトル場に残るトレーナーの状態も、バトルの展開や様子を把握する情報になる。

勝者の喜び、敗者の悔しさ、・・・実際には、そう割り切れないバトルを多々あるのだが、極端な話こういうことになる。

さて、バトル場に入った青年だが、普通に考えて中に居た人間に不審な目で見られるのは当然であろう。

一人の女トレーナーと大柄の男が、青年の方をジロジロと見ている。どうやら、二人だけの空間であったようだ。

丁度青年もトレーナーの方を見ていたので、自然と目が合った。女トレーナーの方だ。


「アンタ・・・誰よ?」


先ほどの“すてみタックル”の声だ。その声で、話しかけられたが、どこかトゲトゲしい話し方に感じる。


「あ、悪ィ・・・。オレ・・・・・ブラックっていうんだ。 ベージュとセピアにこの集団に誘われてな。」
「ああ・・・アンタが・・・。」


何か上から目線というか、見下しているような話し方に少し引っかかりを覚える。


「君の名前は・・・?」
「今、ワタシ忙しいの。 さっさと、どっかに消えてくれない?」

「まぁ、待ってくれよ。別に、今のバトルを続行してくれても構わない。・・・観戦するだけだから。」
「見世物じゃないの。さっさとどっかに消えて。」


強く激しくトゲトゲしい口調。普通、初対面の人間にここまでの態度と口調で接するだろうか。

それは確かに、二人だけの空間に勝手に入ってきたのは悪かっただろう。だが、言い方というものがあるのではないだろうか・・・


「・・・あぁ、悪かったよ。 とりあえず、挨拶は済ませたということで。 そっちの大きい兄ちゃんもよろしくな。」
「お「返事なんて、いらないよ。さぁ、さっさと回復装置に傷ついたポケモンたちを休ませるんだ。」

「・・・・・・。」


大きな身体の男は女トレーナーに割って入られて、青年への返事を妨害された。

そしてそれで押し黙る大きな身体の男。この男の気持ちは、多少は察することができるので、別に何も言わないが

この女、どういうつもりなのだろうか。何か理由があってこういう接し方をしてくるのだろうか。

初対面、そして形式上仲間になる存在なので、口煩く言うつもりはなかったが、流石に少し癪に障る。

とりあえず一言だけ、言ってこの場を去ろうと口を開いた瞬間であった。




「・・・ッ!!」




グリーンに負けず劣らずの鋭い視線が、淡い桃色をした瞳から向けられている。

流石に一瞬たじろいだ。女性であのレベルの眼力を持っている人はそうそう居ない。


(あ・・・・・・目が・・・・・・)


視線は直ぐに大きな身体の方を向いたが、一瞬見せた彼女の瞳を見て驚いた。




・・・三白眼・・・・・・。




ふと、彼女の性格と口調の理由がわかった気がするが、それを差し引いても先ほどの言動は許せないように思える。

とりあえず、ここは彼女のいうとおりにしておいた。大人しく引き下がり、バトル場を後にした・・・・・・














・・・・8月29日 午前8時すぎ

今日もまた朝がやってきた。いつもの日常が再び始まろうとしている

だが、今日は少しいつもと違った。目覚めると同時に、自分の部屋がコンコンとノックされた。

この部屋に来客とは初めてのことで、なんだかどう対処すればいいのか一瞬わからなくなってしまったが

とりあえず、ドアの先にいる人間を確認する必要があることが頭に浮かび、あわあわしながら、ドアへと向かう。


「・・・はい。」
「おはようございます、ブラックさん。」


ドアを開けてみると、そこに居たのは人柄のよさそうなおじさん・・・「猛毒のモーブ」。

濃い紫色をした瞳を見ていると、同じ人間とは思えないような錯覚さえ覚えてしまう。

とりあえず挨拶を返すと、「早速ですが・・・」とモーブは切り出した。


「会っていただきたい方々が居るのですが、ご予定は・・・・・・?」
「はい、全然構いませんよ。 そのためにこの集団に属しているのですから。」
「で、その・・・会っていただきたい方々というのは・・・・・・。」

「“烈火”、“豪雪”、“激流”・・・ですよね?」
「確かにそうなのですが・・・アルト・・・いえ、アルトラマリンは今・・・・・・遠出をしておりまして・・・」
「そうか・・・・・・」


結果として、これから会う人物は「烈火のカーマイン」と「豪雪のホワイト」となる。

気がかりな点として、「激流のアルトラマリン」の扱いが少しヘンな気がした。

この後、モーブから待ち合わせの時間と場所を聞くと、モーブはその場をそそくさと去った。

・・・本当はいろいろなことを聞きたかったのだが、どうにも視線のようなものを感じるらしく

ブラックとの会話中、落ち着きなく周囲を見渡すそぶりを見せた。・・・誰かに監視でもされているのだろうか?

監視・・・最近思うのだが、ここに来てそれなりの日数が経過しているのにもかかわらず

なかなか“騎士”たちと出会うことができない。確かに、自分自身が忙しく積極的に会いにいけないことは事実なのだが

それにしても、ここで暮らしていて会うことがまったくないというのは不自然に思えた。

以前のモーブの話では、この古城が“円卓の騎士”の集合地点でしかないということも考えられるが

この広く大きすぎる城に、かなりの謎と秘密が詰まっていることは事実で、それを新参者一人に預けるというのも妙な話だ。

こちらの素性と実力はある程度把握しているはずである。それはベージュとセピアが証明している。

そうなってくると、監視をつけられているのはモーブではなく自分自身ではないだろうか・・・・・・。



そんなことを考えると、ふと、背後から誰かに見られているような感覚を覚える。・・・錯覚であることを祈りたいところだ。

とにかく、約束の時間までに支度を整えておく必要があるようだ。そして組織の解体も今日は一時的に休みにしてもらう必要もある。

ドアを閉めたブラックは、部屋の真ん中あたりに設置してある小汚い、小さなテーブルの上に置いてある二つのポケギアのうち

片方を手に取ると、今日の組織解体を休みにすることを通達した。・・・本当は、一日でも早く解体を進めていく必要があるのだが。





 時は流れて、もう少しで午前10時となるころ、そして場所も移動して、トゲトゲしい女ことピンクと大柄な男グレイと出会ったバトル場にいる。

ここがカーマインとホワイトとの約束の場所であり、約束の時間である。午前10時まではあと数分をきった頃合だ。

ブラックはいつもの黒いスーツをしっかりと着こなして、相手としっかり向き合える体勢になっている。

派手でないスーツとネクタイ、これでどんな人物が来ても一応は対処ができるはずである。

さらに腰にはボールホルダーとその中で出番を待つ、ベストメンバーたち。こちらの方も準備はできているということだ。

一人、だだっ広いバトル場の中央で静かに二人を待つブラック。古城の造りの影響か、やはりどこかひんやりとしている。

バタン、そう音を立ててあの鋼鉄の扉が開かれた。どうやら、待ち人が来たようだ・・・





「・・・アレ、先客が居る・・・・・・。しかも、アイツじゃない。」
「そうだな。」





バトル場に入ってきたのはピンクとグレイ。扉の開く音で少し緊張していたブラックは拍子抜けしてしまった。


「・・・おはよう。」
「アラ、アンタまだ居たの?」


仕方なくした。そういう感じの挨拶にまでトゲが刺さるとなんだか怒る気もしなくなった。


「悪いね、今日は待ち合わせがあるからさ。」
「ふ〜ん。ま、別に興味はないけどね、早く待ち合わせとやらが終わったら、ここから出てってよ。」
「わかった、わかった。」


そういうと、ピンクとグレイの二人は部屋の隅のほうにある、観戦用のベンチへと向かっていった。



「あ、そうだ。“烈火”と“豪雪”ってどんな人なの?」



背を向けている二人の方を向いて、少し声を大きくして語りかけてみる。




「なんでワタシが、アンタに教えてあげなくちゃいけないの? そこまで、アンタと親しくないわ。」




一応、彼女は足を止めて話に応じてくれた。グレイのほうはどこか不機嫌なオーラを出しているように思える。



「じゃ、親しくなったら教えてくれるのか。」



半分冗談、半分本心でそう聞いてみると、彼女はこちらを振り向いて三白眼の目で刃物のように鋭い瞳で睨んできた




「・・・冗談ならよしてよね。ワタシ、冗談とかウソとか大嫌いだから。」
「あ、ああ・・・解った。 今度は真剣に考えておいてくれよ。」




「どうだか」という表情をしたピンクは、こちらを向いて待っていたグレイのところへと行くと、今度こそベンチへと向かった。






彼女たちがベンチに座るとほぼ同時に、再び鋼鉄の扉が開かれた・・・・・・






そして現れた二人の男女は、男のほうから先にこちらに歩んできた。



「どーも、はじめまして。“烈火”のカーマインです。」



今までどこに居たのかは知らないが、その姿から冒険や探検でもしているのだろうか。服が結構、砂や土で汚れている。

そして真紅の瞳と炎のような真っ赤な髪の毛。シルバーの髪の色を赤というのなら、やはりこの男の髪の色は、真っ赤。

顔や口調から、もしかしたら多少自分よりかは若いかもしれない。直感的には10代の終わり頃だろうか。



「カーマイン、あなた、服が汚れているわよ。ちゃんと汚れを払って。」



遅れて歩いてきたのが、驚くほど白い肌と髪の毛をした女の子であった。年齢はカーマインと同年齢か、少し上か。

そして彼女もまたカーマインと同じような服装をしている。ただし、彼のように汚れていない。





「すみません・・・。普段は此処までお下品じゃないんですけど・・・。」





ペコリと頭を下げる彼女。そして一緒にカーマインの頭を下げさせる。それに対して、カーマインは抵抗したり拒否するようなそぶりは見せない。



「いいよいいよ。オレも昔はそんな感じだったし。」



ブラックは頭を上げるようにジェスチャーすると、申し訳なさそうに彼女は頭を上げた。


「君が“豪雪のホワイト”さん・・・だよね?」
「名乗りが遅れました、確かに私が“豪雪のホワイト”です。よろしくお願いします。」
「こちらこそ。」


とりあえず、面会を終わらせた。そして多少の自己紹介を済ませた。



自己紹介からこの二人の年齢と関係など・・・・・・。驚いたのはこの二人は初め姉弟かと思ったが恋人同士だということだ。

雰囲気としてはゴールドとクリスに近いものを感じていたが、ゴールドのようにつっかかったりはしていない。

自分の悪いところは素直に受け止めて変えていく。いいところであるようで、逆に悪いところのようにも思える。なんというか、プライドがない。

それ以外に、今はとある探検チームに二人して所属して世界中を探検、調査していることや、二人の年齢を教えてもらった。

二人の年齢はほぼ予想通り、丁度二十歳。この年齢で楽しそうに今を楽しんでいると、なぜか複雑な気分になってしまう・・・・

そして、恋人という言葉を聞いたとき、ふと、故郷とイエローのことを思い出した。

きっと彼女のことだ。楽しく日々を送っているはずだ、心配はきっといらないだろう・・・





自己紹介を終わらせると、この後の行動がよくわからなかった。モーブからはこの二人にあってほしいとしか言われていなかったからだ。



「せっかくだから、お手合わせ・・・してもらおうかな?」



カーマインが突然、そんなことを申し出た。

ホワイトはそれを止めようとしているが、ふとカーマインの真紅の瞳を見てみると、熱く燃えていることがすぐに解った。


(この男・・・やっぱり、昔のオレのみたいなんだろうなぁ・・・・・・)


純粋にバトルが好きという人間の目。自分のようにバトルを武力や暴力として揮っていない人間の目だ。

逆に考えれば、この男は多少甘いところがあるのかもしれない。ひしひしと自分と同族の臭いをさせているベージュやセピアたちに比べれば。

カーマインの申し出を断る理由は無いし、何よりこれは相手の実力を測る大チャンスだ。そして、今という時間を有益に使えそうである。

ここで一度、円卓の騎士の力の天井を計っておけば後が楽であり、天井を知っておけば、対12人を想定した時の戦闘手段を考えておける。

ギランによる一掃か、それとも一人ずつ叩いてけるのか・・・・・・





「わかった・・・ただし、ベストメンバーいくから覚悟してくれよ。」





ここは腕の見せ所。数多の戦場を統制者として、そして、豪傑として生き抜き、戦い続け、勝ち続けてきた・・・

古城のバトル場に緊張の空気が張り詰める。戦いは既に始まっている・・・。

2人の男の手に握られたモンスターボール、安全のために距離をとるホワイト。

そして部屋の隅の方でつまらなそうに頬杖をついて眺めているピンクと、それを見守るグレイ。

残暑の暑さよりも“熱い”バトルが今、いや・・・既に始まっている・・・・・・・。












第10話へ・・・