AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する



 新たな道を定める“2人”・・・その前の決着。






PAS(yellow side) Phase.10 2人の答え −素直になって−








春が運んできた風は、4つのスタートラインと4つのゴールラインをしっかりと定めた。









師匠弟子



とある春の休日の午前中、とある弟子が、師匠に電話を掛けた。


「・・・もしもし」

「あ、グリーンさんですか?」


可愛らしい声が電話から聞こえてきた。

その声から、その正体が弟子のイエローであることがすぐにわかった。


「先日は、ブルーさんとお話できる機会を下さってありがとうございました。」

「あ、ああ・・・」


イエローの言葉に薄っすらと怒りの感情を覚えたので、返事はいつになく曖昧だ。


「ところで・・・どうした・・・?」


今の調子で話を持っていかれると、非常に気まずくなるので話を変えた。


「あ・・・はい、私、決心しました。」


先程の声と打って変わって、また違った雰囲気で話し出す。

イエローとの付き合いは長いが、この独特の雰囲気には本当に調子が狂う。

少々困惑気味の表情でグリーンはイエローの話に付き合う。


「・・・決心?」

「私、もう一度向き合いたいです。ブルーさんとも、・・・レッドさんとも」


ブルーの名前はすぐに出てきたが、レッドの名前は少々声のトーンを落として言った。

イエローの言葉を聞いて、自分のやったことに意味があったとはじめて解る。

ホッとしたグリーンは表情を少し和らげようと思ったが、逆に力強く

いつもより険しい表情をしてイエローと話し始めた。


「それなら・・・後は、自分でしっかりと解決しろ。」


これがグリーンなりの激励なのだろう。

イエローは元気に返事をすると、早々と電話を切った。どうやら何か行動を起こすようだ。



これが、今の彼と彼女の関係。



先程の激励の言葉は、イエローだけに送る言葉ではない。

自分自身へも向けられた決意の言葉。





ふと、ポケギアを取り出してエントリーコールからレッドの番号を呼び出した。

思い起こせば、この番号が全ての発端となっていた。

改めて自分が考える以上にレッドという人間の存在の大きさを知った。

周囲に秘密にしてレッドに連絡を取てみたり、相談を持ちかけてみたりしようかと何度も思ったが

それを何とか我慢して自己解決をしてきた。

だが自己解決をしてきたが、その解決法が間違えていたようで大切なものを失いかかった。

しかし、そう振舞わなければ、弟子に正しいことを教えることは出来ないだろう。



イエローが動き出したことを知り、グリーンもそろそろかと動き出す。

弟子が先に動いたというのに、師匠が動かないわけにはいかない。

師匠と言う指導者としての立場に立つ以上、有言実行しなければ示しがつかない。

そう思ったグリーンは、ポケギアのエントリーコールの画面でレッドでは無く

シルバーの番号をを呼び出した・・・・・・



(一応、はっきりさせておいたほうがいいだろう・・・・・・)




ポケギアはシルバーに向けて通信を求めた。










先輩後輩



同日午後・・・

ブルーはイエローに電話で「お話がしたいです」と、呼び出しを受けたので

覚悟を決めて、イエローが呼び出した場所 イエローの家へと向かう。

彼のおせっかいで余計こじれたように感じたイエローとの仲も

イエローの言葉を考えて、自分なりに受け止めていくと

結構、思い合う事は同じで、考えていることも結構同じだったような気がしてならない。

もしも自分のその直感が正しいものならば、きっと今から向かう場所は

大切な存在ともう一度向き合える場所になると思う。

淡い期待と、大きな不安。そして、頭や心では考えていないが、自分のものに手をだされた憎しみを隠し持って

ブルーはイエローの家へと向かう。



ドアの前・・・

呼び鈴を鳴らそうとする手がなかなか伸びない。サバサバしている性質のはずなのに

こういうことはどうもダメだ。現に、グリーンのことをあれから求めたのも事実。

頼れる姉御キャラも、やっぱり女の子を持っていると自分で自覚して、ちょっと恥ずかしくなった。

ふぅ。と息を強く吐いて自分自身に喝をいれて、意を決して呼び鈴を鳴らそうとした。



「あ・・・」



丁度、ドアを開けて顔を出してきたイエローと目が合ってしまった。

何ともいえない空気と沈黙が、春の暖かさを帯びた午後のトキワに広がった・・・・・・


「どうぞ、・・・入ってください。」

「わ、わかったわ・・・」


ぎこちない会話が成立して、ブルーはイエローの家に上がる。

ガチャリと閉まったドアの音が耳に響いた。



居間・・・

本当に久しぶりに訪れたイエローの家は、結構相変わらずで

綺麗で可愛らしい小物や優しい感じのする暖かみのある、ほんわかとした部屋だ。

自分の部屋とは反対のタイプの部屋と言えよう。

とりあえず、ソファーに腰掛けてキッチンへと向かったイエローを待つ

異様に長く感じた3分ほどの時間を経て、イエローはお菓子と一緒に紅茶を淹れてきた。

だが、今の2人の関係から言ってこの紅茶が啜られることは万に一つ無いだろう。



カチャリと音を立てて、ティーカップと手作りと思われるクッキーが小皿に乗せられて自分の前に差し出された。


「・・・ありがとう」

「いえ・・・」


お互いにお互いの表情を見ることは無い。

イエローが自分の対面に座ると、2人の間に言葉は無くなった。




時間だけが流れていく・・・・・・




どちらが話し出すわけでもなく、時間だけが流れる。

先程淹れた紅茶はとっくになま温い温度に変わり果てている

重苦しい空気を変えようと、呼び出した本人であるイエローが口を開いた。



「あの、その・・・いろいろと・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」



今の言葉からイエローの思いは多少わかる。

自分が一番望んでいたかも知れない答えであると解るが・・・・・・



「・・・あ、アタシこそごめんね・・・・・・」



何ともいえない謝罪の言葉を話すと、また、2人は黙ってしまった。




またしばらくの時が流れていく・・・・・




何かが足りないさっきの謝罪の言葉で、お互いに何が伝わったと言うのだろうか?

まだ前あったときのケンカ腰の言い争いのほうが、思いは伝わりあったはず・・・

こうやって黙りあって、ただ、時を浪費して何の意味があるというのだろうか?



そんな疑問を持ち始めた時、ブルーは大きく深呼吸した。



「・・・こうやって、ただ黙ってるのなら時間の無駄。」



ブルーは冷たく切り出した。



「もうね・・・・・・ウンザリ。・・・アタシを呼び出したって事はアタシに話があるんでしょう?!」



ブルーはイエローをギラリと睨んでもの凄い剣幕でイエローを怒鳴りつける。

イエローはそれを言われて、ただ、俯いて小さくなっている。


「あ〜もう、イライラする!!」


イエローの態度を見てブルーのイライラが頂点に到達するかと言うところで、

意を決して、イエローは今の自分の思いを吐き出した。



「こっちだって、謝ってるじゃないですか!!」



逆ギレしたイエローに、ブルーのイライラは頂点に達した。


「アンタね、自分がやったことが本当に許されることかと思ってるの?!」


前回あった時と同じ調子で、2人は再び口論を始めてしまった。


「思ってません!! だけど、謝ることと、反省することくらいしか私にはできません!!」


涙目でブルーに食って掛かるイエロー。

2人の口論は、ブルーが一方的にイエローを攻め立てるように進んでいくが

イエローも負けじとブルーの言葉を返していく・・・



「その態度が、反省?! 何処の世界にそんな反省の方法があるのよ!!」



ブルーが正論を吐いてくるのなら



「でも、こうやって謝るしかできません!!」



イエローは謝罪をしているという事実を突きつける。







口論は、2人の紅茶が冷たくなるまで続いた・・・・・・








「・・・だいたい、元をたどればレッドさんが全部悪いんです!!!」



長く続いていた口論がこのイエローの本音とも言える苦し紛れの一言によって変わる。



「そうよ、それだけは断言できるわ!!」



意外にもブルーはその一言を、口論と同じ調子で返していく・・・

泣きながら口論していたはずなのに、妙な意気投合を見せる2人。

レッドに対する不満をイエローが話すたびに、ブルーはそれに納得して共感しあう。


「そういえば、グリーンさんだって・・・!!」

「・・・まったくそうよね!!」


お互いによく知った男だけに、尚更共感できる意見。

性質も、性格も、完全に反対な2人なのにどうしてこうも話が合うのか?

その答えは2人にも解らない。いや、別に解る必要も無い。

ただ結論から言わしてもらえば、2人はこの関係を嫌とは思っていないと言うことと

友情と言えども、悔しく思う気持ちも、憎む思いも存在すると言うことで

完全なる友情というもの自体が偽りであり、本当の友情と言うのは

相手のことを理解して尊重して、時にケンカして意見をぶつけ合って、共に悲しみ合って

人間であることを証明しあう、人間であることを認め合う、人間を見せる、そういうものだと思った。

この思いは、きっと2人の共通の思いだろう。








2人の話は夜遅くまで続いた・・・・・・

















同日午後・・・・・・場所は、アサギシティ・・・・・・時は夕方・・・・・・


場所の選定はケリをつけるには丁度良いとのシルバーの案。

ポケギアでの会話も多くを語るわけではなく、本当に一言、二言・・・

昼食後しばらくしてからジョウトへと移動し始めたグリーンが

約束のアサギシティに到着したのが、夕方だ。



人影少ない、紅く染まった海岸に2人の影がある



多くの言葉は必要ない

だいたい相手が思うことは解っている

もしも、相手が自分が考える結果と違うことを思うのならば

この場所に呼び出した意味を考えなければならない

紅い夕日は、海岸だけでなく2人の身体も紅く染める・・・・





海岸に吹き抜ける風


向かい合う身体


交わる視線


漣の音








「ねえさん・・・、頼むぞ・・・・・・」


「・・・ああ。」



2人の声、漣の音、風・・・



薄々勘付いていたシルバーとブルーのこと。

きっと、彼女のことだ決着を付けたのだろう

それはシルバーの、ブルーを呼ぶときの“ねえさん”から解る。

多くを語ることも無く、グリーンは目を瞑るとシルバーに背を向けてその場を去った。

決意の一言を言ったシルバーの瞳から今にも溢れだしそう雫を見ないために

男の涙を背中に感じながらグリーンはしばらく海岸を歩いていた





考える。


涙の重さと意味を考える。


今までの自分を考える。


そして


これからの自分を考える。


彼女のことを考える。


自分と彼女のことを考える。


考える。






今、思うことが永遠でないとしても、今日のシルバーの涙に誓いを立てて


これからの自分を想像していく・・・・・・


いつか、いや、必ず、今思うことを創造できるように

こうやって、将来を想像してしまうのが男の性かと、一人、苦笑しながら

託された想いを無駄にしないために

一人、大きく息をした。

そしてカントーの自宅へと帰っていく






自宅へ到着した頃は既に夜で

自分で淹れたコーヒーを飲みながら、感慨にふける。

自室で飲むコーヒーが少し濃く感じたら

本当に馬鹿だった、愚かだった自分が嫌になった



孤独に戦う親友、巻き込み巻き込んだ弟子、涙を流させた恋敵、酷く傷つけた元彼女



そして、一番馬鹿で浅墓な自分。

それでも託された想いと自分の想いは本物だから

馬鹿だった自分にもう一度チャンスをくれた彼女に自分の決意を告げるのだ。

この決意がどんな結果に終ろうとも、後悔は無い。それだけのことを自分はやってきたのだから。



孤独に戦う親友をいつか安心させるために


巻き込み巻き込んだ弟子の師匠であり続けるために


涙を流させた恋敵の覚悟を無駄にしないために




酷く傷つけた彼女をもう一度・・・・・・










あの夕日の海岸を去ったシルバーが、この後、燈台守のジムリーダーと出会うのは、また、別の話・・・・・・












元彼元彼女



春の終わりごろのとある休日の夜・・・




花が散って、緑の葉が青々と茂る季節となった。


何とか漕ぎ着けたデートの日。


一日、タマムシシティに出向いて買い物に付き合って


喫茶店のオープンテラスで話をしながら、


のんびりと最後の春を楽しむ。





いつしか時は夕方から夜になって、少し蒸し暑い日中に比べて

非常に過ごしやすくなった夜・・・。

ブルーをブルーの自宅に送っていく時だった。





春は終る。


決意を未だに行動に表せない自分。


仮に行動に表したとしたら、破廉恥としか言いようがない。


元々、理屈や道理を重視する自分が道理から外れたことをしたということが


そして、今からしようとしていることが許すことが出来ない。


あの時の決意も曇るほどの思いに、苛立ちを覚える。





近づくブルーの家、春は終る。

焦りと苛立ち、信念と決意が交じり合って表情に出さずに苦しむ。



(「いざって時は、お前がいるから大丈夫だと思う・・・」)



あの時の電話での親友の言葉。

今の自分よりも苦しんでいるはずの親友を思えば、この苦しみは・・・






「どうしたの?」





突然足を止めたグリーンを心配して、ブルーが様子を伺う。

ブルーの家はもう目の目だ。


「・・・聞いてもらいたいことがある。」


グリーンの言葉に、ブルーはうんと頷いた。





優しい夜風が2人を包む。








「・・・また、コーヒー・・・淹れてくれないか・・・」











背を向けて言い放った精一杯の言葉。

月明かりが2人を優しく照らしている。

これ以上の言葉を話すことは、もう許されないように思えた

向かい合うと決めた弟子が凄いと思った。

とてもじゃないが、恥ずかしさのあまり身体を向けることが出来ない。

ふと、頭の中に涙のイメージが湧いた。



(「ねえさん・・・、頼むぞ・・・・・・」)



涙の決意と誓いは、託された想いは・・・・・・

グリーンはブルーのほうを再び向きなおして、目を合わせてもう一度言った





「・・・また、コーヒー・・・淹れてくれないか・・・?」






はっきりと、確実に彼女の心に届くように


信念を曲げて言った、様々な思いの詰まったこの言葉。


どんな結果が待ち受けていようと、後悔は無い。


なぜなら、この思いに間違いはないからだ。


月明かりに照らされた彼女の顔から、瞳から、絶対に目を離さない。


驚きの表情を見せている彼女を真直ぐ見つめた・・・












「・・・全く・・・ただし、これからはアタシが淹れる以外のコーヒーは飲まないでよ。」











両方の瞳から溢れ出てきた涙が、月明かりに美しく光った。

自然と両腕が彼女の身体を抱き寄せていた。


「・・・わかった」


同じ思いでいてくれた彼女に、心からの感謝を、そしてこれからの愛情を


抱き寄せた彼女が抱きしめ返してきたので、さらに抱きしめる力を強くして


夜風と月明かりが祝福する春の終わり、夏の始まりに


不器用すぎた優しさが、ようやくもう一度本当の夜明けと夜を迎える。


耳元で聞こえる彼女の泣く声が愛おしく感じた今日


春は終わり、初夏となる。






月明かりの空の下で2人の影は一つになり続けた・・・・・・










春が過ぎて、カントーに夏が来る。


スタートラインに立った4人は、また初めから動き出す。






そして物語はあの日と同じように動き出した・・・・・・







Phase.11へ・・・