AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する



決着、双子姉妹戦・・・イレギュラーアタックで完全な連携を崩せ!!


絶望と薄黒い雨雲に包まれ始めたここ1番道路。

双子姉妹の強大な力の前にミカンは倒れた・・・。

怒りの感情と共に反撃を仕掛けるシルバーだったが

あえなく、返り討ちにあってしまった・・・



ボロボロの身体とポケモンたち。

それでも何とか編み出した双子姉妹攻略法。

[光の剣]を封じ、イレギュラーアタックを仕掛けられるその一瞬・・・

完全な連携からそのチャンスを奪い取れるのか?

それとも、ここで散るのか?



最後に遮られるのは、希望の光か、絶望の光か・・・・・・














 PAS Chapter3 第20話(前編) 光を遮るその一瞬・・・















薄黒い雨雲によって覆い尽くされる空。その雲量・・・9。

もう殆ど曇りという天気であると判定を下しても何ら間違いはないだろう。

雨雲によって太陽の光は遮られ、辺りの気温は下がり、そして薄暗くなる・・・

この時期にこうして太陽に光が遮られて気温が下がると、もう、冬のような寒さになってしまう。

そんな冬のように寒くなっていた晩秋のここ1番道路。

日光を浴びていたので多少は温かい温度を保ったままの地面にはいつくばる2人の人間・・・

この2人、実は恋人同士であり、しかもお互いにある存在たちの手によって傷つけられているため、衣服がボロボロである。

その存在たちというのが、この2人の様子を冷めた目線と薄ら笑いで見つめている双子の姉妹。


姉のベージュと、妹のセピア・・・


そのあまりにも強大な戦闘力の前に傷つけられた恋人たちと、1人の青年。


シルバーとミカン、そしてゴールド・・・


一方的な殺戮まがいを乗り越えて、シルバーは編み出した策を講じる瞬間を待ち続けていた・・・













(奴らのゴーストポケモン、そして同時型連携を打ち破るには・・・)


大地にうつ伏せているシルバーはその一瞬を待つ為に、よろよろと立ち上がると双子姉妹の方を向いた。

自分の後ろでは先程自分の赤い色違いのギャラドスの放った“
たつまき”が

恋人のミカンに向かって突き進んでいる・・・普通なら助けるところだが、彼女の力強い瞳を信じて

シルバーは双子姉妹とにらみ合い始めた・・・・・・



「「さぁ、私たちと一緒に楽しみましょう。」」

「あぁ・・・思う存分楽しませてやる!!」



シルバーは後ろを振り向くことなく、赤いギャラドスと、そしてボールからマニューラを呼び出すと

彼女たちに対してダブルバトルでの真っ向勝負を挑むつもりのようだ。

あのゲンガーたちが、再びニヤニヤと独特の笑顔をを浮かべると、シルバーたちへの交戦意識を見せ付けた。



「「さぁ、砕け!!」」



2匹のゲンガーが俊敏な動きで、左右から素早く駆け上がってくる。

ここからしばらく続く、このゲンガーたちの脅威の連携攻撃をご覧頂こう。


「守りを固めろ!!」


シルバーが必死に対応をポケモンたちに命ずる。しかし、これもどこまで意味があるものか・・・

図体のでかい赤いギャラドスにまず、右側から上がってきたセピアのゲンガーが纏わりつくと

左側から上がってきたベージュのゲンガーは、マニューラに攻撃を仕掛けると“見せかけて”

真横に大きく跳躍すると、移動中既に完成させていた暗黒のエネルギー球を取り出す。




「「“
シャドーボール”!!」」




姉妹の声が完璧に重なる。

同時にゲンガーたちはギャラドスにエネルギー球を投げつける。

直撃と同時に6メートルを超す体長をしたギャラドスが狂ったように暴れる。

脳髄を搾り出されるような、視界が捻じ曲がりぐにゃぐにゃの世界に入り込んだような

そんな想像しただけで気が狂いそうな精神攻撃を受けて、ギャラドスは悶え暴れる。



「クッ・・・!」



暴れるギャラドスから距離をとり、シルバーはマニューラと共に守りを固める。

ギャラドスならある程度は抵抗が出来ると思っていたが、あのゲンガーたちの前ではどうしようもない。

かみつく”あたりで反撃を試みたいところなのだが・・・あの動きのよさでは捉えることはできないだろう。

様子を見ながら、次の一手を考えるシルバー、だがそんな行動をゲンガーと双子姉妹は見逃さない。



「楽しませてくれるのでは」
「なかったのですか?」



ゲンガーたちは瞳をギラリと輝かせると、2匹とも拳に電気を帯電させた。

帯電した拳を相手に打ちつけ、打撃のダメージと電撃を食らわせる技・・・“
かみなりパンチ

悶え暴れるギャラドスにその拳を2匹同時に強烈に打ち込む。

直撃と同時にバチバチバチとまるでスタンガンのような音がし、ギャラドスに電撃を加える。

ちなみに、ここでギャラドスは戦闘不能となるのだが、ここまでにかかった時間はわずかに15秒。

無論、この15秒に移動時間が含まれていることも忘れないでもらいたい。

ギャラドスを一瞬で戦闘不能にしたゲンガーたちは、ほぼ硬直状態に近いシルバーとマニューラの元へと駆ける!!




「クッ・・・マニューラ、“
こごえるかぜ”!!」




まとめて敵を攻撃できる技である“
こごえるかぜ”でゲンガーたちを同時に相手をするマニューラ。

ダメージを与える技と言うよりも、相手の速い動きを封じる技である“
こごえるかぜ”。

その効果どおりゲンガーたちは素早い動きを寒さによって封じられて、地面に両足をつけてギュッと身体を縮ませた。

しかし・・・・・・




「てっきり“
ふぶき”でくると思いましたが」
「その技なら、逆に好都合です」




双子姉妹の言葉にハッとしたシルバーはゲンガーたちを凝視する。

よく見ても、ゲンガーたちは身を縮ませているだけだ・・・だが、確実に急所への被害は避けているようで

単純に身を縮ませているというよりも、固く防御を固めているようにも見える。



「この防御の時間で」
「意識と集中を高め」



全く動じないゲンガーたちに、マニューラは“
こごえるかぜ”を発生させてぶつけ続ける。

シルバーはこの時点で相当な嫌な予感をしていたが、どうにも対処する術がなさそうだ。

守りを固めきったあのゲンガーたちに必殺の攻撃を当てることは難しいだろう。

それに、当たったとしても決定的なダメージを期待することはできない。



「必殺の拳で」
「放つのです」



ゲンガーたちから遠く離れた場所で、静かに言葉を呟き続ける双子姉妹。

マニューラは動じないゲンガーたちの不気味さに動くに動けず、攻め手を欠く。

目の前のゲンガーたちは殻に篭った貝の状態・・・こちらのいかなる攻撃も大した結果に繋がらない。

シルバーは舌打ちすると、マニューラに大技発動の準備態勢をとらせる。

マニューラの身体から、黒い「」のオーラは漂い始めた・・・





「「“
きあいパンチ”!!!」」





ゲンガーたちを視界から見失った瞬間、一番の弱点である「
」の一撃を受けてマニューラの身体は大きく宙を舞った。

舞った身体を見送るシルバーの驚愕の瞳・・・

しかしその瞳も腹部への強烈な2つの同時打撃と共にどこかへと飛んだ。

呻き声と共に再びガクリと大地に倒れるシルバー。

2匹のゲンガーは怪しく笑みを主人たちと共に浮かべ続けた・・・
















(ここは私の新しい力で・・・)


目の前に迫る危険に焦りながらも、気をしっかりもってうつ伏せの状態でミカンは考える。

ボロボロの身体にムチ打って何とか腕を動かし、ボールホルダーに手を伸ばす。

迫りくる“
たつまき”をどうにかしなくては、自分は目の前に迫る“たつまき”に巻き込まれて大地に叩きつけられるだろう。

今の状態で地面に叩きつけられれば、大怪我は必至。下手をすれば、自らの子を見ることが出来なくなる。

手に掴もうとしたボールには、美しい白い身体をしたポケモンが入っている。

このポケモンは、彼女のしあわせポケモンが更なる力を得た姿なのだが・・・






グオォォォォォォォーーーーーー!!!






そのポケモンをボールから呼び出そうとした瞬間、再び1番道路に咆哮が響き渡る。

咆哮自体はとても弱々しいのに、それに宿る意思は強い。

宿る意思はもちろん、主人を守りたいという意思・・・



「ハガネちゃん!?」



咆哮と同時に壁となった巨体は、強烈な“
たつまき”をその身に受けた。

主人に迫る危機に、ハガネールのハガネちゃんは最後の力を振り絞り自らを盾にして主人を守ったのだ。

自分が見世物や研究材料にならないように守ってくれた大切な主人。

その恩義を返すにはこういう場面以外でいつなのか・・・

互いに守り守られの関係を構築していき、お互いの信頼を深めること。

これがポケモンとそのトレーナーとの正しき絆。

純粋に主人を信じるポケモンたちだからこそ、こうして大切な主人を守る。

ハガネちゃんは“
たつまき”を全身で受け止めると、今度こそ力無く倒れた。





もう、起き上がることは無いだろう・・・・・・









「そんな・・・ハガネちゃん・・・・・・。」





ミカンは呆然とハガネちゃんを脱力して見つめ続けた・・・



















 (これを見せられて、立ち上がらないわけには・・・)

視界の中で起こった感動のようで悲しみの瞬間を見てシルバーは心で呟いた。

ミカンは完全に脱力してしまい、目の前で消えた命の灯火をただただ呆然と見つめている・・・

しかしこれで結果的にミカンへの攻撃は防がれたことを考えれば、これで1つ不安の種は消えたことにはなる。

後はあの双子姉妹を倒すことだけに集中すればよい・・・

シルバーはヨロヨロとだが、立ち上がるとマニューラを呼び戻す。

常識的に考えれば戦闘不能になっている可能性が高いのだが、シルバーはマニューラとの付き合いが長いので

間違いなくマニューラが立って自分の元へとくることが解っていた。

すると、予想通り殆ど瀕死に近い状態だったが、マニューラはシルバーの元へとやってきた。

その状態は主人とほぼ一緒、どちらも肩で息をして必至の形相で双子姉妹たちを見つめる。



「しぶといですね・・・」
「流石の血統ということですか。」



いつの間にかゲンガーたちと共に、自分のほぼ目の前にまで近づいていた双子姉妹。

今の状態でなければ、ポケモンの力など使わずに直接殴りかかったことだろう。




「血は関係無い・・・オレがこうして戦えるのはオレ自身と、ポケモンたちの力だ!」




そう言い切ると同時に、シルバーはマニューラと共に、傷ついた身体にムチ打って大きく後ろに引いた。

今の状態で先程の場所にいれば、ゲンガーたちの拳で再び大地に倒れることになっただろう。

予想通りゲンガーたちがその後を追い、2匹同時に攻撃を仕掛けてくる。

それをマニューラが何とか爪の一撃と“
こごえるかぜ”で捌き、時に攻撃自体を回避し続ける。




(まだだ・・・もう少し耐えてくれ、マニューラ!!)




しばらく続く猛攻を捌かせてこう思うシルバーは正しい。

先程のような強烈な、いや、拳の一撃を再び受けることがあれば、もう敗北は必至だ。

一撃でもその身に受ければ敗北、そして・・・死。

こんな凄まじい危機に、シルバーはがぜん集中しやすい状態になっていた。

その為か、マニューラの動きは2匹のゲンガーたちに負けていない。

先程の“
きあいパンチ”の一撃以降、強烈な一撃も、また小さな崩しの攻撃さえも受け付けていない。

これはシルバーが集中したことにより、双子姉妹の重大な“あること”に気付いたからである・・・



(同時型連携のその攻めも守りも絶大・・・だが、応変能力に欠ける。)



ここまでは既に解っていたことである。

しかし、これが理解出来たからといって、ここまでしぶとく立ち回ることは不可能だ。

もっと決定的な何かにシルバーは気付いたのだ。




(だが、それ以前に・・・もっと大きな欠点が存在する!!)




同時型の大きな欠点・・・・・・それは攻め守り以前に、行動自体が単純な点である。




応変型や援護型と違い、同時型は繊細なコンビプレイをすることはまず出来ない。

なぜなら、同時型はコンビが同じ行動をすることでその効果を発揮する連携である。

どちらかが「A」をしながら、残ったほうが「B」をする。ということが出来ない・・・

そう、同時型には“攻める”か“守る”以外の選択肢が存在しない。

残り2つの連携にある“攻めながら守る”や“守りながら攻める”ことが出来ない。

その単純なプレイ故にその効果が凄まじいのだが、どうしてくるのかが予想さえつけば対処は可能だ。

攻めてくるのならば、ただひたすらに守備に回ればよい。

ただ、守備しきれたらの話なのだが・・・




「折角ですから、あなたの恋人に止めを刺してもらいましょう」
「フフフ・・・それはおもしろそうですね。」




小さな声で会話する2人、この言葉はシルバーにはもちろん届いていない。

ひたすら攻撃のタイミングを読み、攻撃の回避と捌きを続けるシルバーとマニューラに痺れを切らしたのか

双子姉妹は意味深な言葉でゲンガーたちを一旦自分たちの下へと戻した。

どうやらシルバーとマニューラは、攻撃を一時的とはいえ守備しきったようだ。

その集中は常人を軽く凌いでいることなど、容易に想像がつくだろう。

彼女たちはどこからともなく錠剤を1つ取り出すと、その錠剤をシルバーに見せ付けて「あの光を使うと」間接的に脅してきた。

・・・この行動後の“光撃”がもたらす結果はある程度は理解しているつもりだ。





「待っていたぞ、それでくる時をな・・・」





シルバーの言葉に、双子姉妹は疑問に近い感情で反応する。

彼の言葉を考えると、どうやら自分たちはこういう風に動くように仕向けられたようだ。

何か相当な策か、考えが無ければ、あの光“ウェポン”、[クラウ・ソラス]を自ら待つことはありえない。

ただでさえもその威力の恐怖は解っているはずだ。

普通ならば、2度目の発動を防ぐものではないだろうか?



「何か、考えでもあるみたいですね?」
「何もかも解らなくなってしまう前に、教えていただけますか?」



高圧的な口調と、前髪の後ろに隠れる瞳でシルバーにプレッシャーをかける双子姉妹。

シルバーはそんなプレッシャーなど全く気にせず、逆にこちらから向こうにプレッシャーをかける。

その雰囲気に、彼女たちはゴクリと唾を飲んだ。









「この“くろいメガネ”だ!!」










自信満々にシルバーは力強く宣言する。手の内を堂々と公開してきたことに双子姉妹は驚く。

シルバーは上着のポケットから、悪そうな形状をした黒いそれを堂々と見せ付けるように高々と取り出した。

・・・これが彼の編み出した最も合理的かつ、この状況を一変させる策。

まず、「」タイプの技は「
」タイプに効果的なダメージを与えることが出来る。

そして“くろいメガネ”は、ポケモンに持たせて初めてその効果を発揮する。

その効果とは、自然と着用したポケモンの心に影響して、心に眠る「」の力を解放しやすくするのである。

心に眠る「」を開放されると、ポケモンたちは残虐性がいくらか増して「」タイプの攻撃は威力を増す・・・

さらに、“くろいメガネ”にはサングラスと同等の遮光能力がある。これであの光を遮って、あの効果から逃れようというのだ。

道具の副産物を上手く利用してのなかなかの策である・・・。





「「手の内を明かすとは・・・相当な自信のようですね??」」





明らかに嘲笑をこらえている双子姉妹。

その笑いからは“頭がおかしくなったか”。と、蔑みの感情があることは間違いない。

それもそのはず、サングラス程度の遮光能力で[クラウ・ソラス]の光を防ぐと言っているのだから。

だが策の効果云々以前に、手の内を晒すというのも“おかしな”話だ。

彼女たちはシルバーに疑いの視線をぶつけたが、シルバーは動じず、その策に全ての策を賭けているように思える。

根拠として、シルバーが極度の緊張、集中状態であるようで、瞳に力が込められ過ぎて目が血走っている。





「これで終わるから、問題は一切無い。」





嘲笑を力強い意思の言葉で跳ね返すと、シルバーはマニューラに“くろいメガネ”を投げ渡した。

それを上手く受け取ったマニューラは、チャキッと気取って着用した。

その姿は滑稽のようで、案外似合う。これもマニューラが「」タイプのポケモンだからだろうか。

マニューラはあの光を放とうとする2匹のゲンガーとの間合いを中距離程度に詰めた・・・



「甘く見られたものですね・・・」
「ならば、[光の剣]をもう一度受けていただきましょう・・・」



嘲笑されても、無駄な策を仕掛けてくるシルバーに怒りを覚えたのだろうか。

先程までの口調よりも遥かに冷たい口調で、彼女たちは呟いた。

いよいよ、“光撃”が繰り出される・・・・・・








「「 さ ぁ 、 ヌ ァ ザ の [ 光 の 剣 ] を 抜 刀 し ま し ょ う ・ ・ ・ 」」









再びあの強力な“光撃”が発動する言葉が唱えられた。

2匹のゲンガーたちは双子姉妹からそれぞれ錠剤を受け取り口に含むと、全身から禍々しいオーラを放ち始める。



来る・・・



あの狂気の光、トレーナーをも“こんらん”状態に陥らせる狂気の光。

狂気の光に支配されれば、今度の自分は一体何をしてしまうのか。

不安と恐怖、そして緊張が心臓を締めつけるように痛みつける・・・



「「フフフ・・・」」



既に勝ち誇りの表情を浮かべる双子姉妹。対して、シルバーは・・・・・・

いや、シルバーも彼女たちと同じように勝ち誇りの表情を浮かべている。

この策への絶対の自信があるのだろう。シルバーは「光の剣」が抜刀される瞬間を待った。

その時である・・・・・

















「背中がガラ空きだぁッ!!!」












突如、彼女たちの背後で聞こえた騒がしい声。

シルバーだけが口元をニヤリとさせて、銀色の瞳を輝かせる。





「「・・・そっちで?!」」





その声に、双子姉妹と、そして集中状態にあったゲンガーたちは集中を解いてそちらに振り向いた。

4つの視線が向いた先、そこにはゴーグルを首にかけた前髪に特徴のある青年が堂々と立っている。

驚愕の表情を浮かべる彼女たちの心境は、ゴールドが生きていた、または戦闘可能な状態であったことに対しての驚きよりも

シルバーにしてやられたことに対しての驚きが最も大きかった。




「頼むぞ、ゴールド!!」




シルバーが吼えた。

今まで経験で補ってきた応変能力を超える出来事が今、彼女たちの背後で確かに起こった。

シルバー絶対の自信の策を真っ向から打ち破ろうとした彼女たちだったが、どうやらしてやられたようだ。

背後のあの青年の状態を既に確認していたシルバーは今の今まで、こちらに全ての意識を集中させ、

さらには最後の切り札としていた“くろいメガネ”での“ウェポン”破りをおとりに使ったのだ。

この状況下、いつ命を奪われるか、または下手をすれば恋人の命を奪いかねなかった状況で

ここまで豪胆な駆け引きをやってのけたシルバー。

やはり、その血統の力を疑わずにはいられない・・・



「うりゃあぁぁぁ!!!」



“キュー”で撃ち出されたモンスターボールには強烈なドライブがかかっており、地面を勢いよく加速して進んでいく。

そして加速したボールの開閉スイッチは、地面に落ちていた小石に激突してカチッと押された。

激突と同時にボールは回転しながら跳ね上がると、中からボールと同じ方向に回転しているバクフーンのバクたろうが飛び出した!!




「イレギュラー・アタック・・・完成だぜ?」




バクたろうは回転状態のまま全身に火炎を纏う“
かえんぐるま”状態になると、勢いよく双子姉妹たち目掛けて突っ込んでいく・・・

その姿、その光景はまるで、隕石が大気圏で燃えながら落ちてくるような様子。

“わざ”としての形は殆ど留めていない状態で、無理矢理攻撃を放ったような様子・・・どうやら相当無理をさせているようだ。

地面に火炎を纏った身体を強烈に打ち付けるようにして、爆炎を周囲に発散させる。・・・崩れた形だが、威力は申し分ない。



「「チッ・・・!!」」



思わず舌打ちをして攻撃を回避する双子姉妹たち。爆炎が彼女たちとゲンガーたちを怯ませる。

バクたろうの執念の、そして捨て身の一撃をどうにか回避した双子姉妹と、彼女たちのゲンガーたち。

彼女たち、そしてゲンガーたちの連携パターンが同時型である以上、どちらかが回避をすれば、もう片方も回避する。

故に反撃が確実に遅れる・・・まぁ、その遅れも常人からしてみればほんの一瞬の話なのだが。





「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」





シルバーは感情を開放し、思いのままに叫び、マニューラに意思を伝えた




・・・この一瞬、[光の剣]を抜刀する為に集中し硬直するこの一瞬への不意打ち・・・




予想通り応変能力に欠ける彼女たちの同時型コンビネーションは崩れ、全てが無防備な一瞬が作り出された。

彼女たちは固い殻を開けたままにした貝・・・完全無防備、弱点さらけ出しの状態に等しい。

シルバーの叫びから意思を感じ取ったマニューラは、自身の「」の力を両腕のするどい爪に集中させる。

すると、するどい爪が黒いオーラに包まれ始めた・・・・・・










「マニューラ、“あくのはどう”!!!」










シルバーの銀色の瞳が輝くと同時に、マニューラは爪をクロスさせた状態からX字に宙を切ると

そのするどい爪から「」の力が宙を伝い、空間に波動を作りながら完全に意識を外している敵たちに向けて放った。

空間を伝達していく「」の力が双子姉妹と、ゲンガーたちの身体に強烈に打ち付けられると

ゲンガーたちと共に双子姉妹の身体は衝撃によってぶっ飛ばされると

彼らから離れた場所で1番道路の地面に崩れるようにゲンガーたちと共に倒れた・・・





「勝った・・・」





シルバーは荒々しくなっている息を整えながら呟いた。

元々「」の素養があるマニューラの強烈な攻撃に加えて、“くろいメガネ”でさらにその「」の力を増幅。

加えて「
」タイプは「」の力が弱点であることを考えれば、この結果は当然のことである。

あながちシルバーの最後の切り札としていた策はこうして効果がしっかりと現れていることを考えると

ゴールドの一撃が無かったとしても、自分1人でどうにかしようとしていたことが伺える。

一見、ゴールドとの連携で倒したのかと思うが、実際の彼らはやはりそういう関係ではないようだ・・・




「ならよ、“形式”だけそうすればいい。主体は個人戦、これなら大丈夫だろ。」




ゴールドのこの言葉が全てを物語っているのだ。











「へへへ・・・流石にヤバかったな。」
「・・・そうだな。」





2人ともよろよろの状態で互いに笑いあう。

大きな安心に襲われてそのまま気持ちの悪い笑い声を上げ続けた。

























「フフフ・・・全く、私たちをここまで追い詰めるなんて・・・」
「・・・久しぶりに、狂気が滾ってきてしまいした・・・フフフ」


天に向かって2人は呟くと、ビシッと跳ね起きてシルバーとゴールドに視線を移す。

今まで前髪の後ろに隠れていた双子姉妹の瞳が、前髪の後ろでギラギラと怪しい光を浮かべて輝きだした。

その瞳のギラつき、まるで飢えた獣のように・・・・滾りに滾った狂気が姉妹の呼吸を荒くさせる。



「・・・!」



その全身から溢れ出る狂気は強烈な存在感へと変化し

彼女たちに背を向けていたシルバーとゴールドの2人は迫りくる存在感の方へと視線を移した。

歩いているはずなのに、そのスピードはまるで走っているようである。

そんな強烈な存在が不気味の極みである薄ら笑いを浮かべながらこちらへと迫ってくる。



「クソッ!! しぶといんだよ!!!」



ゴールドはヨロヨロの身体でだが、強気にキューを向けて抵抗の意思をアピールする。

対してシルバーは双子姉妹のその雰囲気、そしてオーラにかなりの狂気と危険性を感じ取っていた。






「「こうするのは、あまり好きじゃ無いのですが・・・」」






人の動きではない。

一瞬のうちにシルバーとゴールドの目の前に移動すると、固く握られた拳が打ち込まれる。






ボキッ






拳が入ったとき、ミシッではなくボキッと直接的な音が聞こえた。

その威力は女とは思えない。

言葉と同時に2人の鳩尾に突き刺さるように入った拳。



「かはっ・・・!」「うっ・・・!」



痛みで呼吸が止まった。というよりも呼吸が出来ない。

身体を支えておく力が出ない。そして胸が以上に熱くて痛い。そして苦しい。

ポケモンの連携だけでなく、トレーナー自身が同時型の連携をしているので

彼女たちの拳が繰り出され直撃し、シルバーとゴールドに同時に呻き声を上げさせた。



「そう簡単に死なないでくださいね?」
「遊べない玩具じゃあ、がっかりですから。」



一撃一撃が重いと言うよりも、これはもう単純に痛い以外のなんでもない。

とにかく固くディフェンスを固めていくシルバーとゴールドだが

そのディフェンスの上に、またはディフェンスの間に、拳が強烈に、冷酷に打ち込まれる。



「つぅ・・・」「やばっ・・・」



思わず2人は声を上げる。ディフェンスが速さにも、威力にも全く追いついていない。

次第に脚も狙われるようになると、骨が折れたような痛みを覚えるローキックを受けた瞬間

ふらっと2人の体勢は同時に崩れて、双子姉妹から強烈なハイキックの一撃をもろに側頭部にくらうと、そのままフラッと地面に倒れた。








「まぁ、殺しはしませんよ。」
「だってあなたたちは・・・私たちの計画で最も重要な存在ですから。」








倒れたシルバーとゴールドの上に馬乗りになると、俗に言うマウントポジションの状態になる。

こうなってしまうと、後に待っているのは降り注ぐ拳の雨だけだ・・・

顔面を何度も何度も殴られて鮮血が舞う。

切れた唇と口内からはドクドクと血が流れ続ける。

この時既にシルバーたちは意識を手放しかかっていた・・・



「もっと強くなってくださいね?」
「せめて、ブラックを殺せるくらいにはね?」



無抵抗の状態になったシルバーとゴールドに、彼女たちは容赦なく攻撃を、いや暴力を続ける。

顔面だけでなく、胸に肘を落としたり、脳天に一撃を加えたり、後頭部を地面に打ち付けてみたり・・・

その行動の異常性と危険性、そして彼女たちの狂気はあまりにも人道を外れすぎている。









「あはははははは!!!」
「あはははははは!!!」










狂ったような高笑いを浮かべるベージュとセピア。

真っ赤に染まった両手をペロリと舐めると、再び鮮血を欲するように拳を打ち続ける・・・



打、打、打・・・



ギラギラの瞳に映る2人の姿は血まみれのぐちゃぐちゃ。もう、呼吸も弱くなっている。

意識を手放した2人は地面にバタリとうつ伏せにされると動かなくなった。

勝負に勝って死合に負けた。

光は確かに遮られた。

そういうところであろうか・・・・・・


















 薄黒い雨雲が天を覆いつくし、今にも雨を降らそうとしている。

いつしかその雲量は9から10へ。天気は晴れから曇りへと変わった。

双子姉妹だけが空色にあわせて薄暗くなってきた1番道路で立っている戦場の跡。

地面に倒れる3人と彼らのポケモンたち。特にシルバーとゴールドは見るに耐えない状態だ。



「お待ちしておりました。」「お待ちしておりました。」



唐傘を差し、シックな紺の甚平を着用した男がやってきた。

この服装、よくよく思い出せばあの時、双子姉妹が呼びに行っていた男である。

薄っすらと青い髪と、未だ細められた目。そして雪駄・・・

この時期にしてはどう考えても寒い格好、というよりもコレは普通、真夏にする格好だ。

・・・しかしこの男、一切寒そうなそぶりは見せない。いや、“寒くない”のだろう。



「相変わらず無口な方ですね。」
「でも、その方ががクールに見えてカッコいいですかね。」



両手の鮮血をハンカチでふき取りながら、彼女たちは青年と話す。

青年はそんな彼女たちの手の動きは見ているのだが、どうにも話のほうには興味が無いようだ。


「そういえば・・・」


何か思い出したように、ベージュが話す。

その間、その青年は戦場跡をじっくりと見つめていた。




「あなたがいらっしゃったということは・・・」
「一雨、降りますわね・・・」




彼女たちも女性、そして人間には変わりない、雨に濡れることを嫌がるのは当然のこと。

双子姉妹は青年に一礼すると、ボールから新たなゲンガーを呼び出して闇と共にどこかへと消えた。




「・・・・・・。」




それを無言で見送る青年、肌寒い北風が吹くと薄っすらと青い髪が少し風になびく。



開かれた両目。



瞳の色は美しき水の青・・・いや、その瞳の色は水そのもののようだ。

甚平の下、背中の竜の彫り物が疼くと、空からパラパラと雨が降り出した。

唐傘が雨を受けとめて辺りは冷たく、寒く、そして切なく、悲しく・・・

負の感情に満ちた1番道路を青年は進む。




青年の名は・・・“激流”のアルトラマリン・・・


激流のアルトラマリン、いよいよマサラへと向かう・・・・・・








○シルバー&ゴールドVSベージュ&セピア●
決まり手・・・バクたろう・“
かえんぐるま”→マニューラ・“あくのはどう






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