AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する



 少女の願い・・・そして、残された時間・・・・・・。






PAS(red side) Phase.7 運命の時間まで −最後のきらめき−













楽しく過ぎていく夏。


彼女の病気のこともあるので、変に遠出することは控えた


それでも夏らしいイベントを自分で見つけてきては、彼女を誘って一緒に楽しむ。


夏祭りで出店を回ったり


避暑地に遊びに行ったり


カキ氷や西瓜を食べたり・・・・・・


あの一件以来、隔たりが無くなり始めた2人は、夏にしかできないことを2人で満喫した


近くで行われる花火大会には、浴衣を纏った彼女と打ち上げられる空に咲く花を一緒に眺める。


暗闇の中で咲誇る花。


花が天で光輝くたびに2人は魅せられていく


花が散りゆく時、2人の唇は何度も何度も重なった。





楽しい時間、楽しい夏は、あっという間に過ぎ去っていった・・・・・・。















残暑を和らぎ、少しずつ涼しくなっていく日々。

そんなある日















彼女は倒れた。















 病室の窓から見る風景はいつも外への憧れを高めさせる。

白い清潔感があるカーテンと壁の世界には色が無いので

外の鮮やかな彩を見ると外へと惹かれる。

更に自分の腕を拘束する点滴のチューブが、まるで外への翼を縛り付けるようで

自由を奪われるストレスが外界への惹かれる原因を作っているのだろう。



「・・・・・・。」



平日の昼下がり、ただ惹かれる外界を見つめ続けるクリム。

本人は大部屋の病室がいいと訴えたのだが、何故か大部屋が満員。

個室だけが空いているという珍しい状況だったので

ブラックがバイトに行っている間、個室で一人ぼっちで待っているしかない。

死ぬほど退屈な時間を与えられたので、ふと自分の心を整理してみた・・・

ベットに寝転んで白い天井とにらめっこ

夕方にはブラックがここに来る・・・・・・







ブラック・・・・・・

自分の中でかけがえの無い存在

そして今、誰よりも愛しい存在

だが

彼の中に存在し続ける、一人の女性・・・

最近は全くその存在を感じさせなくなったが何だか不安になる。

傍に居なくても常にブラックに思われ続ける、はっきりいって妬ましい存在・・・

自分自身に存在する独占欲を証明する瞬間だ。

彼自身は既に過去の思い出といっているが、嫉妬してしまう自分がいる




自分の命の限界までに、彼を全て自分のものにしてしまいたい・・・・・・





薄々感じている自分の死期が、ブラックへの想いを加速させていく。






長い長い時間が流れた。

コンコンというノックの音がしたので、扉の方を向くと

扉を開けて待ちに待っていた愛する人を笑顔で迎える。


「ただいま。」


向けられた笑顔を笑顔で返すレッド。

いつものようにレッドの手には何かおみやげがある。

それを目で確認すると、そこで返事をする


「おかえり。」


レッドはその様子に気がついたようで、ベットに座り込むと頭を撫でた。


「ったく、現金なやつだなぁ〜」


おみやげを病院から支給された引き出しの上に置くと

突如レッドはクリムの瞳を真剣に見つめる。


「・・・・・・。」


底無しに暗い闇ような黒い瞳に、クリムは瞳と心を奪われた。

この男の眼力はそんじょそこらの人間とは、一味も二味も違って力強い

静まり返った病室で更なる一線を越えるような雰囲気が醸し出された・・・


ドキドキと高鳴る鼓動。


いよいよ、自分も“女”になる時が来たのかと思うと、緊張は高まっていく

迫ってくるレッドを、クリムは顔を赤らめながら静止した。


「ちょ、ちょっと、ほ、ほら・・・おみやげ・・・・・・」


慌てるクリムに、レッドは吹きだした。


「ま、おみやげでもいただきましょうか」


態度と表情を一変させて、おみやげの入った袋からおいしそうなたい焼きを取り出した。

ブラックにからかわれた事が解ると、ことさら顔を紅潮させて

レッドの身体をポカポカ殴る。


「痛い痛い痛い」


それでも笑顔のままで痛がるようなふりをするブラックに、クリムは殴るのをやめて

フンとそっぽを向いてしまった。


「フン、たい焼き全部私が食べちゃうから」


おみやげの袋を手に取ろうとしたクリムよりも早く、レッドはその袋を取り上げて

クリムには届かない高さまでその腕を伸ばして


「ふ〜ん、じゃあ、これでも食べれるかなぁ?」

「っく、ブラックめ、ゆるさ〜ん!!」


座った状態からブラックに飛び掛ろうとしたクリム、

しかし、点滴の存在を忘れていたようでグイッと腕を思い切り引っぱって

ブラック目指して両手を伸ばして飛び掛るクリムに

点滴は引っぱられて倒れ掛かってきた。


「・・・っ!!!」


おみやげの袋を手放して右腕は飛び込んでくるクリムの頭をしっかり抱きかかえ、左手で点滴を止める。

ブラックの胸に顔をうずめる形になったクリム。それを抱きかかえる右腕におみやげの袋が

バサリと落ちたが、それからもクリムは守られた。


「ふふ〜ん、たい焼きゲット♪」


腕を動かせないブラックの隙を突いて、クリムはおみやげの袋を自分の手に取ると

中からたい焼きを取り出して、体勢を崩さすに器用にたい焼きをほおばる。


「うん、甘くておいしい」


クリムが元気で満足そうな声を上げたので、レッドは溜め息をついた。

そして今の一件がまるで無かったかのようにレッドは振舞う。


「残しておいてくれよ、オレの分も」
「さっきからかわれたからなぁ〜、どうしよかなぁ〜」


たい焼きを食べながら話すクリムを見て、レッドはふと思いついた。


「じゃあ、これでいいや」

「えっ・・・・・・」


クリムの顔を右腕で持ち上げると、自分のほうに向けてそのまま唇を奪う。


「ん・・・んふ・・・・・・」


舌を口内に侵入させて、同じたい焼きを味わう。

クリムは初めての深いキスに戸惑ったが、ブラックがリードしてくれたので

それに合わせ続けていた・・・・・・

餡子がとろける口内の唾液を舌と舌で感じあう。

舌が絡み合えば合うほど、ブラックはクリムを更に抱き寄せて求める。


「ん・・・ふぅ・・・はぁ・・・・・・」


全身の力が抜けていく感覚に、クリムは酔いしれ、瞳を閉じて口内に集中する

レッドも自分の行動に少々驚いていた。

長い間付き合ってきたイエローにもしなかったことが、クリムにはできる。

その理由はよく分からない。

ただ解ることは、何よりも、誰よりも、クリムが愛しい。


「うん、甘い」
「・・・バカ・・・・・・」


唇を離すと、透明な糸が引かれ、しばらくするとそれは切れた。







急速に近づいていく2人の距離。

クリムは自分の死期を感じて焦っていたが

レッドはまた別の理由で焦っていた。






それは彼女が倒れて数週間後の、初秋の出来事・・・・・・

















「職務をお忘れではないですよね?」


「分かっている、ただ・・・・・・」


「ただ?」


「どうしても、あの娘だけ・・・いや、アイツはオレの力で絶対助ける!!」


「・・・・・・随分とお熱みたいですね」


「・・・・・・。」


「まぁ、私が伝えたいのは一つだけ・・・」


「・・・・・・。」


「アナタが病院送りにした方々、また徐々に戦力を補強し始めているみたいで

近々、アナタが今大切にしている幸せを奪いに来るかもしれませんよ・・・」


「オレは、何があってもアイツを守り抜く。」


「ほおほお」


「命に代えてでも守る、絶対だ」


「そうですか。」


バイトの途中で鳴ったポケギアからは、あの優しい声で残酷なことを言う男こと

協会の男の声が聞こえていた・・・・・・



















 
 今日のブラックのおみやげはとっても甘い栗まんじゅうだ。

彼がこうやって甘いものを買っていくのには訳がある・・・


「ただいま。」


またいつものようにクリムの病室に行くレッド。


「おかえり」


そう返してくれたクリムは明らかに、日に日に痩せ細っていっているのが目に見て分かる。

その日は2人で、ただ、普通に、本当に普通におみやげのまんじゅうを食べた。

病院の食事を殆ど残してしまう彼女も、ブラックのおみやげだけは必ず全て食べた。

レッド、いや、ブラックは衰弱していく彼女を見て、バイトに行く時間を減らした。

その分できた時間全てを彼女の為に注いだ。

ほとんど常といっていいほど、クリムの傍に居るブラック。

しかし、クリムはそれでも納得がいっていなかった。

今、いつでもこうして互いに触れ合うこともできるが、全てを独占することはできない。

ブラックの全てを、身も心も何もかもを独占したいという想いがクリムにはあった。

そう思いながらも自分の身体は言うことを聞いてくれない。

こんなにいつも近くにいるのに、何もできない自分が歯痒い

追い討ちをかけるように今度は両腕で点滴、

片翼だったのだが、とうとう翼は奪われてしまったような気分である。


「・・・翼、翼が欲しいな・・・・・・」


ふと、呟いた言葉をブラックは聞き逃さなかった。


「外の世界を飛び回る翼が欲しい、外の彩を全身で感じる翼が欲しい・・・」

「・・・・・・。」


クリムをこの病室から連れ出すのははっきりって簡単だ。

だが、クリムがこの病室を離れることが意味するのは、更なる衰弱。

彼女の命を必ず守ると決めた以上、彼女の命を危険に晒すわけにはいかない。

それでも彼女のワガママは少しでも聞いてあげたい・・・・・・


「・・・クリム、お前の病気は必ず何とかなるから・・・。」


ブラックはベットに腰掛けて、外を見つめながら話し出した。



「外の世界は今はこの窓からしか眺めることはできないけど・・・・・・

退院したら・・・一緒に旅をしよう・・・。」


「旅・・・?」



ブラックは本当はいけないのだがボールからピカを呼び出すと、じゃれてくるピカを笑顔で迎える。

そして、手でくすぐるようにピカを可愛がると、ピカはとっても嬉しそうな顔で

ブラックの腕の中ではしゃぎまわる。



「・・・世界中の綺麗な世界、汚れた世界、死んだ世界、生きてる世界・・・・・・

それぞれの彩を持った、世界を一緒に旅しよう。」


「彩りを持った世界・・・」



ブラックは視線を窓からクリムに移して、その瞳を真直ぐ見つめた。

見つめられたクリムは、射抜かれるような強烈な視線に釘付けになった。


「約束する、必ずお前を旅に連れて行くって。そして何があってもお前を守るって。」


今、自分を見つめてくれている瞳は、間違いなく自分だけを見つめている。

瞳の中にある闇さえも、真直ぐに自分を見つめてくれている。

呼び出されたピカも瞳には入っていないと断言できる。

瞳の中、いや、ブラックの中には自分以外存在していないと断言できる。


「約束・・・だよ・・・・・・」


ずっと自分が望んでいたことが今、叶った。

嬉しくて嬉しくて、涙が溢れた。

泣き出してしまった自分を見て、ピカが心配そうに見つめているのが解ったが

すぐさまブラックが包み込むように自分を抱きしめてくれた。

それも嬉しくて、もう、涙は止まらなかった。

彼の胸でひたすら涙を流し続けた。

そんな自分を優しく慰めてくれる彼の温もりと優しさが

今、自分だけのものであることがとてつもなく嬉しかった。



大切な約束を破ってしまったことがある自分

そんな自分でも、この約束だけは絶対に守ると決めた。

何に変えても、例えそれが自分の命、身体であったとしても

自分自身の全てを犠牲にしたとしても、この約束は守ると決めた。




オレは別に、ここで骨を埋めても構わない。

クリムの為に、全てを・・・・・・




2人の心、想いは一つとなった。

イエローに抱いていた想いを超えて、レッドはクリムを思っている。







それは、晩秋の出来事・・・・・・




















「どうしても、どうしても助からないんですか!?」


「・・・・・・はっきりいって、かなり厳しいでしょう。」


「・・・オレは、オレは別にどうなっても構わない!! だから、頼む、助けてあげてくれ・・・!」


「正直言って・・・無理です。」


「オレの臓器でも、何でも使ってくれて構わない!!」


「・・・・・・。」


「命くらいなら、捧げても・・・後悔しないから・・・」


「・・・・・・。」


深夜の病院の待合室で、ブラックと担当医の話は続いた・・・・・・。










 今日のおみやげは農家の方にいただいた甘酸っぱい苺。

一口味見してみたら、練乳など無くてもおいしくいただけるほどの糖度と酸味

その美しい色に、2人の顔はほころんだ。

衰弱の一途をたどると思われていたクリムは、あのブラックとの約束の影響なのか

点滴の数が減って、入院当初の片腕に一つだけの状態となった。


「ただいま」

「おかえり」


いつもの挨拶を済ませると、2人でおいしく苺をいただく。

1パック分の苺は、2人で食べたらすぐに無くなってしまった。


「「ごちそうさま」」


食べ終わった苺のパックをヘタと一緒にゴミ箱に捨てると、2人で今日あったことなどを話す。

入浴の時間後、夕食の時間となり、今日は病院食をしっかりと食べきった。

そして、その日の皆が寝静まった深夜。(正確には次の日の深夜だが)



「ブラック、お願いしてもいい?」

「ん・・・起きてたの?」




(本来なら、面会時間はとっくに終了しており、病院に居てはいけないのだが

病院に(病室に)寝泊りするのなら、一応、滞在は許可されている。)





病院の椅子で、座った状態で眠りにつこうとしていたブラック。

しかし、クリムの声を聞いたので、クリムに近づいた、


「ん、どうした?」

「・・・あのね・・・・・・」


窓からの月明かりが、クリムを神秘的に瞳に映す。


「・・・私・・・・・・」


恥ずかしそうに俯いた彼女が可愛く思えて、ブラックは頭を撫でてあげた。


「私、私、女の子じゃ嫌だ・・・・・・」


ブラックは当初、その言葉の真意がつかめなかった。





「女にしてください・・・」





瞳いっぱいに溜めた涙が溢れ、今にもこぼれそうだった

ブラックの顔を上目遣いで必死に見つめる。


「・・・・・・。」

「お願い・・・・・・」


月明かりを浴びた、クリムは本当に神秘的で、この世の存在と思えなかった。

眠る時いつも着用している、淡いピンクのパジャマがまた非常に似合っている。


「・・・・・・。」


心のどこかでイエローが引き止めたような気がしたが、それはありえないと解っていた。

ブラックの答えは



















無言の口付けだった。


























「クリム・・・聞いて欲しいことがある」


「はっ・・・んっ・・・な、何です・・・か」


「オレ、ずーっとお前に嘘ついてきた」


「う・・・嘘・・・?」


「オレの、オレの本当の名前は・・・」


「本当の名・・・・前・・・・・・」


「オレは、レッド・・・、レッドだ」


「それが、ブラックの本当の名前・・・・・・あああっ!」


「お前に、本当の名前で呼んで欲しい。」


「はぁ、はぁ、はぁ・・・レッド、レッド!!」


上ずった、艶やかな声が、病室を満たす。

レッドの腕の中で、クリムは月明かりを浴びて乱れ続ける。

















 シーツにシミと赤いシミができてからしばらくたった頃。

1人用のベットの上に2人の眠る姿が確認できた。

クリムはレッドの胸に寄り添うように密着し

レッドは、いやブラックはそれを受け止めて、抱きしめるように密着して

2人で眠っていた・・・・・・。










それは、初冬の出来事・・・・・・



















 あの苦難を乗り越えた力ならばできると信じていた。

何でもできると信じて疑わなかった。

自分の力は万能だと思い込んでいた・・・

もうじき、2人の出会いから1年が経過する。





運命の時間は訪れた・・・・・・。







Phase.8へ・・・.