AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する



 戦鬼覚醒・・・修羅の極み、今ここに・・・。






PAS(red side) Phase.4 襲い来る“敵”(後編)−発動、統べる者−












 崩壊した心、故にその心理は純粋。

純粋故に、全ての力を揮うことが可能。



人とポケモンの“同調”の極限、即ち、“極み”・・・・・・

それは二つの存在に与えられた可能性か、はたまた、破滅への道標か?










 いくつもの気絶者とうめき声が木枯らしの音に交じり合い、冷たい風はまるで地獄に吹く風のようだ。


倒れている者が多い中で、4人の男女と1人の男だけが向かい合って立っている。


しかし、その状態から特に進展はなく、風をその身体に浴び続ける。


どちらも動き出すきっかけを待っているようで、仕掛ける姿勢にはなっているのだが、仕掛ける雰囲気ではない。


そんな時、廃墟街に一際強い風が吹くと、砂埃が舞った。


風の影響で倒れているロケット団員の手から、握られていたボールがコロコロと地を転がる。


緊迫した空気が5人の間に漂う・・・・・・


転がっていたはずのボールがその動きを止めた。







「スピアー!!」


「カブトプス!!」


「ゴローニャ!!」


「モンジャラ!!」






鞭が撓り地面をピシャリと叩く音と同時に4体のポケモンが一斉に姿を現した。


(やはり、4匹同時・・・!!!)


レッドはきっかけと同時に後に大きく跳躍して距離を取っていた。

そして、相手の出方を窺ってからボールからポケモンを呼び出した


「フッシー!!」


呼び出されたのは、フシギバナのフッシー。

しかし、その身体は大きく傷ついており戦闘を続行できるような状態ではないことは明白だ。


「先手必勝ってなぁ!!! “
ダブルニードル”!!!」


ニードルの迫力がある声で、スピアーがいち早くフッシーの元に到達して両手の針で攻撃しようとした

それに対してレッドはジャケットの襟の部分を口に当ててフッシーに命令を出す。


「フッシー、“
どくのこな”!!」


飛んでくるスピアーに、毒の成分を含んだ粉末で満たされている種をいくつか飛ばす。

攻撃を仕掛けようとしたスピアーは突如、自分の目の前で破裂した種に驚いて攻撃を中断してしまった。




そこに吹き込む風。




風はフッシーの周囲に毒粉を撒き散らした。


「クッ!!」


レッドに遅れて、前に出すぎていた四聖獣たちは急いで口と鼻を手や衣服で覆う。

先手を取られることが分かっていたので即座に出来るカウンター兼牽制攻撃を一瞬で思いつくのは

レッドの戦う者としてのセンスが閃かせているのだろう。

再び吹き始めた風が毒粉をどこかへと飛ばしていく・・・・・・。

しかし、その頃にはその時呼び出されていたポケモン(ただし、攻撃者であるフッシーは除く)は皆、どく状態に陥った。


「流石、元主人。しかし、状態異常程度でこの4体同時攻撃はしのげないでしょう。」


何れもどく状態となっている四聖獣たちのポケモン、それでも4対1の状況というのは十分にその不利を跳ね返すほど有利な状況である。

デメリットがメリットを上回っていない以上、無駄な戦力をここで使う必要は無い。



「“
どくばり”!!」


「“
きりさく”!!」


「“
ころがる”!!」


「“
すいとる”!!」



攻撃が一斉にフッシーに向けて放たれた。だが、レッドはニヤリと笑みを浮かべて冷静に対処する。


「悪ぃけど、オレのフッシーは、そこらのフシギバナと一緒にするなよ!!!」


レッドは迫るポケモン達を指差すと、フッシーは蔓を伸ばした。


「フッシー、全ての蔓を使ってそれぞれ応戦するぞ。大丈夫、オレを信じろ!!!」


同調が始まり、2人の意思は1つとなる。

どくばり”を仕掛けようとするスピアーに2本の蔓で攻撃を仕掛け

鋭い鎌で斬撃を加えようとするカブトプスを同じく2本の蔓でその身体を捕らえると

ゴロゴロと転がってくるゴローニャにカブトプスを投げつけた。

投げつけられた影響でゴローニャの動きは止まり、カブトプスは大きなダメージを受ける。

エネルギーを吸い取ろうと、特殊な蔓を伸ばすモンジャラに攻撃を加えるために

伸ばされた蔓を2本の蔓で絡めて、最後の2本の蔓で“
つるのムチ”で地面に思い切り“たたきつける”。


「チィッ・・・予想以上に固ェなぁ」


傷ついているはずなのに堅い守り。4体同時で仕掛けても、崩れない、そして崩されないほど強固。

このまま、疲労の限界を迎えるまでこの攻撃を続けてみるのもいいが

先ほどからレッドの表情に浮かんでいる奇妙な笑みに何か嫌なものを覚えてしまう。

何か、とっておきの切り札があるような、下手したら逆に敗北する可能性があるような・・・・・・

あの奇妙な笑みの深読みに入れば入るほど、心は揺れる。

一応、ポケモンたちに攻撃を命じるが、全ての攻撃が、見事に捌かれていく。

逆に、見方を変えれば押されているようにも見えてくる。

鈍る判断、惑わされる思考・・・・・・

だが、はっと気付く

危うく、統べる者に心理を手玉に取られるところであったと。


「やだ、ニードル、何黙ってるの?」


「・・・・・・」


ウィップの声で、ニードルは現実に意識を戻した。

未だに4体がかりでありながら、突破できないフシギバナの防壁。

この間に下手をしたらレッドは新たな策を練ったり、回復を行うチャンスを与える可能性もある。

どうあっても、この堅牢なフシギバナの蔓の防壁を突破する以外にレッドをこの場で仕留める可能性は低い。

ニードルはしばらくまだ無言で考えると、ポケットから薬瓶を取り出して中から錠剤を1錠出してそのまま口に入れた。

歯で砕いてそれを飲み込むと、目が血走り始めた・・・・・・



「へへへ、オイ、アレだ・・・“セイクリッド・ビースツ・ストライク”を仕掛けるぞ。」



その言葉を聞いた他の四聖獣たちは、全員コクリと頷くと、ポケモン達をボールに戻した。

攻撃を中断してきたことにレッドは警戒を色を強める。








・・・“セイクリッド・ビースツ・ストライク

元々は、四聖獣達の所持していた“四聖獣の名を持つポケモン”が行うコンビネーション攻撃を指す。

しかし、そのポケモンたちはアサギシティでのバトルタワー崩壊時に全てビルの下敷きとなり死亡してしまったので

(このことは、復興作業を行ったレッドも知っている)

今回は四聖獣のそれぞれのコンセプトを最大限に利用して行うコンビネーション攻撃の事を指す。







「仕掛ける!!」

ニードルの声で3人が一斉にレッドに向かって走り出した。

レッドはフッシーに蔓を即座に使用できるように準備させる




・・・「針」


ニードルの手に握られていたボールからノクタスが呼び出されると、ノクタスはレッドに向かって“
ミサイルばり”を放った。

放たれた針は走っていく3人の間を巧く通過して真直ぐ飛んでいく。

それを危険と察知したフッシーはレッドをその巨体で突き飛ばしてその攻撃を庇った。

庇ったフッシーはその顔に数発の針を受けた。




・・・「鞭」


だいたい中距離といわれる攻撃範囲でポケモンを鞭で地面を叩いて呼び出したのはウィップ。

ピシャリという音の直後、ウィップの背後から現れたウツボット。

ウツボットは蔓にエネルギーを込めると、強烈な“
つるのムチ”を放った。

垂直に振られた鞭はフッシーの頭部を捉えた。

顔面を攻撃され、怯んでいるフッシーにその攻撃に対応できなかった。

その一撃にフッシーは完全に動きを止めた。





・・・「刃」


残りの2人は近距離まで接近していくが、エッジが若干早く抜け出ると

フッシーの近くにボールを投げてポケモンを呼び出す。


「ハッサム、“
れんぞくぎり”です!!」


エッジの命令を受けてフッシーに斬撃を開始するハッサム。

その素早い攻撃にフッシーは反撃を許されない。

しかも、その放つ斬撃“
れんぞくぎり”は命中するたびに威力が増加していく攻撃である

フッシーの身体は次々に切り裂かれていく・・・・・・




・・・「爆」


猛烈な斬撃ラッシュを続けるハッサム、その後でボムはマルマインを呼び出した。


「“
こうそくいどう”!!」


猛スピードでフッシーに接近するマルマイン。その距離がゼロ寸前でハッサムは攻撃を中断し

同じように“
こうそくいどう”で主人の元へと戻る。

そして、マルマインとフッシーの距離がゼロになった・・・・・・















「・・・ゴホッ、ゴホッ・・・・・」

咽てしまうほどの粉塵に覆われる周囲、レッドはそんな中、何とか起き上がった。

粉塵が徐々に、徐々に晴れていく。


「・・・・・・!!!」


声にならない驚き。

真っ黒に焦げてしまったフッシーの姿とその前に立つ、4人の人間。

どうやら、マルマインはフッシーと殆ど密着した状態で“
だいばくはつ”したようだ。


「次はアナタよ・・・」


舌で怪しく上唇を舐める


「死んで頂戴・・・フフフ・・・・・・」


ウィップは再び鞭を撓らせて地面を叩く。


「・・・まだ、やってないことがある・・・それを達成するまでは、負けはしない・・・」


レッドは戦闘不能となったフッシーをボールに戻した。

そして、別のボールを手に取った。


「じゃぁ、その目的は達成できずにお終いね・・・フフフ・・・」


ピシャリと鞭で地面を叩いた。


「フフフ・・・さぁ、タップリ喘いで悶えて、そして苦しんで頂戴!!!」


鞭をレッドに向けると3体のポケモンがレッドに襲い掛かった。


「・・・ック・・・頼む!!」


襲い来るポケモンに対して投げられたボール。そこから呼び出された巨体に、襲い掛かってきたポケモンは激突した。


「ゴン、“
ねむる”!」


ゴンはそう言われると、寝息を立てて眠り始めた。レッドは大きなゴンの身体の陰に隠れて策を練り始めた・・・


(モンスターボールの特性を巧く利用した即席防御壁ってとこですか・・・、トレートルとして裁いてしまうには

やはり、もったいない気がしますねぇ・・・・・・)


ボムはボールからゴローニャを呼び出して攻撃に加勢させる。



(ちなみに、モンスターボールの特性とは、ボールからどんなポケモンが出現するのにも1秒と掛からない事を指す。

唐突に大きなものを出現させて壁にする=モンスターボールの特性を巧く利用した即席防御壁。となる。)



カビゴンのゴンの影で息を整えながら、反撃のチャンスを窺うレッド。

その間にゴンを飛び越えたり回り込もうとすると、“
ねごと”や“いびき”で器用に反撃して、レッドへの接近を許さない。

またもや堅牢な防御をするポケモンが四聖獣の攻勢を阻む。

攻撃を命じながら何とかレッドをカビゴンの陰から引きずり出す方法を考える。


「そうだ、あの巨体をこちらも利用しましょう。」


ボムはそう呟くと、指をパチリと鳴らした。


「アッディーオ、レッド・・・・・・」


レッドに対して別れの言葉を、ボソリと若干寂しげに呟くと

ボムは目を瞑って、キザに何処からともなく取り出した1輪のバラの花を香りを嗅ぎだした。

ゴンに真直ぐ直進するゴローニャ。

ボムの次の行動が理解できた他の四聖獣たちは、自分のポケモンたちに攻撃を中断させて自分の元へ戻らせた。

先ほどまでの攻撃の嵐が中断されたので、レッドは不審に思いゴンの陰から外の様子を覗き見た。



(・・・・・・!!!!!)



ねむり状態のゴンのすぐ傍で、輝きだしたゴローニャは、己の全てのエネルギーを解放して“
だいばくはつ”した。

その爆発の衝撃波によって大きく吹き飛ばされるゴンの身体。

巨体は、レッドを守る壁から、加速した500キログラム近い重さを持った塊になり、レッドを襲う凶器となった。

ゴンと共に大きく吹き飛ばされるレッドの身体。

そして、廃墟となっているビルのシャッターに凄まじい音を立てて激突すると、レッドの意識は飛んだ。

そこへ飛んでくる500キログラム近いゴンの身体。身体はレッドと共にシャッターに激突し、その激痛はレッドの意識を呼び戻した。


「終りましたね・・・。いくら元主人とはいえこれで生きていることは無いでしょう。」


エッジがそういってハッサムをボールに戻そうとした瞬間であった。

ゴンの陰から、ボールが転がりだしてそこからニョロとピカが姿を現した。

2匹は最後の力を振り絞って最大級の攻撃を仕掛ける



「・・・!!! しつけぇぇぇぇぇ!!!!!」



ニードルの絶叫と共にノクタスは“
ニードルアーム”でニョロを串刺しにした。

ピカはウィップのウツボットの“
つるのムチ“をその小さな身体に打ち付けられて、その場で力尽きた。


「ちょっと、死んだはずでしょ・・・・・・あ?!」


ウィップが驚きの余り、変な声を出してしまった。 その声に他の四聖獣たちも振り向いた。



(((・・・・・・!!!!!)))



シャッター付近にあったはずのカビゴンの姿が無く、また、その間に挟まれていたはずのレッドの姿も無い。


「あの状態から、何処へ行ったと言うのですか?!」


エッジの疑問はもっともだ。 そんなところへ、声が響き渡った。


「オレなら・・・ここだぁ!!! ブイ、最大出力“
サイコキネシス”!!!」


全身傷だらけの上に血だらけのレッドが、鬼のような表情をしてプテの翼で宙に飛んでいる。

そして、その下では、エーフィのブイが念撃の準備を整え終わっていた。



「「「「・・・・・・!!!!!」」」」」



気迫のこもったレッドの声と同時に、ブイから放たれた強烈な念撃によって四聖獣たちとそのポケモンたちは大きく吹き飛ばされた。

四聖獣たちが地面に倒れた姿を見たレッドは、肩で息をしながら地面に足をつけた。

もう、頭や全身からの出血によって全身の力は抜けて、今、この状態を維持するのも辛いくらいだった。

レッドはプテの翼の力を使わせてもらいながら、ゆっくりと地面に倒れこむ

全ての力を使い果たしたようで、ぐったりとし始めた・・・・・・




















 「・・・・・・やっぱりコイツは、ここで始末するしかねェな・・・・・・」




「生かしておいたら、私達のこれからに支障が出るでしょう・・・・・・」




「・・・フフフ・・・障害は先に取り除く方がいいわよねぇ・・・・・・」




「今度こそ本当のアッディーオを言いたいところだ・・・・・・」




倒れるレッドの耳に、確かに聞こえてくるあの声。

レッドのその声を聞くと、絶望の余りに現実から逃げ出しそうになったが、ちゃんと向かい合うために立ち上がった。


「・・・・・・もの足りなかったところだ・・・・・・」


ニヤリと笑みを浮かべて、レッドは話すが、血まみれ傷だらけの身体に、プルプルと震える足では何の効果も無い


「フフフ・・・本当の折檻、味あわせてあげるわ・・・・・・」


この決戦の終わりの時が訪れようとしていた。









「終らせましょう。元主人も楽にしてあげましょうか・・・」


エッジの一言で、四聖獣たちはそれぞれ準備をする。

どうやら、“セイクリッド・ビースツ・ストライク”を仕掛けるようだ。

レッドは最後の気力を振り絞り、力尽きたブイをボールに戻すと背中のプテで応戦を試みる。


「“
ミサイルばり”!!」


ニードルのノクタスが、レッドに向けて針を放つ。

直進してきた針を回避するために、プテは空を飛んでレッドを上空に退避させる。


「フフフ、対空攻撃も十分可能よ!!!」


ウィップがムチを撓らせて地面を打つと、ウツボットがその長い蔓でプテの翼を強烈に打った。

プテは叫び声を上げるとレッド共々地面へと落ちていく・・・・・・


「もらいますよ、“
いあいぎり”」


着地点を予測していたエッジが、ボールからハッサムを呼び出すと、ハッサムは落ちてくるレッドに

強烈な斬撃を加えようとしたが、プテの翼がギリギリのところで壁になって、斬撃は失敗した。


「なんにせよ、止めだ!!!」


ボムはボールから別のマルマインを呼び出すと、マルマインはレッドのところで“
だいばくはつ”した。

既に意識を失いかけていたレッドにとって、その爆発は、意識を飛ばすには丁度よかった・・・・・・

爆風で吹き飛ばされて、レッドは地面に叩きつけられると

その身体はピクリとも動かなくなった・・・・・・。


「ハァ、ハァ、流石にコレをくらって倒れてもらわないと困るぜ・・・」


ニードルは乱れた息を何とか直そうとしている。

最後に見せた決死の反撃に、流石に四聖獣たちも驚きを隠せなかった。

改めてレッドという男のしぶとさと強さを思い知らされた。






ふと、再び吹いた風に四聖獣たちは、レッドの方を見た。

しかし、レッドは本当にピクリとも動かず、死んでいるようにも見える。

とりあえず四聖獣たちは倒れている団員たちの介抱をしようと、周囲で倒れている団員達に声を掛け始めた・・・・・・












(・・・・・・終わりか・・・・・・もう、身体のどの機関も動く気がしない・・・・・・)











今、レッドはこの地で果てようとしていた。









(・・・・・・イエロー・・・・・・・)










意識の中で最愛の人の名前を寂しそうに呟いた。

おそらく、もう既にいい人を見つけて、自分のことなど忘れて、幸せに暮らしているであろう・・・・・・

そう思うだけで、多少は今、迎えようとしている最期が楽になったような気がした。










(・・・・・・だけど・・・・・・だけど・・・・・・オレはまだ・・・・・・)









この世界にやり残したことがある。

統べる者としての行いをこなす必要がある。

贖罪をしなければならない人がたくさんいる。






たとえ、背負ったものが重過ぎて、大きすぎて、自分が潰れたとしても

逃げ出してはいけないことがある。






死など恐れていない

ただ、どうでもいい自分が、何も背負えず、誰かの苦しみも引き連れずに散っていくのが惜しいだけ・・・





それが、独りよがりのワガママであったとしても

誰からも望まれず、必要とされないことであったとしても





散るだけの魂ではいけない。



何か、もっと、大きな地獄や苦しみ、悲しさを背負うまで

死ぬ訳にはいかない。





完全なる自己犠牲が出来るまで、死は許されない・・・!!










(さぁ、真なる目覚めの時はきた・・・・・・統べる者の可能性をお前にやろう・・・・・・)










あの時聞こえた、どこか懐かしいような声が、全身を駆け巡った・・・・・・










(・・・同調率100パーセント・・・・・・オール・ナーバスシステム・・・コネクト・・・・・・いけるぞ・・・)












レッドは、音も立てずにゆらりと立ち上がった。

その変化に気付いた四聖獣たちは驚きの余り、声も出なかった。

レッドは立ち上がっても、瞳を閉じていた。

そのため周囲の状況がよく分からない

静かに瞳を開くと、ある変化に気がつく。

頭に流れ込んでくるのは、本来絶対見えるはずない視点からの視覚情報。

突如出現したもう一つのビジョンに脳内では大混乱が発生している。

混乱する頭にかまうことは出来ない。

レッドは力など入るはずがないと思ったが、予想以上に身体に力が入ることに驚いていた。

明らかに今まで倒れていたことによる回復量ではない。

何か、別のものからエネルギーを供給されているような感覚だ。

そしてレッドはあることに気付き始めた・・・・・・


(さっきから見えてるこの視点・・・・・・オレの肩の上からの視点・・・・・・??)


ふと、レッドは肩を未だに掴んで翼になっていてくれているプテに“空を飛んで欲しい”と言おうとした。が

何も言わずとも、レッドの思考どおりプテは翼をはばたかせて空を飛んだ。

その時の視点の変化に、レッドはある確証を得た。


(オレは、プテの視点が見えているのか・・・・・・。)


レッドはそう思いながら、一度着地した。(その際はもちろん、言葉など発していない。)

先ほど聞こえた、あの声の一言を思い出す・・・


「同調率100パーセント・・・・・・」


その言葉が、全てを解決した気がした。


「・・・死んでなかったか・・・このくたばりぞこないが・・・・・・」


やっと、口を開いたのはニードル。他の四聖獣たちは未だに現実が理解できない。



(そうか・・・・・・これが、ポケモンを統制するっていうことか・・・・・・)






・・・・・・ポケモン統制能力

通称 統べる者 ポケモンの力を自由自在に制限、操作することが出来る力。

戦う者の力の発展系といえるだろう。

統制方法は、心理操作である。 極端な話、催眠状態(同調状態)にして

その存在の力を解放させたり、制限したりするということ。

この才能は、無論ポケモン以外にも有効。心を持つ全ての存在に対して有効である。








これが、統べる者の力の正体である。

科学的な説明をするとこうなってしまうが、もっと抽象的且つファンタジックに表現するならば

カリスマ性やその人間の持つオーラといったものが関係しているといったほうが良いだろう。

特に、一際ポケモンを懐かせやすいといわれるマサラの者ならば、誰しも目覚めておかしくない才能であるともいえる。

ただ、ここまで色濃く才能が発揮されるのには、レッドとの謎の声に深い関わりがあるのだろう。








「フン、多少元気になっただけで、何が出来るってんだ? あぁ??」

「甘く見るな。死線を越えてきた仲間との絆の深さをな。」


放たれるプレッシャー。四聖獣全員が、身構えた。


(コイツ、本当に人間か・・・??)


「見せてやるよ、戦場の統制者の真の力をな・・・・・・」



レッドは瞳を閉じて集中し始めた。







「プテ、・・・・いや、もう、名前なんて呼ばなくても、技名も叫ばなくてもお前に全てを伝えられる・・・」



レッドは目を閉じたまま呟く・・・。


「こんどこそ、止めを刺しましょうか?? トレートル、レッド?!」


ボムの声で、四聖獣たちは三度、“セイクリッド・ビースツ・ストライク”を仕掛ける。

走り出すエッジ、ウィップ、ボム。 そして、牽制攻撃を仕掛けようとするニードル・・・!!






そして決着の時は訪れた・・・・・・。






究極連携(マスターコンビネーション)!!」


レッドの気迫ある声と共に、プテはレッドと共に空を駆ける。

3人の頭上を飛び越えてニードルの牽制前に、攻撃を仕掛ける


「ヘヘヘ、悪ィが、牽制だけがオレの仕事じゃないんでェ!!!」


ノクタスは“
ミサイルばり”の攻撃を変更して“ニードルアーム”を放とうとして、レッドに両腕を向けた。

しかし、レッドは冷静に対処する


「“
つばさでうつ”!!」


右腕を高く上げて振り落とす動作と同時に、なんと背中のプテが翼を振って攻撃を加える。

ノクタスの頭部に直撃したプテの大きな翼。タイプ的に弱点を突かれたノクタスはその攻撃に怯んだ。

レッドは着地してノクタスの正面に立つと、痛さの余り仰け反ってしまったノクタスの腹部に再びプテの翼で一撃を加える。

まるで、プテの翼はレッドの武器となり、逆にもったトンファー状態だ。


「なっ・・・!!!」


驚いているニードルの腹部に、同じように翼を打ち込むと、腹を抱えて前かがみになったところで、延髄に強烈な一撃。

ニードルはその場でバタリと取れて気絶してしまった。

しかし、元々、牽制攻撃を仕掛けるためだけの存在であったニードルを倒したとしても

セイクリッド・ビースツ・ストライク”の本命の攻撃は中断されるわけではない。

ニードルを倒して気を抜いていたレッドの右手を、ウツボットがその太くて長い蔓で捕らえた。


「フフフ・・・調子に乗りすぎたわねぇ・・・・・・“
ようかいえき”をプレゼントよ。」


怪しげな声と笑い声でレッドを威嚇するウィップ。それに対してレッドは臆することなく攻撃を続行する。


「“
はかいこうせん”!!」


プテはレッドの頭の上から首を伸ばすと、口から強烈な閃光を放った。

ウツボットから飛ばされた液体を一瞬で蒸発させると、閃光はウツボットの蔓を焼き払い

そして、ウツボットを焼き払った。その衝撃にウツボットはウィップごと吹き飛ばされた。


「だから、それがどうかいたしましたか?」


もの凄いスピードでエッジとハッサムがレッドの前に姿を現し、ハッサムは両手で斬撃を開始する。

その攻撃の速さは尋常ではないが、元来、刃のように固いとされるプテラの翼で守備をされてしまうと

それほど巧くタメージを与えることは出来ない。

レッド本来の戦いのセンスと、プテのポケモン的な本能がその攻撃を見切ると

逆にレッドは、一瞬の隙を突いてハッサムに翼で“
みねうち”を決めた。

ガクリと力が抜けるハッサム、レッドは“
つばさでうつ”とハッサムは戦闘不能となった。

即座に次のポケモンを出そうとするエッジを、プテが自身の意思で“
げんしのちから”を放ってエッジを吹き飛ばした。

一気に窮地に立たされたのは、ボム。

そんな彼が今、呼び出しているのはソルロックとルナトーン。

ただ闇雲に炸裂技を使っても、そう簡単に今のレッドを抑えることはできないだろう。


(ここは、念による攻撃か・・・?)


ボムが一瞬、戸惑った瞬間であった。


「自分を信じられなくなったら、終わりだ。」


レッドはソルロックとルナトーンを抜けて、自分の目と鼻の先に立っている。

ボムは余りの恐ろしさに顔が真っ青になったが、ソルロックたちがレッドの後にいることに気がついて

指を弾いて、合図を送る。

2匹は合図通り、自分のエネルギーを転換して“
だいばくはつ”した。

強烈な閃光が発生したが衝撃はたいしたことは無い。 背後にその一撃を受けたレッドだったが

その程度の攻撃で倒れることは無かった。


「悪ぃな。ここに“
こうそくいどう”する時、2匹を間を抜ける瞬間に“みねうち”させてもらった。

あの手の技は、自分の体力を爆発のエネルギーに転換するからな。」


完全に読まれていた戦術、それ以前に超人的瞬発力による“
みねうち”、この時点で勝てる見込みが無かった。


「最後だ・・・」、


レッドは一言、切なそうに呟くと、ボムの身体に翼を打ち込んだ。

倒れるボム・・・・・・・。



今、四聖獣が倒されたことによって、レッド単独によるロケット団の撃破は一応成立した・・・・・・















 廃墟街を後にしたレッド。


どこかの道にプテにおろしてもらうと、仕事用のポケギアを取り出してある場所へ通信を求めた。



「・・・・・・すいません、廃墟の街で人がいっぱい倒れてます。 救急車、いっぱい呼んであげてください・・・・・・」



レッドはそれだけ伝えると、ポケギアをそのまましまった。





そして、プテをボールに戻すと、突如、急激なめまいに襲われ始めた。


感覚が無くなっていく身体、ぼやけていく視界・・・・・・


それでもレッドはその状態で歩き始めた。


その行く先で、今度は本当の自分の贖罪をするために。


だが、身体に力は入らず、頭はフラフラし始める。


どうやら、限界のようだ。


レッドは最後の力で、自分の上着のポケットに手を入れて、何かを取り出した。






それは、あの時イエローと一緒に買ったイヤリングだった。






レッドはそれを握り締めると、その場でバタリと倒れた・・・・・・










 とっくに夕日は沈んでおり、暗闇があたりを包んでいる。

人の気配も殆どしない、この路上で、一人倒れるレッド。

ヨルノズクの鳴く声だけが暗闇の中に聞こえた・・・・・・
















Phase.5へ・・・