一人の答えに、二人が動く・・・・・・。
PAS(yellow side) Phase.8 大切な人へ −走り出した一つの答え−
動き出そうとするグリーン・・・しかし、これまた動き出す“きっかけ”が必要だった。
ただ何の考えも無しに動いては、何の意味も無い。
覚悟はある、勇気もある、だが、いきなりブルーの家に行くのも何だかおかしい気がした。
電話やポケギアで連絡を取ったとしても、まず通信してくれないか、約束など取り付けることも不可能だろう。
今のブルーの心境を考えて、どんな方法で説得、謝罪すればいいのかを考えた・・・・・・。
そんなグリーンの元へ、“きっかけ”は“弟子”からもたらされた。
「・・・もしもし」
「あ、グリーンさんですか?」
まだ、別れて一日と経過していないのに驚くほど元気な声で
イエローから電話が掛かっていたので本当に驚いた。
「ど、どうした」
流石に動揺するグリーン。
「・・・今日のお昼に、シルバーさんに会いました。」
今まで、ブルーやシルバーとは疎遠になっていたので、その情報に戸惑いを隠せない。
「そしたらシルバーさん、今度の週末にブルーさんと初めてデートするって言ってました」
「・・・デート・・・・・・。」
その一言を聞いて、ブルーとシルバーの進展具合にイラつきを覚えたが
逆に、“初めて”という言葉から分かるように、今までの間にさほどの進展していないようだ。
「デートする場所や時間は分かりませんけど、とりあえず本当です」
「・・・すまない」
「“弟子”として当然ですよ」
優しいのか、厳しいのか・・・イエローの言葉に返す言葉が見つからない。
返答に困ったが、とりあえず自分にしては珍しい、生返事を返すと
別れの挨拶を済まして、電話を切った。
決着は今週末・・・・・・
(今週末はねえさん・・・いや・・・ブルーとデート・・・・・・)
ここにも一人、今週末に決着をつけようとしている男が一人。
久々に会ったイエローに、グリーンとの話を聞いて少々動揺している現実。
下手をすれば、最大の恋敵が復活する可能性が大きいからだ。
だが、こちらの決着のほうが早いはず。何せこちらは今週末。
いつイエローとの関係が終ったかは知らないが、残された期限は6日。
ブルーと接触されなければ、勝ったも同然である。
(そうと決まれば・・・・・・)
自室のベットに寝転んでいたシルバーは、起き上がるとなにやら準備を始めた。
(今週末はシルバーとデートか・・・・・・)
自室の机で勉強に励むブルー。
シャーペンでノートに様々な数式を書き込んで、複雑な問題に取り組んでいく。
ふと、今週末のシルバーとのデートを考える。
確かにシルバーは顔良し、性格良しで文句は無いのだが
やはり、弟分としての感情が大きい。
“物は試し”の感情で言ってしまったデートの誘い。
あまり大きな意味で捉えられていては、結構困るのだが・・・はたして・・・・・・
結論から言えば、今週末のデートに望むのは“奇跡”なのかもしれない。
シルバーへの想い30パーセント、“奇跡”が起きることに70パーセントの期待もって。
そして、2人が動き出した・・・。
残り6日 夕方・・・
とりあえず、デートは今週末。
ならば、それより前にブルーと接触すれば良い。
まずグリーンは、ポケギアへの連絡を試みた・・・・・・。
無論、連絡がつかないことは百も承知である。
ポケギアでブルーをエントリーコールしてみる。
・・・・・・。
通信不可能と画面には表示されたので、おそらく、ポケギアを買い換えた可能性がある。
ならば、その連絡を受けているはずであろうジョウトの面々に連絡を取ってみた。
「えっ?ブルーさんポケギア換えたんですか??」
クリスの不思議そうな声を聞いて、大方の予想通り、通信を拒否されていることが分かった。
ここまでは、まったくの想定の範囲内だ。
ならば、据え置きの電話なら通信は可能だと思ったグリーンは
本当に久しぶりに、ブルーの家へと電話を掛けた。
呼び出し音と共に、鼓動が速くなっていく・・・・・・
「もしもし」
その声ははどう聞いてもシルバーの声だった。
「・・・ブルーは居るか?」
シルバーもあまりにも予想通りの展開に驚いていた。
「・・・いたとしても、お前と会話する気は無いそうだ」
そういい残すと、電話をガチャリと切った。
(・・・・・・電話は無理か・・・・・・)
間接的な手段では、おそらく、シルバーが邪魔に入ることは、これも想定内だったので
とりあえず、その日はブルーへの接触をあきらめた。
残り4日 午前中・・・
間接的な手段で接触を取れないのなら、直接的な手段しかない。
大学にいっている可能性も否定はできない。
本来は春季休業中なのだが・・・それは裏を返せば、他の生徒が居ない分探しやすく、出会いやすい。
そのため、今日はジムを休みにして朝からタマムシ大学へと向かう。
(・・・・・・やっぱりな)
グリーンの行動を読んでいたシルバーは、ブルーを何とか説得した。
初めブルーは、なんだか不自然なシルバーに戸惑ったが
かわいい義弟の願いだったので、一応、その話に付き合ってあげた。
本当はその日、大学へ行く予定だったのだが
家でおとなしくシルバーと過ごしていた。
グリーンはその日一日を、大学前で過ごしてしまい
タマムシシティの女の子たちに追い掛け回されて、一日が終ってしまった。
残り2日 夕方・・・
昨日、ジムを開かなかったので今日はジムを開く。
ジムの仕事をしていたら、いつの間にか夕方になり、時計は午後5時を差していた。
夕飯時だったので、ブルーがいるかと思い、意を決してブルーの家へと向かった。
間違いなく、相当な修羅場が容易に想像できた。
だが、その日は非常に運が悪く
「ねえさんなら出かけたよ」
ドアを叩いて出てきたシルバーの言葉に、自身の覚悟を砕かれて
少々脱力しながら、自宅へと帰っていった。
(・・・やりすごしたか・・・・・・)
シルバーはブルーの部屋に行くと、大きな音をわざと立てるようにノックした。
ブルーの両耳にはヘッドフォンがしっかり着用されていて
外からの音はそう簡単には聞こえないようだ。
「ところでシルバー、この曲を突然聴いて欲しいなんて・・・どうしたの?」
「いや・・・・どうしてもねえさんに聞いて欲しくて・・・・・・」
シルバーの巧みな妨害で、グリーンとブルーは一度も接触することは無かった。
その腕前は流石といえるだろう。それだけ、シルバーはブルーを思っている証明でもあるのだが
そして、決着前夜・・・・・・
一度もブルーと話をすることもできずに、土曜日を迎えてしまったグリーン。
勝利を確信し、一度自宅へと帰るシルバー。
戸惑った心のままのブルー。
それぞれの時が流れた・・・・・・
そして、決着の朝。
グリーンは準備を整えると、頃合を見てブルーの家へと向かった。
信じられないぐらいの緊張。
だが、その心を満たしているのは、ブルーへの思いだけ・・・
真直ぐ見つめる先にブルーの家が映った。
覚悟を決めて力強く前へと踏み出すと、丁度ドアからブルーが出てくるところであった。
久々に見た彼女は、こんなにも可愛く、綺麗だったのかと目を疑った。
薄っすらと施された化粧、色っぽい薄く赤い口紅。
春という季節にぴったりの淡いカラーのワンピース。
季節に合わせた美しいコーディネートに、彼女のセンス感じる。
自然と服装で季節を楽しみ、今を生きる。
非常に彼女らしいとグリーンは思った。
丁度今から出かけるのだろうか、こちらに向かって歩いてくるのが分かった。
冬の1月、振袖姿の彼女には完全に無視されてしまい、相手にされなかったが
今は・・・・・・
「ブルー」
思い切って彼女を呼び止めた。
「・・・グリーン・・・・・・」
目が合う2人、マサラの朝が止まった・・・・・・。
「・・・お前と話がしたい。」
グリーンは、ブルーを真直ぐ見つめて話しかけた。
「アタシは無い」
ブルーはそのままグリーンを無視しようとした。
「イエローのところにでも行けば?」
追い討ちをかけるように冷たく言い放たれたブルーの言葉に、ズキリと痛む心。
グリーンを避けて先に進もうとするブルー・・・。
「・・・シルバーが・・・待ってるから・・・・・・。」
寂しい声で気丈に振舞うブルーは、グリーンを避けて先に進んだ。
「イエローとは・・・別れた。」
「なっ・・・・・・」
そのグリーンの言葉に、ブルーは立ち止まった。
「アンタ・・・何、考えているの・・・・・・?」
呆れと、若干の怒りが声になって、グリーンに届く。
「・・・・お前のことを考えてた」
グリーンに背を向けているからなのだろうか、グリーンの真直ぐな視線を感じる。
その視線と、彼の言葉に涙が出そうになった。
「バッカじゃないの」
ブルーはグリーンに表情は見せないが、呆れに呆れたといった感じで
その場を離れて、シルバーとの待ち合わせ場所へと行こうとした。
「・・・・・・ッ!!」
自分の元を去ろうとするブルーを、グリーンは精一杯の力で引きとめた。
「放してよ!! シルバーのところにいけないじゃない!!!」
そして・・・
「行くな・・・・・・もう、離さないから・・・・・・」
「ちょ・・・何やって・・・・・・・」
グリーンはブルーを後から抱きしめた。
それに抵抗するブルー、身体を動かして、グリーンの抱擁から逃れようとする。
「離してよ!!」
「・・・・・・。」
グリーンは黙って、ブルーを抱きしめ続けた。
「離しなさいよ!!」
「・・・・・・。」
ブルーは力いっぱい抵抗する。しかし、それでもグリーンはブルーを抱きしめて離さない。
「・・・ホント・・・離して・・・・・・」
「・・・・・・。」
少し抵抗が弱まったブルーの瞳には涙が溢れていた。
グリーンはそれに気がつくと、更に抱擁の力を強めて
ブルーを自分に引き寄せ続ける。
「・・・お願い・・・離して・・・・・・」
「・・・・・・。」
泣き始めてしまったブルーをただひたすら無言で抱きしめ続けた。
ブルーの匂いがグリーンの鼻をくすぐると、グリーンはブルーの首の辺りに顔をうずめた。
「・・・好きだ・・・・・・」
耳元で優しく小さな声で囁く。ビクッと反応したブルーの身体を優しく抱きしめた。
「ふざけないで・・・・・・そんな言葉が今更通用するとでも思った?!」
その回答としてグリーンは、ブルーを自分のほうに振り向かせると
そのまま唇を奪った。
「・・・・・・!!」
驚いて抵抗しようとするブルーを、抱擁の力で押さえつけてそのまま唇を奪い続ける。
「何するのよ!!」
キッと怒った表情をした彼女を、グリーンは真直ぐに見つめた。
「・・・・・・愛してる・・・・・・」
面と向かって、初めてその言葉を聞いたブルーは言葉を失った。
「だから、もう一度やり直してくれないか・・・」
真直ぐに見つめる瞳から、目を逸らすことができない。
そしてその瞳は、ブルーの答えを待っている。
「・・・あ・・・・あたし・・・・・・」
グリーンの真剣な表情に口を上手に動かすことができない。
でも、心が今までを引っ張り出して、思考回路に感情という信号を送り込む。
「・・・ゴメン・・・・・・アタシ・・・・アナタを信用できない・・・・・・。」
そこで初めて、グリーンの瞳から逃れて横を向いた。
その一言で食い下がりそうになったが、グリーンは優しく、尚且つ力強く言った。
「・・・だったら、もう一度、知り合い、仲間からはじめよう。」
グリーンは切なそうに言った。
「この思いが恋愛に発展しなくても、文句は言わないし言えない。
ただ、お前とは必ず何らかの形で繋がっていたい・・・・・・アイツのこともあるしな」
グリーンは抱擁からブルーを開放すると、ポケットからハンカチを取り出しブルーの涙を拭った。
「・・・今日は、シルバーとデートなんだろう。化粧を直したほうがいいぞ」
そういい残すと、グリーンはその場を去った。
ブルーは全身の力が抜けてしまい、その場にヘニャリと腰が抜けたように座り込んでしまった。
「これって・・・奇跡かな・・・・・・」
涙を流しながら、ブルーは一言呟いた。
その後のデートの結末は、ご想像にお任せしよう・・・・・・
必ず取り戻す。
やり直してみせる。
もう2度と失わない。
そして、もう戸惑わない、流されない。
不器用な優しさをもった男の誓い。
この思いが成就することを祈って、男はもう一度歩み始める。
レッドとイエローが別れて2年、一つ一つの闇が晴れ始め
マサラに朝が訪れようとしていた・・・・・・。
Phase.9へ・・・