そして、それから時間が流れた・・・・・・。
PAS(yellow side) Phase.9 修復 −2人の友情−
答えを導き出したグリーン、それなりの覚悟を決めたブルー、そしてシルバー、イエロー。
グリーンとブルーのよりが戻るような雰囲気を醸し出している今、
全ての問題は解決しているかのように見えているが、あの2人が仲直りできていない。
ここまでよじれてしまった関係を修復しようというのが無理な話なのだが・・・
そう思って動き出したのは、グリーンとシルバーだった。
仲直りする2人・・・それは、ブルーとイエローだ。
春・・・物事の始まりに適すこの季節。
ジムリーダーとしての仕事をこなしつつ、ブルーへの気配りを忘れない男
グリーンは今日も真面目にリーダーとして勤める。
ゼロから全てをやり直すと決めたあの日から、異様に視界が明るくなった気がしてならない。
罪悪感という暗闇がはれたことが大きく関係しているのだろう。
やり直しが可能ということがどれだけ喜ばしいことか・・・・・・
そう思いながら今日も生きていくのだが、最近非常にやりにくい事がある。
それは先週、何だかんだで自分の祖父の研究を手伝ってくれるブルーが、自宅を訪れた時のこと。
祖父と自分と彼女の分のコーヒーを淹れて研究を続ける2人にそれを差し出す。
「ありがと。」
「おー、すまんのグリーン。」
前のようにコーヒーを淹れてもらう関係には、まだまだ行き着いていないのだ。
2人で研究資料とにらめっこをしているので、仕方なくグリーンは近くにあった椅子に腰掛けて
最近購入した、少々厚めの文庫本を近くの本棚から取り出して読み始めた。
その内容は周りに流されて何も変化しない日々を送る男が、徐々に堕落していくさまを描く何ともシュールな小説で
見事に、現代社会に生きる人々の心を痛烈に批判している。
そんな小説を読み続けていくうちに、いつの間にか日は暮れて、三日月が夜のマサラを照らしだしていた。
「博士、夕飯どうします?」
「んーそうじゃのぅ・・・特に決まっておらんが・・・・・・」
「じゃあ、アタシがつくります」
「おー、すまんの」
鼻歌交じりでキッチンへと向かうブルー。その姿に自分の祖父は首を大きく振っていた。
自分の姉であるナナミが、関西弁の研究者のところへ嫁いで行ったのは随分前のことだ。
今まで家事を担当してくれていた存在がいなくなってからは、クリスが助手として支えてくれていたが
そうも毎日居てくれるはずは無く、第一に捕獲者としての道を志す彼女を留まらせておくのは悪い。
消去法で行くと、家に居るのは自分と祖父だけになり、男2人の生活になっていた。
だからこうやって料理を作ってくれる存在は非常に貴重だ。
「孫に欲しいのぅ・・・なぁ、グリーン。」
「・・・あ、ああ」
返事はあやふやになってしまった。
一時期、イエローが来てくれていたことがあったが、ここまでの言葉を話すことは無かった。
一人の研究者としても、才色兼備の一人の女性としても
文句無しトップレベルの女性として、祖父はブルーのことを評価している。
「グリーン、手放すことがないようにな」
「・・・あ、ああ」
釘を刺され再び返事はあやふやになってしまった。
ちなみに、ブルーが祖父の孫になるには・・・・・・手段は2つしかない。
一つは養子になることでもう一つは・・・・・・
「冷蔵庫にあったもので作ったけど、こんな感じでいいかしら?」
何をどうやったら冷蔵庫にあるものでこんなに素晴らしい料理を作れるのか疑問だ。
自分も確かに人並みに料理は作れる。だが目の前に広がる彩りはなんだ?
家庭的に調理をしているはずなのに所々に見える、見せる料理への努力。
祖父と一緒に驚いていると、一言
「・・・孫にほしいのぉ」
チラッとブルーのほうに視線を移すと、妙に意識してしまい顔が赤くなった気がした。
立ち止まっていた自分を祖父が呼んだので食卓について、料理をいただいた。
夜遅くなり、泊まっていくかどうかという話になったが
ブルーが帰ると言い出したのでそれを送ることにした。
特に会話が弾む訳でもなく、ほぼ無言のままで春の夜空の下を2人で歩く。
「イエロー、今、どうしてる・・・?」
彼女のほうからの言葉に少し驚いたが、自分が知っていることをありのままに話す。
「いや、特に変わらずってところだ。」
「ふーん、そう。」
それ以上掘り下げることも無く、ブルーは話すことをやめた。
無言のままで歩いていったからか、普段よりも早くブルーの家へと到着した。
「じゃ、またね」
「・・・ああ」
バタリと閉じられたドアに、何を期待していたのか解らないが少しの不満を覚えた。
そしてしばらくしてから、ブルーの家を去った。
(・・・・・・)
ブルーともイエローとも付き合いがある自分としては、前のような2人に戻って欲しいと思っている。
だが元をただせば、そういられなくしたのは自分自身であり寧ろ
戻さなくてはいけないという、力強い使命感さえ覚えていた。
歩きながらポケギアを取り出すと、少し躊躇したが、ある人物に連絡を取った。
「・・・・・・俺だ、提案があってな・・・・・・」
グリーンと通信先の相手との会話は夜の闇に消えていった。
「はい、イエローです」
翌日の朝、ひさびさの休日にイエローに電話してみた。
あれからいつもの調子を取り戻している彼女の声は明るく、元気だ。
「・・・グリーンだ、少し話があってな・・・・・・」
「は、は、はい」
挨拶と同時にいきなり用件をグリーンは言い出したので、少々イエローは慌てた。
「今日、俺の家に来て欲しい。」
「え・・・・・・、あの、その、気持ちは嬉しいですけど・・・その、あの・・・・・・」
電話の先で動揺するイエロー。明らかに何か勘違いしているようだ。
「・・・深い意味は無い。」
「そ、そうなんですか・・・すいません・・・・・・」
ハァと溜め息をついて呆れるグリーン、それが解ってか赤面するイエロー。
「とりあえず、今から2時間後、俺の家に来てくれ。」
「解りました。」
とりあえず用件を伝え終わると、部屋の準備を整える。
居間にあるテーブルに、椅子を2つだけ残してあとの椅子は奥のほうへ片付けた。
(相当なおせっかいもいいところだな・・・・・・まるで、アイツみたいだ・・・)
自分でそう思いながらも、今、自分がやろうとしていることを間違えているとは思わない。
昨日の夜感じた、ブルーの思い。 本当におせっかいかもしれないが
もう一度、イエローと仲直りして欲しい。
というよりも、仲直りしてもらわなければ、自分はまた罪悪感の闇の中に落ちていく・・・・・・
もしかしたらそういう思いのほうが大きいのかもしれない。
純粋に2人の仲を思うのなら、自分などいないほうが良いのだから・・・
いつの間にか時間は経過して、イエローが家へとやってきた。
遅れて5分、シルバーと共にブルーがグリーンの家へとやってきた・・・・・・。
4人が集まると一気にその場が凍りついた。
少し前まで、非常に複雑な人間関係にあった者同士がこうして
顔を合わせることになるとは・・・・・・
これではまるで、前の状況を蒸し返そうとしているようだ。
「・・・あー、アタシ帰るね」
まず初めにブルーがその場から退散しようとしたが、グリーンとシルバーがそれを引き止める。
イエローはその間に、グリーンに前もって指示されていたとおりに椅子に座っている。
「・・・ここは、すっきりさせよう」
グリーンの言葉にブルーはカチンときた。
「アンタ、おせっかいにも程があるわよ!!」
そのまま彼等を振り切ろうとしたが、振り切れず、しょうがなく、椅子に座った。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
向かいあうブルーとイエロー。
しかし、互いの視線は向かい合っておらず、ブルーは視線を逸らし、イエローは下を向いている。
シルバーとグリーンは事前の打ち合わせどおり、その場を後にした。
以前から、イエローがブルーへの罪悪感に襲われていることは解っていた。
そして、昨日の夜のブルーの言葉で、互いに仲直りをしたい気持ちを持っていることがわかった。
今の自分を気付かせてくれた“きっかけ”をくれたのはイエローだ。
ならば、互いに仲直りしたがっているのならば
イエローに“きっかけ”の恩を“きっかけ”で返したい。
おせっかいを焼くのはレッドの専売特許だったので、少々無理がある方法であったが
グリーンの2人を仲直りさせたいと思う気持ちは嘘ではない。
不器用なだけなのだ。
無言で流れる時、休日の午前中から修羅場とかしたグリーンの家。
オーキド博士は今日は学会へと出席するために1日中留守だ。
よって、グリーンの家に2人だけとなった・・・
(まぁ・・・このおせっかいを“きっかけ”にさせてもらおうかな・・・・・・)
ブルーは不器用なグリーンの優しさを少しだけ認めてはいたようだ。
「・・・ブルーさん、その・・・すいませんでした・・・・・・」
イエローが口を開き謝罪の言葉を話し始めた。
言葉から即座に、今までの一件について謝っていることはよくわかる。
だが・・・
「謝っても、許せるわけ無いでしょ。」
落ち着いて尚且つ冷静に言葉を返すと、ブルーが静かに怒っていることが解る。
「何か、アンタのこといろいろと信頼したアタシが馬鹿だったみたいね」
がっかりしたと言わんばかりのわざとらしい大きな溜め息をした。
その言葉がグサリと胸に突き刺さり、イエローはブルーを見ることも出来ない。
対照的にイエローをしっかりと見つめて話すブルー。
「本当に・・・ごめんなさい・・・・・・」
嗚咽混じりで謝りだしたイエローに、流石にブルーも言い過ぎたかと思ったが
それを許さず、あえてさらに攻め立てた。
「泣いても許さないから。」
一言、ズバッと言い切るとイエローの瞳から涙がこぼれだした。
部屋にイエローの泣き声が、真昼間から響きわたる・・・・・・
「・・・アタシはねぇ・・・アンタのそういうところが大嫌い。」
ブルーの一言にイエローの嗚咽は止まった。
「涙が武器になる女が、一番気に食わないのよ!!」
そう言い放ったブルー。 その気持ちもわからなくない。
ブルーがセクシーに生きるなら、イエローはキュートに。
ブルーが小悪魔のような性質なら、イエローは天使のように。
力強く行動的なブルーに対して、消極的で内気なイエロー。
よくよく思えば、人間的な性質が対極の存在なのだから
この衝突はありえた衝突であろう・・・・・・
「すいません・・・すいません・・・すいま・・・せん・・・・・・」
それを素直に認めてしまうのもイエローらしいところ。
泣きながらそれに対して謝罪を続ける。
そのあまりにもイエローらしい行動が逆にブルーの癪に障った。
「そうやっていつも自分が悪いみたいに決め込んで!!」
ブルーは椅子から立ち上がって、机に手をついてイエローをさらに攻め立てた。
それに対して泣いて謝るか、下を俯くだけのイエロー。
「アンタも何か言い返してみなさいよ!!」
「・・・そんなこと・・できません・・・・・・」
ブルーの口から出た一言に、イエローは素直に拒む。
「そうやって、自分が悲劇のヒロインのつもり?!
謝っていれば自分は良い子ちゃんでいられるとでも思っているの?!」
素直で可愛くて、誰からも愛されて、終いには成り行きとは言え自分の彼氏を奪って・・・
どれだけ自分があこがれても、なることが出来ない存在。
その一言を聞いた瞬間、イエローの様子は一変した。
「・・・ブルーさんの・・・そうやって、優しさのない言葉、私、大嫌いです!!」
何をするにも力強く頼りになって、いろいろな人の面倒も見れて
常に明るくて、そして綺麗で頭も良くて、要領よくて・・・・・・
自分がどれだけ目標としてきたか・・・・・・
「計算高くて、男の人を手玉にとって、悪女みたいで嫌です!!」
その一言にブルーはカチンときた。
「アタシだって悪女って訳じゃないのよ!!」
「・・・私、良い子ちゃんじゃないです!!」
2人の口論は終ることなく、延々と続いた。
だからと言って特に仲直りできた訳でもなく、逆に少し険悪になってしまった。
先にブルーがグリーンの家を後にして、その後にイエローが後にした。
(・・・可愛げが無くなったわね・・・あの子・・・・)
しんみりしながら自宅へ帰るブルー。
(・・・あんなに大人気ない下品な人、もう嫌いです・・・)
対照的にプンスカ怒りながら家へと帰るイエロー。
その様子を離れてみていたグリーンは、失敗だったと後悔していた。
((でも・・・・・・一番大切な先輩(後輩)))
お互いに対極の存在だから、無いものを補え合えるとっても貴重な存在。
彼氏や男よりも大切な、一緒に高めあえる最高の友だち。
そんなことが解った気がした。
グリーンの作り出した“きっかけ”は、本人が思う以上に効果があったようだ・・・・・・
春の風が吹く午後。
マサラやトキワに、暖かさと共に再びのスタートを持ち込もうとしている。
スタートに必要なゴールが、4人に訪れる・・・・・・。
Phase.10へ・・・