AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する



動き出した円卓の騎士・・・そして・・・・・・


闇に隠れていた真実の部屋を出て古城の自室へ戻った頃、

双子の姉妹が夜の闇の中で青年の真の目的を知った。


無論そのことを知らない青年・・・・・・


それでも真実の部屋で入手した情報を頼りに、モーブの頼みと真実の目的の両方の達成に動き出す・・・

青年の問題解決が先か、それとも暗躍していた双子の姉妹が何か動きを見せるのか?



それとも・・・・・・






答えに戸惑った青年に、急進する意思たちをとめる事はできないのだろうか・・・・・・
















PAS Chapter3 第13話 「裏切り者には制裁を」
















 古城の自室、硬いベットに寝そべりながら先程の部屋で入手したノートに再び目を通す。

キクコが書き残したこの文章、これが示すのはキクコがブラックを“王”に仕立て上げて

それを利用して円卓の騎士たちを率い、この世界を理想郷にするというものだったが

最後に書かれている内容を見ると“王”には戦わねばならぬ敵“支配者”がいるらしい・・・・・・

キメリアンの力を使いこなしてやっと同等の力・・・。

この世界にはあの戦闘能力と同等、またはそれ以上の力を持った何かが存在している・・・

それを考えると、少し身体に震えが来た。 この震えは恐怖のものか、それとも期待のものか・・・


(そうじゃない・・・今考えるべきことは・・・・・・。)


身体の震えを両腕で押さえつけるように落ち着かせて、ノートのページを捲り戻す。



精神の直接書き換え・・・ダイレクト・リライト法。

この精神操作を受けたものは、特殊な行動パターンを脳内に植え込まれる。

その行動パターンというのが円卓の騎士たちでいう“ウェポン”のことを言うようだ。

そして“ウェポン”を使う騎士と、使えない騎士は結果的に二つの派閥に別れているようで

使えない人間の代表であるモーブに協力を要請されて、今この事態を解決しようとしている訳だが・・・

解決をしたくても、二人の例外がいるために、結果的に別れていると思われる二つの派閥が果たして“正しいのかどうか”も疑わしい。

自室への帰り道、何度も何度も考え直してみる・・・・・・

例外に分類される二人の騎士 豪雪のホワイト、博愛のピンク。

“ウェポン”が使えるのにモーブの派閥に属するホワイト。

それとは逆に“ウェポン”が使えないのにブラウンの派閥(使える派閥)に属するピンク。

この二人がスパイだとすれば・・・問題は解決しているように思えるが、だとすれば“ウェポン”を使えるという

明らかに怪しすぎるホワイトの存在を受け入れたモーブの考えがよくわからない。

もしも受け入れた理由を考えるとすれば、カーマインの恋人であるということが要因となっていると思われるが・・・

“お手合わせ”を利用してこちらに情報を与えるということをやってのけた男が、こんなミスを犯すだろうか?



それともあの男のミスか、それともあえて“泳がせて”いるのだろうか・・・・・・?



この辺りを確認するにはモーブに一度面会する必要がある。 今一度、あの男から情報を引き出さなければならないようだ。

ベットから起き上がると、黒いスーツに腕を通し、万が一に備えて腰にボールホルダーを巻き、二つのポケギアを引っ掛ける。

そしてあのノートを手に持つと、少々渋い顔をしながら扉をゆっくりと開けて、石畳の回廊をモーブの部屋を目指して歩き出した・・・・・・













「予想通りでした」「予想通りでした」


「やはりな・・・ワシの目に狂いは無かったか・・・・」


「えーーっ!? ブラウンさん目がおかしくなっていたんですか??」


「キミドリ、アンタは少し黙ってなさい。話がややこしくなるから。」


「そうだ。ピンクの言う通り・・・・・・」




円卓の間に何人かの声でなにやら怪しげな話が続いている・・・・・・















 外の季節は秋と冬の境目くらいで、そのせいで石畳が冷やされて古城の中は非常に寒い。

そんな寒い中をコツコツと歩くブラック・・・彼の瞳は非常に力強く、緊張している状態といえる。

とにかく今はモーブと一度面会して、情報を引き出さなければならない。

ノートを持つ手に自然と力がこもる。そしてその力はモーブの部屋に近づくほど強くなった。

まるで冷蔵庫にいるような感覚になるが、自分自身の今放つ熱気を冷ましてくれるには丁度いい

そう思いながらも、逆に冷やそうとしてくる空気に対抗するかのように身体の熱は増していくばかり・・・

身体が答えを求めている。答えが出れば、今すぐに答えが出れば・・・・・・

焦る思いに自然と足が早足になる。コツコツと鳴っていた足音が、パタパタと若干の小走りに変わる。

この程度のことで心や思考を乱される人間だったとは・・・自分でそんなことを考えると

ふと、身体が何か自分に危険信号を放っているのではと思った。

こんなに焦る思い・・・イエローとの時にだってここまで焦るような思いは、たぶん無かった・・・・・・はずだ。

第六感が危険を感じとっている、早く行動を起こさなければいけないと警告を出しているようだ。

そんな乱れた心のまま、いつの間にか到着していたモーブの部屋の前。

トントンといつものようにノックをしようと思ったが、ここに来て思考がブレーキを掛けた。



(待て待て・・・この可能性は・・・どうだ・・・・・・?)



ふと頭によぎったもう一つの可能性、手に握っていたノートをもう一度読み返す。

ダイレクト・リライト法で精神を直接書き換えたのならば、何故“王”に従うようにプログラムされなかったのか?

そしてなぜ、ブラックはこの集団に呼ばれたのだろうか?

この二つは決定的な矛盾を生んでいるのではないだろうか?

“王”に従うべく精神操作を受けた、または受けるはずの円卓の騎士が何故、“王”の位置にあたる存在である

自分自身、即ちブラックの意思に従わないのだろうか? あの老婆は一体、何をを考えていたのだろうか?

“王”にあたる存在は“統べる者”である。では、別に“統べる者”が存在し、その者の命令を聞くようにプログラムされたのだろうか?

確かにノートには“統べる者”を探し出す必要性があるとしか書いておらず、ブラックがそうだとは書いてはいない。

そして、人望がある人間を使用して作り出すとも書かれてることを考えると、自分も含めた誰かに同じようなことをしていた可能性は高い。

“王”へのプログラムは機能していないのだろうか? それとも、別の“王”の適合者が存在するのだろうか?




・・・・・・だとしたら、何故自分はこの集団に誘われたのだろうか?




別の“王”の適合者が現れるまで埋め合わせといったところなのだろうか・・・しかしここでまた頭に相関図が浮かぶ。

一番初めにモーブとブラウンと出会った時、あからさまにこちらに好意を見せなかったブラウン。

あの時よりも前から派閥に分かれていたことは間違いないだろう。そして、自分を呼んだのはモーブ・・・

モーブの目的は円卓の騎士内の派閥抗争を何とかしてほしいとのことだったはず・・・・・・



(まさか、あの男・・・・・・ッ!!!)



もしも今、ブラックの前にモーブがいれば胸倉を掴まれて睨まれていただろう。

この可能性が正しいとすれば、埋め合わせの“王”を求めた円卓の騎士全体、そしてその“王”の代わりを

派閥抗争においての切り札として利用しようしているモーブが一番の悪となる・・・・・・
















「モーブさん、そろそろあの人が向こうを潰してくれますかね?」


「カーマイン、潰させるだけがあの男の利用方法ではありませんよ。彼にはまた別の利用価値もあるのです・・・。」


「どんな考えですか?」






こんな会話がどこかで聞こえたような気がした・・・・・・



















 ノートを握り締めると、ブラックは冷や汗を流しながらトボトボ歩いて再び自室へと戻っていった。

本人は気づいていないが、ポケギアの画面に映るデジタル時計は丁度日付の変わり目になっている。

深夜の薄暗い石畳の回廊を黒いスーツで歩む姿は、どこか元気が無く、静かな混乱の中にいるような様子である。

自室に戻ると硬いベットに倒れこむ。そして、そのままの服装で再び手に持っていたノートに目を通す。

元はと言えばこのノートをあの部屋で見つけたことがこの混乱の原因で、逆に考えればこのノートがポイントではないだろうか。

放たれていたゴーストポケモンのゴース。あれら全てがキクコの放った番犬用のゴースかどうかは疑わしいものだ。

そして何より、機械の使用履歴や研究資料を一切残さなかったのに、このノートだけが残っていたのが怪しすぎる。

この集団にも恐らくだが、ゴーストポケモンを専門的に使うトレーナーがいる。



それは、ダブル・ゴースト ベージュ&セピア・・・・・・



“ウェポン”使いである彼女たち・・・恐らくブラウンの派閥に属しているが、その存在は若干中立的な立場のように思える。

その根拠としてモーブの命を受けてブラックを誘ったのが彼女たちである。ただ、モーブ派の接触を避けるための監視役も恐らく務めていただろうが。

だが、彼女たちが自分の属する派閥へのメリットがあるからといって、わざわざ自分の派閥にとって危険な存在であるはずの

自分を、ブラックをこの古城に案内し、集団へと引き込んだ理由がよく解らない。

彼女たちには彼女たちの思惑があり、その思惑通りにことが進んでいるのであれば、あの双子の姉妹もかなり怪しいものになる。

元々、不思議、いや、怪しいと思っていた存在だけに、ここにきてあの双子の姉妹の存在は際立つ。


そしてあの部屋にいた番犬代わりのゴースが彼女たちのものだとしたら、または、含まれているとしたら・・・


このノートの情報も全て捏造で、こちらの思考を乱すためだけの偽の情報だとしたら・・・


中立的な立場を利用して、両派閥を自分たちの手中に収められるように動いているとしたら・・・・・・





「うっ・・・。」

強烈なめまいを覚えると、うめくような声が出てしまった。

戸惑い、迷う心に闇が入り込んでブラックの精神世界を闇の渦へと引き込む。

闇の渦に引き込まれた精神は、終わり無く精神を惑わし続け、戸惑いと迷い、そして混乱を永久のものとする。

全てのものが信じられなくなり、何を信じればいいのかわからなくなり、疑心暗鬼の状態に自然と陥っていく・・・・・・















「お姉さま、あの男はあのノートから何を思うかしら?」


「そうねセピアさん・・・全くの嘘だというのに・・・・・・あの男がどうなっていくのか興味がありますね。」



また別のどこかでそんな会話が聞こえて気がした。















疑心暗鬼・・・・・・そんな状態だと、次から次へと嫌な可能性が思いついてしまうものだ。

ブラウンの派閥が悪、モーブの派閥が悪、ベージュとセピアが実は悪・・・・・・。

誰が悪で、どこが悪で・・・そんな仮定と推測が精神を侵食し、気が狂いそうな程の混乱が自分を襲い続ける。

そもそも、本当に悪なのだろうか? これを考えるとことさら混乱は酷さを増す。

悪という存在を勝手に定義していたが、実際はどうなのだろうか。

派閥抗争となってしまった明確な理由ははっきりいって不明。人間的な相性も十分にあるだろうが

それでも集団全体が乱れるような派閥抗争になってしまうと、もうこれは集団として機能しているとは言えない。

しかしそれでも絶妙のバランスで集団は機能し、集団単位で活動する場面に出くわしたことはないが

集団として機能していることには間違いないように思える。 ならばなぜ、バランスの取れた状態を崩すような存在を集団に入れたのか?

“痺れを切らした”・・・これが一番ありうる話だが、だとすれば、バランスを崩した人間はやはり悪なのだろうか。

三つの悪が候補としてあっているが、以外にまた別の方向から考えればこの悪は一つにまとまる可能性が高い。





もしも全てが・・・ノートの情報も、派閥抗争も、あの“お手合わせ”も何もかもが演技で、嘘だとしたら・・・・・・





初めから自分のことを潰すためだけに円卓の騎士が計画した策だとしたら・・・

この考えはありえないとは言えない、寧ろ、この可能性は高いように思える。

なぜなら、彼らには動機が存在するからである。

彼らを統べる存在である・・・“王”への反抗・・・・・・。

だがコレを肯定すると、ノートの情報を肯定しなければならなくなり、少し苦しい考えのように思える。

それでもこの可能性は、明確な動機さえ定義できればありえない話ではない。













うーん、あの青年は目ざわりこの上ないからね。


「スカイさん声が大きいですよ。」「スカイさん声が大きいですよ。」


「・・・・私も・・・そう、思い・・・・ます。」


「あの小僧を潰すのに“ウェポン”は要らんじゃろうて・・・」


「ブラウン、あの男をあまりなめないほうがいいよ。 アイツ・・・かなりできる。」


「・・・オレもそう思う。」


「同調率100パーセント・・・あの実力は半端ないです。」


[ブリューナク]も見られてしまいましたし。あの人ならもう既に対抗策くらい練っているのでは?」


「対抗策が練られたとしても、まだ見せていない“ウェポン”で何とかできるでしょう。」


「黒い太陽に私たちの“ウェポン”は届くのかなぁ?」




円卓の間でこんな会話が行われているような気がしてきた・・・















闇の渦に巻き込まれて、精神はグニャグニャにねじれ、曲がり、グチャグチャになる。

何が真実、どれが真実。 疑心暗鬼の状態から抜け出せないと、闇の渦がさらに追い討ちを掛けるように



様々な不安を思いつかせてブラックの心に戸惑いを生ませ続ける・・・・・・



歪み、歪む精神。気が狂い、我を忘れてしまうほど弱い精神をしていないが、この疑心暗鬼の状態はつらい。

これがもしも、もっと軽い問題ならば的確な判断ができたかもしれないが、自分の命に関わることも十分考えられる。

こういう状況、命が関わるこの状況において、的確な判断ができなければ待っているのは・・・・死。

死・・・・・・精神が一番望んでいるが、肉体が一番望んでいないもの。

ついに今、この領域にまで踏み入れたのだ。ここでの選択が全てを決める・・・・・・





1.ノートの情報どおり“ウェポン”使いの騎士たち・・・ブラウンが悪である。

2.ノートの情報から解った、不在の“王”の代わりの“王”を利用して対抗派閥を潰そうとするモーブが悪である。

3.ノートの情報は全て嘘。派閥抗争を利用して円卓の騎士全てを手中に収めようとするベージュとセピアが悪である。

4.ノートも派閥抗争も全て演技であり嘘。何らかの理由で自分(ブラック)を潰そうとしている。 集団そのものが悪である。







大きく考えられるのはこの四つ可能性に絞られる。他の細かい可能性は全て省くとこの何れかになることは間違いない。

どれを信じるか、どれに答えを見出すか、そして・・・・・・

ふと取り出したポケギア。ちなみに、団員との連絡用、即ちプライベート用のポケギアだ。

そこに示されたのはデジタルであらわされた今日の日付と現在時刻。



・・・・・・“11月13日 3:37”



いつの間にか日付は変わっていた。もう4、5時間もすれば朝がやってくる。

何を信じればいいかわからない、そして答えも出ていないが、とにかく朝まで眠ることにした。

一度眠り心を落ち着けて、朝からの展開に身構えなければいけない。


(とりあえず朝を迎えたら、どんな結末であれ、モーブにカマを掛けてみるしかないな・・・・・)


ブラックは部屋の照明の電源を切ると、特に着替えるわけでもなくそのまま寝てしまった。

先程までアレほど悩み、混乱していた人間が、こうも即座に眠れるというはすごいことで

それだけブラックという人間の器の大きさが違うということだろう・・・




しかし、彼は失態に気づいていなかった。

故郷を離れようとする彼の考えと思いを逆手に利用されているとは全く気づかなかったのだ・・・・・・






・・・・・・闇の者は、夜に動く・・・・・・

















「裏切りものには・・・制裁を!!!」






















 朝の日差しの入ることのない部屋での目覚めは寒い。ブラックはほぼ計画通り8時に目を覚ました。

一度スーツを脱いで簡単に洗顔等を済ませると、再び黒いスーツに腕を通した。

やはりまだ寒い石畳の城内を、あのノートを手に持ってモーブの部屋を目指して歩くブラック。 しかし、城内の雰囲気がいつもと違う。

静かで時の流れを感じさせない不思議な雰囲気をしていたの普段だとすると、今日の雰囲気はどこか異常にまで静かで、それが妙な不安を煽る。


(なんだコレ・・・・・・)


不意に嫌な胸騒ぎに襲われたので、ブラックはモーブの部屋へと駆け出した。

モーブに部屋に近づけば近づくほど胸騒ぎより深刻なものに変わり、自然と足が速くなる。

コツコツと歩いていた足はバタバタと騒がしく走る音に変わる・・・






「ハァ・・・ハァ・・・・・・」

かなり息を切らすほどの速さで走ってきたために、昨日よりも早くモーブの部屋の前に着いた。

昨日の出てきたあの考え、推測を確かなものにするために、今日はこの扉の先へと進まなければならないのだ。

しかし、そんな目的以上に、いまこの古城を包み込むこの嫌な雰囲気はなんだろうか。

ドクドクなぜか動悸が激しくなる・・・第六感が何かを告げているのが解る。


(いくしかない・・・!!)


一呼吸、間おいてからモーブの部屋のドアノブに手を掛けて、ドアを押し開いた。

ギーッと、少し建てつけの悪いような音を立ててドアは開いた。そして、ブラックは部屋へと足を踏み入れる・・・





「待っていましたよ」「待っていましたよ」





部屋に入ると、散らかった床に倒れこむモーブの姿と、その倒れたモーブのすぐ傍で二人で立っているベージュとセピアの姿があった。

ブラックはすぐさま部屋全体を見渡した。部屋はめちゃくちゃになっており、窓ガラスは割られ、椅子やテーブルが見るも無残な姿になっている。


「昨日の時点で動いていれば」
「こうはならなかったかもしれませんよ?」

「カーマインとホワイトはどうした?」


ブラックは静かに、そしてさりげなく腰のボールホルダーに空いているほうの手を回してボールを手に一つ隠し持った。


「ここに寝転んでいる方と同じようになっているはずです」
「自分たちの派閥の人間が犯した罪を償っていただきました。」

「罪・・・?」


ブラックは会話をしながらもちらちらと辺りの様子を伺い、次の一手を考えている。

無論、彼女たちもその動きに気づいているはずだろう。


「自分自身の罪に気づかないとは・・・」
「ずうずうしいにも程がありますね。」


ゆらり、姉妹の手にはいつの間にかボールが握られており、前髪で隠れていてその目を確認することはできないが

間違いなく強烈で突き刺さるような視線で射抜かれていることは解る。

ブラックは後ずさりをしながら、何となくだが罪の正体に気がついた。



そしてそれと同時に、自分のミスにも気がついた・・・・・・





「こんなものを隠していたのですね。」「こんなものを隠していたのですね。」





セピアが一枚の紙をブラックのほうに投げると、ふわっと紙は宙を待ってブラックの足元に落ちた。

そこにはあの男に渡された、ポケモン協会発行の指令書だった。

指令書には“円卓の騎士の調査と状況によっての抹殺”が指令として明記されている。

この指令書はあの時処分せずに、パソコンのある机の引き出しにしまったことを今でも覚えている。

大きなミスをあの時犯してしまった・・・・・・




「・・・住居不法侵入だぞ・・・?」




ニヤリと笑みを苦しそうに浮かべながら、ドアまで後ずさりをするブラック。

開き直りとも思える笑い方だが、この笑いは間違いなく追い詰められた時の笑いである。


「裏切り者には」
「制裁を下すように言われてきました。」


姉妹は握っていたボールをブラックに見せ付けるようにする。
姉のベージュは右手に、妹のセピアは左手にボールを持っている。




「円卓の騎士」
「ダブル・ゴースト」




ボールを持った腕を二人で長い直線を作るように真横に伸ばす。
その姿に戸惑いや恥じらいは無く、逆に圧倒されるような感覚を覚える。



「ベージュ」
「セピア」



その状態をキープしたままで、はっきりとした声で己の名前を名乗る。



「あなたに」「あなたに」



空いているほうの手をブラックに向けて、人差し指でブラックを指差す。
まるで多いな人間に指差されているような錯覚を覚える。





「「制裁を下します」」





今まで、多少遅れるか。または意図的にタイミングをずらして話していた彼女たちの言葉と



その言葉を話すタイミングが完全に一致した・・・・・・。



その台詞・・・名乗りと同時に手に持っていたボールが床に向かって投げられた。

ブラックは二人の手からボールが離れた瞬間、背中のドアに勢いよく押し破りすぐさま部屋を後にした。

石畳の回廊を片手にボール、もう片方にあのノートを持った状態で、出口に向かってひたすら走る。


「この城で」
「私たちが仕留めて差し上げましょう」


そう言うと先程のボールから現れた、濃い紫ではなく、完全に真っ黒のゲンガーと

炎のように真っ赤なムウマが走っていったブラックを追いかけ始めた。

それを見届けると、姉妹もその後を走って追いかけはじめた。





(どうする・・・あの姉妹をここで・・・・・・?)


そう思い、円卓の間の前まで一時退避したブラックは後ろから追ってくる真っ赤なムウマと真っ黒なゲンガーのほうを向いた。


「なんだあの色は?!」


ブラックが驚くと、ムウマは口から紅蓮の炎を吐き出した。そしてゲンガーは影の中を移動しながらブラックに襲い掛かる。


「おわっ!!」


真っ直ぐに吐き出された炎を回避すると、炎は円卓の間のドアにぶつかった。すると木製だった扉はパチパチと燃え始めた・・・

その間にブラックに近づい真っ黒なゲンガーは、影から自分の身体の3分の2ほどの大きさにまで口をあけて

鋭い牙をむき出しにして、ブラックを今にも食い殺そうというほどの勢いで飛びかかってきた。


「チッ!!!」


ブラックは迫るゲンガーの牙を寸前で回避すると、ガチン!!と凄まじい音がした。

もしも腕や脚を噛まれていれば、一生使えなくなったことだろう。


(しょうがない・・・ここで・・・!!!)


手に持っていたボールからポケモンを呼び出して・・・と思っていたが、そこへベージュとセピアが息も切らさず駆けてきた。

完全に袋小路の状態でこのまま戦闘をすれば間違いなく終わる・・・そう思ったブラックは燃える扉に体当たりして円卓の間に突入した。


(この部屋なら・・・!!!)


部屋の広さを確認するためにサッと広さを確認したブラックの瞳には凄惨な光景が映し出された。




「“ウェポン”を使うことができない人間に用はありません。」
「弱い騎士を仲間とは思いたくはありませんし。」




中立的な立場にあり、明確にどの派閥に所属しているかわからなかった一部の騎士たちが

念動のパープルと蒼穹のスカイブルーの二人がボロボロの状態で、全身か血を流しながら倒れてピクリとも動かない。

この異常な世界の空気に己の狂気を呼び戻されそうになる。心の中で確実に炎が燃え上がり始めた。


「・・・ひとでなしが。」

「あなたには言われたくない言葉ですね。」「あなたには言われたくない言葉ですね。」


ブラックは先程から握ったままのボールを姉妹に向けて、そして鋭い視線で二人を睨みつけた。

凄まじき眼力・・・優勢のはずの姉妹があきらかにたじろぐ。




「・・・抵抗するのは勝手ですが」
「あなたの故郷の人々に・・・危害を加えますよ?」




苦し紛れの一言とも思われたが、それを聞いた瞬間、ブラックはギリッと歯軋りした。






「・・・ッ・・・バカヤロー・・・がぁぁぁぁ!!!!」





誰に向けられた怒りだろうか、
ブラックは大きな声で絶叫すると、それに一瞬驚いた姉妹の隙を突いて、一気にもう一つの扉に駆け出した。




バンッ!!!




扉をぶち破るように思い切り蹴り破り、必死の形相で出口に向かって全力で石畳の回廊をひた走る。

ワンテンポ以上遅れてやっと追撃を開始するベージュとセピア、そして真っ赤なムウマと真っ黒なゲンガー。

ゲンガーとムウマの後を姉妹が再び追いかける・・・・・・。






あの時、指令書をしっかりと処理しておけば・・・


あの時、どんなに危険な可能性が有ってもモーブに会っていれば・・・


もっと早くあの部屋の存在に気づいていれば・・・


変な混乱に陥らなければ・・・






無数の後悔がとにかく心を満たす。

いくつものミスの積み重ねが今こうして清算されているのかと思うと、過去の自分を殺したくなる。

だがいくら後悔とそういう感情を抱いたとしても、今ある問題を解決することはできない。

今を解決するのには、今できることをするしかない。今を解決するのに過去を用いることはできない。

先人の知恵を否定するわけではないが、とにかくどうにかするしかない。

石畳の回廊を走るブラックのすぐ後ろにはあの二匹の色違いポケモンが追ってきている。

何とかしてあのポケモンたちを撒いて、故郷へ・・・マサラタウンへと向かわなければならない・・・!!



駆ける、駆ける、ブラックはひたすら駆ける。

背後からの一撃を上手く回避してひたすら駆ける。

石畳の回廊をひたすら駆ける・・・・・・!!!

そして辿り着いた大広間。

もう少しで正門を通ってこの城からマサラへと向かうことができる。





「逃がしませんよ・・・」「逃がしませんよ・・・」





大広間に着いて、まだ数秒も経っていない。姉妹の声に「ここでやるしか・・・」という感情を覚える。

しかし、時間が無い。今ならまだ、自分の管轄していた闇にかけがえのない人々を関わらせずに済むかもしれない。



もう、一刻も早くマサラへと行くしか方法はない!!



新たなポケモンを展開しようとする姉妹の動きの間に、ブラックはこの城から即座に脱出する経路を探す。

本当に一瞬の時間・・・新たなポケモンを展開する動作など、ポケモンを選ぶ時間を合計しても3秒にも満たない。

その僅かな時間に全てを賭ける、そしてその時間の間に手に握っていたボールを腰に戻して新たなボールを手に掴み

ボールからポケモンを呼び出すと、呼び出されたポケモンに真っ赤なムウマと真っ黒なゲンガーが襲い掛かった。



「“
げんしのちから”!!!」



呼び出されたポケモンは己の中に眠る太古からの生命エネルギーを開放すると

色違いのムウマとゲンガーを大きく吹き飛ばした。それと同時に呼び出されたポケモンはブラックの両肩を掴む。

そして高い天井に羽ばたき、天井に向かい飛び上がった。





「マサラへ!!! 急ぐんだ、プテ!!!!!」





ブラックは天井を指差すと、プテはそこに向かって凄まじい光線を放った。




ガシャーン!!!




激しくガラスの割れる音がしたと思うと、天井からガラスの雨が降ってきた。

その破片を防ぐように両手で顔と頭を覆う姉妹。

丁度ブラックの足元付近にいたために、ガラスの雨をもろに浴びる羽目になった。

この大広間の天井にある綺麗なステンドグラスを“
はかいこうせん”で破壊したのだ。

これで、足止めと城からの脱出経路の確保に成功したのである。

プテはブラックの必死の声を聞くと、一鳴きして、光射す天に向かって羽ばたいた。

そして体勢を立て直した姉妹のゴーストポケモンたちの攻撃を猛スピードで回避すると

プテとブラックは古城上空まで一気に飛び上がった。

間髪いれずにマサラがあると思う方向へと、秋と冬の境目の空を真っ直ぐに飛んでいった・・・・・・











「逃がしましたね・・・」
「でも、マサラタウンには既に他の騎士たちがいるはずです。心配は要らないでしょう。」


姉妹はブラックを見送ると、展開していたポケモンを全てボールへと戻した。

そして何一つ焦るわけでもなく、平常心で会話を続ける。


「そうだ、私たちはあの方を呼びにいきましょう。」
「あの方・・・ですか・・・・・・。」

「万が一の保険は必要ですから。」
「フフフ・・・ただし、最強の保険ですけどね・・・」








「フフフ・・・・」「フフフ・・・」








古城に姉妹の不気味な笑いが響き渡った・・・・・・













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