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復活の四聖獣・・・・・・レッドは・・・・・・






PAS(red side) Phase.2  修羅と化して −残党集結−










 黒服を着用した男達が次々と己のポケモンと共に倒れていく。

その数、目視で100人以上・・・・・・。

大地を割って強襲する敵にも、天高くから急降下する敵にも、正面から正攻法で攻める敵にも

ニョロボンの拳とフシギバナの蔓が叩き込まれる。

叩き込まれた身体からは、鈍く嫌な音がする。そして、その場に蹲るか気絶するか・・・・・・

その冷酷な命令を下すのは、フシギバナの背に乗っている一人の青年。

瞳をギラつかせ、黒々とした漆黒のオーラをその身に纏い、高圧的なプレッシャーが身体から発生している。



今また、数人の黒服の男達が一斉攻撃を仕掛けようとポケモン達を突撃させた。


「フッシー、なぎ払え!!!」


青年の一声で、足元のフシギバナは正面から襲い来るポケモン全てを、自身の4本の蔓を巧みに操り思い切り振りかぶると、強烈になぎ払った。

蔓の直撃時、まるで雷が落ちたような痛々しい衝撃音が響く。

なぎ払われたポケモンたちはその威力に、一匹は怯み、2匹は遠く吹き飛ばされ、4匹はその場で蹲って痙攣している。

その攻撃は実はおとりだったようで、密かに青年の背後からゴルバットが接近してきた。



「・・・・・・。」



ゴルバットが青年の背後に取り付くと、その大きな口を開けて鋭い牙をつきつけようとした。

すると、青年のジャケットから瞬時に黄色い動物が飛び出してきてゴルバットに強烈な電撃を加える。

凄まじい光が発生し、青年も黒服の男達も視界を奪われる。

光と共に大きな破裂音が聞こえた。これは高電圧の電気が放電された時に鳴る音だ

音が無くなり、視界を奪っていた光が治まる頃、青年の背後にいたゴルバットは真っ黒く炭化してしまっていた。

炭化させた張本人の黄色い動物ことピカチュウは、青年の肩に乗ると威嚇姿勢を黒服の男達に取り始めた。




黒服の男達は純粋に青年の残虐性に恐怖を覚えた。




ゴルバットの焦げた匂いが悪臭となって辺りを漂う・・・・・・

そのあまりの悪臭に一部の黒服の男達は顔を青白くして嘔吐感を覚えた。

だが、青年は顔色一つ変えることなく戦闘を続行する。

先ほどまでカウンター戦術を取っていた青年だが、今度は自ら攻め込む正攻法の戦術を取り始める。



「フッシー、“
はっぱカッター”!!」



青年の一声で、フシギバナの背中から無数の葉が飛んでいく。

飛んでいった葉は、接触した物体に傷をつけていく・・・・・・





修羅と化したレッド。 それは、“トウジン刑務所”での一件の後から始まった。













 重軽傷者10名、その内訳囚人7人看守3人。

自分を除いた10人が自らの不手際で傷ついたのだ。

医者の診断では自身は全身打撲と無数の擦過傷らしい。全治一ヶ月、病室で寝ていなければならない。

だが、レッドはポケギアでタウンマップを呼び出すとその身体で次の襲撃ポイントへと向かう。



今だボムの言葉が頭から離れない。

言葉が頭をよぎるたびに、自分の行動に疑問と迷いが生まれる。



それでも傷ついた身体でレッドは向かう。

疑問と迷いへの答えは見つからない。だが、見つかるような気がした。



そして、移動しながら考えた一週間。


舞台は最北端の刑務所“ホクジン刑務所”に移る・・・・・・













 最北端だけあって、雪が舞っている。

深々と降り積もっていく雪と夜の闇が視界を遮る頃

ホクジン刑務所にいくつもの雪を踏み歩く音が聞こえ始めた・・・・・・


「あら、裏切り者がいるわ・・・・・。アンタたちは先に仲間の救助に行きなさい。」


女性の一声で夜の闇に溶け込むような黒い服を着たトレーナーたちが雪を踏みながら走っていく・・・

刑務所の正門に一人立っている男は、長袖のジャケット1枚で雪降る夜の冷たさをしのいでいる。

その表情は暗闇の為に定かではないが、この寒さの中で微動だにせずいるところを見ると不気味なものを覚える。


「裏切り者か・・・・・・だったら、裏切り者らしく振舞うのも一理あるかなって思ってさ」


ジャケットの男は目を細めて笑うと、モンスターボールをボールホルダーから取り出した。

それを見ると女も腰に取り付けてあった鞭を手に取ると真紅の唇から舌を出して、怪しげに鞭を舐めた。


「やっぱり最低ね・・・・・・。いいわ、ここでたっぷり折檻してあげるわ・・・」


女は鞭を振って傍にあった木をピシャリと叩くと、女の背後からウツボットが姿を現した。

それを見ると男はボールからニョロボンを呼び出した。


(オレらしくやる事。それが答えだ。答えの先に待つものがたとえ戦いであったとしても、だったらオレは戦う・・・そして・・・)


前向きな考えを崩さないこと、今自分にできることをやること、それが活路だと思ったレッド。


自分にできる最善を尽くすことが彼の答えだった・・・・・・。












 先ほどから警報が耳障りという程、鳴っている。

音の中、囚人服を着た人間が黒服のトレーナーたちに連れられて脱獄していく。

レッドはそんな状況に目もくれず女を睨んでいる


「あら、仲間を救助したらアンタなんかに構ってないわよ・・・?」


その言葉に怪しげな笑みを浮かべると、レッドは女を指差した。

指を差すと同時にレッドのニョロボンことニョロが大地を拳で殴り、その反動と脚でのジャンプで飛び掛った。


主人に直接攻撃を加えようとするニョロに対して、ウツボットは主人を押しのけて飛んでくるニョロに

はっぱカッター”を放とうと、両側の葉にエネルギーを込め始めた瞬間であった

いつの間にか手に握っていた雪の球をウツボットに投げつけると、ウツボットは反射的に目を閉じてニョロを見失った。


「ニョロ、着地と同時に“
れいとうビーム”!!」


着地したニョロは真っ直ぐに女の下に走りながら、未だに視界を奪われているウツボットの背中に青白い光線を撃った。

直撃したウツボットの身体はガチガチの氷づけになった。


女はそれを見ても動じずに再び鞭を振って木を打つ。その音がしてから数秒もしないうちに女の背後からオクタンが姿を現した。


「オクタン、動きを止めなさい“
からみつく”!!」


オクタンはニョロに飛びついてその身体に全ての脚を絡みつかせた。流石にニョロも運動を制限されたため雪の大地に倒れこんだ。


「休まず、零距離で“
オクタンほう”よ!!!」


オクタンの口から真っ黒な液体がニョロに放たれた。 黒い液体こと“墨”を浴びたニョロは視界を奪われ、

オクタンに捕らわれたまま身体をめちゃくちゃに動かすだけだ。


「オクタン、“
れいとうビーム”!!」


青白い光線がオクタンの口から放たれると、ニョロの身体はじょじょに凍っていく・・・・・

だが、レッドはニヤリと笑みを浮かべるとニョロに行動を命じる。


「ニョロ、“
ハイドロポンプ”!!!」


ニョロの腹部辺りから水が勢いよく噴射された。


「フフフ・・・その程度では、オクタンを引き剥がすことは出来なくてよ・・・・・」

「そうかい、じゃあ、一緒に氷づけだ。」


オクタンの“
れいとうビーム”はニョロの放った水流も凍らしていく。無論、それを身体に浴びているオクタンも一緒に凍り付いていく。


「・・・ック、オクタン、攻撃を中止して。」


ニョロは水流を放ち続けているが、動くことは出来ないだろうと推測した女は鞭で付近にあった木を強打すると

女の背後から新たなウツボットが姿を現した。 現れたウツボットは蔓を長く長く伸ばすとよーく撓らせる。

その長さから推測するに、レッドを直接攻撃する算段のようだ。 対してレッドは新たなボールを手に取った。



「終わりよ!!“
つるのムチ”!!!」



女の一声で、ウツボットのその長い蔓は猛スピードでレッドを襲った・・・・・・










 何か、脳内で、心で、守り続けていた、理性で抑えていた、仲間を傷つけてから封じていた、あの感覚が呼び戻される。










「まだ、何か勘違いしてたみたいだなぁ・・・・・・なぁ、ウィップ」


ピクピクと痙攣してる右肩から下。あまりの激痛に目は見開かれ、奥歯はガチガチと鳴っている。

呼吸も自然と熱い息になる。 呼吸のたびに今まで以上に白い息が吐き出されるのでそれが分かる。

身体の奥から熱くてしょうがない、原始的な本能が呼び覚まされる。

血走る瞳、荒く熱い息、ガチガチと鳴る奥歯、痛みに痙攣する右肩、右腕・・・・・・



「・・・1年ぶりだな、こういうバトルをするのは・・・・・・」



そして、その言葉に鞭を持った女ことロケット団四聖獣 玄武のウィップは恐怖を覚えた。










徒に人を傷つけることの出来る力を持つようになり、その力を抑える日々・・・。


それを心のままにぶつけていたあの時間・・・。


そして、大切な存在を傷つけたことにより再び封じた力・・・。


だが、本能がその力を再び呼び起こした・・・・・・








レッドの瞳の輝きが失われ、黒く、闇のように黒くなる。



「ニョロ!!!」



レッドの一声で、延々と水流を放っていたニョロは、身体を拘束していたオクタンを最大出力の“
ハイドロポンプ”で吹き飛ばすと

レッドの元へと戻っていった。 しかし、相当な量の水を放ったようで、かなりの疲労が伺える。


「氷だって、流水ならば溶かすことが出来るんだぜ・・・・・・」

「・・・ま、まぁ、面白い情報をありがとう・・・・・・」


レッドの変化にウィップは動揺を隠せない。報告では、ふぬけのカスと聞いていた分、この変化は意外だった。

あわよくば、レッドをこの場で始末できるチャンスだっただけに、本当にその変化は驚きであろう。

今のレッドはまるで、首領時代とほとんど変わりない残酷且つ狡猾なあの存在にしか見えない。


「そうだ、こんだけ雪降る夜だ。せっかくだから雪を堪能しようぜ」

「・・・ふん、大地に頭をつけて一人で堪能して頂戴。」


いつもの調子で振舞おうとするウィップ。だが、どうにも普段の調子が出ない。

その理由に、レッドにこの雪降る夜よりも寒く、冷たい瞳で見つめられているからだろう。

まるで、心を見透しているような瞳だ。

ウィップはとにかく、ウツボットに再び蔓を撓らせ始めた。それを見ても、レッドはニョロを交代させる気はないようだ。

そしてレッドは大きく息を吸って深呼吸をするとニョロと見つめあった。 “同調”の発動である。

レッドはウィップが仕掛ける前にニョロと共にウツボットとの距離をつめる。

非情に長い蔓では近場を打つ事はできないとの推測だろう。しかし、ウィップはその行動を読んでいたようだ。


「そうくると思ったわ!! ウツボット、蔓を横に振って!!!」


ウィップの命令通り、ウツボットは真横に大きく振りかぶるとレッドとニョロを側面から狙う。


「飛べ!!!」


レッドの絶叫でニョロは大きく跳躍した。跳躍で蔓を回避するが、レッドは脇腹を強打された。

あまりの激痛にうめき声を上げながら、レッドは雪の中に倒れこんだ。


(チャンス・・・ここでレッドが覚醒する前に・・・・・・!!!)


「ウツボット、徹底的に折檻しなさい!!!」

ウツボットの蔓が大きく振りかぶられる、しかし、それを見てもニョロは主人の心配などしていないといった表情をしている。

そして、ニョロはウィップに向かって走り出した・・・!!!


「あら、ご主人様が死ぬかもしれないのよ・・・? 私を狙っている暇なんてあるのかしら??」


ウィップの言葉にニョロは、一切反応しなかった。


「な、本当にお前のご主人を鞭で叩きのめして、殺すわよ?? 本当にいいの???」


ニョロは足元の雪を片手に小さな山が出来るくらい持つと、思い切りその手を振りかぶった。


「・・・・・・!!!」


その刹那、ニョロの手にしていた雪は手と一緒にウィップの顔面に強烈に叩きつけられた。

その衝撃にウィップはその場に倒れて仰向けになった。仰向けになり、見えるのは

真っ赤に染まった顔面の雪。

ドクドクと溢れる鮮血が、顔面に付着している雪を赤く、赤く染めていく・・・


「・・・対人用のトレーナーだもんな。これぐらいのことをされても当然じゃないか??」


レッドは脇腹を押さえながら、プテラのプテに補助してもらって立ち上がる。

ウツボットは、プテの“
はかいこうせん”を受けて戦闘不能になっているところを見ると

倒された時点で左手にはプテのボールは握られていたようで、顔面攻撃時に隙を突いてプテを呼び出して攻撃させたようだ。

ニョロと同調した時点で、鞭を横振りにしてくること、その攻撃をわざと受けること、ニョロの心を揺さぶること

その3点は予想済みだったのだろう。バトル場での心理を統制できる存在ならではの戦闘方法だ。



「・・・雪、たっぷり堪能できただろう?」



そう吐き捨てるよに言うと、レッドは脇腹を押さえながらその場を後にした・・・。

















 ウィップ負傷とレッドの覚醒は、四聖獣たちの元へと報告されていた。

「うーむ、元主人の復活ですか・・・。しかも、かなり精神的にも効果的なことをしてきましたねぇ。」

「ここは、3人同時行動をしたらどうだ? まだ、覚醒して間もないとは言え、単独ではあの男には勝てん」

「なら、こうしたらいかがでしょうか? ただ、人員を割くことになりますが」

ボムの提示したプランを目にする残りの四聖獣2人。その内容に、頷く。

「なるほどな、時間稼ぎも出来て、裏切り者を弱体化させることも出来るわけか・・・ヘヘ、いいじゃねえか・・・・・・」

スキンヘッドの男がそう言うと、赤地のスーツを着た男もそれに頷いて賛成した。

「では、ウィップの部下達を使いましょう。あの、サディスティックシニョリータもこのプランなら許してくれるでしょう」

ウィップ以外の四聖獣の承認を得て、このプランは実行された。



プラン名は「不幸の影」と呼ばれた。












 そのプラン内容は、まさに影のごとくレッドを追い続け、安息させないという地獄の作戦だった。

例えば、レッドがポケモンセンターを利用しようとすると、そのポケモンセンターは襲撃されたり、使用不能に追い込まれる。

簡単な食事をしようとコンビニによるだけでも、コンビニごとレッドを襲撃する。

野宿でもしようものなら、寝首をかかれてしまう。それでいて、常に追っ手が迫るのだ。

何度追い払い、倒したとしても、別の団員が数時間後にはつきまとう・・・・・・

安息、休息が一切無い地獄の日々、迂闊に街に出ようものなら、泊まったホテルを襲撃されたり、食事に寄ったレストランを破壊されたりと

街に住む人々に多大な迷惑をかけてしまう。 レッドはそれは避けたかった。

食事も、休息も、安息も無い日々はレッドの精神と体力を根こそぎ奪っていく・・・

その結果、レッドが到着する前に残りの2つの刑務所は四聖獣に襲撃されてしまい、大半のロケット団員達は脱獄してしまった。





そんなことをしているうちにいつしか季節は、春を向かえ、夏が過ぎ、秋が終り始め、冬へと移りはじめた。







 いつものように追撃者の気配を感じながら移動するレッド。

ロケット団員が収容されていた4ヶ所の刑務所は全て四聖獣によって襲撃されており

これで四聖獣達や脱獄したロケット団員の居場所を突き止める手がかりは無くなった。

当ても無く彷徨いながら、追撃者を追い払い、脱獄したロケット団員を探す旅は、もう、出発から1年という時間が経過していた。





やつれた顔、黒いくま、絶望に満ちた瞳・・・・・・





今のレッドは、レッドとはとても思えない。

ひっそりと川原でポケモン達と共に暖を取り、追撃者の気配を感じながら一息つく。

すると、普段は遠距離からいきなり攻撃を仕掛けてくる追撃者はレッドの前に堂々と姿を現した。


「・・・この場所で、お前を待つとのことだ。 時刻は正午。」


そう言い残すと追撃者はその場を去った。レッドは手渡されたメモ書きに目をやると、そこにはある場所が示したあった。

その指し示された場所とは廃墟と化し、ベトベターやゴースたちの住処となっている大きな街の跡だった。

行政も未だにその廃墟の処理に手が回らないようで、もう10年ほど前から放置されている。

元々、廃墟となった原因は周辺一帯の環境汚染らしい。街の内部に存在した工場が、危険な薬品をそのまま大地に垂れ流しをしていたため

大地に草も花も咲かず、生き物やポケモン達は自然とその場所からいなくなった。自然が移動すると、人も移動し、いつしか誰も住まなくなった。

レッドはメモ書きを握り締めると、暖を取っていた焚き火を消してその場所を後にした・・・・・・













 四聖獣達が発案した作戦は確かに成功した。

だが、作戦によって精神を追い詰められたレッドは、徐々に感情そのものを失いつつあった。

人との交流も出来ず、1年近く地獄の日々を送れば当然であろう。

感情を失ったレッドは、ただ、目的の為に力を揮う。

それは、まさに修羅のようであった・・・・・・








Phase.3へ・・・