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激突、博愛の騎士VS戦場の統制者・・・しかし激闘は思わぬ展開に・・・


マサラタウンの青年の家の前で、とうとう彼らは出会った。


癒す者 イエロー 
博愛の騎士 ピンク 
そして、戦い、統べるブラック・・・。


彼らが出会ったのは偶然が必然か。

運命に導かれて、始まる戦い・・・・

戦いの中で昂る感情、爆発する感情。

そして溢れ出た感情が、激闘を思わぬ方向へと導いた・・・



3人の戦いの行方は・・・・・・












 PAS Chapter3 第19話(後編) 激闘の中で・・・













雲量は増え続けている。

晩秋の空に広がる薄黒い雲は、もうしばらくすれば雫をこぼし始めることだろう。

この季節の雨の冷たさは異常だ。あと少し冷たければ氷になっているような温度の水が降り注ぐのである。

そんな天気の下で、2人の男女が殺気だった状態で睨みあっている。





袖を捲った汚れた白いYシャツと黒いネクタイと黒いズボン、この格好をした黒髪の青年ブラックと


非常に動きやすい洒落た秋色の長袖の上着にすらっと長いデニムを着ている、目つきの怖い三白眼の女性だ。


そしてこの2人を・・・というよりも、ブラックの方を見つめているのが

ズタボロの衣服と身体の状態で、金髪ポニーテールの小柄な女性である。





一見すればこの3人の関係は全く見えてこないが、この3人はかなりの運命で結ばれた3人なのだ。

3人の内、今睨みあっている2人はその運命を理解しているが、残りの1人は理解していない。

だが、金髪ポニーテールの女性と、目つきの怖い女性は、どこか別の運命を感じ取っていた。




しかし・・・この3人は未だ、このめぐりあわせの運命の真実を誰一人として知ることは無かった・・・










「さて、さっさとアンタを始末しようかねぇ。」


早くも戦闘意思を・・・いや、殺し合いへの意思を見せる目つきの怖い三白眼の女性こと、ピンク。

その異様に鋭く、貫かれるような視線を受けても、ブラックは一切臆することはなく

むしろ、その視線にあわせて、その視線を潰すような視線を向ける。

ぶつかり合う視線・・・どちらも引く気は一切無い、自然と戦いの始まりは決まっていた・・・


「くたばれぇ!!」


既に場に呼び出されていたピンクのオオタチとペルシアンがブラックに向かって駆けて行くと

鋭い爪を立てて、2匹のポケモンが青年を引き裂こうと、飛び掛った!!


「下がってろ、イエロー!!」


ブラックは金髪ポニーテールの女性、イエローを片腕で庇うように後退させると、

開いた腕を腰のボールホルダーに回して、器用に2つのボールを掴み、飛び掛かってくるポケモンたち目掛けて投げつけた。


「そのまま応戦だ!!」


投げつけられたボールは飛び掛ってくるポケモンたちに直撃すると、直撃と同時に開閉スイッチがカチッと押される。

開閉スイッチが押されたため、ブラックの投げたボールからはポケモンが呼び出された・・・

呼び出されたポケモンは、ピカチュウのピカとニョロボンのニョロだ。



(ニョロすまない・・・コンディション的にキツイのは解るが、しばらく耐えてくれ・・・)



イエローを守りながら、ブラックはニョロを見ながら渋い表情を浮かべる。

ニョロは先程、ピンクと同じ“円卓の騎士”の鋼鉄のグレイのポケモンをほぼ単身で撃破したので

その疲労から言って、今こうして再び激しい戦いをさせるのはあまりよくない。

しかもニョロは、グレイとの一戦でグレイのハッサムから強烈な斬撃を受けており、疲労だけでなく、ダメージも蓄積されているだろう。

現にニョロはオオタチに応戦しているのだが、動くたびに背中や全身の切り傷から薄っすらと出血し、見ているだけで痛々しい。


「レッドさん、あの・・・ニョロは・・・」


心配そうにイエローがブラックのことをレッドと呼び、ニョロの傷について問う。

癒す者として、ニョロのあの傷はやはり見過ごせないものだったのだろう。


「解ってる・・・でも、お前は自分の安全だけ考えてろ。」


ブラックはイエローの方を向くわけでもなく、言葉だけを返す。

イエローはその顔をなんとか見ると、ブラックの瞳は明らかに漆黒の黒に心配の色が浮かんでおり

その瞳の色に、イエローはブラックが相当ニョロのことを心配していることがよく解った。


(だいぶしぶといな・・・一気に攻めたいところだが・・・・・)


ブラックはチッと舌打ちをすると、戦場とピンクの様子を見る。

ニョロとピカはピンクのオオタチとペルシアンと格闘戦にもつれ込み、打撃による攻撃が依然続いている。

ピンクは必死に声を上げて、ポケモンたちに命令を下して戦闘を続行しているが、まだまだ切り札を持っていそうな雰囲気だ。

“ウェポン”を持たざる騎士だが、やはり“円卓の騎士”・・・

先程戦ったグレイのように、ある程度精神が崩れているほうが楽といえば楽なのだが

何故か異様なまでの平常心を保ち続けているピンクに、予想外の消耗になるだろうと推測した。

現状の打破には、消耗の少なく、且つ効果的な戦闘をする必要がある・・・




(なら、突破口を作るか・・・)




ギッと瞳に力を込めると、冷静にピカをボールに戻し新たなボールを手に取った。

消耗を避け、ピンクとの戦闘に勝利するには・・・“ブラックらしい”スタイルで戦うほうがよさそうだ・・・

そう考えたブラックには、今になってもニョロを戦場から下げようとする考えはない。

ブラックの行動に、ピンクとイエローは驚き、そして怒りを覚えた。



「甘く見られたなぁ・・・それともそこのニョロボンは捨て駒か?!」



ピンクの怒りが言葉の温度で伝わってくる。イエローもその行動に若干の怒りを覚える。

はっきり言って戦術上、この場でピカを引かせたのは間違いではない。

傷だらけのニョロに最後の力を振り絞らせて、戦闘不能まで粘らせれば消耗は少ない。

ただそれは、人として、そしてトレーナーとしてはたして正しい行動といえるのだろうか・・・?

ブラックはその言葉と、視線を受けながらも、冷静にそして冷酷に次のポケモンを呼び出す準備を整えた・・・




「ポケモンを愛せないのなら、トレーナーやめろぉ!!!」




彼女の博愛の二の名の由来の真実は、彼女のこの考えが元なのかもしれない。

ピンクの絶叫と共に、ペルシアンは青年を引き裂き殺そうと飛び掛る。

昂る感情が感化したしペルシアンの俊敏さは今までの比ではない。対応が一瞬でも遅れれば、間違い無く引き裂き殺される。

ブラックはピンクの言葉を聞くと目を閉じた。




「殺し合いに道徳心を求めんじゃねぇぇぇーーーーー!!!」




その言葉に、ピンクはビクンと震えた。

ブラックは絶叫と同時にペルシアンの爪を逃れる為に前進すると、爪の届かない内側まで潜り込み

ボールの開閉スイッチをペルシアンの顔面に押し付けて押して、中のポケモンを呼び出した。

呼び出されたポケモンのその大きさによって、ペルシアンは飛び掛ってきた勢い分そのまま弾き返された。

ブラックは例の即席バリアを、守備的にではなく、攻撃的に応用したのである。

ボヨーンと飛んでいくペルシアン、それを弾き返したその巨体はドシンと地面に足をつけると、ポリポリとその大きなお腹をかきはじめた。

ブラックに呼び出されたポケモン、それは彼の手持ちであるカビゴンのゴンだ。

ゴンの大きな身体に弾き返されたペルシアンだったが、宙でくるりと回転するとしゃなりときれいに着地した。

弾き返しによるダメージはペルシアンには無かったようだ・・・。



「本当にポケモンを愛する人間に、殺し“合い”なんて出来るわけないだろ。」



一言、冷たく言い放たれた言葉。

その言葉の温度からは、過去への後悔を感じさせるような、重たい想いが込めらているようだ。

ピンクの戦闘意欲がその一言と冷たく突き刺さるブラックの瞳によって一気に削がれる・・・・・・



「わ、私は・・・」



人間的圧力・・・その強大なプレッシャーによってピンクは動揺することしか出来ず、その場で立ち尽くした。

その間にブラックはイエローから離れて、ゴンと共にピンクへと静かに近づいていく・・・

近づく最中、ニョロは底力でオオタチを戦闘不能にすると、自身も戦闘不能になった。

ブラックはその様子を近づきながら確認すると、ニョロをそっとボールへと戻した。


「ここまでだな・・・。」


ブラックはゴンと共に一気に距離を詰めて、とうとうピンクの目の前にまで近づいてきた。

ペルシアンも近づくブラックの圧倒されてしまい後退を余儀なくされ、今は主人を守るように威嚇している。

今のブラックは、先程のグレイの戦闘の時よりもブラックで、レッドにほど遠い存在。

理由はよく解らないが、ブラックは今、マサラに居ながらもブラックという存在にどんどん近づいている。

あの時、グレイが言った事をふと考えると、あながち外れていなかったように思える。


「な、なめるなぁ!!」


動揺を隠そうとするピンクは、ペルシアンに攻撃を命じる!



「“きりさく”!!!」



ペルシアンは必死になっている主人に感化されて、必死に一撃を繰り出すが

ゴンの拳がペルシアンの腕を殴りつける。その痛みに飛び退くペルシアンと共に

ピンクもブラックから距離をとると同時に、ボールホルダーからボールを掴み取る。

その間、ペルシアンの素早い攻撃は続くのだが、ゴンは巧みにその攻撃を拳と足で捌いていく・・・


「ペルシアン、“みだれひっかき”!!!」


流石にこの攻撃を捌ききることは不可能だったようで、ゴンは爪の連続攻撃をその身体に受ける。

ピンクは不意打ち狙いでボールから新たにポケモンを呼び出そうとしたが、その行動は完全にブラックに監視されている。

では、不意打ちではなく、純粋に援護に出ようと思い、ボールからポケモンを呼び出そうとしたが

ブラックがいやらしく、さり気なくを装って手に握っているボールをチラつかせる。



「ゴン、“カウンター”だッ!!」



ペルシアンの爪を耐え続けていたゴンは、ブラックの号令とほぼ同時にやってきたペルシアンの爪の一撃に対して

上手くタイミングを合わせて、ペルシアンの顔面に強烈な拳を打ち込んだ。

鈍い音と同時に、ペルシアンの身体はまるで野球で打たれた球のように勢いよく、そして物凄い速度でぶっ飛ばされた。

ピンクの表情が一気に今の天候のように曇った。




パチンッ!!




ブラックはその一撃を確認すると同時に、指を弾き鳴らす。

音を確かに聞いたゴンは“メガトンキック”を“何か”に対して放った!




「ハピナ・・・なっ!!!」


ピンクはハピナスを呼び出そうとしたようだが、どうやら“呼び出し”に失敗したようだ。



ゴンが“メガトンキック”を放った相手は、ボールから呼び出されて戦場に具現化されようとしている瞬間の状態のポケモン。

僅かな一瞬を見切られ、ポケモンの呼び出しを完全にカット。目の前には自分の身長の2倍近い巨体のポケモン。

複雑な心境の数式を解いていけば、いつかそこには絶望以外残らない・・・

構えるゴンの傍にブラックが近づき、そしてブラックは絶望のあまり地面にペタリと座り込んでしまったピンクに近づく。


「さっさと、どこかへ行け・・・」


グレイに浴びせたような恐怖の言葉というよりも、どこか諦めと、呆れの入った優しい声でブラックは言った。













 「なめるなよ・・・貴様・・・。」

ギッと三白眼で見つめるピンクと視線を合わせて、真っ直ぐ見つめる。抵抗の意思だけはあるという様子だ。

薄桃色の瞳と漆黒の黒の瞳・・・お互いの色を見続けるうちに、ブラックとピンクは何かをお互いに感じ取り始めた。



((何だ・・・コイツ・・・・・・))



不思議な感覚に支配される2人だったが、その感覚の感じ取り方はお互いに差があった。

ブラックは心の奥が露出していくような気味の悪い羞恥心に襲われ、ピンクの瞳から逃れると

その瞬間、ピンクはありったけの勇気を出してボールホルダーからボールを2つ取り出すと、そこからポケモンを呼び出した。


「行け、イーブイ、ヒメグマ!!」


ピンクから呼び出される、やはり外見の可愛いポケモンたち。

2匹は身体の大きなゴンのところに擦り寄ると、それぞれの技を密かに放つ・・・

イーブイはゴンに身体を擦り付けると、ゴンにそのつぶらな瞳を向ける。

一方、ヒメグマはポロポロと涙を流し始めて、声を上げてゴンの身体に擦り寄りながら泣きつく。

ゴンはそんな2匹に手を上げることができず、そのまま攻撃の手を下げてしまった。


(“あまえる”と“うそなき”か・・・コレばっかりはしょうがないんだよなぁ・・・)


ブラックは渋い表情をしながら、手に握っていたボールからフシギバナのフッシーを呼び出した。

フッシーはブラックと何かアイコンタクトを取ると、背中の花から何やら種子のようなものを飛ばした。

その間に、ピンクは先程吹き飛ばされてしまったポケモンたちの回収に急ぐ。

ブラックはその様子と出された技に、ニヤリと笑った。


「行くぞ、フッシー!!」


どこか闇の無い、嬉しそうで真っ直ぐな“レッド”の言葉。

ブラックの声に感化されたフッシーが、元気よく雄たけびを上げると、先程飛ばした種子が宙で弾けて

種子の中から“ねむりごな”を発生させた。“ねむりごな”によってピンクのイーブイとヒメグマは眠ってしまった。

その頃、ハピナスと戦闘不能になったペルシアンを回収し終えたピンクはブラックの元へと戻る。

一時的とはいえ、戦場に呼び出したポケモンたちから目を離すという行為はトレーナー失格だが


ブラックを倒す為、そして殺す為には、どうしてもハピナスとペルシアンの力が必要である・・・


そう考えたピンクは、遠く離れた戦場の様子を遠目で確認しながら、その間に“げんきのかけら”を砕き

戦闘不能となったペルシアンにそっと与える・・・すると、ペルシアンは何とか元気を取り戻した。


(アイツを殺すには最悪でもこの子の力は絶対必要・・・)


ピンクはペルシアンの喉元を撫でながら、遠目で戦場の様子を確認し続ける。


「行くしか・・・!!」


ピンクはハピナスのボールをホルダーに戻すと、ペルシアンと共に戦場に向かって駆けて行った・・・。











「待たせたな!!」


ピンクはゴンの隣に立つブラックを睨む。・・・彼女の場合、視線を移しただけでも“睨む”ような状態になってしまうのだが。

ブラックはその視線を受けると、視線を左側にいるフッシーに移して、蔓で捕らえてあるものを彼女に渡すように催促した。



「その前に・・・ほれ。」



ペルシアンと共に戻ってきたピンクに早々、フッシーは蔓を上手くしならせて“ねむり”状態のイーブイとヒメグマを返す。

ピンクは2匹を両腕でキャッチすると、ブラックを睨みつける。


「何のつもりだ?」


その行動を受けたピンクは、真っ赤になってブラックに怒声を浴びせる。

ブラックは真っ直ぐとピンクを見つめると、ピンクはグッと押し黙った。


「お前、“殺し合い”できないだろ?」


真っ直ぐ貫く強烈な視線、漆黒の瞳が心まで覗き込むように見つめてくる。

ピンクはその視線と雰囲気に、感情を素直に表すしかなかった。



「ふざけるな!! 私がそのポケモンたちで何人の命を奪ってきたと思っているんだ!!」
「だから、“殺す”ことは出来ても、“し合えない”だろ?」



ピンクが必死になればなるほど、すぐさまブラックは言葉を返してさらに問いただす。



「何を根拠に!! 私はそんな弱い人間じゃない!!」
「現にお前は、殺し合いになることを恐れて、自分の戦い方を“決闘”に変えただろ?」



ヒメグマとイーブイが“うそなき”と“あまえる”を使って。ポケモン攻略に出た時点で

この勝負は“殺し合い”ではなく、“決闘”へと変化していたのだ。

ブラックは戦闘の達人以上の実力者である。戦闘目的の変化くらい、すぐ判断できる。

そこを指摘すると、また強く言い返そうと思っていたピンクは言葉を詰まらせた。



「お前みたいにポケモンが好きで、優しい奴に、オレと殺し合いは出来ないぞ。」


「・・・・・・!!」



一方的に殺戮をするのならまだいいが、殺し合いとなるとお互いのポケモンを狂気に触れさせなければならない。

狂気の性質を理解しているものならば、それがどれだけポケモンたちに有害なのか理解できるものだ。

相手のポケモンを狂気に触れさせず、そしてこちらも必要最低限のポケモン以外に狂気に触れさせない。

人を殺めたという事実は、闇の世界の住人として割り切って考えたとして(この時点である意味かなりの狂気なのだが)

それでもポケモンを愛するという言葉を発したピンクを、ブラックは殺し合うべき敵、それ以前になぜか敵として認識しなかった。



“一部”の“騎士”たちを除いて、ブラックはどの騎士も殺し合うような存在では無いと思っている。

その根拠はあのノートの情報。あれが正しいとすれば“騎士”たちが本当に性根から腐った人間ではないようだからだ。

逆にだからこそこちらは“殺し合い”に応じず、“決闘”のスタンスを崩さすに戦闘ができるのだが・・・




「それにさ・・・」

ブラックは言葉を続ける。










「お前は・・・“特別”だからな・・・・・・」










ブラックの意味深な発言に戦場の、そして2人の女性の時が止まった。

一体何が“特別”なのだろうか・・・それに、この男は一体何を言いたいのか。



「・・・貴様は・・・私の何を知っているっていうんだ!!!」



先に時を動かして、一気に感情を昂らせたピンクはペルシアンにすぐさま攻撃を開始させる。

主人の攻撃の意思を受けたペルシアンは、大技を仕掛けるような動きをとってブラックに真っ直ぐ駆ける!



「“ねこだまし”!!」



ペルシアンはブラックの目の前にまで来ると、肉球の両前足でペチンと合掌した。



戦場に微妙な空気が流れる・・・



しかし、大技へと対応しようとしていたブラックとフッシー、そしてゴンはその技に意表を突かれ力が抜けた。

本来ならば音で相手を怯ませるこの技だが、こういう風にもこの技は使える・・・らしい。



「その口と一緒に死ね!! “きりさく”!!!」




対応能力が下がっている、いや、皆無の状態のブラックに対してペルシアンの爪が襲い掛かる。


頼りのゴンも、フッシーも先程の“ねこだまし”でその動きを封じられており、何も出来ない。






“想定外の行動”に再び戦場の時が止まった・・・・・・


















 その実力はジムリーダーを軽く凌駕している・・・

ブラックはここまでのピンクとの攻防でそれをひしひしと身体で感じ取っていた。

後ろに倒れる身体、ブラックの白いYシャツが袈裟切りされ、そこから薄っすらとだが血が滲み出ている。

意表を突かれながらも、ペルシアンの攻撃に対して身体が反射的に回避するために、後ろにのけぞったようだ。

・・・運よく致命傷だけは何とか防げたようである。



「貴様が何を言おうと、私は貴様を殺すよ!!」



ピンクはかなり興奮しており、感情の制動が出来ていない。

よほど先程のブラックの言葉に怒りを覚えたのだろうか・・・

追い討ちを仕掛けようとしたペルシアンだったが、対応能力を取り戻したゴンとフッシーがそれを追い払う。



「安心しろ、殺し合いにはならないからな・・・」



ブラックは跳ね起き、そう言うと、ブラックは静かに集中を始めた。

切り裂かれたYシャツに赤い染みが傷に沿って付着している・・・

集中を開始するブラックを攻撃しようとするピンクだったが、屈強なブラックのポケモン2匹を前に、迂闊な手出しはできない。



「お前の流儀・・・守ってやるよ!!」



熱くなる心、ただし、その心はレッドではなくブラックとして熱くなる。

ブラックは集中を開放し“同調”のフィールドを広めた。

フィールド内のゴンとフッシーにブラックの意思が静かに伝わり始める。


「・・・っ・・・殺す!!!」


感情に支配されるピンクは思うままにボールホルダーから新たなボールを掴むと、

結果的にダブルバトルとなっている戦場に、2匹目のポケモンを送り込む。


ボールから呼び出されたのは・・・



「“つるのムチ”!!」



ブラックの声と手振りと一緒に、フッシーは自分の蔓を巧みに操って、ピンクの投げたボールを宙で捕獲する。

また器用に開閉スイッチに圧力を掛けていないので、中のポケモンが呼び出されることもない。

反則気味のその行動にピンクが驚いていると、その隙にブラックは指をパチリと弾く。



「ゴン、決めろ。」



冷たく言い放つブラック、非道という言葉が似合いそうな声。

ゴンが動きだすと、主人を守るようにペルシアンが立ち塞がる。

ペルシアンは主人の命令を待つ間に、ゴンは自発的に攻撃を開始する。

素早く放たれる拳に、ペルシアンは対応できずそのままダメージを受ける。

そのころ自分の主人は、予想外の行動に未だに動転しており、全くペルシアンに対応できない。

それもそのはず、まともに戦闘が可能な手持ちはもういない。要は、戦闘続行不可能とみなされるからだ。

ペルシアンに対してゴンの拳の連続攻撃が降り注ぐ。ペルシアンは自身の回避能力でどうにか対応していくが

いつしかゴンの攻撃に捉えられて、ゴンの思うままに攻撃を受け続ける。

新しくポケモンを呼び出すことを諦めたピンクは、ここでやっとペルシアンの対応を始める。


「“ねこにこばん”!!」


ペルシアンは自分のエネルギーを小判のような形に変えて、それをゴンに投げつける。

本来は戦闘向けの技ではないのだが、相手の視界を奪ったり、意表を突いたりするのなら十分効果的だ。

これが日差しの強い季節となると、エネルギーに若干含まれる金の成分が太陽光を反射し目くらましの効果も生み出す。

案の定、ゴンはペチペチと当たる小判に守備を固めると、その隙にピンクは次の攻撃へと移行させる。


「続けて、“いばる”!!」


ペルシアンはゴンに対して、挑発的とも取れる行動をとる。

それにイラつきを覚えている間に、追い討ちをかけるように自分自身を相手に強烈にアピールし、

相手の怒りを頂点にまで到達させる・・・すると、それを受けたポケモンは怒り狂ってトレーナーの命令を聞けなくなってしまう。

・・・のはずなのだが・・・・・・


「ゴン、攻撃続行だ!!」


ブラックの声を正しく聞くゴンは、“いばる”の効果を全く受けていない。これにはピンクも驚くしかなかった。

これも同調現象のなせる業。極限に近い集中状態ではそうそう精神を乱されることはない。

さらに2人分の精神を持っているので、さらにその効果は高まっている。

ただ、精神を乱す行動に対しては耐性があるものの、一度乱れてしまえば徹底的に弱いのも同調の特徴である。

ゴンはそのままペルシアンに攻撃を続行する。さらにそこに、フッシーが援護攻撃として蔓を伸ばすと

ペルシアンはひたすら守りに回るほかは無かった。



鋭い光を宿した瞳、ブラックは、身振りと声、そしてアイコンタクトで素早く自分のポケモンを動かしていく。

通常、ポケモンバトルというものは、車で言う“オートマチック”なものである。

トレーナーがポケモンに対して、単純な命令を“わざ”で命じていき、

その後の“わざ”までの行動の大半は、ポケモン自身の思考によることが多い。

対してブラックは“マニュアル”な戦闘方法をしばしばとる。

“わざ”一つ一つの繋ぎや、それに至るまでポケモンの行動、そして心理を制動するのだ。

彼に宿る“統べる者”の才がこういう超人的なことをやらかす。その最たるものが“究極連携”である。

その分、超レベル以上の集中を必要とし、体力を奪い、精神をすり減らす。常人には到底踏み込めない世界だ・・・



(鬼か・・・コイツ!!)



精神を乱されず、ひたすら冷酷に攻撃を続けるブラックに、ピンクはそう思うことしか出来なかった。



(ヤバイな・・・昂ってしょうがない・・・・)



それに対して、ブラックは湧き上がる感情を抑えるのに必死になっていた。

こうしてピンクを相手にすると、なぜかよりブラックという存在に近づく気がする。

そして、近づけば近づくほど、どうにもブラックである自分を抑えられなくなる。


「くっ・・・!」
「どうした、それで終わりか?」


思わず漏れる苦しみの声に、過敏に反応して相手を追い詰めるブラック。

ペルシアンは蔓に捕まり、ゴンの強烈な一撃をその身に受ける。

あと一歩でピンクのペルシアンは戦闘不能となるだろう。

お互いにゾクゾクと伝わってくる何かの感情。・・・ただし、その感情はお互いに違う。

だが、何故だろう、この感情を心地よく思うのは。

懐かしさと、どこか優しさを覚えるのはどうしてなのだろうか。

ピンクとブラックの波長が自然と合っていく・・・






そんな時、イエローは静かにブラックへと近づいていった。

今の今まで、これだけ2人のだけの世界を見せ付けられていたのだ、何か思うこともあるだろう。



「・・・レッドさん、後は私が・・・私があの人を倒します。」



イエローは静かだが、心のどこかで何かが燃えているような声で、ブラックの腕を掴んでそう言った。

しかしブラックはそんなイエローの方を振り向くことなく、そのまま戦闘を続行しようとしたが

流石に腕を掴まれていると戦闘に支障が出るものだ。 ブラックは比較的優しい声でイエローに話しかける。

無論この時も、ブラックはイエローの方を向いていない。



「そんなことはいいから、イエローは家に帰るんだ。」



ブラックは別にイエローの言葉、そしてその存在を無視していた訳ではなく、先程のイエローの言葉をしっかりと聞いていた。

イエローの提案を理解したうえで、彼は一応“大切なもの”であるイエローを守る為にそう言ったのだ。




「帰りません!!」




しかし、イエローから帰ってきた言葉は強い口調での否定の言葉。

ブラックは別にイエローのその言葉と声に驚くことは無かったが、少しだが確実にイラつきを覚える。



「いいから帰るんだ・・・これはお前の為なんだよ。」
「絶対帰りません!」



消耗覚悟でこうして集中しているというのに、こうして集中を妨害されるとイラつきの溜まる速度は速い。

ブラックはこの一言で確実に帰らせようと、かなり強い口調と、怒声に近いような声でイエローに言う。



「さっさと、帰れ!!」
「絶対に嫌です!!!」



かなり強めの口調でイエローに言ったのだが、それ以上の口調でイエローはそれを拒否する。

人の心配を無駄にするイエローにブラックは、一時的に集中を途切れさせ、さらには戦場から目を離して

イエローの瞳をしっかり見つめて、イエローに話かかける。



「・・・今、そこまでズタボロのお前じゃアイツには勝てる訳ないだろ!!

  お前にこれ以上危険なことをしてほしくない!!!」

「それでも、私があの人を倒します!!」


「駄目だ! 早く、帰れ!!!」
「嫌です!! 絶対に私があの人を倒すんです!!!」



ブラックにはイエローがここまで頑固になっている理由が解らない。

彼は気付いていないが、おそらく彼女は・・・


「戦闘中に痴話喧嘩か・・・」
「・・・“もう”、痴話っていえる関係じゃないけどな。」


ブラックのその返答に、イエローは掴んでいる腕に込める力を強めた。

しかしブラックはピンクの言葉を聞くと視線をイエローから外し、ピンクに向ける。

再び視線をあわせる2人・・・無論、この間もイエローは必死に青年に訴え続けているのだが

青年はイエローの訴えを一切聞き入れず、ピンクとの戦闘を続行しようと、ボールを握り締めた。

その時である・・・!!







「行って、ドドすけ!!!」








今までブラックに守られていたイエローが、自分のポケモンをボールから呼び出して戦闘に参加させた。

イエローが勝手に投げたボールからは、ドードリオのドドすけが姿を現した。そしてドドすけは既にやる気満々である。

その行動に呆気にとられて驚いているのは・・・この時、ブラックだけだった。

ピンクはどこかこうなることを予感していたようで、イエローのその行動を見てフッ笑いを浮かべた。



「さっきの勝負の決着つけないと、気持ちが悪いもんね?」
「そういうことです!!」



いつになく好戦的な姿勢を見せるイエローに、ブラックはかなり戸惑う。

しかも、ここまで自分と激闘を繰り広げてきたピンクまでもが、踵を返したのかのようにその感情の矛先を変えた。

まるでこれでは、初めからこうなることを2人は予期していたようではないか・・・



「来なッ!!」
「望むところです!!」



ここで異様に波長があったのか、ピンクとイエローの第2ラウンドが、ブラックの目の前で始まってしまった。

ブラックはイエローのその行動理由が全く理解できない。

なぜ、イエローはそこまでしてピンクと戦うことを望むのか。

なぜ、ピンクは自分ではなくイエローと戦うことにしたのか。




「お前ら、いい加減に・・・・・・」




そう、静止の言葉を言いかけた瞬間、青年の心の奥で何かがざわついた。



(・・・・“誰”だ!?)



兵の気配にブラックの心がざわつく。

今までに数々の強敵と対峙し、打ち破り、時に敗北してきたブラックの心がざわつくのだ。

かなりの強敵が、マサラへと近づいて来ている・・・。




(来る・・・これは、やばい奴が来るぞ・・・・・・!)




薄黒い雲が、空を覆いつくした・・・・・・








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