AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する



青年の強さの理由・・・圧倒的な決着へ・・・・・・



いち早く2人の騎士を撃破した青年の親友たち。

彼らは究極の炎と究極の水の調和で執念の反撃を成功させた。

しかし、不安定な青年に調和の力など存在するはずが無く

青年は今、鋼の騎士に確実に追い詰められていた。

目の前に迫る巨大な物体、[硬き剣]の剣技が青年に迫る時

鋼の騎士は垣間見る。





青年の強さの理由と圧倒的な決着を・・・・

















 PAS Chapter3 第17話(前編) 鋼をも砕く青年の力 -Red or Bluck-



















 危機に対して迅速に対処するには、その危機が一体どんな危機なのかを知らなければならない。


しかし、もしもその危機が全く未知のもので、今までに経験したことの無いような危機だとしたら・・・・・・


こういう時に“達人”の域の人間ならば、そんな危機が起こる前に決着をつけるか、危機そのものに直面しないようにするそうだ。

だが、そんな危機が実際に起きてしまい、何らかの術をもって対処しなければならない場合、

危機に対して迅速に対処できる人間というのは、実戦経験が豊富な人間よりも、想像力が豊かな人間である。

迫る危機が起こすことをぱっと見で想像し、それ対する防御なり回避手段をとる。

想像が危機の正体とかけ離れていれば大きな失敗となるが、大体でもあっていれば危機の回避率は格段に上昇する・・・。





さて、青年に向かって飛んでくる高速回転円盤・・・この円盤、体重およそ550キログラムで半径は2メートル以上

円盤の高さはおよそ1.6メートル、そして回転している円盤(生物)の4本の腕にはそれぞれ[硬き剣]ぎ握られている。

この円盤の正体は、てつあしポケモン メタグロス。青年の対戦相手である円卓の騎士、鋼鉄のグレイのポケモンだ。

グレイのメタグロスが、グレイの傍にいる薄紫色の体色をした色違いクチートの念の力によって

高速回転するその姿はまるで、超大型の丸のこ・・・・・コレが自分の身体に接触したら一体どうなるのだろうか?




答えは考えるまでも無い。




接触した部分が例えば腕ならば腕が切れ、足に当たれば足が切れる。もちろん、首や頭、そして胴に当たっても答えは同じ。

刀剣等の刃物での人体切断は難しいが、丸のこなら楽勝である。回転力が強ければ、それはもう簡単にズバッと切れる。

こんな危険な物体が目の前に迫ってくる。それも特大サイズでだ。

もしもこの時点で上記のような結論を出した想像力が豊かな人間がいたとしても、それだけでは意味が無い。

目の前にこの危機を控える青年は鋼鉄のグレイとバトル(既にポケモンバトルを逸脱した)、死闘を繰り広げているのである。

危機を回避するだけでは二流、回避した上に反撃に転じて一流・・・そして、危機さえも砕くのが“達人”である。



(コントロールしているポケモンをまず叩く・・・!!)



迫り来る巨大丸のこ円盤。かすりでもしたら出血、深く入れば切断。・・・危機への対処は瞬発力が命だ。

青年の狙いはまず、あの円盤を操作していると思われる色違いクチートを叩くこと。

長考している時間は無い。危機への対処は瞬発力が命である。




「いくぞっ!!!」




黒いスーツでさぞかし俊敏な動きがしにくいと思われるのだが、青年はニョロと一緒に円盤に向かって真っ直ぐ突っ込んでいく。

その間に上空をプテが進み、地上と空中から青年はグレイとクチートへと一気に接近する。

正面から迫る巨大丸のこ円盤の動きは想像以上に早く、数秒しないうちに青年とニョロの身体を切断出来る位置にまで到達しかけた。



「それじゃあ、オレは殺せないぜ・・・」



迫る危機に熱くなるわけでも、焦るわけでもなく、冷静にボソリと呟く。

青年は一瞬のうちに姿勢を低くして、レスリングのタックルのように、飛んでくる巨大丸のこ円盤の真下に滑り込むように飛んだ。

それとほぼ同時にニョロも青年と同じように滑り込むように巨大丸のこ円盤の真下に滑り込む。

するとどうだろうか。地面に生える草が青年とニョロの身体を上手く、そして綺麗に滑らせて巨大丸のこ円盤の真下を潜り抜けさせた。



「なんだとぉ?!」



グレイ、そしてクチートは驚きを表情にはっきりと浮かべる。

青年とニョロはそのまま寝転んでいないですぐさま立ち上がると、それを待っていたと言わんばかりに

立ち上がる青年の両肩を上空から降りてきたプテの両足ががっしりと掴み、青年の翼になる。



「ニョロ、一気に攻めろ!!!」



青年の信頼がこもった力強い言葉がニョロに向けられる。

しっかりと頷くニョロは、力強い瞳を色違いのクチートに向けると、全身に力をこめてレアコイルを撃退した時の様に連打の構えを取る。

そしてその間に宙へと舞い上がる青年は巨大丸のこ円盤と対峙するべく、あえて接近する。

クチートに対して格闘攻撃が仕掛けられる距離にまで移動したニョロは、その大きな手で裏拳を放ちクチートをまず横へと殴り飛ばす。

殴り飛ばされたクチートに一切の隙と休みを与えずニョロは追撃を開始する。

強靭な脚力とバネで大きく跳躍すると、そのままクチートを踏みつける。そして、守りも反撃もさせないうちに

倒れるクチートに馬乗りになると、そのまま冷酷に拳を何発も振り下ろし続ける。

“技”を使って戦闘をするのではなく、己の肉体を用いて戦闘。 

“技”を温存していることが伺えるが、裏を返せば“技”が不要な相手ともとれる。


(あの男・・・“ウェポン”よりもエグいことを軽々と!!)


狂気に支配された“ウェポン”使いの騎士が目を背けるほどの残酷さ。

だが、今の青年にとってその程度は残酷とは思わない。それ以上の残酷と狂気を知っている人間なのだから。







 一方、上空で巨大丸のこ円盤の攻略法を考える青年。

初めは、コントロールをしているポケモンを叩けばどうにかなると思ったが、コントロールが一瞬おかしくなったと思った矢先

再び正確なコントロールを取り戻し、先程から執拗に自分の身体を切断しようと追い掛け回してくる。

どうやら円盤自体が、自分の身体を回転させる念だけでなく、自分の身体を素早く動かすように念を放っているようだ。

そこらの低レベルな「エスパー」タイプのポケモンならば、同時に2つの念を放つことは不可能だが

円盤の正体であるメタグロスならば、その程度の念の制動も可能である。


(この一撃なら・・・)


高速回転を続けるメタグロスに対して、青年の翼となるプテが青年の頭上から思い切り首を伸ばし大きく口を開けた。

何かを感知したのだろうか、メタグロスはもちろん回転をキープしたまま青年に向かって“とっしん”してきた。


「いけ、“はかいこうせん”!!!」


プテの口から真っ直ぐと光線が放たれると、一直線に向かってくる回転するメタグロスを見事に捉えた






・・・・・・・しかし・・・・・・・・






直撃したはずの“はかいこうせん”だったが、あまりの高速回転で直撃部分の光線がかき消され全くダメージを与えられていない。

光線が直撃している程度ではメタグロスの“とっしん”の勢いを止めることはできず、メタグロスは高速回転状態で

青年とニョロを切断するために猛スピードで光線をかき消しながら突っ込んできた・・・




「プテ、足放せ!!」




こんな命令、普通のポケモンなら、そして普通のポケモンとトレーナーの関係ならば絶対に考えられない。

ちなみに現在プテが羽ばたいていた高さは地上からざっと10メートル程度。

仮にここで主人の両肩を掴む足を放したりしたら、主人の命は保障できない。

だが、あのメタグロスが直撃すればプテも青年も命の保障は出来ない。ならば・・・

はかいこうせん”を撃った事により鈍くなっている動きだったが、青年の命令通りプテは足を離すと

それと同時に今以上の高さへと羽ばたき舞い上がり、メタグロスの攻撃を回避する。

落ちていく青年。黒いスーツが風を受けてバタバタと煩い。

青年はボールホルダーからボールを1つ取り出して、落ちながら地上に向かって投げつけた。



ただ闇雲にボールを投げれば開閉スイッチが押されるわけではない。普通のポケモンバトルにおいても

投げたボールが地面にぶつかり、その後転がるなどの動きがあってから初めて開閉スイッチは押されるものである。

直に開閉スイッチを狙うのは、そうそう簡単な技術ではない。それに今のように、生死を分けるタイミングで

それをやってのけるのは相当な精神力と技術を持った人間で無ければほぼ不可能。

だがここでそれをやれるかどうかで、その人間のトレーナーとしての技量が解るポイントでもある。

落ちていく青年、加速していく落下スピード。このまま何も無く地面にぶつかれば大怪我は避けられない。




しかし・・・地面に投げられたボールは、着地と同時に開閉スイッチを叩き中からポケモンを呼び出す。

呼び出されたポケモンはいねむりポケモン カビゴン。 青年は“ゴン”と愛称をつけたポケモンだ。

ゴンは呼び出されて早々落ちてくる主人を確認すると、それを手でキャッチするというよりも

自分の身体を仰向けにして、【あついしぼう】のある腹部で主人の身体をボフンと受け止めた。

受け止めた瞬間、ゴンの腹部はまるでクレーターだ出来たのかのように凹み、主人の受けるべきだった衝撃を物語る。



「・・・サンキュー、ゴン。」



青年は感謝の言葉をかけるが、その表情をゴンに見せることはない。

落ちている先程投げたボールを拾い上げてゴンをボールに戻すと、視線をメタグロスのほうに向ける。

メタグロスは高速回転したまま、先程の“とっしん”の勢いをやっと落としきり、大きく空中でUターンをしているところであった。

その間にも上空のプテが“はかいこうせん”や“げんしのちから”で攻撃を仕掛けているが

何れの攻撃もメタグロスの高速回転の前に無効化されてしまい、一切のダメージを与えられていない。

プテの必死の足止めもむなしく、ほぼ確実にUターンし終えたら再び自分目掛けて“とっしん”してくるのだろう。

そんなことを理解して次の一手を考えていると、青年に向けてニョロの身体が勢いよく吹き飛ばされてきた。

青年は飛んでくるニョロに気付くことができず、思い切りニョロの背中に顔面から激突すると2人して地面に倒れこんだ。



「つぅ・・・大丈夫かニョロ?」



ニョロは即座に立ち上がり主人を立ち上がらせようと手を貸した。その時、青年はその手をとる時にニョロの身体を見て驚いた。

クチートの念撃を受けての傷というよりも、何かに切り裂かれたような痕がいたるところについている。

特に先程自分が激突した背中は大きく切りつけられており、戦闘終了後傷跡が残るだろう・・・。

グレイの方に視線を移してみると、グレイはいつの間にか新しくハッサムを呼び出していた。

おそらく、クチートに対して、馬乗り状態での打撃・・・マウントポジションをとったニョロの攻撃を

カットするためにグレイがボールから呼び出したのだろう。 洒落ではないが、文字通り“カット”してくれたようだ。

迫り来るメタグロス、さらにグレイが呼び出したハッサムもこちらに対して攻撃態勢をとっている。



もう、時間は限られている・・・・・・。



青年は目を瞑ると、深く、深く深呼吸をした・・・・・・

閉じられた目の下で瞳の中から赤が消え去り、青年の黒き瞳に一切の光が無くなる。

その様子を見たニョロも、青年と同じように深く深呼吸をして、両目を閉じて集中する。

2人の集中が高まり、今、青年とニョロの心が1つになると




閉じられた目蓋によって真っ暗になった世界の中では、刹那の時が永遠に等しい時間へと変化する・・・・・・・















どうするか・・・
あの巨体を一撃で仕留めるにはどうしようか・・・





オレに任せろ・・・
オレの拳でアイツを砕く・・・





やれるのか・・・?





正直、微妙かもしれない・・・
でも期待してくれるなら、期待に応えるまでだ・・・






いつも助かるよ・・・
ありがとう・・・・・・






これからも助けるさ・・・
それがオレに出来ることだから・・・・・・












どんなに道を踏み外そうと・・・
どんなに酷いバトルをしようと・・・
オレは・・・
オレたちは・・・
君について行く・・・・・・!!!




君は一人じゃない・・・・・・!!!!!











青年は何か大切なことを確かに思い出した。








この時の青年の体感時間は10分。・・・次の一撃を計画し、精神を統一するには青年には十分すぎる時間だ。

ちなみに、現実での経過時間は僅かに3秒である。まだ、メタグロスは青年目掛けて突っ込んできているが

青年の身体を捉えられる位置にまでは到達していない。 ハッサムもやっとこれから攻撃を仕掛けようかというところだ。

実戦で3秒目を閉じるという行為は普通出来ないが、それだけの隙を作らせてしまったグレイ。

というよりも、青年が短すぎる時間を長い時間に転換しすぎている。グレイにミスがあったわけではなかった。

唯一ミスがあるとすれば、3秒を10分に感じるという域にまで到達したトレーナーを相手にしたのがミスだ。

青年は黒いスーツをいつでも脱げるようにボタンを外すと、目を開きニョロと共に突っ込んでくるメタグロスの方を向く。

再びの“とっしん”をニョロと反対の方向に、大きく横っ飛び。そして身体で着地して回避する。

攻撃を外したメタグロスは再び攻撃を仕掛けるために、少し離れた場所で大きくUターンをし始めた。

寝転んだ状態から素早く起き上がると、その時には青年の目の前にはグレイのハッサムが斬撃を繰り出そうと待ち構えていた。



「一張羅だけど、くれてやるよ。」



ハッサムに自分のスーツを投げつけると、それでハッサムの視界を封じた。

その隙にハッサムの後ろに回りこむと、青年は思い切りハッサムの背中を蹴飛ばした。その時の青年の瞳にはあるものが確かに映っていた・・・

バランスを崩し、前につんのめるハッサム。未だ青年の黒いスーツによって視界を奪われてもがく事しか出来ない。

もがいているハッサムに申し訳ない思いを抱きながら、青年は地面に急いで伏せた。



・・・この瞬間、グレイの“ウェポン”の恐怖がハッサムを通して理解できた。



青年の頭上を凄まじいスピードで通過したメタグロス。青年は再び素早く立ち上がると、再びUターンしてくるメタグロスを警戒する。

警戒している最中に一瞬だけハッサムのいた方に目を向けると、青年は言葉を吐いた。



「やっぱ当たっちゃマズイな・・・」



漆黒の瞳で口元をニヤリとさせる青年、いや・・・ブラックに、グレイの狂気は再び恐怖で打ち消された。

2メートル近い大男の顔から血の気がみるみる引いていく。 



・・・・・・その視線の先には上半身と下半身に分かれ、絶命した自分のハッサムの亡骸が映し出されている・・・・・・



今は自分で視線をを外している自分よりも背の低いあの男に完全に怯えた。



「・・・“ポケモンバトル”が出来ないのなら、オレには永久に勝てないぞ?」



その光無き漆黒の瞳で自分を睨まれた時、グレイはブラックの中に未だ眠る“戦鬼”を見た。

この男はまだ、瞳の奥に眠るこの“戦鬼”の力を何も揮っていない。

そして自分はこの男の“戦鬼”の力を呼び覚まさせることも出来ない程度のレベルだということを力強く感じた。

ブラックはメタグロスを待ち受ける最中に、ワイシャツの袖を捲くりあげて両腕を露にする。

その時、グレイの灰色の瞳がギョロリと青年に釘付けになった。





「・・・ちょっとだけ、本気出すぞ!!!」





その一言をブラックが発した瞬間、グレイの灰色の瞳は動かなくなった。

グレイは恐る恐る上着のポケットに入っていたあの道具・・・バトルバイザーを取り出すとガチャリと目を隠すように着用した。


「スキャンスタート・・・」


その声は震えており、見る前からその結果が解っていたような気がしたが、どうしても確かめたくなった。

バトルバイザーから放たれる赤い光が、再び大きく横っ飛びしてメタグロスを回避するブラックを捉えた。

グレイのバトルバイザーには、ブラックの同調率がデジタル数字で表示される・・・



(相対値10パーセント、絶対値60パーセント・・・!!? コイツ、本当に人間か?!!)



驚愕の数値にグレイの身体は震え上がった。



前もって断っておくが、トレーナーがポケモンとその心を通じ合わせる力、即ち“同調率”には

相対値、絶対値、そしてそれぞれの限界値・・・相対限界値、絶対限界値が存在している。

それぞれの詳細は後に記すが、ここで理解してもらいたいことは一般のトレーナーの相対限界値である。

一般のトレーナーの相対限界値は、平均で5パーセントである。ただし、数百万、数千万人に一人、6、7パーセントが限界値という人間もいる。

この時点でご理解いただけると思うのだが、ブラックの相対値は完全に異常値である。

次に絶対値というものが対で存在しているが、それはその人物のもつ相対値を100パーセントとして換算したときの値である。

今までの戦闘において示されてきた同調率の値は全てこの絶対値であることも理解しておいてもらいたい。

バトルバイザーに示された結果を理解すると、グレイは今の自分の状況に自然と納得していた。







完全に相手にした人間が間違いである。同調率が示すように、ここまで濃厚なポケモンとの連携を魅せ

尚且つ、落ち着いた精神と素晴らしき運動能力。さらに、実戦経験差・・・敗北要素はこんなにもたくさんあった。

グレイはバトルバイザーを外すと上着のポケットにしまい、メタグロスとブラックの姿を交互に見た。

間違いなく後、数分もすれば、あの男はメタグロスの攻略法を編み出し、それでメタグロスを倒し勝利するだろう。

その証拠に、メタグロスの攻撃(といっても、回転状態での“とっしん”だが)を何とか全身で回避しながら

動きの法則性、スピード、攻撃時の安全地帯、この攻撃の弱点を漆黒の瞳でギョロギョロと確認している。

もし、あの男を殺すなら、手段は一つ。全く新しい動きで一撃で殺す・・・これ以外に方法は無い。

そう思い立ったグレイはメタグロスとブラックの位置を再び確認する。

何とか回避を続けているブラックの傍には傷だらけのニョロボン一人。上空のプテラはいつの間にかボールへと戻されていた。

ブラックの傍にポケモンが居ることを考えると、どうやら攻略法は完全に編み出されたようだ。

それでも様子を見て回避を続けているところを見ると、反撃のタイミング待ちと言ったところだろう。






今以外、最後の手段で攻撃を仕掛けるタイミングは無い・・・・・・!!!





「メタグロス、そのまま行けぇ!!!」


グレイは吼えた・・・・









 ブラックに真っ直ぐ突っ込むメタグロス。しかし、今までどおり大きく横っ飛びして回避するブラックとニョロ。

そしてこれも今までどおり、地面に倒れこみ、即座に立ち上がる・・・ここも全て今までどおり。

だが、メタグロスだけは今までどおりのUターンではなく、丁度ブラックの真上に舞い上がった・・・



「メタグロス、“独楽”形態!!」



最後の一撃に全てを賭けるグレイ。 この一撃であの男を殺せなければ完全に敗北である。

メタグロスは空中で回転をピタッと止めると、今まで大きく広げていた腕を自分の身体の下に微妙な角度で曲げた。

するとどうだろう、手に持っていた4枚の[硬き剣]の刃先だけががガッチリと接触し1つの“点”を作り出した。

この“点”の存在によってメタグロスは逆円錐形となった。・・・・即ち“独楽”。

メタグロスが空中で再び高速回転を始める。エアームドが倒れた今、メタグロスが持つ4枚の羽の刃が最後の[硬き剣]。

そして、メタグロス自身も、グレイにとっての最後の[硬き剣]である・・・・・・







「鋼四刀流、“大回転・旋風独楽落とし”!!!」







最終武器の技がグレイの口から発声された。

バトルに、死闘に、命の取り合いに決着の時が訪れた・・・・・・










「こいっ!!!」


高速回転で落ちてくるメタグロスを見上げるブラックとニョロ。

傷だらけのニョロと、ブラック目掛けて真っ直ぐ落ちていくメタグロス。

このメタグロスの一撃をその身体で受けとめようものなら、身体はぐちゃぐちゃの挽肉になり、ニョロとブラックの合いびき肉になってしまう。



「ニョロ、お前の拳で決めるぞ!!!」



ブラックの声でニョロは全ての力を右拳に籠める・・・

この一撃、もしもニョロの拳がメタグロスを打ち破らなければ、ニョロと共に青年はグチャグチャのミンチになることが確約される。

それもそのはず、ニョロに向かって、そして青年に向かって落ちてきている高速回転するメタグロスの今の状態は

例えるならば、“ドリル”・・・・・・しかも、ドリル直撃時の威力は550キログラム+重力による落下の加速。

(ちなみに550キログラムとはメタグロスの平均的な体重の値である。)

550キログラムの物体が落ちてきただけでも十分なのだが、そこに加えて“ドリル”だ。

グレイはブラックの惨い死に方を期待しているのだろうか・・・







「ニョロ、“きあいパンチ”だ!!!!!」







ブラックは右腕を思い切りメタグロスの落ちてきている空へと勢いよく伸ばす。

その腕の拳は黒いグローブで硬い握り拳が作られており、アッパーカットを打っているように見える。

まるでギロチンのように、真っ直ぐ、そして早く落ちてくるメタグロス。

それに対して、屈伸により発生する上方向への運動エネルギーを利用してのアッパーカット、

通称“カエルアッパー”で“きあいパンチ”を打ち込みにいくニョロ。

この時ブラックは一切、回避の動きをしなかった。それだけニョロのことを信頼しているのである。

4本の[カラドボルグ]の先端部分の接点が怪しく輝き、ニョロと、その下の青年を殺そうと落ちてくる。

グレイはこの技を“独楽”と表現したが、下から見上げればそれは大きなドリル。

直撃を許せば身体はグチャグチャに引き裂かれ、メタグロスの重さで潰れ、ハンバーグの種になってしまう。

迫り来る確実な死。それも非常にグロテスクな死。だれがこうなった死体、いや、死骸を集めるのだろうか?






「死ねぇぇぇぇーーーーー!!!!」







再び狂気に包まれるグレイの精神。


上空のニョロへ握り拳の右腕を伸ばし続けるブラック。


超高速回転状態で落ちるメタグロス。


それを必殺の拳で迎え撃つニョロ。








天空から落ちてくる巨大旋風。


迎え撃つ地上からの一筋の雷。


狂気の瞳で勝利と、青年の死を確信するグレイ。


真剣な表情をすると、腕を伸ばしたまま静かに目を閉じたブラック。









そして・・・











一筋の雷が巨大旋風の“点”を捉えた!!!











世界の色が反転し、時が止まる・・・・・・












しかし、そんな中で目を閉じていた青年の口元がニヤリと、怪しげな笑みを浮かべる。

このグレイの最後の攻撃も、青年の想像力において完全に想定済みの攻撃だったのだろう・・・・・・








ドンッッッ!!!








鋼が砕け、折れ、そして凄まじき衝撃音。音と同時に空中に衝撃波の波紋が広がる。

また止まる時。色が反転した世界で、ニョロが力尽きたかのようにゆっくりとその目を閉じた。



「[硬き剣]を・・・・・・折った・・・・・・!!?」



グレイの目はまさに“点”になっている。

メタグロスに全力の拳を打ち込んだニョロの身体が力無くブラックの元へと落ちていく。

その直後、メタグロスの回転は止まり、赤い瞳が真っ白になった。

ブラックは真上に伸ばしたままだった右腕を、ゆっくりと一度下ろし、腰の辺りで右下に腕を払った。

同時にメタグロスのあの重く、大きな身体が思い切り打ち上げられた。



「悪いな・・・・・・。」



ブラックは落ちてきたニョロを両腕で受け止めてあげると、グレイに背を向けた。

グレイは背を向けられた理由が自分の敗北と理解できた。

激しい絶望の中で、自分のメタグロスの行方を確認するために空に顔を向けた。

その時、自分に迫り来る巨大な影にグレイは恐怖のあまり身動き1つ取れなかった。




「ひっ・・・」




大男から聞こえた最後の一声は、非常に弱々しいものだった。

凄まじい勢いで地面に叩きつけられたメタグロス。

ギリギりなのか、狙ったのかは知らないが、辛うじてグレイはその下敷きになることはなかった。

しかし、そのショックと落下時の音、衝撃波でグレイの目はメタグロスと同じように白目を向くと

仰向けにバタリ地面に倒れてしまった・・・。


















(グレイ・・・お前の敗因は、ポケモンバトルが出来なかったこと・・・)


ブラックはずっとポケモンバトルをしていたに過ぎない。ブラックの“戦鬼”の部分が出てこない理由はそこにあった。



(ただ、オレの推測通りなら・・・お前は、そういう騎士であった以上、オレには絶対に勝てないだろうな・・・)



ブラックは力尽きたニョロに「おつかれさま。」と声を変えてあげると、ボールへと戻してあげた。



(後は4人ってとこか・・・グレイが居るのなら、あの目つきの悪い女も居るんだろうな・・・・・・)



グレイのことを一度も見ることなくブラックはその場を去った・・・










○ブラックVSグレイ●
決まり手・・・ニョロ・“きあいパンチ









第18話(前編)へ・・・