執念の反撃・・・これがマサラのトレーナーたちの底力!!
故郷の空気が、雰囲気が
青年の心に“戦う者”の意思を蘇らせようとしている。
心に点いた熱き炎、そこに共存する冷酷な冷たさの水。
今はまだ、冷たき水が勝っているが、青年の心を滾りを冷却することは出来ない。
そして青年の頼れる親友たちは、いち早く炎と水を共存させる。
究極の炎、究極の水、そして繰り出される必殺の一撃・・・
故郷のために、そして親友、仲間のために
これが、伝説のトレーナーと言われた者たちの実力である。
PAS Chapter3 第17話(前編) “そういう”相手への対処法。 -Green&Blue-
マサラをも震わせる2匹の咆哮。追い詰められていたはずの2人だが、その咆哮に力を得る。
対する2人のトレーナーとそのポケモンたちは、その咆哮に臆することなくただ、その様子を見つめる。
双方、絶対的な自信を持った表情と感情で、ダブルバトルとなったバトルの展開と作戦をその表情の下で練る。
のはずだったのだが・・・・・・
「前もって言っておくけど、アタシたち、今からポケモンバトルを辞めるわ。」
ブルーは表情を崩さずに驚きの一言を言い放った。
しかし、その発言に驚いているのは相手、即ち騎士たちの陣営のみ。
背中を、そして身体を預けるグリーンは別に驚いている様子は無い。寧ろ、その言葉を待っていたと言わんばかりの表情だ。
「えっ!? バトルを辞めるって・・・だって、そこに立派なカメックスを呼び出したじゃないですか?」
当然の反応を見せるキミドリ。 ダブルバトルの形式をとると宣言した直後にバトルを辞めるとは一体どういう意味なのか。
「・・・そうだな、結果的にバトルは辞めることになるだろう。」
ブルーの意図を理解しているグリーンは、意味深な言葉を発して若干俯いて笑みを浮かべる。
「ほぅ、でわ一体この状況で何をするきかのぉ?」
ブラウンは挑発するようにグリーンに話しかける。それと同時に彼のポケモンであるアーマルドが戦闘意欲を威嚇体勢で見せる。
現状を一度整理してみよう。
まずグリーンの状態である。
完全戦闘不能ポケモン数・・・3体(カイリキー、ゴルダック、ポリゴン2)
ほぼ戦闘不能ポケモン数・・・2体(サイドン・・・右足首骨折により行動不能。 ハッサム・・・瀕死寸前)
現在戦闘可能ポケモン数・・・1体(リザードン・・・無傷)
次にブルーの状態
完全戦闘不能ポケモン数・・・2体(ぷりり、ニドちゃん)
ほぼ戦闘不能ポケモン数・・・1体(メタちゃん・・・現在指揮範囲外へ)
現在戦闘可能ポケモン数・・・3体(カメちゃん、ピッくん、ブルー)
対して対戦相手、騎士たちの状況はどうだろうか
化石のブラウンの状態
完全戦闘不能ポケモン数・・・0体
ほぼ戦闘不能ポケモン数・・・0体
現在戦闘可能ポケモン数・・・6体(アーマルド、オムスター・・・etc)
そして女王蜂キミドリの状態
完全戦闘不能ポケモン数・・・1体(ヌケニン)
ほぼ戦闘不能ポケモン数・・・0体
現在戦闘可能ポケモン数・・・5体(スピアー、バルビート、イルミーゼ、テッカニン、???)
この状態から解るように、数の上ではまずグリーンとブルーに勝ち目は無いといえる。
圧倒的な戦力差に加えて全身打撲で思うように動けないブルーと、泥まみれのグリーン。
さらにバトルの勝敗以前に生死に関わる要素としてブラウンとキミドリの“ウェポン”。
明らかにポケモンバトルで相手を圧倒するというよりも、トレーナーの殺傷を目的とした攻撃・・・
この絶望的な状況を一転させるような起死回生の大反撃手段は、はたして存在するのだろうか・・・?
「この状況をどうするか・・・・それは簡単なことだ。」
グリーンは力強く断言した。それに続けてブルーが言い放つ。
「アタシたちもアンタたちの言う“力”・・・“ウェポン”を使わせてもらうわ。」
そう、この状況から反撃に出るには、ポケモンバトルのスタンスを崩してこちらも対トレーナー戦を行えばいい。
“ウェポン”発動の時点で騎士たち側はポケモンバトルのスタンスを崩し、対トレーナー戦に移行して来た以上
こちらも同等の手段を持って対抗しなければ、同じ土俵に立つこともできないのだ。
「カカカッ!!! ハッタリはよせ。仮に“そういう”ふうにお前たちが攻めたとしても、こちらの“ウェポン”には及ばんて。」
「亜音速の魔槍と泥と岩石の魔弾・・・どちらも直撃すれば死か大ケガ。 ここまでの威力はそう簡単に実現できませんよ?」
下品な笑いとニッコリ笑顔、どちらも嘲笑である。
しかし、それを見てもグリーンとブルーは強気な表情を崩すことなく、その嘲笑を真っ向から受ける。
「泥と岩石の魔弾・・・それがどれほどかは知らないけど、こっちのほうが上よ。・・・間違いなくね。」
かなりの自信を持ったブルーに対して、キミドリがギョロギョロと瞳を動かしてブルーの姿を見る・・・・・・
しばらくしてキミドリの瞳の動きが静かに止まり、その表情がみるみる険しくなっていく。
キミドリの表情に気付いたブラウンも同じように瞳を動かしてグリーンの姿を見る。
すると、キミドリのように表情には出さないが、その雰囲気が険しくなっていった。
「そうじゃのう・・・そちらがその気なら、こちらもそうするまでよ。」
ブラウンがアーマルドとオムスターに距離を詰めさせると、同時にキミドリのスピアーもじわじわと距離を詰め始めた。
「・・・どれくらい動ける?」
「そうね、まぁ・・・あの技のフィニッシュまでは持たせるわ。」
背中で感じるブルーの状態に危機感を覚える。全身打撲・・・立っているのも辛いだろう。
その会話の間にもアーマルドとオムスター、そしてスピアーは迫ってくる。
「・・・身籠る身体・・・だろう?」
「あら、しっかり自覚はあったのね。」
「当然だろう・・・乗れ!!!」
グリーンはブルーの身体を背負い込むとリザードンの背に乗り込んだ。
リザードンの背中に乗ると同時にブルーはリザードンの背中に倒れこむ。
そしてそれを確認したリザードンは、自身の大きな翼を羽ばたかせて空へと舞い上がると同時に
羽ばたき時の地上への風で、すべての地上のポケモンたちと、トレーナーの動きを制限する。
「・・・・“ウェポン”発動ということは、相手を傷つける覚悟かあるということじゃ。」
「なら、私たちも“ウェポン”で対抗するしかありませんね。」
リザードンの起こした風の影響から開放された地上のポケモンたちとトレーナー。
ブラウンとキミドリが上空のグリーンとブルーを見つめると、スピアーとアーマルドも同じように視線を移す。
そして残ったオムスターは地上に取り残されたカメックスのカメちゃんと向かい合った。
「[タスラム]・・・」
「[ゲイボルグ]・・・」
研ぎ澄まされる精神。同時に、アーマルドとスピアーが各々“ウェポン”発動体勢を整え始める・・・。
液状化を始める地面、ニョキニョキと両腕の針の先端部分を変形させる。
「そういえば、まだ全てを見せておらんかったのう。」
「あ、私もです・・・折角ですから、この一撃で決めましょう。」
アーマルドは液状化のフィールドを広げ、スピアーは腹の先端部についた最後の針の形状をもニョキニョキと変化させ始める・・・・
その間にブラウンはアーマルドの周りに自分のポケモンたち全てを呼び出した。
呼び出されたポケモンは・・・カブトプス、ユレイドル、プテラ。 何れも化石ポケモンである。
その3匹とアーマルドは地面に足をつけて意識を集中する。その間、オムスターだけは別行動をとってカメちゃんに近づく。
「[タスラム]・・・“魔弾炸裂陣”!!」
「[ゲイボルグ]・・・トライアングル・セット!!」
上空のリザードン目掛けて攻撃態勢を整えたブラウンとキミドリのポケモンたち。
ブラウンの“ウェポン”はまだ可能性があるかもしれないが、キミドリの“ウェポン”である[ゲイボルグ]は
本人が言っていたように亜音速の針を標的に向かって放つ技である。この技に限っては回避は不可能だ。
上空のブルーがリザードンの翼の付け根から頭を出して地上のカメちゃんの様子を確認する。
この状況、もしもあの“ウェポン”が発動したらひとたまりも無い。
ならば、地上のカメちゃんに何とか妨害してもらって、発動のタイミングを遅らせてもらうしかその方法は無い。
祈るような瞳でブルーはカメちゃんの様子を見るが・・・・しかし、カメちゃんにはブラウンのオムスターの触手が“からみつく”。
厳しく動きを制限されているわけではないが、それでも妨害へといけないところを見るとそれなりに制限されているようだ。
ピンチだけがその目に映ったように思えたが、実は既にその目には妨害成功の切り札が目に映っていた。
「シュゥゥゥゥゥーーーーートォォォォォッ!!!!」
気迫のこもった凄まじき叫びが再びマサラを震わせる。今までの叫びの中で最も大きな音量である。
この一撃で確実に決着がつく・・・・・・!!!
3本の針が射出される寸前で、突如、不思議な粘土のような物体がスピアーの身体を羽交い絞めの要領で拘束した。
全く関係の無い方向に向けられる3本の針は、そのまま射出されたが、もちろん上空のリザードンを狙うことなど出来なかった。
「ナイス、メタちゃん!!!」
上空でブルーが歓喜の声を上げる。地上の様子を見たときから既に
自分の手持ちポケモンであるメタモンのメタちゃんが、のそのそと自分の下へと帰ってきている姿を捉えていたのであった。
「ぬぅ・・・。ならば・・・お前たち、炸裂陣発動!!!」
続いてブラウンが“ウェポン”を発動を大きな声で宣言する。
その瞬間、意識を集中させていたブラウンのポケモンたちは、地面に自分のエネルギーを送り込みはじめた・・・
液状化された地面全体に広がったエネルギーが、地中に含まれる岩石と水分を集合させると
“マッドショット”の要領で集めた岩石を同時に撃ち出す。ただし、今までのようにポケモン自身が撃つのではなく
液状化された地面そのものが、まるで意思があるのかのように地中に含まれる岩石を撃ち出しているのである。
それも、各ポケモンたちを中心とした半径5メートル以上はあるだろうという範囲の地面全てからである。
細かな破裂音が同時に無数に鳴り響き、まるで唇を震わせたような音がする。
同時に、地中に含まれていた無数の小石やら岩石が一斉に地上に噴出し、その勢いのまま上空のリザードンを狙う。
技の名前・・・“魔弾炸裂陣”の通り、魔弾を炸裂させる陣。・・・即ち、ショットガンに似たようなものである。
この技を至近距離で受ければ噴出す石に直撃した部分は真っ赤に腫れあがるか、骨が砕けるか。
飛んでくる無数の石はかなりのスピードで。リザードンが回避する暇はなかった。
全身に直撃する石。グォオオと、痛みのあまり吼えるリザードン。自然とその高度が落ちてくる・・・・・・
「このまま落としてくれるわぁ!!!」
ブラウンの絶叫と共に再び地面から無数の石たちが飛んできて、リザードンを襲う。
「耐えろ、リザードン!!!」
グリーン必死の願い。連続してその全身に撃ち込まれる石の弾丸のダメージでリザードンの羽ばたきのペースが落ちる。
そしてその間にスピアーがメタちゃんを振り払い一撃を加えて戦闘不能にすると、再び[ゲイボルグ]発射体勢を整える。
「これで終わりですね!!」
元気な声で明るく笑顔でキミドリは言い放つ。ニョキニョキと変化を始めるスピアーの針。今度こそ決着がつく。
「[ゲイボルグ]・・・トライアングル・セット!!」
高度を落とし始めたリザードンに向けられる3本の針。放たれ、命中すれば即死である。
「シュゥゥゥゥゥーーーーートォォォォォッ!!!」」
キミドリの気迫の叫びが再び。しかし、その一瞬前にカメちゃんが絡みついていたオムスターを力いっぱいぶん投げて
スピアーにぶつけると、絶妙のタイミングでキミドリの“ウェポン”発動は阻止された。
「カメちゃん追撃よ!!!」
ブルーは大きな声で叫ぶと、カメちゃんはカメックス特有の両肩の水砲をスピアーとオムスターに向けると
高密度の水を含んだ大きな水の塊を交互に水砲から数発撃ち出し、2匹に追撃をかける。
大容量のバケツの水を勢いよくかけられる感覚といえば、この水の塊のダメージが解るだろうか。
「鬱陶しい亀さんですねぇ〜。こうなったら・・・!!!」
キミドリはボールホルダーからボールを取り出すと新しくポケモンを呼び出そうとする。
しかし、その動作に入った瞬間、彼女の黄緑色の瞳がギョロリとグリーンに向かって反応した。
「・・・・かまってられないじゃないですか!!」
渋々キミドリはグリーンを次の標的とすると、ボールからアゲハントを呼び出すとカメちゃんに背を向けた。
その様子を上空のリザードンの背で見ていたブルーは、下から飛んでくる石の弾丸に気をつけながら、
隣のグリーンになにやら耳打ちをする。するとグリーンも小さな声で何かを呟くとブルーは何か確証を得たように頷いた。
「いけ、サイドン!!」
上空のグリーンはボールの開閉スイッチを膝で叩くと、ボールから動くことの出来ないサイドンを呼び出した。
無論、サイドンを背に乗せてリザードンは飛ぶことが出来ないので、空中にサイドンを呼び出す。
そのまま自然に落ちていくサイドン。ただし、ただ落ちていくのではない。頭を下にして、そしてドリルの角を回転させて落ちていく。
動くことは出来なくても、落ちて、その勢いで攻撃することは十分に可能である。
「“つのドリル”!!!」
炸裂陣の中心的な存在となっているアーマルド目掛けて落ちていくサイドン。
回転するドリルは間違いなくアーマルドのあの堅牢な【カブトアーマー】を貫くことが出来るだろう。
「“ふきとばし”!」
ブラウンの方へと駆けつけてきたキミドリ、そしてアゲナント。アゲハントはその羽を羽ばたかせると
強風を一瞬のうちに起こして落ちてくるサイドンの身体を思い切り吹き飛ばした。他のブラウンのポケモンは何とか踏ん張ることで難を逃れた。
「最後の反撃は終わりましたか?」
ニッコリ笑顔で話しかけてくるキミドリの背後に、体勢を立て直したスピアーとオムスターが姿を現した。
「これで最後にしましょうね・・・[ゲイボルグ]・・・トライアングル・セット!」
嬉しそうなキミドリの声を聞いたスピアーは、三度意識を集中させて3本の針をニョキニョキと変化させる。
しかし、キミドリとブラウンの瞳がギョロリと動き上空の、今度はブルーを捉える。
「アンタたちバカねぇ〜・・・どんな原理かは知らないけど、その瞳に頼りすぎよ。」
ブルーは気力を振り絞って立ち上がると、びしっと地上の2人を指差して力強く言い放つ。
この間、完全に攻撃を中断しているブラウンのポケモンたち。というよりもどうやら弾切れのようだ。
キミドリはハッと気付き、ブルーのカメックスであり、自分の背後にいるカメちゃんの方を向く。
カメちゃんの身体からは「水」エネルギーが青いオーラとして浮き上がり、今にも水撃を放ちそうだ。
“ウェポン”発動よりも早くカメちゃんの水撃がスピアーの身体を捉えるだろう・・・・・・
窮地に立たされた騎士の2人。そしていよいよ、グリーンとブルーの最後の反撃が始まった。
「炎と」
「水の」
上空のグリーンとブルー、2人の掛け声のタイミングはバッチリ。
お互いに熟知しあったパートナーとして、2人の声にも力がこもる。
「究極の調和点・・・見せてあげるわ!!」
「“燃える水”の恐怖・・・とくと味わえ!!」
直感的に危険を感じ取ったキミドリのスピアーは[ゲイボルグ]の状態を解除して主人であるキミドリの前に立った。
もちろん、この行動はポケモンの“主人を守る”という本能を超越した感情から起こる行動である。
「カメちゃん、ここが正念場よ!! “ハイドロカノン”!!!」
上空のブルーが究極技の発動を宣言すると同時に、両肩の水砲から、そしてカメちゃんの口から
超高密度の水流が、究極の水が凄まじいスピードと水量で真っ直ぐに放たれた。
「リザードン、最大出力“ブラストバーン”!!!」
時を同じくして上空のリザードンも最後の力を振り絞り、グリーンの究極技発動に応える。
炸裂陣でのダメージで全身は腫れあがり、全身ボロボロだが、自身に眠る「炎」のエネルギーを開放すると
猛火、大火、劫火・・・それらを超越する既に熱線に近いような究極の炎を吐き出した。
上空から放たれる熱線に近い究極の炎は真っ直ぐに地上に吐き出され、ブラウンとそのポケモンたちを焼き尽くそうとしている。
そして地上から真っ直ぐ撃たれる究極の水は、これもまた真っ直ぐにキミドリとそのポケモンたちを押しつぶそうとしている。
迫る究極の炎、究極の水。
追い詰められた2人の騎士へ同時に放たれた2つの究極は、同時に2人の騎士を狙う。
究極の炎は化石の騎士だけでなく女王蜂の騎士も、究極の水は女王蜂の騎士だけでなく化石の騎士も・・・
そして、究極の炎と究極の水が激突する・・・!!!
「「“水蒸気攻撃”!!!!」」
グリーンとブルー、2人の大声が重なる。
爆音に似た音と共にブラウンとキミドリの視界が真っ白に染まった。
「ぐぅぅぅ・・・・熱い・・・!!!」
「こ、コレ・・・サウナじゃないですか!!!」
突如全身に襲い掛かったのは、高温の水蒸気。体感温度、実に100度以上。
現在、沸騰したお湯を全身に浴びているのと近い状態である。
しかも100度の熱波が来ているのではなく、100度のお湯が大気に充満している状態なので
衣服に付着するだけで最悪的な不快感と熱によるダメージを与える。
「キミドリ、この水蒸気の中から脱出するぞ!!」
「はい・・・私も早く出たいです。」
この空間から逃げ出すために横へと走り出す2人。
正面に逃げないのは正面から自分たちの現在地点よりもはるかに熱い温度の水蒸気が発生しているからだ。
「右へ逃げたわ・・・・向きを修正して・・・」
「解った。」
グリーンはリザードンの首を若干動かすように指示すると、リザードンは指示通り首を動かす。
すると水蒸気の空間そのものが炎の向きに合わせて動き出し、中の騎士たちを空間から逃がさない。
どこからか取り出した“シルフスコープ”を用いて、高温の水蒸気の満ちた真っ白い空間・・・“水蒸気領域”に
封じ込められている騎士たちとそのポケモンたちの様子を探るブルー。
この2人の連携があってこそ成立する、彼と彼女の“ウェポン”・・・“水蒸気攻撃”。
究極の水を究極の炎で蒸発させ、そこで発生する超高温の水蒸気で敵を“水蒸気領域”に封じ込める。
封じ込められた敵は高温のサウナに入っているような感覚を受けるが、最も温度が高い場所では大火傷を負う可能性がある。
本当の意味では“ウェポン”では無いのだが、トレーナーごと攻撃できるこの強力な一撃は、間違いなく“ウェポン”だ。
「ぐぬぅ・・・「水」が弱点のポケモンたちは完全に戦闘意欲を奪われたようじゃ・・・。」
「スピアーもアゲハントも羽が濡れて飛べません・・・。参りましたねコレ。」
額の汗を拭う2人、しかし、お互いの姿が見えているわけではない。
この時点で1分以上この空間に封じ込められており、その間にブラウンのポケモンはほとんど戦闘意欲が無くなってしまった。
強靭な肉体を持つポケモンたちが1分で戦闘意欲がなくなるほどの熱さと湿度。
しかも、脱出しようにもなぜか脱出できない絶望感が加わって、トレーナーの精神力を削ぎ落とす。
また1分・・・2分と、現実で流れる時間よりも果てしなく長く感じる時間の中で2人の騎士はひたすらこの攻撃を受け続けた。
朦朧とする意識、奪われる体力と精神力、そしてイライラが募り、思考することも出来ない。
そして3分経過すると、いつの間にか真っ白い水蒸気の空間は徐々に消え去り、涼しい風が吹いてきた。
真っ白い世界から解放される喜びは確かに大きかったが、自分のポケモンたちのぐったりした姿を見た瞬間
・・・・自分たちの敗北を否応無しに感じ取った。
見えてきた周囲の風景に安堵を覚えるが、その程度では奪われた体力と精神力は回復できない。
風景といえば、上空にいたはずのリザードンがいつの間にか地面で倒れており、その代わりにグリーンとブルーが立って騎士たちを見ている。
騎士たちはギリギリの精神力と体力で何とか立っているような状態で、とても“ウェポン”が発動できるような集中力など保っていられない。
それに、自分たちのポケモンたちも皆、同じような状態だ。
「ホホホ・・・そんなに身体が濡れちゃうと・・・この一撃を耐えられ無いわよ?」
ブルーはボールから一匹のポケモンを呼び出した。呼び出されたポケモンはピクシーのピッくんだ。
「さ〜て、ピッくん“ゆびをふる”よ!!」
「おいっ!!!」
思わずグリーンはブルーの行動を止める。
“ゆびをふる”という技は、何が出るかわからない技である。そんな技で折角のチャンスを無駄にするわけにはいかない。
「大丈夫よ。・・・だって、絶対負けないもの。」
青い瞳が力強く輝く。その輝きにグリーンはブルーの行動を止めるのを辞めた。
この時ブルーは確実な勝利の手ごたえを感じていた。慢心ではなく、感覚的に理解できる勝利。
知識や理解を超越した第六感で感じる勝利・・・・・・
経験が浅い人間には到底理解することができない、絶対勝利の感覚。
そんな感覚と共に、ピッくんの指が振られる。ゆっくりと振られる指・・・次第にその指が輝きだすとピッくんの身体も輝きだす・・・
「ピッくん・・・お願い!!!」
ブルーの願い通りなのだろうか・・・輝きだしたピッくんの身体から、青白いようなエネルギーがオーラとして溢れ出すと
ピッくんはそのオーラを冷たい風に乗せて、既にグロッキー状態の2人の騎士とポケモンたちにぶつけた。
青白いオーラは身を凍りつかせるような冷たさを発生させて、すべてのものを凍結させていく・・・・・・・
この技は「氷」タイプの大技・・・“ふぶき”。
既に湿っていた衣服と身体は“ふぶき”の冷気でガチガチに凍りつき、その動きを停止させる。
猛烈な“ふぶき”の後に残されたのは、ほとんど動くことの出来ないトレーナー2人とそのポケモンたち。
(さっすが、あの男の技ねぇ・・・・あの時さらわれて正解・・・なわけないか。)
ブルーがそんなことを心で想う間に、グリーンはボールを取り出して、そこからポケモンを呼び出した。
「・・・・止めだ・・・・・・。」
グリーンのその一言の直後、赤い風が凍りついたものたちの間を吹き抜けた・・・・・・
「アイタタタタ・・・これは、当分動けないわね・・・。」
「・・・そうだな。」
背中合わせで地べたにべったりと座り込むと、お互いに身体を預けあって2人は激闘の疲れを癒す・・・・
泥だらけの戦場に残されたのはすべての力を出し尽くして倒れるリザードンとカメちゃん。
そして戦闘不能になったポケモンたちと、赤い風の正体であるグリーンのハッサム。
加えて今のグリーンとブルーには見えない位置だが
確かに円卓の騎士の化石のブラウンと、女王蜂キミドリがバタリと地面に倒れている姿があった。
グリーンVSブラウン・・・決着つかず
ブルー VSキミドリ・・・決着つかず
○グリーン&ブルーVSブラウン&キミドリ●
決まり手・・・“水蒸気攻撃”(氷結)→ハッサム・“みねうち”
第17話(後編)へ・・・