AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する



 信頼は音を立てて崩れた・・・・・・。









PAS(yellow side) Phase.4 “優しさ”の失敗 −3人の関係−











 この関係になってからどれだけの月日が流れたのだろうか・・・・・・

冬は過ぎ去って、春がやってきたことは分かっている。

その春も、あと少しで終ろうとしている。

それは自分の“彼女”が今年の夏は何処に行こうかと相談を持ちかけてきたからだ

二重の罪悪感がグリーンの心を蝕み始め、そして、一つの罪悪感が、罪へと変わる日がやってきた。

それは、ある初夏の日の出来事である










 シルバーは一人、レッドを探すために行動を開始したために、ここしばらくカントーにもジョウトにも姿を見せていない。

無論、あの一件を見てしまってから、グリーンにもブルーにも、イエローにもあっていない。

本当はブルーに会って見たままを話したいところだが、見てしまった現実の重さと

その現実を告げた時のブルーの悲しみを考えると、とてもじゃないが、言えなかった。

今まで、殆ど隠し事も無く、本当の仲のよい姉弟のように付き合ってきたが

今回ばかりはこのことを話すことは絶対に出来なかった。

心にしこりを残したまま、シルバーは旅立っていった。

レッドを探す旅路で彼等の一人と一戦交えるのは別の話である・・・・・・









 夏、暑い気候が体力や気力を奪うこともあるが、開放的で、生命が本能的に輝く季節。

この時期は学校を休みになり、より、開放的な季節となる。

そうなってくると、自然と触れ合う時間が多くなるのは、ブルーだ。








「ねえねえ、今年の夏は何処に行く〜?」

夏場の為に流石にベタベタしていないが、その声はまるでベタベタと甘えているようだ。

だからと言って、その態度が特別嫌ではないし、気にはならない。

長年の付き合いなので、当然の会話。


「・・・ジムで忙しい・・・と答えるわけにはいかないだろうな」
「わかってんじゃない♪」


グリーンは薄っすらと優しい笑みを浮かべると、テーブルの上にある、アイスコーヒーに手をつける。

アイスコーヒーのグラスには結露が無数に出来ていて、カップの下に引いてあるコースターを濡らす。

コースターにはポケモン協会の支給品であることを示すマークが入っていることから推測するに

ここはどうやらグリーンの職場となっている、トキワシティジムのようだ。

椅子や机、飲み物が飲める設備があることから、ここが休憩所であることも分かる。


「2人っきりなら、久しぶりに人気の少ない、涼しいところがいいなぁ〜・・・・・・」
「・・・・・・山か・・・」


ブルーの言葉に納得して、呟きながら頷くグリーン。

だが、ブルーの言葉が何か引っかかる。



(「2人っきりなら・・・・・・」)



そう、ブルーは2人っきりなら山へ行こうと言っている。

では多人数なら? 

その、多人数の面子は?

面子を考えると、グリーンの心にグサリと刺さるものがあった。

カントーで、よく一緒に行動する面子と言えば、ほぼ決まっている。

レッド、イエロー、ブルー、そして自分。

レッドが居ない今、イエローとブルーが一緒になることとなる。


「・・・その、なんだ、俺も忙しいから、その、行くなら、山、だけに、しないか?」


しどろもどろになりながらグリーンはブルーに問う。


「・・・・・・別にいいけど?」


グリーンの慌てぶりを不思議がりながらも、ブルーは一応、納得した。








あの、一件以来、イエローとの関係は続いてしまっている。

冷たく突き放さなければいけないのだが、イエローのキャラクター上、そういう訳にもいかず

ズルズルと関係は続いてしまっている。

最近ではブルーが忙しい時に、トキワジムにイエローがよく来て、お弁当や水筒を持ってくるようになった。

グリーンはレッドと違って鈍感ではない。


女性がこういう風に接してくる時、どういった感情を抱いてくるのかは、今までの経験上よく分かっている。

別にイエローに好意を抱かれることは決して嫌ではない。

だが今、自分の目の前には、自分のことを一番好意に思ってくれている女性が居る。

自分は、この女性のことを誰よりも好意に思っていることは事実であり

その好意を証明するには、他からの好意を拒絶する必要があるだろう。

しかしその好意を拒絶しなければならない存在の好意が、自分には拒絶できない。

この答えの出ない問答を脳内で突き詰めれば突き詰めるほど、答えは出ず

その場の空気に流されて、行為へと至っていく・・・・・・

優しさが引き起こす最悪の悪循環から、グリーンは離脱できずにいた。



(・・・本当の優しさって何だ・・・・・・)



グリーンは常にその答えを模索していた・・・・・・










 最近は元気を取り戻して、明るく活発に、それでいてマイペースに。イエローは、平常状態を取り戻していた。

仕事もしっかり手につくようになり、今まで以上に頑張っているようだ。

レッドとの別れから数ヶ月。今では過去の人となりつつあるレッドのことを心のどこかに持ちながら、イエローは今を生きていた。





イエローが今の状態に戻ってこれたのには、数ヶ月という時の流れもあるだろうが

何よりも大きいのはグリーンの存在だろうか。

イエローにとって、今のグリーンの存在は“ポスト・レッド”である。


「グリーンさん、今日どうしてるかなぁ?」


自宅でエプロンをしながら、グリーン用の弁当を作る。

その時のイエローの表情はとってもいい笑顔で、鼻歌交じりで楽しそうだ。

家政婦という仕事で鍛え上げた料理の腕は、さらに上達して、今ではレッドと付き合っていたとき以上だ。

一見すると、グリーンに想いを寄せる一人の女性程度にしか思えないが

そんな彼女も、心の中では迷い、戦っている。







一番苦しくて、悲しくて、寂しいとき傍に居てくれた人は、別れた人の唯一無二の大親友。

そんな彼の優しさに少しでも甘えたくて、甘えてしまった。

だが、その彼には彼女が居ることが分かったのは、一線を越えてからだった・・・

しかも、その彼女と自分は先輩と後輩の関係且つ親友。

元々、2人の関係を知らない訳ではなかったが、求めてしまった時は、そんなことを忘れていた。

何度も、何度も、今の関係を続けることに疑問と罪悪感を抱きながらも

優しさに触れてしまった、優しさを知ってしまい、それを求める欲が、罪悪感を超越してしまっていた。

逆に、その罪悪感を感じながら求めることに一つのスリルを覚える。

そのスリルが彼への想いを増大させる。

ブルーへの想いとグリーンへの想いで揺れ動く心。

だが、揺れれば揺れるほど、想いは増すばかりであった。

静止させようとする力が強ければ強いほど、イエローの想いは増していく。

この苦しく切ない循環から、イエローは抜け出すことが出来なかった。









「よし、できたっと。」

イエローは弁当を作り上げると、水筒も持ってグリーンの居るジムを目指す。

その表情はとってもニコニコしていて、鼻歌交じりの上に足並みは若干スキップが混じるほどだ。

やはり、相手が誰であれ好きな人に好意を見せる、ぶつけるのはいいものだと、イエローの表情は物語っている。

イエローがルンルン気分でジムに着くと、いつも通り、ジムは昼休みとのことで“休憩中”の札がドアに下げられていた。

そのことを承知しているイエローは、グリーンに会うために、いつも通り、ジムの裏口から中に入ってグリーンにお弁当を届ける。

休憩所にはドアがあり、そのドアの先にグリーンがいる。

ドキドキと高鳴る鼓動、グリーンに会える楽しみと喜びがを想像するだけで、自然と笑みがこぼれる。

イエローはノックもせずにそのまま休憩室のドアを元気よく開けた。



「グリーンさ〜ん!! 今日もお弁当、お持ちしました!!!」







ドアの先で待っていたのは、グリーン・・・・・・そして、ブルー・・・・・・。

イエローはブルーの姿が視界に入ると、流石に気まずい表情をした。


「あら、イエロー・・・・・・どうしたの?」


イエローの突然の登場に、ブルーの頭の上にはクエッションマークが浮かんでいるようだ。


「あ、あの、グリーンさんにお弁当を・・・届けに来たんです・・・・・・」


そういうと、イエローは弁当箱と水筒をブルーに見せた。








この数ヶ月間、こういったことは一度も無かった。

グリーンが意図的にブルーとイエローとの接触を避けさせたわけでもなく

イエローがブルーが居ない時を見計らってグリーンに会っていたわけでもない。

無論、ブルーは、大学での講義と勉学があるのでなかなかグリーンには会えない。

それぞれが、狙ってやったわけではなく、偶然、3人が一緒になることは無かった。

逆に考えれば、それに気を使わないグリーンとイエローの人間性というものが疑われてしまうが・・・・・・








イエローが見せた弁当箱と水筒を、見つめるブルー。

部屋の空気が一気に重くなった。 

会話が無くなる休憩室。ブルーはイエローの顔と、グリーンの顔を交互に見る。

どちらも顔を下に向けて、顔色を窺われること拒否しているようだ。

2人の態度の変化に、ブルーは直感的に何かを悟ったようで、イエローに問いかけた


「・・・今日も?」


先ほどイエローが発した言葉の意味をブルーは問う。

イエローはその質問に回答しなかった。いや、寧ろ、出来なかった。

質問が回答されないと分かると、ブルーは今度はグリーンに質問する


「よく、イエローのお弁当とか食べるの?」


流石にグリーンも回答することが出来そうも無かったが、長い時間を用いて、一言、回答した。


「・・・・・・ああ。」


その回答を聞いた瞬間、何か、全てが分かった気がした。



「・・・・・・あ〜そう・・・・・・ゴメンね・・・何か、2人に迷惑掛けてたみたいね・・・・・・」



ブルーはガタリと椅子から立ち上がると、ドアに向かって歩き出した。

そして、イエローの横を通り過ぎる瞬間、イエローにしか聞こえないような声で、一言呟いていった。



「・・・心配してあげた、アタシがバカだったね・・・・・・」



寂しそうに、そして悲しい声で呟かれた声に、イエローの身体はビクッと反応した。

ドアをガチャリと開けて、ブルーは休憩室を後にした。

グリーンはドア開けて出て行ってしまったブルーを追いかけようと、椅子から立ち上がろうとした。


「待ってください!!!」


そんなグリーンにイエローは大きな声で呼びかけて、呼び止めた。



「・・・一人ぼっちは、嫌です・・・・・・」



下を向いて俯いたままイエローは、寂しそうに話した。

その声にグリーンの心は揺らいだ。





一人ぼっちの原因を生み出したのは自分であると。

レッドの真実も、連絡先も、全て分かっているのにそれを告げないのが原因であると。

そして、好意を持たれる原因を作ってしまったのは、間違いなく自分であるのだ。






しかし、それでも追いかけたい存在である。

そんな罪悪感など比べ物にならないほどに、大切な存在である。

グリーンはイエローの言葉を無視して、ブルーを追いかけようと椅子から立ち上がってドアへと向かう。


「・・・・・・ッ!!!」


休憩室を去ろうとするグリーンの腕を、イエローは掴んだ。



「もう、嫌なんです・・・・・・一人ぼっちにされるのは・・・・・・もう、本当に嫌なんです・・・・・・!!」



イエローの涙を流しながらの必死の訴えだった。

グリーンはすぐ傍で泣いている存在とどこかへといってしまう大切な存在を天秤にかけた。

その結果、グリーンは・・・・・・









「・・・・・・わかった。」









グリーンは一言呟くと、握っていた休憩室から外へと繋がるドアのドアノブから手を離した。


(レッド・・・・・・俺は・・・・・・)


休憩室には重苦しい空気とイエローの泣く声だけが残った。


















 目的も無く、とにかく、どこかへと走り続けた。


本当に信頼していた人、2人にほぼ同時に裏切られた、裏切られていたのだ。


しかもその2人というのは、やっと見つけた心の帰る場所であり、一番可愛がっていたかわいい妹分であり





そのショックは計り知れない・・・





涙を流しながら、整っている綺麗な顔をぐしゃぐしゃにしながら、走り続けた・・・・・・


走って、走って、とにかく自分が一人になれる場所を探して、初夏の少し日差しの強い太陽をその身体に浴びながら


とにかく走り続けた・・・・・・。


トキワシティを抜けて、マサラタウンの広大な草原地帯に出ると


足元の青々とした元気な青草に足を取られて転んでしまった。


青草の中に顔をうずめた瞬間、転んだ痛みで、感情が爆発した。





「う、う、う、うぁあああああああああぁぁぁぁあああ!!!」





涙は大地にしみこんでいく。声は風と共に空を舞っていく、悶える身体を青草が受け止めた。


全てのものがどうでもよくなってきた。


全てのことを忘れたくなってきた。


全ての人との関係をリセットしたくなってきた。


そんな時、ふと頭に浮かんだ顔があった。


自然とポケギアを手にとって、その相手に連絡を取ってみる。



「ねえさん、どうしたの?」



ポケギアから聞こえてきた、誰よりも優しい声に、ブルーの瞳からさらに涙が溢れ出した。



「・・・シルバー・・・・・・」



嗚咽が混じった、泣き声で話すブルーに一瞬たじろいだが

何故泣いているかの察しがついたシルバーは即座にブルーを慰める言葉をかける。





「オレが、オレがブルーねえさんを守るから・・・泣かないで・・・・・・」





シルバーの言葉に、ブルーはさらに泣き出してしまった。



「・・・シルバー、シルバー、シルバー!!!」



泣き声で、シルバーの名前を連呼するブルー。

シルバーはポケギアの先で顔を真っ赤にして照れていたがその後、泣き続けるブルーをシルバーは必死に慰め続けた・・・。















その日を境に3人の関係は一変した。(未だ、カントーに戻ってきていないシルバーは除く)


まず、会うことが無くなった。


よって、今年の夏はグリーンとブルーとイエローは共に海に行くことは無い。


もう、共に行動することもなくなるだろう。


自分自身の本当の思いの先も分からずに・・・・・・


そして、月日は流れる


寒い冬が再びやってくる。


レッドがイエローと別れて1年後、物語はシルバーがカントーに帰って来たところから動き出す・・・・・・










Phase.5へ・・・