AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する



時は流れて、一ヶ月・・・もうじきバレンタインデーを迎える2月頃の話・・・。





の夢を見る。


薬を使って無理矢理眠ると、必ず悪夢を見るのでこれもまた悪夢。


赤が黒に飲み込まれて、ただただ真っ黒に染まっていく夢。

赤は常に負け続けている・・・

3次元でも2次元でもない、色彩の変化だけが表現される無機質な夢・・・



”は色彩の王者。

全ての色を合わせてできる究極の色であり、全ての色を統べる者。

存在してしまったら最後、“薄める”以外の方法でその存在を“隠す”ことはできない。

・・・そう、“”では、“”を構成する一色では、“”に打ち勝つことはできないのだ。




強大な“”は、全てを飲み込み、何もかもを侵食していく。


心も身体も、過去も現在も未来も・・・


しかし、全ての色を超越するその力はあまりにも強大。

”を得しものは“王”の覇道を歩む。






「コレで・・・勝ったヨォ・・・」







声と共に黒い世界が鮮血に染まり、青年は最悪の気分で目を覚ました・・・











PAS Chapter3 第32話(前編) 光と影と・・・(前)












 今年の(厳密には昨年も含むのだが)冬は、カントー地方全域に雪が全く降らなかった。

暖冬・・・という訳ではないのだが、どういう訳か雪が本当に降らなかった。

その理由は定かではないが。ほぼ毎年粉雪程度でも雪が降るカントー地方においては

この現象は非常に珍しく、様々なメディアが連日報道。それこそ、もう少し別のニュースを

報道してくれと思うほどそのニュースばかり報道される。シンオウ地方のような豪雪地帯で

全く雪が降らなかったとなれば、これ位報道してくれるのは構わないのだが、なぜ、どうして。



・・・なぜメディアはそんなことばかり報道するのか。

その答えは、ある学者が提唱したある説がなんだか神秘的で、人々の心を捉えたからだ。

その説というのが




「“スターリーヘブン流星群”の星々が持つ引力によって、惑星規模の“進化”が始まる。」




一見、恐ろしく、なんだか恐怖を与えるような説なのだが、メディアはそれを好感的な報じ方を

したが為に自然と人々もこれを好意的に受け取っていた。



 その学者が唱えたのは“惑星の進化”。

彼らが住む星そのものが、外部影響によって“進化”する。

“進化”という言葉を我々、読者、はたまた作者の世界で考えると、実はあまり印象が無い言葉だ。




“進化”とは“優”と“劣”を決め、“劣”を排し“優”が残るということ。




差別を生み出す言葉であり、決して全ての安全を保障する言葉ではない。しかし、その語意に含まれる

エネルギーは莫大で、逆に考えれば“劣”を排する力を持ち、未来を切り開く力を持つ力強い言葉だ。

そんな“進化”という言葉だが、彼らのポケモンが存在する世界だと、非常にメジャーな言葉で

たやすく受け入れやすい言葉である。我々の世界での理解とは異なる意味で“進化”という言葉を

理解しているので(非常に好印象、純粋な強化や新たな発展を意味する言葉として)、反動や疑問を

抱く人々というのは非常に少なかった。しかし、一部、異を唱えている学者も少なからずいた。



だが、人々の関心がそうやって“スターリーヘブン流星群”に向いていて、天体観測ブームが

起こっている現在だと、望遠鏡や天体関連商品を取り扱う大手企業によって、その手の意見は

まず放送されない。スポンサーになっていたりするとなおさらだ。これは企業の常套手段であるし、

メディアのある意味正しい利用方法でもある。





スターリーヘブン流星群”・・・

“星々の天国”と名づけられた、全天を覆いつくす程の流星群に名づけられた名称。

世界展望台で初観測からもうすぐ1年。いよいよ、民間の所有する大掛かりな展望設備でも

その姿を捉えられるようになってきた。来年頃には一般的な展望設備を用いればより明確に見ることができる。

さらには、流星群が彼らの星を通過する時に限っては、肉眼でも“星々の天国”を堪能できるようになるとのことだ。



ただ、やや気がかりな要素として“スターリーヘブン流星群”の移動速度が非常に安定していないらしく

最接近の具体的な日時を未だにはじき出せていない。天文学者の意見では、他惑星の引力に引かれている説が今のところ最も有力だ。

しかし、真実は今のところ誰にも解っていない・・・。





そんなニュースがラジオ独特のノイズの混じった音声で読み上げられる。今日のキャスターは男性だ。

打ちっぱなしのコンクリートに、白のペイントで描かれたポケモンバトルの公式戦用のライン。

2月の風が天窓をカタカタと冷たく震わせると、部屋の隅の方に設置された質素なベンチに

座る2人の冬の装いをした女性たちが、少し寒そうに震えた。一応の暖房器具である古めかしい

石油ヒーターで暖をとってはいるようだが、やはりそれだけでは少し寒い様子。





・・・ここは、トキワシティジム、公式戦用バトルフロア。





しかし、寒いからといってベンチに座る2人が互いの間を詰めることは無かった。

むしろその間は、他人同士以上に広いように思える、普通以上の間。

この2人にどんな関係があるのかはよく解らないが、ただ今は、白いラインのコートの真ん中で

準備を整える2人の男性トレーナーに視線を向けている。他人以下の関係ながら

その点だけは共通する事項・・・薄く青い瞳と、薄桃色の瞳が動きを見つめる。









 「プテ、おいで」


自分の肩をポンポンと叩くと、プテと呼ばれた古代の翼竜は愛嬌たっぷりの一鳴きをしてから

その指示に従った。バサバサと忙しなく羽ばたきながら、主人の方に鍵爪の両足を乗せると、

主人の肩に、そして主人の上着に、はたまたその下着に穴を開けない程度の力でキュット掴む。



「ハッサム・・・行くぞ。」



翼竜の主人の目の前、向かい合って立っていた美形の男性は、

(翼竜の主人もそんなに悪い顔をしていないのだが、この男性と比べた場合では圧倒的に“下”の顔だ。)

サッとボールを取り出すと、素早くボールから主人譲りの鋭き眼光と刃を身に着けた

鮮やかな赤をした人型をした鋼の甲虫は、場に現れると同時に羽音を立ててすぐさま臨戦態勢となる。




「斬撃は俺の専売特許だったんだがな・・・」


「まぁまぁそういわずに。」



両目を“へ”の字にしてプテの翼を優しく撫でながら、目の前の美青年に軽く頼み込む。

美青年はやれやれといった表情をするが、その表情はどこか嬉しそうだ。



「プテの翼に強い負担を与えちゃうんだよな、今のままだと。」



軽く、優しい口調と雰囲気を残しつつも、どこか真剣で真面目な一人語り。

その語りの中にはこのような考えがある・・・





 “打”の衝撃と“斬”の衝撃では、圧倒的に“斬”の衝撃の方が気が楽である。

“打”は鈍く、“斬”は鋭利。鈍い痛みが全体的に広がる“打”よりも、“斬”ならば

衝撃が一点集中するので(厳密には“一点”ではないが)衝撃後の活動が活発でいられる。

衝撃からの回復速度、体感衝撃の低さなどは特に“打”の方が上回るのだが、鋭利な一撃である

斬撃というのは瞬間的な衝撃となる為、事実上の体感衝撃は“打”を圧倒的に上回る。

“斬”の衝撃を長時間受けると非常に危険だが、短時間ならば、ほぼ体感することなく衝撃を受けられるのだ。



 少々箇所がずれているかもしれないが、人体に例えると“肘”。

(“膝”も該当するのだが、ここでは“斬撃”を説明する為、省略する。)

この“肘”での一撃は、使いようにもよるが基本“斬”の一撃となることが多い。

実際、肘で振り抜いた攻撃はヘタに“かする”だけでも当たった部分の皮膚が切れるほどだ。

ボクシングの試合等でよく、目の辺りが流血したりするのは“肘”打ちが原因だとされる位に。



 ではなぜ“肘”はそんな一撃を繰り出せるのか・・・それは“肘”が人体で最も硬い部分だからである。

実のところ、衝撃の一点集中のできない物質や箇所ではまず“斬”の一撃は発生し得ない。

それを可能とするには相当な鍛錬が必要であり、常人にはまず不可能である。

しかし、硬い物質や箇所でならそれは“可能”となる。後は一点集中できる環境であること

即ち、衝撃点の集中・・・それが鋭利であるか、または鋭利な状態を作り出せればよい。

それらの条件を“肘”は満たしている。よって

“肘”は人体において“斬”の一撃を繰り出せる箇所であり、人間の持つ天然の刃でもあるのだ。



その理屈を利用してプテの主人がやろうというのが、翼による“斬撃”。

元々、プテことプテラの翼は非常に硬質である。これはプテラのタイプの1つでる

」タイプということも理由の1つであるし、今までの彼らの戦いが証明もしている。

“打”の衝撃の後でも飛行が可能=ある程度は衝撃に耐久できるということ。

ここから導き出された結論が、“プテの翼による斬撃”であるが、

それと同等、いや、それ以上に自分のポケモンへと対する労わりの心が大きい。





 (“精神”の方、もってくれよ・・・)



プテの主人は、室内を満たしている2月の空気をすぅっと深く吸いこむと、

脳神経1つ1つに意識をめぐらせ、両肩を掴む生命の温度と微弱な動きを感じる。

それは、トレーナーとポケモンの見せる“究極の連携”であり、深い集中と理解

そして互いに信頼しあう関係が生み出す人とポケモンの奇跡・・・!!



(オール・ナーバス・システム・・・コネクト・・・・・・“究極連携”開始)



深層心理の奥の奥。黒い声が呟くと同時に、ヴィジョンが2つ描き出されて

プテの主人の黒い瞳には、その2つの視界が映し出される・・・



「ちょ・・・洒落にならないわね・・・グリーンもよく平然としてられるわねぇ〜」



ズキリとくる痛みが全身を駆け巡ると、ベンチに座る青い瞳の女性は顔を引きつらせた。

この女性、約3ヶ月前にあったバトルで負傷しており、その傷は未だに完治できていない。

傷跡はほとんど残っていないのだが、痛みそのものがまだ残っているので、プテの主人が放つ

どこか冷たくて、寂しい、晩秋の木枯らしのような雰囲気は身体の芯に響いて、痛みを呼び起こす。



青い瞳の女性もそうだが実のところ、プテの主人の前に立つハッサム使いの美青年・・・

グリーンも同じように傷を負ったのだが、そこはやはり男と女の差というものなのだろうか。








 ビリビリくるその迫力に思わずグリーンとハッサムは、臨戦態勢を維持したまま後ずさりをしてしまった。

殺気立っているわけでも、敵意をむき出しにしているわけでもない目の前の親友からは

極限の集中による“凄み”が強烈な迫力となって溢れ出している・・・



(・・・ここまで、差をつけられていたのか)



目の前の青年はまず口にしないが、伊達に実戦、しかも命を取り合うような

凄惨で酷く生々しい数多の“戦場”を生き抜いてきたのだ。その経験来る迫力は

普通でいつづけた人間とは比べ物にはならない。しかし、それが本当に素晴らしいことで

全ての人に自慢できる事なのかと聞かれたら、間違いなく良い回答はできない。




(グリーンの“超感覚”は、オレがどんなに努力しても短期間では身につけられない。

  グリーンの努力と忍耐が、時間を掛けて開花させた才能だ・・・)




グリーンの形無きものをも斬る“超感覚”は、ポケモンとトレーナーが見せる“同調”現象の一種であり

プテの主人である青年の“究極の連携”と全く同じ性質をしている。

ただ、この2つの違いは“同調”現象による効果の表れが、局地的か、全体的かということである。



局地的な“同調”・・・一点集中型の繊細な“同調”は非常に精度が高く、その威力も格別。

ただ、あくまでも局地的。グリーンとハッサムがみせる形無きものを斬る“超感覚”は

心同士の結びつきはもちろん発生しているが、肉体が感知する感覚の結びつきが、斬撃を繰り出す

ハッサムの刀身部、“刃”の部分に限られる。そこ以外の身体とはあまり大きく結びつく力が発生しない。

しかしながら、感覚の結びつきが非常に強いので、グリーンの“超感覚”をハッサムも共有できる。



対して全体的な“同調”・・・全体拡散型の単調な“同調”は精度が低く、威力も低い。

ただ、利点として全ての感覚を共有できる。これはトレーナーという命令する立場の人間にとって

最高理想系の“同調”現象である。自分の意思、思ったとおりに対象を動かすことができるのだ。

これ以上の命令方法は無い。ただその精度は低く、単調な命令ならば実行させることができるが

思い描くヴィジョンを命令として伝えるなど、複雑な命令になると流石に完全には実行できない。

このプテの主人は、それを補う為にポケモンと自分の身体を接触させることにより、

究極連携”という高精度な“同調”を実現している。

(身体接触によって、微妙な筋肉の動きを感知し、身体の動きの情報を入手できる為である。)



勇気を振り絞り、息を吐いて、グリーンはハッサムと共に斬撃の間合いにプテの主人を捉える。

それと同時に、静かな集中を始める。それは刃の様に鋭く研ぎ澄まされた鋭利な集中・・・



「レッド・・・いくぞ。」

「オッケー・・・頼むぜ?!」



2人の応答の後、部屋に響いたのはガツンという非常に鈍く、“斬る”音とは程遠いとても嫌な音だった。


















 「アレって・・・あのコよね?」


「ん?」



時と場所は移って帰り道。未だ寒い2月のトキワシティからマサラの自宅への家路でのこと。

先ほどベンチに座っていた薄桃色の瞳で三白眼の女性が指差した先には

美しい金髪と薄黄色の瞳をした、小柄な女性の姿があった。・・・のだが

その両側、彼女を挟むように茶髪の2人の男性がややしつこく彼女に話しかけている姿もあった。

しかしそれでも、不愉快を覚えているような表情をお互いに見せておらず

金髪の彼女も笑顔で男たちと普通に話をしている。



「ねぇねぇ、バレンタインの日って空いてる?」


「空いていますけど・・・??」


「じゃあ、オレたちとデートしない、デート?」



そんな会話が繰り広げられているだろうということは、容易に想像がつく様子の3人。

距離がある為、詳細な会話の内容は全く解らないが、10人がその場面を見れば、

8人はそんな感じに声を当てるだろうし、そう想像するに違いない。




「・・・・・・。」




たが、仮にも1年ほどだが一緒に暮らし、付き合っていた、深い仲にあった時期もある彼には。

10人のうちの1人であり他2人とは違う、彼女の内面的な情報を持つ彼にとっては。

金髪の彼女がしている笑顔の奥にある感情がなんとなく解ってしまう。

(ちなみに残りの1人は、思考がおかしい人物の可能性である。)

まぁ彼の場合、実践で磨きに磨きぬいた観察眼があるので感情自体は漠然とだが理解できるのだが。

その瞳で見た彼女の感情が解ったからなのか、ブラックは1人静かに黙り込んでしまった。


しかし・・・





「彼女、忙しいみたいよ?」





少々、気まずさと深い思考に入ろうかというところで、隣を歩くピンクが何の意図も無いのだが

鋭い視線を送る。彼女としては、隣を共に歩く男が突然静かになり、おとなしくなれば

嫌でも視線の先を気にしているのが解る。

この視線を今の状況で受けると、どこか責められているような感覚に陥るのはいうまでもない。



今、彼女に向ける優しさが、後の彼女の幸せに繋がるのか。

本当の優しさとは、無益に振りまくことではなく、後へと繋がる意味のあるものではないだろうか。

一時的な感情の揺らぎの度に心と身体を動かしていては、人はいつまでたっても成長できない。

そしてその優しさを受けた人間も成長などできない・・・




「あれは・・・あれで、いいんだ。」




頭の中で深く考えながら、彼女から目を背けるとブラックはそう静かに呟いた。

それはどこか寂しいようで、悲しいようであるのに、力強い覚悟を感じ取れる言葉だった。



理屈や道理、そういった論理的な思考をできない人間はどこまでも幼稚。

そしていたずらに優しさを振りまくのも幼稚。

そんなことは百も承知だが、身体が勝手に動いてしまう。

激情型という訳ではないが彼の場合、考えるより先に身体が動く性質だ。



複雑な思考や先見性のある行動を考えたとしても、目の前の感情的な出来事に対してそれを一切活かさない。

いや、活かすことができない。そういう性質。


“困っている人がいれば助けたい”“楽しそうなら一緒に楽しみたい”“悲しんでいるなら慰めたい”


そんな彼だからこそ、親友や仲間たちにこれまでのことを許されて受け入れられたのだろう。

・・・しかし、そういうところが優柔不断と思わせたり、意志が弱い、単純といった印象を抱かせたり

“どっちつかず”を相手や周りに思わせたりしていることを彼自身は気づいていない。

それが今までの、過去の青年の姿である。しかし、今は・・・




「そう・・・」




ピンクのすんなりと受け流すというよりも若干の疑問を含めた返答。

だが、どこか“何か”に気付いているような。女性特有の勘の鋭さを発揮しているのか、

ブラックの言動と雰囲気からその“何か”を敏感に感じ取っているようでもある。




「お前とあのコとの事情、詳しくは知らないけど・・・

  はっきりさせないのは、よくないんじゃない?」




その一言をブラックに言うと、ピンクは視線を進行方向にまっすぐにして、ブラックの腕を引くように歩き出した。

引っ張られるように歩き出したブラックは、聴いた言葉を頭の中で整理してみる。

すると自分の見せていた表情に気付いた。

どうやら先ほど吐いた言葉とは裏腹に、表情には“迷い”が見えていたようだ。



・・・彼女は、闇の世界の住人。それも暗殺稼業というとびっきりの。



一瞬の表情の変化を見逃さず観察し、また気付き、そこにつけ入ったりして生き抜く世界。

彼女はその“迷い”を見切ったのだろう。流石というべきか、それともここは恐怖すべきなのか。

何れにしても、自分が彼女に見せていた表情を後悔すると、素直に彼女の言葉を心に刻み込む。



 人は時として、感情と反する行動を取らなければならない。そしてそれを納得しなければならない。

“感情に従いすぎる”ことは愚かであり、理性や信念を崩してまで感情に従うのでは

流れるものは止まり、動くものが破壊される。それは自己の破滅すら招く行為である。

ピンクはきっと、それをブラックに忠告したのだろう。

しかし、それ以上の無意識の感覚が無かったとは言い切れないが。


もしかしたら、ピンクにはもっと別の思惑があってこの忠告をしたのかもしれないが

ブラックの解釈、そして言葉の受け取り方としては“彼女なりの優しさ”、“彼女の表現”ではないかと思っている。



・・・・・・あえて“聞かない”という優しさが。






「レッド・・・さん・・・?」


ブラックとピングがイエローの存在に気付き、そしてまた歩き出してから間の無くの事。

ブラックたちの存在に気付いたイエローは、彼の名を呼ぼうとしたのだが彼の隣に立っている女性。

そして2人の様子が目に入ると、呼ぼうとした声は勢いを無くし、そしてただの呟きに変わった。

呼ぼうとした一瞬に一目は大きく見開かれたが、呟きに変わる頃には瞼が直視を拒むように落ちてきて伏せ目になった。

表情は一気に不愉快を露にしたものに変わり、どこかいじけたような、

それでいて深い感情を秘めているような複雑で、寂しい怒りの表情となった。



薄黄色をした瞳にはっきり映ってしまった、寄りかかるように密着して腕を組んで歩いている2人の姿。

目が潤み、瞳が揺れる。見間違いという可能性を肯定したいという無意識が、視線を逸らさせる。

しかしそれは一時的なもので、すぐにいつもの笑顔に戻り、まるで“あてつける”ように少ししつこく

話しかけてきていた両隣の男性たちと楽しく話し出した。




すれ違い、風が吹く。






「・・・なんか寒いな。」


これから春を迎えていく季節なのだが、相変わらず寒いものは寒い時期。

しかし、不快感を覚える寒さではなく、純粋な肉体的にくる寒さを感じ取る時期であって

決して張り詰めた緊張と、背筋が凍りつくような嫌な寒さを覚える時期ではないはずだ。

嫌な肌寒さを、ブラックはひしひし感じとっていた。



「汗で身体が冷えたんじゃない?」


「そうかな?」








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