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深い闇の中で・・・果てしない闇の戦い・・・



闇の力、闇の世界に憧れる人がいる

暗黒の力強さに惹かれる人がいる

闇の存在がカッコいいと思う人がいる



どれもこれも、闇の美しさと力強さに惹かれた人々。

彼等は知らない

闇の世界に生きるという真実の意味を

暗黒の力の恐ろしさを

闇の存在の悲しさを・・・・・・



都合のいいことだけで世の中は回らない

善があれば悪があり

陽があれば陰があり

光があれば闇がある。



誰もが目を背けるであろう

混沌が溢れ返る深淵の世界で

青年は戦う



“狂気”の扉を開いた先にある世界へ・・・


汚れきった真実の闇の世界へ、誘おう・・・・・・












PAS Chapter 第4話 深淵の闇











熱帯夜の街々を黒い影がザワザワと蠢く

影の手に握られたギラリと輝く鋭いものは、いったい何に使われるのか。

新たに発生した憎しみの輪廻は、その輝くものを影たちに握らせた


「“
とげキャノン”」


低い声が彼らの背後で聞こえると、太い針がもの凄いスピードで一直線に飛んできた。


「うわぁぁぁあ!!」


夜の闇の中で男たちの絶叫。

着弾の衝撃と、彼らの間を通り抜けた時の接触で彼らの何人かが傷を負った。


「・・・・・・動くな。」


冷たく低い男の声。

彼らの背後に立つのは、月明かりを背中から浴びた5人分の人影と一つの大きな影

影たちの登場に、男たちは手に握っていたものを握り締めて、または、腰からボールを取り出して

男の言葉を一切聞かずに突撃した。


「・・・“
つららばり”」


先ほどとは別の男の低い声。

一つの大きな影が、その身体から無数のつららを打ち出す。

その打ち出されるスピード、つららの速さ、つららの大きさ、打ち出されるつららの量・・・・

どれをとっても、まるで軍隊が使用するような大型のガトリング砲に引けをとらない



ピクピクと痙攣している横たわった身体

彼らは先ほどまで握り締めていたものを使うことも無く、“人”から“もの”へと変わっている。

暗闇のためにその状態を確認することはできないが、酷いことになっていることだけは確かだ。

それが終わると、一つの影がなにやら取り出して、なにやら操作をした


「処理は頼むぞ。・・・場所は、ニビシティ郊外東側だ。」


その一言を話すと、その影はなにやら操作を再び行って再びもとの場所へとそれを戻した。

僅かな時間で命がいくつも奪われた・・・・・・







7月25日・・・

ケガの治療など満足にできず、頭部へ負った傷は大して癒えていない。

のんびりとやっていきたいところであるが、時間は限られている

こうやって自分のことや、これからのこと、そしてこれまでのことを考える時間の間にも

反乱分子たちは、更生組への暴力を思量し実行へと移していく

だが、それに対する対策は既に講じてある。

あれだけ大きな力を見せ付けたことにより、否応無しに反乱分子の目はこちらに向いた。

最大のターゲットである自分自身、ブラックが動き出したことを知れば

その行動をこちらに向けるのはまず間違いない。

そんなことを考えながら、少し遅めの朝食を取る。

白いカップに対して全く反対の色をしたコーヒーと、美しい彩をした新鮮な野菜を挟んだサンドイッチ

サンドイッチを2、3口含みよく噛んで飲み込む。 そして、気が向いたときにコーヒーを口に含む。



ここは、ニビシティにある安いホテルの一室。

ルームサービスで簡単な朝食を頼むと、数分してボーイがこれらを運んできた。

ボーイとの交流も少々めんどくさかったので、早々とものを受け取ると、さっさと帰らせた。

無論、とこぞの国と違うのでチップを払ったりはしない。なにより、そんな余裕があるわけではない。

数分で食べ終わった朝食の後、ベットに投げ出してあったポケギアがなった






ピリリリ、ピリリリ






未だに未設定の着信音だが、音の微妙な違いからこの着信が団員用ということが解った


「もしもし・・・」


声の感じから、予想以上に自分が疲れていることが解る。


「首領、お怪我のほうは・・・?」


聞こえてきた男の声から、通信相手がエッジだと認識した。

この男は四聖獣の中で一番世話焼きで、それを生業にしている。それを考えれば当然だろうか。

(その世話焼きが本心からのものかどうかは疑わしいが・・・)

ちなみに四聖獣たち4人はれっきとした更生組である。そこを考えれば、彼らも裏切りものなのだ。



それぞれ、エッジはとあるお屋敷の執事見習い

ボムはお得意の外国語で外国語講師

ウィップはその性格と性質からそっち方面の風俗店

ニードルは元々持っていた薬剤師の資格を生かして薬剤師に・・・

それぞれ貴重な時間を割き、自分の正体を隠して補佐してくれている。本当に感謝しなければいけない。


「ケガなら多少は大丈夫だ・・・それよりも今夜、再び動きたい・・・・・・」
「了解しました・・・、3人にも伝えておきます・・・・・・」


通信を切断すると、ポケギアをもとの場所に放り投げた。

怪我のことを聞かれたので、なんとなく自分の腕をよく見てみる。

・・・あの日の頭部への怪我以外にも、この数日間に怪我はどっと増えた。

仮にも反乱分子たちも闇に生きるものたちだけに、迂闊な詮索は非常に危険である。

あの日から2日後に、単独で行動を起こしてみると、見事に闇討ちにあった。

情報網等のネットワークはかなりしっかりしているようで、トレーナー自身による攻撃が激しかった。


角材、鉄パイプ、サバイバルナイフ、スタンガン・・・・・・


どれも一撃でもこの身に受けたら、そのまま人生が終わってしまうようなものばかりだった。

それらをどうにかしても、やはりまだ人を殺めることに多少の抵抗があるようで、大怪我を負わせるくらいで精一杯だった。



甘い・・・どうしようもないくらい甘い・・・・・・



自分の“狂気”を抑える箍(理性)が崩壊したときでもなければ、殺めるという行為を行うことができない。

仮にも全てを自分一人で終わらせようとしていたのに・・・・・・

仲間・・・いや、他人の力を借りなければ、冷酷になれない自分が心底嫌いになった。










時は流れて夜・・・

21時を回る頃にブラックはホテルをチェックアウトした。

闇討ちにまであって仕入れた情報を確かめるチャンスである。

漆黒のスーツが夜の闇に溶け込んで、闇の世界へと入り込む・・・・・・

腰のボールホルダーから一つのボールを取り出すと、そのボールからポンッと音を立てて

翼竜、プテラのプテが呼び出された。ブラックはプテの顔を優しく撫でてあげると

いつもどおりに行き先をある程度伝える。


「また、頼む」


微笑む主人を歓迎するプテだが、どことなく元気が無く、暗い主人を心配そうな瞳で見つめる・・・

長年の付き合いだけに、そういった主人の変化には多少は敏感だ


「・・・ん、大丈夫だって」


また、その逆に主人のほうもポケモンの変化には敏感だ。

心配そうな表情になっていたプテの頭をニコッと満面の笑みで優しく撫でてあげると

その姿は、とっても優しいトレーナーとしか見えない。



それからほどなくして、その姿を見たかどうかは知らないが彼らが、四聖獣たちがやってきた。


「・・・すまないな・・・・・・」


顔を合わせてからすぐのブラックの一言に、四聖獣たちは一つわざとらしい溜め息を吐いた。


「フン、気にしてねェよ」


低い声、ニードルの声はどこかしょうがないというよりも、喜びのあるしょうがないといった感じだ。

本当に嬉しい言葉なのだが、その思いが真実だと仮定すればするほど

余計に自分の存在と、今までの行いが嫌になっていた・・・

こんなにいいやつらが、どうしてオレの傍になんかいるのかと・・・

ブラックの心にはまた少し変化がおきはじめていた・・・・・・





情報によるとニビシティ郊外にある廃工場が、反乱分子たちの集合地点になっているという。

その情報を信じて、とりあえず工場に乗り込んでみることにした。

無論、この情報に信憑性は無く、罠の可能性も高い。だが、罠の方が好都合とも思える。

自分の目的が反乱分子を叩き、抹殺、消滅させることなのだから、多くのものと戦ったほうがよい。

けれども、少しでも多くの仲間を救済することが自分の役目のようにも思える・・・

ブラックは首を回して軽くストレッチをすると、精神を落ち着かせる

今、自分がやっていることを否定してしまったら、全てがおかしくなる



後悔を考えたり、思ったら・・・終わる・・・・・・!!



いつの間にか到着していた例の廃工場を前に、これからの戦いを予期してか身体をほぐしはじめた


「・・・前回みたいなド派手なやりかたは、後一回限りにしてくれとのことだ。」


身体をほぐし、準備体操を始めるブラックがそんなことを話すと

同じようにストレッチをはじめた四聖獣たちが呆れた笑いを浮かべた。


「後一回の余裕はどこから来るんだろうな・・・?」


ニードルの皮肉も納得できる。前回の後処理を本当に「不発弾の爆発」で済ませたのだから・・・


veramanteヴェラメンテ・・・恐るべきは協会ですね・・・。」


何れ切り込まねばならない闇、ボムの言葉にはそれに対するやる気を感じさせるものがある。


「・・・だな。」


しかしブラックはその言葉の熱意に少々の疑問を抱いていた。これからの自分の在り方に・・・




しばらくの時間が経過して、5人はボールホルダーから各々ボールを手に取ると廃工場に向けて歩き始めた。

ブラックを先頭にして、四聖獣たちがその横に2人つづ並ぶ。

廃工場に近づけば近づくほど感じる、複数の人間の気配と息遣い。

ある程度の距離になるとドアの両サイドに護衛が2人ついているのが辛うじて解る。

月明かりが雲で隠れて、唯一の光を周囲から奪い去った。








周囲を闇が包み込む・・・・・・












闇・・・

そこは、人の持っている感情や欲望が渦巻く場所。

“アングラな”では少々弱い。

よく人々が憧れるのは、縛りある闇の世界。

闇の世界に掟を定めるという愚かな矛盾地点。

本当の闇の世界とは、混沌と言う名の自由の世界

責任という束縛の在る自由ではなく、自由だけの自由・・・即ち“freedom”。

そう、ここは欲望と感情が混ざり合う深淵の中・・・・・・






















「エッジ、ニードル、護衛を抑えろ。 ウィップ、ボム、突入するぞ。」

ブラックの落ち着いた声でそのことを伝えると、闇の中を影が動き出した・・・









“深淵”という名の光届かぬ自由なる闇の世界の扉が開かれた・・・・・・









走り出した影たちは、2つと3つに分かれて廃工場に真っ直ぐ進む。

足音を聞きつけた護衛がポケモンを繰り出す前に、既に繰り出されていたカブトプスとノクタスが

護衛の身体を切り裂き、刺し殺した。一瞬の出来事に断末魔の声も上がらず、血の噴水が上がる。

廃工場へとつながるドアは、護衛が殺されている間に蹴破られて3つの影が内部に侵入する。





「・・・殲滅する!!」






蹴破られたドアの音に驚いて振り向く反乱分子の団員たち。完全に油断していたらしく、誰一人対応できるものはいない。

3つの影から繰り出されるポケモンたち・・・モンジャラ、ゴローニャ、プテラ・・・・・・。

それらの3体は各自のやり方で反乱分子たちが集合している工場の中心部へと向かう


「ゴローニャ、“
ころがる”!!」


工場の中心部は辛うじて灯る数個の電灯が天井からぶら下がるだけで、非常に薄暗い。

その中に50人くらいの黒服のトレーナーたちが集合して、何やら話をしているのが見える。

そんな中に影の一つ、ボムが繰り出したゴローニャは、身体を丸めて勢いよく前転して転がっていく。

中心部に向かうまでに進路に存在する全てのものをボーリングのピンのように跳ね飛ばしながらゴロゴロと転がる。

直径1メートルの大きなボーリング球はあらかた敵を跳ね飛ばすと、丁度敵の集団の中心部で今までの勢いをピタリと止めた。



scoppioスコッピオ・・・“
だいばくはつ”」



ボーリング球はその身体を輝かせ始めると、身体の中に眠る全てのエネルギーを開放した。

崩壊していく岩石の身体と引き換えに、莫大なエネルギーを発生させて周囲を一気に吹き飛ばす・・・。


「ひっ」


恐怖によって自然に口から漏れた声。

爆風で宙に舞う黒服の敵。軽く10メートルは吹き飛ばされているものもいる。

高い位置から思い切り床に叩きつけられる者、真横に吹き飛ばされて廃材や機械に激突する者

何れにしろ大怪我以上は免れることはできない。



「・・・に、に、に・・・逃げろぉぉぉぉ!!!!!」



恐怖と狂気に震える声。

敵は廃工場から逃れようと脱出路を目指して走り出す。しかし、混乱でただでさえも低い統率を乱された彼らが

そう簡単に逃げることができるはずも無く、混乱した仲間たちにぶつかり前に進めなかったり

錯乱したものによって余計に混乱が広がり、統率を奪っていく・・・・・・



「フフフ・・・モンジャラ、全ての蔓でお仕置きしてあげなさい・・・“
つるのムチ”!!」



ゴローニャの後に中心部に突入してきたモンジャラは、全身の蔓を限界まで伸すと

自分の身体をグルグルと回転させて、蔓の力に遠心力を加えて強烈な鞭の一撃を放つ。


「あひぃっ!!」


痛みに悶える声。

ヒュンヒュンと空を切る蔓に浅く触れると肌は切れて、深く触れると痛々しい真っ青なあざが付けられる。

回転するモンジャラを中心に半径5メートル以内の存在は全身に傷を負う。

目に当たれば目は潰れ、鼻に当たれば鼻の骨は砕け、肌に当たれば苦悶の声が上がる。

それでも、その範囲内にいなかった者は何とか脱出路へと逃げようと死に物狂いでそこを目指す。



「ど、どけ!! 殺されちまう!!!」



我先にと必死に集合の中から逃げ出そうと、自分が所持していた武器を振り回して仲間割れを始める。

ナイフで刺されるもの、斬りつけられるもの、鉄パイプで殴られるもの、ポケモンを繰り出すもの・・・・・・・

生への渇望が混乱をさらに混乱に陥らせて、今やこの廃工場の中は仲間同士で殺し合うという狂気に取り付かれた凄惨な場所と化していた。

一言で表すならばまさに、地獄絵図・・・・・・




恐怖と狂気に包まれた地獄から脱出しようと、数人が何とか集団の中から抜け出した。


「・・・・ハァハァハァハァ・・・やった、やった、やった・・・・・・・!!!」


明かりも無い脱出路を数人が走り出し、その先にある非常ドアをひたすら目指す。

あのドアを出ることができれば、生きることができる・・・・・・!!!

狂ったように走るその数人の目指す場所に、影が一つ立っている・・・・・・



「まことに申し訳ありませんがこちらのドアは使用できません。」



非常ドアの前に立つ影から声が聞こえが、暗闇でその姿を正確に捉えることはできない。


「・・・・う、うぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


あのドアを抜ければ生きることができる。その生への渇望が、腰のボールを握らせてそこからポケモンを呼び出させた。

数人は全てのポケモンを解放して20体ほどの戦力を加えると、影に向かって突撃をかけた。

もちろん、自分たちも所有している武器を手に持って、ポケモンたちと一緒に突撃する。

その時であった。





「・・・“
とげキャノン”」





工場の分厚い壁の向こうでかすかに聞こえた男の声。

それと同時に突撃していくトレーナーとポケモンたちの側面、壁側から太い棘、いや、針が数本が壁を突き破って飛んできた。

ポケモンたちと一緒にトレーナーたちも、そのいくつもの太い針の一撃に刺され、吹き飛ばされ、貫通された・・・

攻撃は容赦なく続行されて、力を失ったポケモンやトレーナーたちに壁を突き破り太い針は飛んでくる。

非常ドアを目前にして突然の針の攻撃に命と戦闘意欲と冷静な思考を根こそぎ奪われて、数人と20体以上のポケモンたちは

いつの間にかその数をたった一人のトレーナーだけにされていた。


「た、た、た、助けてくれ・・・・・・」


完全に怯えきり、震えた声。

腰を抜かしている黒服のトレーナーに、非常ドアの前に立っていた影が接近してくる。

ガチガチと歯を鳴らす音が鮮明に聞こえる。しかし耳を澄ますと少し遠くのほうで多くの苦しむ声と混乱のどよめきも聞こえる。


「何でもする、何にでも従う!!だから、助けてくれぇぇ!!!」


涙と涎と鼻水を垂らしっぱなしのぐしゃぐしゃのひどい顔で、トレーナーは近づく影に懇願する。

しかしその顔は暗闇に包まれており、照明が無いこの通路ではその顔を確認することは難しい。


「首領の意向に従えなかったあなた方をいまさら許すわけにはいきませんので・・・」


目の前の影の背後から、鋭い鎌持った何かが姿を現した。


「悪かった、本当に悪かった!!! 頼む、いや、お願いします!! 命だけは、命だけは!!!」


その言葉に影はピクリと反応した。



「首領は命さえも顧みていないというのに・・・下がこれでは・・・・・・」



先ほどまでの口調に若干の怒りがこもっているように思える。その言葉の後、非常ドアからもう一つの影が侵入してきた。

しかし、それに気を取られることなく、影は高々と右腕を上げた。


「では、さようなら。」


振り下ろされた右腕と同時に鋭い鎌が、トレーナーの首を刎ねた・・・

キレイに切断された首はゴトリと床に落ち、身体はバタリと倒れ切断場所からドクドクと血を流した。


「ニードルさん、援軍へ行きましょう」
「ああ。」


2つの影は闇の中を進み始めた・・・・・・












一方、集団の中心部ではボムが2体のマルマインによる爆破攻撃等によって過半数以上のトレーナーを沈黙させた。

さらに仲間割れのためにさらにその数は減り、残されたトレーナーは初期の総人数の4分の1以下である。


「うらぁぁぁぁぁ!!!」


決死の、そして必死の声。

この頃になると、一矢報いての考を持ったトレーナーが出現しだしてブラックたちに襲い掛かろうとする者が出始めた。

こういった存在は非常に危険で、死を覚悟しているのでどんなことでもやってのける。

ブラックもこの原理で力を得ているのだから、その強さは折り紙つきといえよう。

鉄パイプやナイフをブンブンとめちゃくちゃに振り回し、ポケモンを全て開放し、一心不乱に攻撃を仕掛けてくる

しかし、敵のこと以外目に入っていないらしく、自分の仲間たちに攻撃を加えてしまったり、まだ息が在った者に止めをさしてしまったりしている。

開放されているポケモンたちからの攻撃も激しく、なかなかその存在を始末できない。


「ぐらぁぁぁ!!」


鉄パイプと同時に、開放されていたポケモンの一匹であるゴルバットが“
ヘドロばくだん”を飛ばしてきた。

その攻撃の標的となったブラックは、プテに自分の肩を掴ませて空中に退避した。

空中から下を見てみると、なんとも惨い現実が見える。

倒れる元仲間たち、血を流し蹲るポケモンたち、死んでいるようにぐったりとしている、ポケモンとトレーナー・・・・・・

痛む心に思考を支配されて、ブラックは空中で静止していた。


「やっちまえぇぇ!!!」


その隙を突いて、開放されていた飛行タイプのポケモンたちが一斉に空中のブラックに襲い掛かった。



insicuroインスィクーロ!!!」



どくどくのキバ”を輝かせる無数のゴルバットやズバットがブラックに迫る



「・・・・・・今、呪縛から開放してやる・・・・・・!!」





瞳を瞑り、意識を極限まで集中する。



迫りくる無数の蝙蝠、この数に噛み付かれて“
きゅうけつ”されたら、どんな人間であろうとひとたまりもない。



漆黒のオーラが全身から発生する。



そして、瞑られていた瞳が開かれると、ブラックとプテが極限の同調を見せた。





「プテ、“
はかいこうせん”撃ちっ放しだ!!!」





ブラックの声で、プテの口から強力な光線が放たれた。ブラックはその身体を大きく動かして、プテと一緒に空中で回転する。

回転と一緒に光線は撒き散らされ、工場の電灯を落とし、群がろうとしていた蝙蝠たちを焼き払った。


「うおおおおおおおおお!!!」


ブラックの必死の声。


回転する方向を横だけではなく縦や斜めと変化させて、工場全体に光線を撒き散らす。


廃材は吹き飛ばされ、機械は爆発、壁は切り裂かれて、柱は砕けて折れる。要するに、工場は崩壊を始めた。


危険を察知した四聖獣たちは各々脱出。遅れてきたニードルとエッジも、壁を破壊して脱出した。


光線は撒き散らされ、天井に破壊。床に倒れる多くの元仲間たちに止めを刺す。


まるで光の剣を振り回すかのように、ブラックは己の身体を回転させて工場を破壊していく・・・


夜の闇を裂くような光が、突き破られた天井を飛びぬけて夜空に光の柱を発生させる。




しかし、闇は裂かれることは無い・・・・・・




凄まじい轟音を立てて崩壊する廃工場。その瓦礫が床に倒れていた者たちの墓標となっていった。

・・・この後処理は協会が行うのだろう。



やはり闇は、果てしなく深い・・・・・・















脱出した四聖獣たちに少し遅れて、ブラックが“荷物”をもって上空から降りてきた。

恐らく、脱出の際にまだ息が在った者を連れてきたのだろう。

しかしその“荷物”をブラックは丁寧に扱う機は毛頭無いらしく、ボスンと降りてくるときに落とした。

「ああっ!!!」

結構な高さから落とされたために、“荷物”は痛みのに悶え、声をあげた。

その“荷物”を逃がさないように四聖獣たちが取り囲むと。“荷物”は怯え始めた。



「おい、オレたちの質問に対してお前の知っている全ての情報を吐け。先に言っておくが、別にオレたちは今までの行動が示したように

お前らの命を奪うことにためらいは無い。 後、お前が口を割らなかったとしても、代わりはいくらでもいることを忘れるな。」



ブラックは地面に倒れたままの“荷物”に見下ろして冷たい言葉を吐く。

「命の・・・命の保障をしてくれるなら・・・・ぐあぁぁぁ!!!」

ニードルが思い切り“荷物”のわき腹を蹴りとばした。そして痛みに悶える身体を、片足で押さえつけて固定する。


「オイ、余計なことは話すな・・・。」


ニードルの表情は非常に高圧的で、眉間にしわを寄せて非常に恐ろしい表情をしている。

そして、固定していた足を開放して再びわき腹を蹴りとばす。今度は何度も蹴りとばす。

「ぐぁぁぁぁ・・・・話す、話すから・・・止めてくれぇぇぇ・・・・・・」

“荷物”の表情は苦痛に歪み、涎と涙を垂れ流しにしている。

ブラックに制止されて、再びニードルは苦痛に悶える“荷物”の身体を片足で固定した。


「一つ聞く、こういう集合地点はあとどれくらいある?」

「・・・・・・。」


質問に回答しない“荷物”に、ニードルが再びわき腹を蹴りとばす。

すると、声にならない声を上げて“荷物”は悶えた。


「・・・・あと、あと、一箇所、一箇所だ!!」
「一箇所・・・?」
「そうだ、今日、ここに集まったのはそのことの報告だったんだ。」


四聖獣たちの突き刺さるような視線に、“荷物”は口調を変えた。


「あんたら・・・いや、あなた方におびえた連中が次々と逃げ出して、もう残り少ないんです・・・。」


痛みをこらえて必死に話す“荷物”のわき腹を再びニードルが蹴りとばす。


「オイ、嘘を話して損するのは誰かわかってんだろうな?」


「ぐぁああ・・・う、嘘、嘘じゃない、嘘じゃありません!! と、とりあえず、ロケット団復活までは力を蓄えておくという連中が

旧幹部のところに身を寄せているようです。それ以外の、どうしてもあなた方を倒したいといっている少数派の連中が集まっているだけです。」


必死に話す“荷物”の瞳をみたブラックは、このことが嘘ではないということがなんとなく解った。

自分の命を天秤にかけられている事を考えれば、この情報の信憑性は高いといえるだろう。


「場所はどこだ?」
「・・・・・・タマムシシティの、ゲームコーナーにあった地下秘密基地跡です。あそこです!!!」






タマムシシティ ゲームコーナー地下・・・

かつて、レッドとブルーの活躍で明らかになった秘密研究所のある施設で、その一件の後は当局が介入して

捜査のメスが入り、封鎖されたとの情報を得ている。









「あそこか・・・・・・」


ブラックは一言呟くと、少し考え込んだ。

残り少ないという反乱分子。逃げ出した連中は旧幹部が面倒を見ているとして、現状を考えれば何れ自然消滅する可能性も高い。

何より、反乱分子との戦いはこれで終わる可能性が高い・・・・・・

もう一つの“計画”を実行するチャンスと言えるだろう。 このチャンスを逃すわけにはいかない。






「・・・こいつにもう用はない。逃がしておけ。」

ブラックはそういうと、一人だけその場から離れると闇にまぎれて姿を消した。


「オイ、余計な行動をとってみろ。その時はどうなるかわかってんだろうな・・・?

言っておくが、拷問は得意分野だからな・・・・・・。」


ニードルのドスの聞いた脅しに、狂ったように震えだした“荷物”は走って夜のニビシティに消えていった。













闇が去ってもうじき朝を迎える。

ブラックたちと入れ違うように協会からの派遣員が来て全ての後処理を夜通しやり続けた。

表向きの報告は老朽化した工場が、中でバトルをしていた者たちの衝撃によって倒壊したと発表。

非常に自然な理由だったために、何からも疑われることは無かった。

この凄惨な戦いの事実など一切関係なく時はごく自然に、何も変わりなく流れていく・・・。

闇に葬られた真実は、光を浴びて生きるものに伝えられることは無い。





そんな深淵の世界で、青年は再び戦う。

気付き始めた自分の存在という名の呪縛に、青年の心は闇に侵されていく・・・





盛夏の季節となる8月・・・


深淵の中の戦いに終止符を打つために、青年は戦場へと向かう・・・・・・










第5話へ・・・