AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する



絶体絶命の危機・・・・・・反撃の狼煙を上げろ!!



グリーン気絶、ブルー危機。

あまりにも凄まじい威力の“ウェポン”の前に2人は沈む・・・。

そしてこの2人を追い詰めた対戦相手



化石のブラウン・・・

女王蜂キミドリ・・・




“円卓の騎士”であり、“ウェポン”使いでもある彼らに

グリーンとブルーはこのまま負けるしかないのだろうか?







反撃の狼煙は、ダブルバトルの始まりと共に・・・・・・



















 PAS Chapter3 第16話(前編) 意地の激闘























 泥の弾丸が飛び交っていた戦場に残されたのは、倒れる2匹のポケモンと1人のトレーナー。

倒れるトレーナーの周囲は泥と岩が多い尽くし、トレーナーもポケモンも見事にぐちゃぐちゃの泥だらけだ。

このトレーナーとポケモンをこの状態にしたのは、今、この倒れるトレーナーの元に近づく1人の老爺。



“円卓の騎士”・・・・化石のブラウン。



近づく彼のすぐ後ろには、かっちゅうポケモンのアーマルドがついてきている。


「カカカッ・・・所詮小童。 騎士に勝てるはずが無いだろうが。」


力無く倒れている茶髪ツンツン頭のトレーナー、グリーンを見下ろして老爺ブラウンは目を細めて馬鹿笑い。


「さて、小童も倒したことだし・・・キミドリの援護にでも向かうとするかのぅ。」


ブラウンの薄い茶色の瞳がピカリと光る。

くるりと倒れているグリーンに背を向けてブラウンはキミドリとブルーが戦う戦場に向かい歩き出した・・・・・・







ガンッ!!!







金属が鉄板にぶつかった様な音。



「カマを掛けるとは・・・どうしようもない爺さんだな。」


「“拳弾こぶしだん”程度で沈むとは思っておらんかったしのぅ。」



倒れていたグリーンは、ブラウンが背を向けた瞬間にボールから若干弱っているハッサムを出して攻撃を仕掛けたが

それをアーマルドと、一瞬の内に新たに呼び出されたユレイドルがその攻撃を2体で受け止めた。



「アーマルド、ユレイドル・・・“げんしのちから”!!」



2体は主人あるブラウンの命令どおり、己の遺伝子に眠る太古からのエネルギーを開放した。

開放と同時に、総合的に戦闘能力が向上する・・・・・・!!!


「ハッサム、“
てっぺき”!!!」


守りの体勢をとり、開放されるエネルギーから身を守る。

エネルギーの波動に傷つきながらも、守りの体勢によって高まっていた防御力で戦闘不能だけは何とかさける。

グリーンはエネルギーの余波を受けながらも、既に戦闘不能になっているカイリキーとゴルダックをボールへと回収しながら

立ち上がり、素早く2体の化石ポケモンたちから距離をとる・・・。


「ハッサム戻れ!!」


ハッサムをボールへと戻すと、既にダブルバトルの形式となってしまったので、2つのボールをホルダーから開放し

サイドンとポリゴン2をボールから呼び出した。



(タイプ的にはサイドンが足を引っ張るか・・・・・・ならば!!!)



 グリーンは今までに無い戦法をとった。

ポリゴン2を前衛に、そしてサイドンを後衛へと展開。体格的、体力的にもサイドンが前衛というのがセオリーだ。

セオリーの見解として、普通、格闘戦に優れるパワーがある存在が前衛を務めるという一般見解があること考えてもらいたい。



「ほぉ、後ろのでかいのが前じゃないのか。別にいいがのぅ・・・」



ブラウンは薄い茶色の瞳をギョロりと動かして、グリーンの注意深く見つめる。

グリーンの脳内で描かれる作戦・・・前衛を務めるポリゴン2が“
テクスチャー2”で自分自身のタイプを岩タイプに変更し

ダメージの半減を狙うというものだ。さらに、岩タイプに強い攻撃を相手が繰り出すとしても、今度は“
テクスチャー”で

再び自分のタイプを変更し、確実にダメージの半減を狙うのである。

しかし、ダメージの半減を狙ったとしても、2体からダメージを受ければそれは一体の攻撃を受けたと同じとなる。

要するにポリゴン2を一時的に壁役とするわけだが、ただ単にポリゴン2を傷つけて難を逃れる、なんていう策をグリーンはとらない。

確実にポリゴン2の犠牲以上の効果を生み出す攻撃がそこには存在しているのである・・・・・・!!!

ブラウンの薄い茶色の瞳がギロリとグリーンを睨むと、ブラウンは既に攻撃態勢を整えていた自分のポケモンたちに“待て”を掛ける。



「小童・・・何を考えているか知らんが、そうするなら・・・こうするまでよ。」



ブラウンの眼が血走り始める。再び[タスラム]が発動されるようだ。

先程よりも5メートルは近い。この位置で先程の攻撃を受け続ければ、数秒としないうちに戦闘不能になってしまう。





「この至近距離での[タスラム]に耐えられるかのぉ?」





威圧的で且つ怪しげな笑みを浮かべるブラウン。ブラウンの発言の中にあった[タスラム]という単語を聞いた瞬間、

アーマルドとオムスターの足元が液状化を始めた・・・・・・。

薄い茶色の瞳をギョロギョロ動かしてグリーンの出方を伺うブラウン。しかし、その瞳の過度な動きにグリーンが反応しないはずはなかった。



(あの瞳の動き・・・人を威圧するというよりも、“観察”している動きだ・・・)



相手の動きを“見”することはあっても、“観察”することは滅多に無い。

グリーンはギョロギョロこちらを“観察”するブラウンの瞳を鋭い視線で捕まえると、ブラウンは慌てながら目蓋を閉じた。





「[タスラム]・・・“拳弾”!!!」





何かを誤魔化すように下された“ウェポン”発動。先程より近い距離で放たれる泥を纏った岩が勢いよく、

まるでマシンガンのように、秒間何十発という速度で発射されポリゴン2と、その後ろに居るサイドン、そしてグリーンを狙う。

このレベルの速度と連射力を得ることに成功したのは、まず、この“ウェポン”・・・[タスラム]を2体のポケモンで放っているところにある。

そして次に、完全に作業を分業させた結果ことである。オムスターが液状化した地面の泥を“マッドショット”の要領で飛ばし

飛ばされた泥にアーマルドが地中や辺りにある石や岩を打ち込んで“拳弾”を作り出す・・・。

1つの作業に集中できればそのスピードは飛躍的に上昇することは事実である。



「“
テクスチャー2”!!!」



グリーンは予てからの作戦通り、ポリゴン2を一時的な壁役にする。 

仮にもこのバトルが“ポケモンバトル”である以上、相手のポケモンたちは特別な命令を受けない限りポケモンを狙わざるを得ない。

アレだけの連射力と速度をした攻撃も、ポケモンバトルである以上という理由で、全てポリゴン2へと向かっていく。

このことを十分に理解していたグリーンはサイドンの後ろに咄嗟に隠れて、先程のように流れ弾に当たらないように注意する。

そして発生したこの“間”を利用してサイドンに大技発動のための準備をとらせる・・・・・・。

ポリゴン2は“
まるくなる”で防御姿勢をとって、何十、何百発の泥球をその身体に受ける。

体力は時間と共にガリガリと削られる。しかし、通常なら数秒ともたないはずだが、既に10秒以上は攻撃を受け続けている。

グリーンがポリゴン2を壁役としたのには、“
テクスチャー2”によるタイプによるダメージ半減を狙っていただけでなく

ポリゴン2の特性である【トレース】で相手ポケモンの特性である【カブトアーマー】を自分の特性として利用し、

アーマルドの堅牢な守りを形だけながらも得て、守備力の向上を狙うという策も含まれていたのである。

しかしそれでも、もう10秒は持ちこたえることはできないだろう。


(耐えろ・・・・・今は耐えろ・・・・・・!!)


グリーンの心がポリゴン2に伝わろうかという瞬間、ブラウンの瞳がギョロリと動いた。




「ええぃ!!! 散らせぇぇ!!!!!」




ブラウンが老人と思えないほどの大声で絶叫。この声を聞いたアーマルドとオムスターは今までの攻撃方法を変化させた。

今までの攻撃方法が一点集中だとすれば、ブラウンの絶叫後はただめちゃくちゃ。

何の規則性もなく、とにかくめちゃくちゃに泥球を撒き散らす。

すると、必然的に流れ弾の量も増加、さらに、その攻撃によってグリーンはサイドンの背から出てくることができなくなった。

そしてグリーンがサイドンから距離をとれないということは、即ち、サイドンが動けないということである。

サイドンが動けなければ、大技を仕掛けることはできない。特に、至近距離での大技は仕掛けることができなくなった。

案の定、泥球がポリゴン2だけでなく、後ろに控えるサイドンにも当たりだした。大技への集中が自然とできなくなるサイドン。

ブラウンの知識から言わせてもらえば、サイドンの使える大技の中で最も強力なものが“
つのドリル”である。

じしん”も強力な技ではあるが、今の状態ではそれを放つ隙もなければ、相手の弱点を突く一撃でも無いのであまり効果が期待できない。



ブラウンの瞳がギョロリと再び動く・・・・・・。








「ポリゴン2、最後の力を振り絞れ!!“
サイコキネシス”!!!」




泥球の直撃を受け続けたポリゴン2は、グリーンの命令通りに最後の力を解き放ち、途切れてしまう集中力だが強力な念を放つ。


そして、最後の力で発生させた念の対象は・・・・・・



「泥球自体を狙え!!!」



ポリゴン2、決死の念撃。めちゃくちゃに飛んでくる泥球全てのコントロールを念によって支配すると、泥球の動きを止めた。

その展開に驚いたアーマルドとオムスターの隙を突いて、後衛に控えていたサイドンがグリーンを背に乗せ、

前傾姿勢で頭の角を勢いよく回転させ、一気にアーマルドとオムスターに向かって突っ込む。

その様子をブラウンも瞳がギョロギョロと睨み続ける・・・・・・




「サイドン、“
つのドリル”!!!」




グリーンが大声で叫ぶ。すると、今まで以上の回転速度でサイドンの角は回転する。その速度は、今にも竜巻でも起こしそうな勢いだ。

距離は一気に詰められ、サイドンの回転する角がアーマルドとオムスターに直撃するまであと1メートルという距離であった。




「アーマルド、オムスター・・・[タスラム]・・・“魔弾”!!!」




驚きから開放された2体は、ブラウンの命令通りに一発の泥球を作り、サイドンの足目掛けてそれを撃った。

立った一発の泥球。ただし中には岩入り。従来の“拳弾”と呼ばれていた程度の泥球ならどうにかなったが

今度の泥球の中に入っていたのは、今までよりも大きく重い岩。しかも、泥の分量が少なく、クッション効果などは無い。

単純に、“
マッドショット”の泥を射出する推力を“ロックブラスト”で放たれる岩や石に加えた複合攻撃・・・・・・

今まで何の目的があってこの真なる力を封じていたかは知らないが、これが本当の“ウェポン” [タスラム]。

サイドンの足首に当たった岩は衝撃で砕けると、同時にサイドンの足の骨を砕き、サイドンを大きく前に転倒させた。

転倒と同時にブラウンの瞳がギョロリとサイドンの背から前に飛ばされたグリーンの方を向いた。そして・・・







「ポリゴン2、“
サイ・・・”「ポリゴン2を狙えぇ!!!」







グリーンが保険として残しておいた、静止したままの泥球を念で飛ばしての反撃を完全に先読みしたブラウン。

再び、年に似合わない大声を上げると、アーマルドとオムスターが共同して大きめの“魔弾”を作り出し、それで射撃。

かなり大きめの岩が、泥の推力も得て一気に加速すると、そのままポリゴン2に直撃。岩が砕けると同時に、

ポリゴン2は大きく吹き飛ばされ、戦闘不能になってしまった。

残された動けないサイドンとグリーン。サイドンもグリーンも全身泥だらけだ。



(万事休すか・・・・・・)



グリーンは立ち上がりサイドンをボールへと戻すと、じりじりと迫ってくるアーマルドとオムスターから後ずさりで距離をとり始めた・・・・・





























 「げーむおーばーですね?」

「アラ・・・チクッとくるんじゃないの?」


ブルーを追い詰めたキミドリは、ニッコリ笑顔で自分の手持ちであるスピアーの腹の針を突きつけさせている。

何か一瞬、気の迷いや魔が差したら間違いなくスピアーの針はブルーにグサリと突き刺さり、何らかの毒液を注入するかもしれない。

だが、この状況下でもブルーは堂々とキミドリと話す。これがハッタリか何か策があるかは全く不明だ。




2人の間に沈黙の駆け引きが行われる・・・・・・




ブルーはキミドリの瞳をひたすら直視し続ける。対してキミドリもそれを真っ直ぐ見つめ返す。

しかし、その状態はそう長く続かなかった。




ギョロギョロ・・・・・・




キミドリは真っ直ぐ見てくるブルーの視線を逸らし、ブルー全体を見るようにギョロギョロとブルーを見始めた。

不審に思いブルーが不思議そうな表情を浮かべる。しかしそれでもキミドリの瞳の動きはおとなしくならない。



(この娘・・・なんでギョロギョロとアタシを見るのかしら?)



執拗な力強く、不審な瞳の動き。薄い黄緑色の瞳の動きを一度気にすると、なかなかその動きから視線を逸らすのが難しくなる。

自然とブルーはキミドリの動く瞳を追っていた。すると、ブルーの冷静な観察眼はキミドリの瞳に何かを見た。




(コンタクトレンズ・・・・・・??)




ブルーがそんなことを思った瞬間、キミドリはスピアーに針を下げさせた。



「貴女が何かを企んでいることは間違いなさそうです。」
「そうよ。よく解ったわね。」



ブルーはまるでその答えが当たり前といった表情でキミドリを見つめた。

警戒を強めるキミドリとスピアー・・・・・・。

ニヤリと、ブルーが企みの笑みを薄っすらと浮かべた。



「くっ!!!」



キミドリの苦しみの表情と声。

まさに一瞬の出来事。背後から桃色と紫色の中間色といった感じの粘土のような物体が

キミドリの身体をきつく羽交い絞めの状態で完全に拘束した。




「ハイ!!そこ動かないで!!! アンタのご主人様を絞めおとすわよ?」




倒れたままだったブルーはスピアーの方を向き、指を差しながら起き上がる。

キミドリを拘束する物体・・・ブルーのメタモン、メタちゃんは、自分の身体の一部をニョキニョキとやわらかく伸ばし

それを拘束するキミドリの首にするりと巻いた。それを見たスピアーは羽音を激しく鳴らしながらも、攻撃態勢を解いた。



「ゴメンなさいねぇ・・・・。こうでもしないとアタシに勝ち目が無いの。」
「くるしーです。放してくださ〜い。」



バタバタと暴れようとするキミドリをメタちゃんがしっかりと拘束する。その様子を見ているスピアーはオロオロするばかりだ。



「1つ・・・質問していいかしら?」
「こんなことする人に、答えることはありませ〜ん。」



当然の反応だったので、ブルーは別に気にすることもなくツカツカと拘束されているキミドリに近づいた。

そしてキミドリの顔に手が届く距離で止まると、彼女の頬に手を優しく当てて薄い黄緑色の瞳を覗き見る・・・。





「このカラーコンタクト・・・それでアタシの事を見ると、どんな風に見えるのかしら?」





キミドリを見つめるブルーの瞳は、確実に何かの核心を突いている自信にあふれる瞳。

ブラックの洞察、観察眼並みの分析能力と観察眼を持つブルーの眼力。伊達に大卒研究員をしていない。

ブルーの質問に黙りこむキミドリ。彼女は眼を閉じて俯くと、バトル場を静寂が包み込み、スピアーの羽音だけが響き渡る。

そこへと今までブルーのニドクインであるニドちゃんを攻め続けていたキミドリの2匹のポケモン、バルビートとイルミーゼが戻ってきた。

戻ってきたのは2匹だけで、ニドちゃんの姿は無い。ブルーはちらりとその結果を確認すると、少し渋い顔をした。



「いいかしら!!アンタたち少しでも妙な動きをしたら、ご主人様の身が危ないわよ?」



まさに悪役の台詞だったが、今の状態を考えてみればこれくらい言わなければ現状を乗り越えるのは難しそうだ。

それでも十分この台詞は効果的で、バルビートとイルミーゼの動きを完全に止めることができた。

これが成功しなかったら、3匹のポケモンに一斉に襲われて、下手すれば命は無かっただろう。






しかし・・・・・・問題はこれからである。

・・・・・・ここからどうやって逆転していくか。目の前にある問題は予想以上に大きい。

仮にここでキミドリを絞め落としたとしたら・・・逆上した彼女のポケモンたちに襲われひとたまりも無いだろう。

ブルーは逆上したポケモンたちをどうにかできるほどのポケモンを現在所有していない。



(あ〜。あのバトルバカに対複数時のラクな戦闘方法を聞いておけばよかった・・・)



言ったは良かったが、その後が思いつかない。 せめてバルビートとイルミーゼの2匹が居なければ

あの危険すぎるスピアーをカメックスのカメちゃんで上手く対処できた可能性があったのだが・・・・・・

表情には出さないが、逆に追い詰められて危機を迎えるブルー。





・・・・・・その様子を俯くキミドリの瞳がひそかに、ギョロリと見つめる・・・・・・







「ふふ〜。さすが黒い太陽のお仲間さんですね・・・。」


突然話し始めたキミドリ。まだキミドリの顔に手を当てたままだったブルーは、俯いた状態のキミドリに意識を向ける。


「・・・流石ってどっちが?」
「もちろん、このコンタクトのことですよ。」


俯いた状態で話し続けるキミドリを不審に思いながらも、ブルーはとり合えずその会話を続ける。




「まぁ、そのコンタクトの機能はよく解らないけど・・・1つだけ言えることは、アンタはその力に頼りすぎってことね。

  バトル中にあそこまで不自然に瞳を動かしていたら、誰だって瞳を気にすると思うわよ?」



「すごいなー。今までたくさんの人と戦ってきましたけど、この瞳にコンタクトが入っていることが解ったのは貴女だけですよ?」





ブルーはあくまでも余裕があるように振る舞い、キミドリは俯いたまま一切の表情は見せない。



緊迫した空気が張り詰めているはずなのに、どこか和やかな空気へと変わりつつあるバトル場・・・



だが、空気が変わったからといって、現状が変わることは無い。




「あんまりギョロギョロ激しく瞳、そして眼を動かすとコンタクトレンズは、ずれちゃうのよ。


  現に、アンタは気づいていないかもしれないけど、コンタクト、若干ながら瞳からずれているわよ。」




ブルーはキミドリの瞳に見た“何か”とは、微妙にずれたコンタクトレンズだったのである。

身だしなみに気を使う“女性”だからこそ気付けたことであり、男性のトレーナーでは瞳自体は気にすることができても

コンタクトの微妙なずれに気付き、そこをヘンと思うことはなかなかできないものだ。




「でも、アンタもすごいじゃない。・・・コンタクトがずれているのに、コンタクトの存在を知られないために

  ずれを直さないであんなバトルをやってのけるんだからね・・・。」



「ありがとうございますぅ。とってもうれしいです!!」




キミドリの持つ、独特の雰囲気が場を和ませると、ブルーの心も自然と和み始めた。

もしも今、こういう状態ではなく、普通の状態なら絶対にこういう雰囲気にはならないのだが

ブルーがキミドリに自分自身の虚の余裕を見せ付けるために、キミドリの和やかな雰囲気に同調してしまっているのが不味い。



「そうだっ!! せっかくですので、もっと近くで見てみてもいいですよ?」



キミドリは俯くのをやめて、ブルーを真っ直ぐに見つめると、眼をパッチリと開いて薄い黄緑色の瞳を見せ付ける。

ブルーは、それにつられて瞳がよく見えるようにと、顔を近づける。そして、その距離は鼻と鼻がくっつきそうなほどの距離になった。

その瞬間・・・

















シャァァーーーーーーーーーーーアアァ!!!!!












キミドリの気迫満点の大絶叫。

その音量と絶妙な継続時間で、至近距離のブルー、そして自分を拘束しているメタモンの意表を完全に突いた。

驚きで身体を硬直させたブルーと、全身の力が抜けてしまったメタモンの隙を突いて、キミドリは拘束から逃れると

それと同時に、彼女のスピアーは待っていましたと言わんばかりに空中へと舞い上がり、

バルビートとイルミーゼはブルーに対して攻撃態勢を一瞬のうちに整えた。



(やっちゃった・・・・・・!!!)



未だ動かない身体。その中で流れる一瞬は永遠に思えるほどに長い時間である。


ブルーの脳裏に嫌な言葉が何度も何度も繰り返される・・・・・・







「“ウェポン”発動・・・[ゲイボルグ]・・・・ダブル・アーム・セット!!!」







ニョキニョキと変化を始める空中で待機するスピアーの両腕の太い針。ニョキニョキと変化した針の形状は銛のようである。




(死・・・・ぬ・・・・・・!!!)




ブルーの心が凍りついた。





地上に居るブルーに向けられたスピアーの両腕の針。そして、スピアーは意識を極限まで高める。
















シュゥゥゥゥゥーーーーートォォォォォッ!!!












キミドリの気迫の絶叫と同時に、スピアーは両腕の針への意識を開放し、針をブルーに向けて撃った。

放たれた2本の太い針は1秒としないうちに音速の速さまで加速し、凄まじい衝撃波を発生させながらブルーに向けて真っ直ぐ飛んでいく。






ブルーの目の前が真っ暗になった・・・・・・

















丁度その頃、トキワの森にいた金髪の女性が、森で自由にさせていた自分のポケモンたちを回収して

彼女の目的地であるマサラタウンのある場所に向けて歩いてきていた。



その瞳の色は淡い黄色をしているのだが、色の感じがどこか寂しげで、切なげで・・・



あまり周囲の風景や状態に興味が持てないような様子で、ただただ目的地へと歩いていく。



(今日こそ、きっと・・・帰ってきてくれているよね・・・)



そんなことを思いながら歩いていく彼女は、いつしかマサラの入り口に差し掛かかっていた。

そこで誰かがバトルをしているのは解ったが、その人物たちが一体誰なのかまでは興味が持てなかった。



(マサラだもんね・・・ポケモンたちがバトルをしたくなっちゃうんだろうな。)



彼女は、ただひたすらこの町にある目的地を目指し続けた・・・・・・



















 自己診断するなら、“奇跡の”全身打撲・・・だと思う。

あの一撃の精度の悪さが影響して、幸運にも、あの針によって串刺し・・・ミンチだけは避けることはできた。

しかし、あの技の恐ろしい追加効果である“衝撃波”によって、自分の身体は大きく、大きく吹き飛ばされ

どれだけの高さと、スピードだったかは知らないが、全身で地面に着地。

おかげさまで、今の状態では誰かの助けがなければ立ち上がることもできない。




「・・・どうした? ・・・・・・そうやって、飛んで来るのが最近の流行りか?」




我ながら、なんでこんな嫌みったらしい男を好きになってしまったのかと思う。

まったく・・・そんな泥まみれの身体で何をやってるんだか。それじゃあ、アイツにまた遅れをとるわよ?



「そうなの・・・直行便がここにしか出てなくて。」
「だったら次は、着地をしっかりできるようにするんだな・・・。」



嫌みったらしいこの男が、せっかく手を貸してくれてるんだから、これに甘えちゃいましょうか。

あ、でも・・・立ち上がるってのは、今の身体には結構辛いわねぇ。

しょうがないから、この男に身体を預けておきましょうか。


「・・・大丈夫か?」
「アンタねぇ、話し掛ける言葉の順序がめちゃくちゃよ? いつからそんな男になったのよ。」



「・・・・・・お前に惹かれるようになった頃だ。」



お互いにクスリと笑い合うと、背中合わせになるようにに体勢を直して、この男の背中に思い切りもたれかかる。

そして、残っているボールを腰のボールホルダーから何とか取り出すと





お互いの目の前に迫りつつある、老爺とそのポケモンと、薄い黄緑色の瞳をした女とそのポケモンの姿を見つめた・・・。







「ところで・・・気づいているか?」


傍に居るアタシにしか聞こえない小さな声で話す男。

おそら・・・あの“瞳”のことについだと思う。



「当たり前よ。こういう実戦を離れてから長いけど・・・多少は・・・ね?」
「・・・流石だな。」
「当たり前よ。」



手に持っていたボールを、目の前に近づいてくる存在に見せ付ける。

たぶんだけど、この男が持っているボールに入っているポケモンは恐らくあのポケモン・・・。

だとすると、考えていることはどうやら同じみたい。




「バトルの形式をダブルバトルに変えるぞ。」

「別に構わんよ。手負いの小童にお嬢ちゃん・・・もう、何をしても勝てまいて・・・カカカッ!」

「私もブラウンさんと組むのは嫌じゃないですから、全然おっけーですよ?」

「・・・・・・交渉成立ね・・・。」




背中合わせの男女のトレーナーがボールを投げる。

そして、そこから呼び出されたのは・・・・・・












「リザードン!!」

「カメちゃん!!」









男のトレーナーが呼び出したのが、かえんポケモン リザードン。

女のトレーナーが呼び出したのが、こうらポケモン カメックス。

呼び出された巨体は主人たちを守るように、迫り来る老爺の化石ポケモンと、女の虫ポケモンの前に立ちふさがった。

老爺と女の薄い茶色の瞳と、薄い黄緑色の瞳がギョロギョロと動き、それぞれの正面に居るトレーナーを見つめる。

その様子を見た背中合わせの男女のトレーナーの口元だけが、確かに強気な笑みを浮かべた・・・・・・












「・・・どちら様ですか?」

金髪の女性が目の前の女性に話しかける。

自分の目的地に到着した彼女が眼にしたのは、自分の目的地のドアにもたれかかり、空を見つめる女性の姿である。

この目的地に女性が待っていることは、実はこの金髪の女性にとって腹立たしい事実であった。





「“大切なもの”・・・見ーつけた。」





明らかに、好印象を持っていない人間の敵意むき出しと言った感じの声でその女性は声を出した。

そして、空を見ていた眼を金髪の女性に向ける。すると、見事な三白眼で金髪の女性を睨みつける・・・。


「えっ・・・?!」


驚く金髪の女性。それに対して、敵意むき出しの三白眼の女性は、腰のボールホルダーからボールを1つ取り出した。




「じゃあ、行くよ!!!」





男勝り、と言った感じの気迫ある声で三白眼の女性は声を出した・・・・・・
















「さて・・・仕掛けるわよ、グリーン!!」

「・・・ああ・・・いくぞ!!」









カメックスのカメちゃんとリザードンの咆哮がマサラに響く・・・

逆転の狼煙が、今・・・・・・!!!













第16話(後編)へ・・・