AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する



・・・その道を選んだ理由・・・歩む青年の心情は・・・・・・




時間は少し巻き戻る。

これは、イエローがその日のウミ婆さんの家での仕事を終えて帰宅した後の話だ。


彼はニコニコ笑顔のイエローを彼女の家にまで送り届けると、そのまま自宅へと帰るのではなく

ポケギア片手にロケット団解体の雑件をこなしながら、再び老婆の家へと戻っていた。


これは、居間で暖を取りながら老婆と青年のささいな冬の夜の語らいの一部だ。

ただそこで語られたことは全てが真実なのか。それがどうかは解らない。


なにせ、老婆も、青年もお互いのことを心の奥底から信じ切れていないからだ。

それでも話された言葉には意味があり、言動一致の目的となっていく・・・




青年の歩もうとしている道は・・・・・











PAS Chapter3 第31話(後編) 青年の目指す道、歩む道











 日はとっくに落ちて、夕暮れではなく、夜がすでに始まっている頃。

カントー地方でもややジョウト側に近いマサラやトキワシティでは

稀にヤミカラスやホーホーの姿を観測することができるが、対外はズバットたちが

バサバサと、静寂の闇夜を微弱な“ちょうおんぱ”を頼りに、飛び回るのだが

季節が季節の為、そうそう寒い冬の夜に飛び回るズバットの姿はなく

夜はひっそり、ポケモンたちの声や音はほとんど聞こえない・・・



「レッド君は、イエローちゃんと一緒にならないのぉ?」



やや薄暗い居間にあるゆったりと座れる一人がけのソファに、深く腰掛けた老婆は

お茶を一口飲むと、そう、青年に話を切り出した。



「昔の自分なら、もう少しがんばればできたかもしれません。」



対面するように置かれた、恐らく来客用であろう3人がけの高級感あふれるソファに

浅く腰掛けている青年は、目の前の木製のテーブルに置かれた茶菓子や茶には手をつけていない。

特に目ぼしいものがなかったとか、お茶がおいしくなさそうとか、そういう理由ではなさそうだ。



「でも、今のオレ程度の人間じゃあ・・・イエローと一緒にはなれないですけどね。」

「そうかしらねぇ。」



話で聞いていた青年の印象とは全く違う卑屈な言葉に、老婆は純粋な疑問を覚える。

だがその純粋な疑問をそのままぶつけるのではなく、自発的に青年に語らせるように

いかにも自分は、青年の心の全てを理解している、見切っているというような口調で言葉を返した。

外ではぴゅぅっと北風が吹く。




「いやぁ・・・今日、会ってみて、ようやく確信できたんですよ。」




やはり卑屈で自嘲的。なにがそうさせたのかは老婆には解らない。

きっと、相当自信を喪失させることがあったのだろう。だが“この手”の

意志の強く、諦めることをしない存在は、それを乗り越えたとき、大きく成長する

ことを老婆を自分の人生経験の中で知っていた。



「何を、確信したのかしらぁ。」



お年を召した方特有のゆっくりとして、柔らかい喋りで、そう聞くと

青年は、あきらめがこめられた、あまりにも切なすぎる笑顔をした。



「オレとアイツ・・・あんなにも釣り合わない存在だったんだなぁって・・・・・・。」






「昔・・・昔って言ってもほんの5年くらい前の話なんですけどね。」








夢のような幻想的な光景の中で、今日、自分にあったようなことが起きていた。

(自分にあったような事とは、イエローとの再会時の出来事である。)

しかし、その光景の中では自分はぴくりとも動けず、ただひたすら眠り続けていた気がする。

なぜどうして、眠り続けていたはずなのにその光景が見えたのかは解らないが

深い深い意識の中で、自分が描き出したその世界なら、自然と理解できたのだろうか。




「オレは、アイツに対して“天使”っていうか、“女神”っていうか・・・こう

   神々しくて、触れてはならない神秘のものを力強く感じたんです。」




そう感じたのは、実はつい最近というわけでもない。

本当に“女神”のような存在であると思ったのはこの夢のような幻想的な光景での出来事だ。




時は5年前・・・真ロケット団アサギシティ占拠事件・・・・・・

バトルタワー篭城時、強力なマインドコントロール下から解放された直後、

そうした張本人である“あの”老婆、キクコに背中からズブリといかれた後の話だ。





「実際、アイツのそういう力に触れて・・・神秘を体験したみたいで・・・・・・

   致命傷が、治ってたんです・・・腹に刃物が刺さったんですけどね。」





自分自信の出血の具合をよく覚えているし、自然とできた死への覚悟の末、イエローにキメリアンの

解放方法を、“ハードプラント”の新たな可能性を伝えたことを鮮明に覚えている。



そう、あの時、自分は間違いなく死んでいる・・・・・



それがあの夢のような幻想的な光景の中での、不思議な体験の後に目を覚ますと

全身の傷は完全に癒され、失血もせす、ポケモンたちの疲弊も取り除かれた。

そしてその後、長い昏睡状態に陥るイエロー・・・何があったのかは解らない。

だが、間違いなく彼女の“力”が作用したのだと直感していた。




「なのに・・・なんで・・・・・・」




頷きながら聞き入っていた老婆は、言葉に詰まった青年の表情をチラリと見ると

青年の切なさと悲しさに溢れる、隠す笑顔がはっきりと映った。




「・・・自分のことを捨てた男に対して、あんなに優しくできるのかなぁって。」




老婆は薄々、彼女の想いに気付いているのでその言葉を聞いて、自然とお互いに可哀相。

という感情が湧いてきた。しかし感情は湧くだけで、詳しい事情は知らないので何も言えない。

もしかしたら、彼や彼女はまだ話していない大きな蟠りがあるのかも知れない。もしそうなら

迂闊にお互いの距離を縮めないほうがいい。問題を解決しないままで進むということがどれだけ

危険で、未来に大きな陰りと、思わぬ地雷を招くのかを、長い人生経験で知っているからだ。

それに少なくとも、2人にある蟠りの1つはよく知っている。相談を受けたのも、助言したのも自分だ。





「・・・根っからそういうコなのよぉ。」

「まぁ・・・そうなんでしょうけどね・・・・・・」





そう言われてしまったら身も蓋も無いのだが・・・しかし、乙女心に鈍い。とか、そういう問題ではなく

全体的な“流れ”への違和感を青年は感じていた。不快ではないのだが、突き詰めていけば不快・・・

何か、そうなるように仕向けられている、そう感じるのだ。



要は・・・彼女のそういう性格や気質が“旨すぎる”。自分に不利益を与えない・・・・・・

あくまでも直感的、第六感的な、どうあがいても他人には理解されない、自分自身にだけ存在する

確かな感覚が、そう告げているだけで、何の根拠も無ければ、イエローを疑うわけでもないが

なぜかそう感じてしまうのだ。











「ふぅ。」



ワザとらしい軽いため息を吐いて、今までの重い雰囲気を一気に解放すると、場の空気は一気に軽くなった。

こういう雰囲気をあまり好まないのが彼だ。そう老婆は話を聞いて知っている。




「釣り合わないなら、釣り合うような男になるまでだけど・・・・・・う〜ん」




今までのあの切なさと悲しみに溢れていた苦しそうな表情は一気に消えて。

青年の表情には軽くて明るい、独特の前向き思考がにじみ出た表情と声になっている。

本当に先ほどあんなにシリアスことを話していた青年と、同一人物なのかと疑ってしまうほど

この切り替えの速さは凄まじいものがある。・・・普通、そういう人間との会話は疲れることが

あるのだが、この青年の場合、その疲れを感じさせない。というよりもその、彼のキャラクターが

それを許してしまっているのだ。 多くの場合はなんだかんだで言い包められてしまうが、

逆にそれは彼の優しさの現われなのかもしれない。




「自信がないのぉ?」




雰囲気に感化された老婆も、その場に合ったノリのよい言葉が自然と出てきた。




「引きずり降ろしたことはあっても、自分が神になることは流石にできないかなって。」




この引きずり降ろしたというのは、“円卓の騎士”の最強の万が一の保険、アルトのことである。

(※アルトの詳細は容量の都合上省かせていただきます。人物+用語辞典で確認を)

ブラックは2人の“神”に触れた人間でり、そして“神”を知る人間である。だからこそ、この言葉。




「流石にあの領域は・・・先天的なものがないと、ちょっと辛いですからね。」




“神”と対峙した青年からしてみれば、“神”の存在がどれだけ凄まじいのかをしっている。

自分の最も得意とするポケモンバトルで、“決闘”に敗北。“殺し合い”にしたって

最後の最後、一際、人道を外れた行為をしなければ勝利は不可能だった。もしもあの時、

アルトが自分と同じようなことをしていたら・・・[エクスカリバー]が直撃していたら・・・

今こうして、この老婆と語らうことも無かっただろう。



“戦う者”・・・“戦闘のプロ”の自分が、全力でも勝利不可能・・・“先天的な才能の差”。

言い換えれば“身分差”のようなものを彼はイエローから感じ取っているのだ。さらには

自分がポケモンで多くの人を傷つけ、殺めたこと。これがそういう考えに拍車をかけている。







「というか・・・なりたくない。“神”になったら、それ以上、上を目指せなくりますから。」






青年はハハハッと目を細めて笑った。彼にとっての心の奥底からの本音なのか、それとも

場を和ませる言葉なのかは定かではないが、この言葉を聴いた老婆は、奇妙なデジャブを覚えた。



力強く、上を目指す向上心の中に、果て無き夢を追いかける意思を秘めた言葉。

希望や野望に向けて、まっすぐと歩むことをやめない直線的なベクトルの言葉。



かつて、希望を託した存在も同じようなことを言っていた・・・












 「それにちょっと、いろいろありまして。悟っちゃたんですよね・・・ホント、いろいろ」


また再び言葉の温度が下がり、心の奥底のものを吐き出すような真剣な雰囲気になった。

口には出さないようにしていたが、「いろいろ」の後に続く言葉が、老婆には想像がついた。

隠し切れない感情が表情にうっすらと出てきていて、老婆をそれを指摘しようと思ったが

「いろいろあった」らしいのでそれは言わないでおくことにした。きっと、口に出さないその一言を

言ってしまったら、多分、今の自分を維持できないのかもしれない。




「だから、こんな状態で彼女と対等な立場にたって、どうこうするとかはイエローに申し訳ない、

   ・・・いや、失礼かなって。」




青年の考えがなぜどうしてそうなったのかは、「いろいろあった」が全て鍵を握っているのだが・・・

やはりそこには触れられない。ただ青年の挙動には変化があり、先ほどから何度もグローブの右手の甲を

撫で回すようなしぐさを取り始めた。



「それでも、自分のイエローへの想いは・・・心を支えてくれた。」



青年の視線は老婆を捉えているのではなく、変な方向をまっすぐ見ている。

それは心の奥底のものを、他人に告白する気恥ずかしさがそうさせるのだ。




「だから、オレはアイツに・・・せめて想わせてもらった分と 想ってもらった分の

     せめて“恩返し”をしないとなって・・・」


「随分と責任感じてるのねぇ。」




今の自分の腕は、彼女を軽々しく抱きしめられるほど綺麗じゃない。

現実という名の汚れ、信じてくれていた人を裏切った裏切りの汚れ、多くの命を奪った人殺しの汚れ・・・。

彼女を想うのに不便を感じるこの腕は、間違いなく自分の腕で、

世界に一対しか存在しない、自分自身“統べる者”、そして“戦う者”としての腕。



それでもその両腕を捨ててでも彼女を想えと言われれば、きっと両腕ぐらい捨てられる覚悟はある。

それだけ彼女から“与えられた”ものは大きく、永遠に返しきれないほど莫大なのだ。

・・・しかし、責任を感じているのは彼女のことだけではない。右手の傷もそう。

さらには今、形式上同棲している三白眼の彼女のこともそうだろう。




「難しく考えすぎなんじゃなぁい? もっと気楽に、自分が楽な道を歩んでもいいと思うわよぉ?」

「・・・いや・・・それじゃダメ、なんです。」




今までは多少は柔らかく、気恥ずかしさの混じった優しい笑みを浮かべていた青年だったが

その表情を真剣なものへと変えて、奥のものを吐き出すように必死に話し始めた。




「今まで散々、やりたい放題やってきたんだから、今更“想っていい”とも“想われる”とも思っていません。」




そういい終えてから苦笑いを浮かべて「まぁ、これで“想われて”いたら奇跡ですけどね。」と

青年は付け加えた。今までのことを思い出してみれば確かにそうだろう。

老婆はそれを少し気まずそうに聞き流した。




「信仰の対象になるんじゃないかってくらい、アイツ・・・いや、彼女は凄くて・・・・・・」

「引け目を感じてるってことぉ?」




少々、話題がループしかかった時、ブラックは1つ心の扉を開いた。

またそこから心の奥になる真実が断片的に語りだされる・・・




「引け目っていうよりも・・・尊敬が超越しちゃってる感じかな。」



「尊敬・・・ねぇ。」



「“女神”ってイメージを持ってるけど、“人”としてあそこまで尊敬できるのは彼女くらいだと思うんです。」




裏切って、傷つけて、捨てて、振り回して。

千年の恋も冷める行為をコレだけやられて、ああいう風に優しくできる。

立場的に親友たち以上にダメージを負ったはずなのに、なぜ・・・。

きっとそれは想い云々ではなく、彼女の人間が非常にできている証拠だ。そうブラックは解釈している。




「尊敬の対象を、自分なんかで汚したくない・・・かなって。」




ブラックの中では今確実に、イエローという存在への認識が変化を始めている。

もの凄く大切な存在であることには今も昔も変わりはないのだろうが、彼女の存在が

そしてその価値が理解できてきたのだ。本当に今更になって。

昔はその価値が解らずに、普通の女の子として接することができたのだが、

今、多くの経験をつんで(「いろいろあった」等)やっと理解できたのだ。



彼女に直接的な“恩返し”をするには、今はまだ彼女の価値に相応しくなれていない。

それに、精神崩壊という限られた運命と、もう1つの運命までのタイムリミットは確実に迫っている。

その間にどこまでできるかはわからない。けれど、そこまでにあの手この手で全力を尽くすのが

彼女への“恩返し”となるのではないだろうか・・・


「じゃああなたは、その“女神”様に何を望むのぉ? 神様ってのは元々、何かを望む為の存在でしょう?」


老婆の洒落た質問に、ブラックは少し考えてから言葉を話した。


「・・・“罰”っていうか、“裁き”。そういう名前の決着をつけるきっかけ・・・かなぁ?」


何とかひねり出した洒落た問いかけに対する洒落た答え。
彼なりにがんばってみたが、言葉の最後が疑問系になっているあたり、答えとしての
自信は無いようだが、意味として、言葉が伝達したい本当の意味にはなっている。



「・・・本当は、そういうきっかけを切り出すのは男側からなんだけど・・・・・

  それ以前に、想われてもいない訳だから、だからまずは罵られて、嫌われる

   そういうところからが始めてみようかなって。」


そう話した直後、青年は「これは、イエローには内緒で」と付け加えた。

申し訳なさそうな目を細めた笑いを浮かべて、両手を合掌して頼み込む様子に

老婆もとりあえずそれを心に刻み込んだ。




「イエローの為なのか、それとも自分の為なのか。自分でもまだはっきりしないけど・・・

  ・・・“これから”を見れば、最良の選択だと思うんです。」




彼は知っている、身をもって知っている。

人の“想い”の力がどれだけ強力なものかを。

心を癒し、身体をも癒すその凄まじき力・・・しかし、“想い”が不完全燃焼したりすると

残ったカスは、まるで原子力発電で使用された放射性物質のように

心のどこかで残り続けて、毒を、後悔という名の猛毒を残し続ける・・・と。



グローブの右手が疼く。

だからこそ、“想い”は残さない、そして残させない。

“想い”とは、何も“恋”だけではない。

それは“愛”であり、“情”であり、“憎”であり、“尊”である。

それらを根絶することによって“想い”を断ち切る・・・“想い”を断ち切るには

ありったけの“不安”、そして“抹消”が一番いい。・・・そう理屈では解っている。




「・・・っ!」



なぜかズキズキと右手が痛んだ。










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