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必然の応戦は灰色の決闘へ・・・そして三者邂逅の時・・・・・・



時をさかのぼり青年たちの決着がつく少し前のこと。

どうしてもその家の家主に会いたくて、会いたくて。

トキワの森に愛された金髪の女性は、マサラのその家を今日も訪ねた。



さらに時をさかのぼり青年がマサラに降り立つ前。

どうしてもその家の家主に会いたくて訪ねてくる人間に会いたくて。

“博愛”の二の名の女騎士は、マサラのその家を訪ねた。




2人が求めている人間は結果的にただ1人・・・・・・。




いつしか2人は

ただ1人に人間をめぐって、それぞれの信念をぶつけ合ことになるだろう・・・













 PAS Chapter3 第18話(後編) 2人の戦い

















「わっ、わっ、わっ・・・ちょっと!!!」


誰だか解らない赤の他人に突如、モンスターボールを投げつけられる。

金髪の女性は身構えることも出来ずに、飛んできたボールを額でコツンと受け止めた。


「痛ッ!!」


フルスイングで投げつけられていれば、おそらくこの程度のリアクションでは済まなかっただろう。

被弾した場所を手で押さえる金髪の女性。目が自然と痛みで潤む。


「うぅ〜何するんですか!」


目を潤ませて金髪の女性は目の前の女性を睨みつけた。

ただ、睨むといっても、不満げな、文句のある瞳で見た。というほうが幾分正しいかもしれない。

その瞳に写るのはボーイッシュな格好で茶髪のショートヘアと、キリっとした顔立ち。正直カッコよくて自分より綺麗だ。

そして薄い桃色をした瞳が少しやけた肌の色には丁度似合っている。


「別にいいじゃない。 どーせ、今から私に・・・・」


かなりもったいぶって話してくる。飛んできたボールは引力に引かれて地面に落ちていく。

目の前の女性の言葉の最後の部分が聞こえるまでの間、時が、ゆっくり、ゆっくりと流れたように錯覚した。




「殺されるんだから。」




その一言をはっきりと聞き取った瞬間、金髪の女性の身体から熱という熱全てが奪い取られて、恐怖の冷たさが全身を包み込んだ。

金髪の女性の世界は暗黒の闇に閉ざされ、時が停止する。

落ちていくボールが地面に着地すると同時にカチリと開閉スイッチが地面によって叩かれる音が聞こえた。

何もかもが黒い暗黒の世界に、静かに1メートル程の白いシルエットがぼわっと現れると、それは金髪の女性の身体にもたれかかり

長めの両腕を首に引っ掛けると、顔を肩と顔の間にひょっこりと乗っけた・・・・・










すりすりすりすり・・・・










暗黒の世界から徐々に解放される金髪の女性。

再びマサラののどかな世界に帰ってくると、自分にもたれかかってすりすりしてくる何かを見る。

真っ白くてふさふさした気品ある全身の体毛。ひょこひょことゴキゲンに左右に振られる長い尾。

長い腕と思っていたが、よくみれば長くて可愛い前足。ゴロゴロとのどを鳴らしてすりすりしてくる長くて可愛いひげのある顔。

ポケモン図鑑など見なくても、カントーに住む者ならこのポケモンの名はよく知っている。

シャムネコポケモン ペルシアンだ。



このペルシアンというポケモンは、基本的にきまぐれな性格をしているが、懐いた相手には徹底的に甘える。

全身をすり寄せたり、肉球でぽんぽんしてきたり、正に猫なで声で鳴いたり・・・とその甘え方は様々だ。



「ちょ、ちょっと・・・何、相手に懐いてるのよ!!」



驚いているのは相手の女トレーナー。金髪の女性は抱きついているペルシアンの身体を撫でてあげると

ペルシアンは嬉しそうに金髪の女性に身体をすり寄せる・・・。


(きっといいポロックとか食べてるんだろうなぁ〜・・・)


身体に触ってみると、体毛の手触りでこのペルシアンがしっかりと育てられているということがわかった。

ペルシアンを評価するときは、その美しい毛並みで評価することが多いので触ってみれば対外はわかる。

この金髪の女性は別に最上級のペルシアンというものを知っているわけではないが、

野生のものよりも格段に手触りがよいので、素人でも理解できるだろうと思った。



「やるわね・・・イエロー=デ=トキワグローブ。」



イエローはじゃれてくる女トレーナーのペルシアンを撫でてあげていたが

女トレーナーの発した言葉は聞き逃さなかった。

彼女は間違いなく自分の本名をフルネームで呼んだ。

即ち、彼女は自分のことについて多少の知識と情報を持っていることになる・・・


「あなたは・・・誰ですか?」


見ず知らずに人間に自分のことを知られているというのは、やはりあまり気持ちのいいものではない。

それに自分のことを殺すと宣言した異常な人間にに知られているのだ。

気持ちのいい、悪いのレベルの問題ではなく、既に自分が生きる為の質問として彼女に聞いてみるのだ。


「そうね、どうせだったら殺される人間の名前くらいは知っておくといいわね。」


女トレーナーは一度自分の身なりをしっかりと整えて、キリっと決めるとイエローに真っ直ぐ言い放った。



「私は円卓の騎士、“博愛”のピンク。あんたを殺す者よ。」



円卓の騎士という言葉がどういう経路を通ると、あんたを殺す者に繋がっていくのだろうか?

それ以前に、どうして自分はこのピンクという女トレーナーに殺されなければいけないのだろうか?

こんなに可愛くて、質のよいペルシアンを育てられる人が、何故?

イエローはペルシアンの頭を撫でてあげると、目を瞑って“力”を使う。

ペルシアンの考えていることが解れば、多少は何かわかると思ったのだ。

優しい光がペルシアンを包むと、イエローはペルシアンと“通心”しはじめた・・・・・・



ペルシアンを可愛がりながら目を瞑ったイエローを見て、ピンクの口がニヤリと笑みを浮かべた。




「・・・・・・ッ!!!」












一瞬、その空間さえも切り裂くような強烈な爪の一撃が繰り出された。















 何とか空振り終わった爪の一撃、その軌道を思い出してみて、直撃した場合を想像して直撃点に手を当ててみる。

イエローの手が当てられた場所は、きっかり首の頚動脈・・・・・・一気に顔の血の気が引いていく。

咄嗟に離れていなければ、頚動脈を切り裂かれてそのまま絶命していた可能性は高い。


(あの一瞬“通心”しなかったら、あの爪の餌食になって・・・)


イエローは“通心”でペルシアンの心を読み取った瞬間、ペルシアンがこのまま自分を引き裂き殺そうとしていることがわかった。

危機に気がついた時、咄嗟にイエローはペルシアンの身体を思い切り突き飛ばした。

突き飛ばされたペルシアンはもう既にイエローを引き裂き殺せると思い込んでいたようで、突き飛ばされながらも攻撃を仕掛けたようだ。



「あ〜ら・・・女のくせに、この策に引っかからないなんて・・・やるわね。」



残念だわ。と最後に付け加えて、ピンクはイエローをさげすむように見た。

その視線からは、既にイエローが1人の人間としてでなく、標的としか思えていないようだ。


「ポケモン愛護を謳ってる奴なら、男でもこの策で死ぬって言うのに・・・勘がいいのか、ポケモンが嫌いなのか。」
「前者に決まってるじゃないですか!!」
「何必死になってるのかは知らないけど・・・すぐに楽にしてあげるから安心しなさい。」


ペルシアンは主人の元に戻ると、頭を優しく撫でられて目を細めて喜んでいる。

イエローはその様子に、あのペルシアンに恐怖を覚えた。・・・彼女の言葉に偽りはなく真剣なのだ。

それが理解できると、目の前にピンクという女トレーナーと自分が戦わなければならない。ということが理解できた。


「お願い、ゴロすけ・・・行って。」


静かに呟いてポケモンをボールから呼び出したイエロー。ボールから岩石の身体をしたメガトンポケモンのゴローニャが姿を現した。

この時はまだ、必然的に応戦を強いられただけであった。













 イエローは特殊な力の持ち主であることを除けば、はっきりいって普通のトレーナーより少し強い程度の実力である。

グリーンとブルーがそれぞれジムリーダーかそれ以上の実力だが、(ただし2人なら四天王以上)

完全に劣勢の戦闘展開を余儀なくされたのは、ここまで読み進めてくれていた人ならば知っているだろう。

円卓の騎士たちの実力がほぼ均等だと仮定した場合、この時点でイエローにはほとんどの勝機が無いことになる・・・



しかし、1つ思い出してもらいたい。



グリーンとブルーを追い詰めたのは、騎士たちのポケモンバトルの実力だけではなく、“ウェポン”の存在が大きかったはずだ。

亜音速の槍と、岩石弾・・・これら2つの“ウェポン”によって、2人はポケモンバトルをさせてもらえなかった。

だが、運の良いことに“博愛”のピンクという騎士は“ウェポン”を使うことの出来ない騎士だ。

ほとんど無い勝機だが、この要素が無いだけで、“ほとんど”が“一切”に変わることは無い。

イエローは、ピンクに対してポケモンバトルが出来るのだ。



“ポケモンバトルが出来る。”



全ての戦いにおいて、この大前提が達成されるかどうかで何もかもが違ってくる。



殺し合うのか、ポケモンバトルをするのか。

人殺しか、トレーナーか。



本当に人と人がポケモンを通して戦う場合、それはポケモンバトルなのか、それとも殺し合いなのか・・・

ルールや審判無い戦いに優劣勝敗をつける場合、1つの判断基準として無か有というものが考えられる。

そこになにかが存在するか、しないか。なにかが残ったか、残らなかったか。

その“なにか”を何にするのかで優劣勝敗の重みも、意味も違ってくる。




そこに“戦闘可能なポケモン”の無か有かを当てはめる時、それは“戦闘”と化し



そこに“トレーナーとポケモンの体力と精神力”の無か有かを当てはめる時、それは“決闘”と化し



そこに“命”の無か有かを当てはめる時、それは“殺し合い”と化す。




今までに多くの勇気あるトレーナーたちは、巨悪や歪んだ信念の持ち主を決闘で打ち破ってきた。

ロケット団、四天王、仮面の男、マグマ団、アクア団、新生ロケット団・・・・・・

それぞれ悪の意思と信念をもった彼らに、正義の意思と信念でぶつかり合う。

トレーナーとして戦うとき、踏み入ることの出来る領域の限界はこの決闘である。

相手の命を奪うことなく、相手の信念や意思を打ち破る・・・これが勇気あるトレーナーたちの限界だ。





だが、彼らの前に現れてしまった。


闇に生き、闇に死ぬ・・・そう、闇の世界の住人に。


穢れ無き世界の影で日々穢れ続ける闇の世界の住人に。


そして彼らは、トレーナーを既に超越した彼らは、最後の領域にまで踏み入った者たち・・・

それがどれほどの狂気で、どれほどの恐怖で、どれほどの危険か。

決闘しか知らないトレーナーにとって、この闇の世界の住人は非常に未知すぎる。

迂闊に触れれば手を切る程度では済まない危険性。そして簡単に命を奪う狂気。

闇に手を染めた青年が、大切な仲間たちを守るために躍起になるのも十分に理解できる。





そんな青年が直面した壁が今、多くの彼の大切な仲間たちの前に立ちふさがっている。





戦闘、決闘、殺し合い・・・・・・決闘で悪の意思と戦う彼らに

殺し合いを望む闇の住人たちにどう対処していくのか・・・・・・?






同じように殺し合いし、グレイは決闘で打ち破った青年。

辛うじて決闘に持ち込んだグリーンとブルー。

同じ土俵に立って殺し合うのか。己の信念を貫いて決闘で打ち破るのか。

青年とグリーンとブルー。彼には己の信念を貫くことのできる強い意志と力があったが

彼らの実力に満たない者たちは、あまりにも過酷な選択を迫られることになる。

同じ土俵に立って殺し合うのか。己の信念を貫いて殺されるか。

優劣勝敗の為に、そして自分の命の為に相手を殺すのか

自分である為に、最後まで抵抗して殺されるのか

境界線に立つことは許されない。寧ろ、立っていれば無意味な死を遂げるだけ・・・





そんな中イエローは今、間違いなく境界線の上で立っている・・・・・・






優しい人間にその過酷な選択はあまりにも残酷である。

人として、生物としての本能を否定するか、それとも本能を肯定するか。

自分の為に、相手の為に自分が死ぬか、自分の為に相手を殺すか。

この決断が下せぬものに、闇の世界の住人を打ち破る術は存在しないと断言しよう。

そして今のイエローに、このレベルの決断を下すことはできないことも断言しておこう。

このままではイエローはピンクの手によって殺されるだけだ。





それを防ぐ為にイエローにはもう一度考え直さなければならない部分がある。

それは、無か有かを競い合う“もの”を考え直せばよい。

力の無いイエローが同じ土俵に立つ以外はもうどうしようもないのは事実。

そんなイエローが勝利するには、自分の限界まで突き詰めていってこの方法以外勝算は無い。



それは、決闘を“させる”・・・決闘としてのポケモンバトルをピンクに“させる”ことである。



イエローのトレーナーとして戦闘能力は殆ど常人クラス。

その彼女が闇の世界の住人相手に信念をぶつけ合うポケモンバトル、即ち決闘を挑んだところで

決闘になる前に殺し合いとなって、彼女の命は奪われるだろう。

またピンクに決闘をさせようとしても、イエローほどの実力では全く持って枷にならない。

ならばどうするか。どうやってピンクに決闘を“させる”のか。

今のイエローに出来るその術はたった1つ。癒す者として“トキワの力”を使用することだ。

この“トキワの力”はポケモンの心を読む“通心”だけでなく、“回復”や“念力”さえも可能とする。

“回復”の力を使い、全ての攻撃を捌く。ただひたすら徹底防衛策にでることだ。

相手に、ピンクに殺し合いを挑まれても、ひたすらその狂気を捌く。

ポケモンたちが何度も傷つき倒れても、回復させて捌き続けることにより、相手の体力と精神を打ち破る。

幸い、トキワの力を持つトレーナーは、同じ力を持つトレーナーでなければ倒すことが出来ないという。

まるでそんな伝承のような話にすべてを賭けて、イエローはピンクに挑むしかない。



(多分、こうするしか私に道は無い・・・)



戦闘を否定することは出来ない。否定すれば自分が今この場にいることも否定することになってしまう。

自分がここに来たのは、いるかどうかは解らないがとにかくレッドに会いに来ることだった。









 イエローが応戦を始めてからしばらくの時間が過ぎた。

途中、異様にマサラ中が蒸し暑くなったり、ドスンッ!!と凄まじい音がしたが

どちらもイエローにとってはどうでもよかった。

今のイエローに、周りのことを気にいている余裕は一切無いからだ。





「しぶといのね、あなた。」

「・・・・・・ま、負けれ、負けれません・・・・・・」


あまりにも対照的な声。片方は上から見下ろして、もう片方は命からがら。

自分も力をもって信念を貫く戦いを続けるイエローだったが、既にお気に入りの服もポケモンたちもボロボロだ。

元々、非戦闘員のような存在である彼女がどんなにがんばっても、そして彼女のポケモンがどんなにがんばっても

経験もレベルも、戦術も知識も。トレーナーとしての要素で目の前のピンクには足元にも及ばないのだ。

ピンクの1匹のポケモンの攻撃を捌ききるのに、イエローのポケモンは4匹が傷つき、うち2匹は戦闘不能になる。

これが戦闘ならばとっくに決着はついているのだが、決闘である以上、トレーナーとポケモンがあきらめない限り

2人の戦いは延々と続いていく・・・・・・



1匹のポケモンでは完全に攻撃を捌かれてしまうのなら、ピンクからしてみれば後は簡単である。

複数のポケモンを呼び出して一斉攻撃を仕掛けさせればよい。

新しくボールを取り出すと、そこからまた可愛らしい容姿をしたどうながポケモン、オオタチが呼び出された。

ピンクがオオタチを呼び出すと、少し遅れてからイエローはオムスターのオムすけを呼び出した。



「ペルシアン、“
きりさく”!! オオタチ、“みだれひっかき”!!」



ポケモンが呼び出されると同時にすぐさま攻撃が命じられる。一瞬の隙も逃さない、プロの動きだ。

鋭利な爪をざらりとした舌でペロリと舐めると、ゴロすけへと飛び掛かっていく。

そして同じようにオオタチも短めの爪を立てて、オムすけへと飛び掛る。



「ゴロすけ、“
まるくなる”!! オムすけ、“からにこもる”!!」



圧倒的にピンクの対応速度は速く、先手を仕掛けてくる。そのために必然的にイエローは後手に回って防御するほか無い。

幸い、ピンクの使ってくるポケモンの大半の技は「岩」タイプの効果でダメージの半減が可能だ。

ここで反撃に打って出てみたいところだが、イエローにとってゴロすけとオムすけが反撃に転じることは非常に危険である。

なぜなら・・・





「ペルシアン!!!」


ピンクはゴロすけが一撃を耐えたと解ると、すぐさま大きな声で次の指示に移行するようにペルシアンの名を呼んだ。

主人の声を聞いたペルシアンは、爪の一撃を耐えたが、そのダメージに怯むゴロすけの上をヒョイッと飛び越えて


ペルシアンはイエロー自身に飛び掛っていく・・・!!

オムすけはオオタチの連続攻撃に捉まって身動きができず、動きの鈍いゴロすけでは俊敏なペルシアンを止めることができない。

飛び掛ったペルシアンは両前足の鋭利な爪を立てて。殺気だった猫の瞳でイエロー睨みつけた。


「チュチュ、“
でんじは”!!」


主人を守る為にほぼ自発的にボールから出てきたチュチュに、イエローは攻撃を命じる。


強力で周波数の高い電磁場を作り出し、その電磁場は相手の身体を貫通する。

貫通した時に、強力な電磁場は生体に影響を与えて相手の身体を麻痺させる・・・ハズなのだが



「ペルシアンの特性は【じゅうなん】・・・麻痺はしない!!」



それでも必死に主人を守ろうとするチュチュを残虐に“
きりさく”と、チュチュは地面にべたりと倒れた。

再び爪を舐めてペルシアンはイエローに迫る。それに気付いたラッタのラッちゃんがボールから自発的に出てきた。


「電気鼠だろうが、ただの大きな鼠だろうが・・・猫に敵うはずがないでしょ!!」


ペルシアンは再び爪を揮い、ラッちゃんの身体を“
きりさく”。ラッちゃんもチュチュと同じようにベタリと地面に倒れる。

今度こそ・・・と、イエローに飛び掛るペルシアン。

イエローは目を瞑って、迫る恐怖から逃げ出した。





万事休す。





そう思ったとき、間一髪ゴロすけが戻ってきてペルシアンにむ向かって“
すてみタックル”で背後から攻撃を仕掛ける。

主人を守る為に自発的に動いたのだろうが、その一撃は俊敏なペルシアンには見切られていたようで

軽々とその一撃を避けて、逆にゴロすけに鋭利な爪の一撃を加えていく。

一方、オムすけはオオタチの“
みだれひっかき”の連続攻撃で動きを止められながらも

逆にオオタチの動きを数本の触手で“
からみつく”で拘束し、その動きを止めさせていた。


昔、レッドを求めて旅に出たときにジムリーダーから託されたポケモンたちが、今のイエローの命を守っている。

最も実力を秘めているポケモンが専守防衛に徹しなければ、イエローの身体はとっくに引き裂かれていることだろう。

それでもイエローの服が既にボロボロなところを見ると、ゴロすけとオムすけの2匹が必死になっても

今のようにイエローに危機が迫り、攻撃を多少なりとも受けてしまっているということだ。


どうあがいても、反撃に転じる術ありそうもない。

徹底防戦での相手の疲弊を狙う戦いで勝利を狙うイエローだったが、想定していた以上に

ピンクのポケモンたちの猛攻は凄まじく、捌ききるなど殆ど不可能に近かった。

それでも、それでも・・・・・・信念が折れない限り、生きたい命がある限り、決闘で敗北は無い。

イエローは傷ついた自分のポケモンたちをボールへと戻してあげると、トキワの力で癒しはじめる。

優しい光がボールを包み込むと、ボールの中のポケモンたちの傷はゆっくりと癒えていく・・・



(この娘、後々、私の障害になりそうね・・・・・絶対にここで始末しなきゃ。)



ピンクは不思議な行動をしているイエローを見ながら静かに思った。

圧倒的な格の差を見せつけられておきながらも、必死にくらいついてくるその強い精神。

彼女にとってイエローのその力強い精神は、鬱陶しいものであると同時に、イエローを評価する要素となった。



(なんだろうな・・・・この人は今、私が倒さなきゃダメな気がする・・・)



トレーナーとしての実力、ブリーダーとしての実力。そしてその危険性。

評価する部分もありながら、どこかここでどうにかしておきたい存在とイエローは直感的に思っていた。

どうにかできるはずは無いだろう。だが、どうにかして、どうにかしたい。

そうしなければ、後々自分にとって嫌な存在になりそうな予感をさせる。



(私は・・・負けない!!!)



それでもこれがイエローの答え。

そして、イエローの選ぶ道。どうにもできないが、どうにかしたい。

死を選ぶことはできない。なぜならここにこうして来たことが、自分が生を望んでいる証拠である。

レッドに会いたいという感情は紛れも無く生きたい欲望のはずだ。

覚悟を決めたイエローは、キッと目に力を込めて戦う意思をピンクに見せ付けた。



「その気なら、徹底的にやってあげるわよ。」



ピンクもイエローの視線に応えて、力強い瞳を返す。

何の因縁かは知らないが、なぜかお互いにお互いを敵と認識していた。

敵も何もお互いに戦っているのだから“敵”にはなるのだろうが、“倒さねばならないもの”には変わりなかった。

そうやってお互いにお互いを意識しだすと、いつしか戦いは必然の応戦から

想いも、求める結果も非常に微妙な戦い、即ち灰色の戦いと化していった。















 それからまた、少しの時間が過ぎる。

丁度、マサラ郊外の一番道路でジョウト組が、双子の幽霊と戦い始めた頃だ。



2人の戦いは激しさを増したが、ペルシアンとオオタチの猛攻を何とか捌き続けるゴロすけとオムすけ。

なかなかつかない決着にイライラを募らせ始めるピンクと、ひたすら守って我慢を続けるイエロー。

先程の時点で結構服がボロボロだったのだが、今はもっと服はボロボロになっている。

服をボロボロにされて、ポケモンたちを傷つけられて、自分の命は危機に晒されて・・・

以前ピンクが優位な立場に立っている戦いであるが、イエローの徹底防戦が全く意味を成していないわけではない。

明らかに攻撃するペースの落ちてきたポケモンたち、イライラで雑な判断が目立つようになってきたピンク。

予想以上の奮闘を見せるイエローに、ピンクは少しづつ焦りを感じ始めていた。


(そろそろ、一気に決めようかしら・・・?)


早期の決着を狙おうと、全てのポケモンを開放しようとするピンク。イエローはあまりにも防御に必死になりすぎている為に

このピンクの決定的な行動が目に入っていない・・・・総攻撃なら、イエローは間違いなく終わる。

ピンクは残り全てのボールをすぐに取り出せるように、ボールホルダーに静かに手を回した・・・









「おいおい、人の家の前でなに勝手にやってるんだ?・・・・ピンクさん?」










イエローの背後から聞こえてきた男の声で、戦場の時が止まった。

ピンクはこの一瞬で勝負を決めようとしたが、目に映ったその男の姿の為にその行動は後回しにされた。



「・・・ブラック!!!」



2人の間の空気が張り詰め、お互いにプレッシャーを掛け合っていることがイエローにも解った。明らかな敵対関係であることが伺える。

呼び出されているピンクのポケモンたちが一斉に青年の方を向いた。

向けられる殺気に青年は素早くボールホルダーからボールを取り出すとすぐさま応戦体勢をとった。




「レッドさん・・・!!!」




喜び、感動、安心。

驚きもあったが、たくさんのプラスの感情がイエローを一気に満たした。




「・・・・・・イ、イエロー??」




聞こえてきた嬉しそうな声に、青年は思わず情けない声を出すとイエローの方を見るのであった。



「何でお前がここに!?」










・・・三者邂逅。

驚きと喜びと憎しみと・・・三者三様の想いを抱き、再びめぐりあう3人。

青年の介入によって、3人の時が止まった・・・・・・











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