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待ち受けるのは戦いの日々。 戦うべき相手・・・それは・・・・・・。






PAS(red side) Phase.1  修羅の日々 −その始まり−













 どれだけの時間、そして距離を歩いたのだろうか・・・・・・。


レッドも知らぬどこかの土地で、レッドの新たな戦いは、いや、正確には戦いを終結させるための戦いは始まっていた・・・・・・。
















木枯らしが吹く、どこかの廃墟街・・・。 こういった場所はゴーストポケモンやベトベター等の毒ポケモンの住処となることが多い。

その寂しい街を一人歩くレッド。木枯らしが寒いのだろうか、ジャケットの襟を立てて身を縮めながら歩いている・・・・・・



そんなレッドの目の下には黒いくまが出来ているところを見ると、最近、ろくに睡眠を取れていないのだろう。

しかし、レッドは無言で歩き続けた・・・・・・。







複数の黒い影が迫る・・・・・・







いや、迫るのではない・・・・・もう既に、この街に入り込んでいたのだろう。

一つの黒い影が動きを見せると、少なくとも10の影が動く・・・・・・。




その影は、ビルとビルの間に


ビルの窓の奥に


建造物の陰に


閉まったシャッターの裏に


マンホールの下に・・・・・・




10の影が動いたかと思いきや、その後に100の影が動く。

100の影が動くと、1000の影が動いた。



それでもレッドは歩みをやめない。その表情はジャケットの襟と手で隠れてよく分からないが

少なくとも瞳の様子は分かる。



レッドの瞳はまるで、生気を失ったような絶望の瞳をしている・・・・・・。



瞳の黒に絶望の陰がちらほらと見える気がしなくもない。

そんなレッドは未だに歩みを止めることはない・・・。





いつしか影達に包囲されたレッド、それを理解したのだろうか、その歩みを止めた。








「・・・呼び出しどうり来てやったんだ・・・・・・来いよ。」








恐ろしく冷たい声で話すレッド。その声からは狂気さえ感じさせる。



木枯らしが吹いた・・・・・・



声を聞いた影達は一斉にレッドに襲い掛かった。(正確には、彼等のポケモン達がであるが)

ペルシアン、アーボック、マタドガス、ゴルバット、ハブネーク、ウツボット・・・・・・

このポケモン達のメンバーから推測されるレッドが今、戦っている影の正体は彼等である。

レッドは縮こませていた身体を開放すると、レッドの手にはモンスターボールが既に2つ両手に握られていた。

その時のレッドの表情は、瞳はあのままなのに、口はニヤリと笑みを浮かべる

という、正義の存在とは遠くかけ離れた狂気の表情であった。



これから始まる地獄の最終決戦にいたるまでは、1年の月日が流れていた・・・・・・

















 マサラを後にしたレッドは夜の闇の中一人歩んでいく。

何処に向かい歩いているのかは、闇の為に分からない。だが、レッドは確実にある場所を目指して歩いている。

しばらく歩き続けたレッドは、ある地点に到達するとボールからプテを呼び出した。

プテはレッドの翼になるとレッドを空へ導く、そしてレッドが指差す方向に飛んでいく・・・・・・






それから時は流れ、時刻は午後10時

レッドはカントーの外れにある施設を訪れていた。

周囲を非常に高い塀に囲まれ、有刺鉄線でさらに囲まれ、重厚な鉄の正門の奥にはたくさんのガーディ。

ここは犯罪者更生施設。そういうと聞こえはいいが、簡単に言ってしまえば刑務所だ・・・・・・。

レッドは正門前に着地すると、正門の門番室にいる門番兼受付に話しかける。

門番は警察の制服によく似た淡い紺色をした服を着ている30代前半といった感じの男だ。


「協会の特派員だ。内部を調査したい・・・」

「はい、お話は伺っています。・・・・・・ブラック様でよろしいでしょうか?」


門番の一言に、レッドはビクッと反応した。

よもや、その名前で呼ばれることになろうとは思わなかったからであろう。


「・・・・・・ああ、ブラック・・・ブラックだ。」


レッドの表情は少々渋い顔をしていた。


「こちらです。」


門番は壁に掛けてあった鍵を手に取るとレッドと共に正門へと向かった。





正門の鍵を開けると、その先はこじんまりとした庭園のなっており、様々な花のつぼみが見える。

その草木の陰には、少々殺気だったガーディたちがいるのがその声で分かる。

庭園を抜けると刑務所への入り口がある。入り口には2人の看守が立って、こちらを睨んでいる。


「ブラック氏だ。あそこへと案内してやってくれ」


看守2人は頷くと、門番はそのまま門番室へと戻っていった。


「規則ですので」


2人いるうちの若い方の看守がレッドの身体検査を行う。

ボールホルダーからモンスターボールを取り外される、次にガーディを一匹ボールから呼び出すと

その匂いをかがせる。隈なくレッドの身体を調べるとガーディはボールへと戻された。


「OKです。ボールはこちらで厳重に保管いたします。」


レッドのボールは全て若い看守の手に渡ると、今度は中年の看守がレッドと共にドアの先へと向かう・・・・・・


「情報はある程度伝わっていると思いますが、一応現場を見ていただきたい。」

「オレもそれが目的ですから」


ドアの先は冷たいコンクリートの壁に薄暗い照明が延々と続く闇の回廊。

その回廊を進んでいくといくつかのドアがある。第一〜第十棟と書かれた表札がドアの上に取り付けられている。


「こちらです」


看守は第九棟のドアを開く。その先には少しイメージと違った光景が待っていた・・・







「牢屋ってのは、あんなでっかい穴を外にまで繋げておくところなんですか?」


レッドは嫌味っぽく看守に聞く。


「繋げたい時もあるんですよ・・・でも、看守がそれで5人程大怪我ですけどね・・・・・・」


看守も嫌味っぽく返す。レッドは流石に申し訳なさそうに頭を下げると、辺りの調査を始める。

外の暗闇が視界を奪っているので、レッドは看守から懐中電灯を借りると隈なく調べる・・・


「当局の捜査前なんですよまだ・・・・・・・協会はずいぶんと変わりましたねぇ」

「・・・・・・。」


レッドはその言葉に少々驚いていた。が、今はその事実よりも先に調べることが先決である。

懐中電灯で床を照らしていくと、真っ赤な血のりがべっとり着いている。

普通ならこのようなものを見れば目ををそむけて他の場所を調べるが、警察同様、血のり近辺を調べるのがこういった場合有効である。

血のりの付着箇所や、形からは一体何があったかを専門知識があればある程度推測可能だ。

刃物の刺し傷や切り傷だと足元に血のりがべったり付着する。一般的な銃弾で撃たれた場合、噴水上に血しぶきが発生するので周囲への血の散布が激しい。

レッドは目を凝らしてその血のり近辺を見ていると、そこに短く鋭い針のようなものが落ちていることがわかった。

拾い上げて光で照らすと、まるで銃弾のような針であることが分かった。 その針にレッドは見覚えがあった。

次に牢屋の檻を見てみる。檻の鉄の柵はまるで刃物で切られたかのようにスパッと切れている。 その斬撃の後にレッドは見覚えがあった。

そして今度は大きく開けられた穴を調べてみる。強烈な爆撃で壁は吹き飛ばされたようで、外壁の破片は至る所に飛び散っている。

爆心地となった場所は壁のすぐ外側のようで、その場所を中心にものが吹き飛ばされているようだ。 その強烈な爆撃にもレッドは見覚えがあった。


「知っているかもしれないけど、看守や外を見張っていたガーディたちはみんな、全身に青アザと蚯蚓腫れがこれでもかってつけられているんですよ・・・

まるで鞭で強烈に打たれたみたいに・・・・・・目撃した仲間によると、女がそのムチを振り回していたらしいですよ・・・・・・」


「・・・・・・」


鞭、針、刃、爆弾・・・・・・そして襲撃された刑務所。 その結果、ここを襲撃したのは情報通り彼等のようだ。


「何で切ったら、そんなに綺麗に切れるんでしょうね・・・・・・ポケモンでもそのレベルの斬撃は難しいですよ・・・」


看守はもう一本所持していた懐中電灯で檻を照らしながらレッドに話しかける。


「・・・・・・凄腕のトレーナーの極まったポケモンなら、可能だと思いますよ・・・・・・

例えば、ロケット団の残党とかならきっと・・・・・・」


「やっぱり、仲間を助けに来たんですか・・・・・・」


レッドはその質問には答えなかった。その間にさり気なく何かを拾い上げると、それをジャケットのポケットに隠した。

そして話を逸らすように看守にレッドは話し出した。


「看守さん、もしも当局から事情聴取があったら、オレが来た事内緒にしておいてくれませんか?」

「えっ・・・これは公式な調査じゃないんですか?」

「今回のこの一件は、オレ一人でケリをつけたい、いや、つけなきゃいけないんだ。・・・だから、お願いします。」

「は、はぁ・・・・・・」


事情が飲み込めていない看守は、適当に返すしかなかった。

その後レッドは看守たちにお礼を言って一人闇の中に旅立っていった。

2日後、警察当局は捜査とマスコミへの規制を開始。今回の一件は今後、表沙汰になることは当分なかった。










 先ほどレッドが拾っておいたものは、1枚のメモ書きであった。

そのメモ書きには、パソコンで打ち込んだような文字で一言こう書かれていた。



『残りの団員も必ず救い出す・・・・・・たとえ誰が立ちはだかっても』



レッドはメモ書きを握り締めると、インターネットで刑務所の住所を調べるとそれを控えておく。

その数、全国で12箇所。その内、カントーの刑務所は既に襲撃済みである。

凶悪な犯罪者や、犯罪集団は一箇所に集めず、全国に分散させることが多いことを考えると全国を転々としなければならない。

これでは非常に効率が悪い。極端な話、最北端の刑務所で待ち伏せをしたとして、最南端の刑務所を襲撃された場合、

手に負えないし、移動によって発生する時間でまた別の場所を襲撃されてはたまらない。

このような事態にならないようにするには、前もってロケット団員が収容されている刑務所を知る必要がある。

しかし、そんな情報を軽々しく手にすることは絶対不可能である。なにせ、歴史的大事件の関係者であるのだから・・・




だが、レッドには一つ当てがあった。

警察の捜査前に現場を調査できるほどの権力を持つようになり、本来なら死刑確実と思われていた自分の罪を

特例処置で(といっても司法取引だが)無罪にした今の、ポケモン協会ならば、このくらいの情報なら入手可能であると考えた。

レッドは協会から支給されている特別な専用のポケギアを取り出すと、前もって登録したあったあの男に連絡を取ってみた。


「もしもし・・・聞きたいことが山ほどあるんだけど・・・・・・」

「答えられる範囲のことは何でも答えますよ。」


あの男は予想通り、協会の異常な権力保有に関しての情報は一切漏らさなかった。

何度か揺さぶりを掛けても、一言で返されてしまう



「なんなら、取引を無効にして死刑になっていただいても結構ですよ」と。



とりあえず、現在のポケモン協会に余り深く関わるのは危険と判断したレッドはとりあえず、目的の情報だけを聞き出した。


「・・・いいですか、最北端の刑務所、最南端の刑務所、最西端の刑務所、最東端の刑務所にそれぞれ分散させました。

あなたの現在地点がカントー刑務所近辺として、最も近いのは最東端の刑務所となります・・・・・・」


その情報を聞いたレッドはポケギアに地図のデータを送信してもらうと、タウンマップ上に4箇所のマークが着いた。


「・・・最後に言っておきますが、変な気を利かせて情報の漏洩を防ごうとしたりしなくても大丈夫ですよ。

口封じ・・・もとい、口止めはこちらで手を打たせてもらいますから。」


この男は優しい声なのに、その話の内容に不気味さを覚えることが多い。

その感覚を何とか耐えながらレッドはポケギアの通話モードを解除すると、最東端の刑務所を目指す。

レッドは改めてポケギアのタウンマップを見つめると、とあることに気がつく。



「・・・・・・ヘヘヘ・・・旅好きにはたまんねぇなぁ・・・・・・地図の端から端までを移動すんのか・・・・・・」



そのあまりにも大きすぎる目的と目標に一人呟くレッド。そして彼は最東端の刑務所に向けて歩き出した。








 1週間後・・・・・・

最東端の刑務所にレッドは到着した。

刑務所の門には大きく“トウジン刑務所”と書かれている。

とりあえず、カントーの時と同様に門番に話聞いてみると、この刑務所はまだ襲撃されていないとの事だった。

非常に効率は悪いが、カントーでのことを考えるとあの4人が一緒に同じ刑務所を襲撃しているようだ。

ならば、仮に他の3箇所を襲撃されたとしても残りの一つで待っていれば自然と遭遇する可能性は高い。

到着してから3日後、門番の部屋で宿泊させてもらい、眠っていたレッドは外で男性の断末魔の声を聞いて飛び起きた。


「・・・ンー、さてお前達・・・collegaghiコッレーガギを助け出すぞ!」


レッドが門番室から姿を現すとそこには1人、オレンジ色のスーツを身にまとった男と黒い服を着用した30人ほどのトレーナーがいた。


「・・・・・・ボム・・・!!」

「・・・おーっと、giudaジューダの登場だ・・・・・・。お前達は仲間達を助け出せ、コイツは私が・・・吹き飛ばす」




青龍のボム・・・・・・

ロケット団で対人用ポケモンを扱うスペシャリストの一人。

その攻撃コンセプトは「爆撃」、手持ちのポケモンが何らかの形で炸裂系の技を覚えている。

また、青龍と呼ばれる、強化されたボーマンダを使用する。




ボムの一声で黒服のトレーナーたちは全員、刑務所内部へと侵入していった。

レッドはそれを止めようとしたが、ボムのポケモンたちがその行く手を阻む


「仲間を見捨てるなんて、peggioreペッジョーレ・・・ブラック。」

「言い訳かもしれないがそれでもオレはオレなりに贖罪しているつもりだ」

「・・・そのお前が何故、私たちのdisturboディストゥルボをしようとする? 本当に贖罪の思いがあるなら、見逃してくれてもいいんじゃないかなぁ?」

「・・・・・・」


レッドは言い返せなかった。


「しかも、お前の今の状態をある程度調べさせてもらったぜ・・・。何でも、脱獄及び捕らえ損ねたロケット団員の確保が“compitoコンピト”だって聞いたぜ?」

「・・・・・・」


レッドはまた、言い返せなかった。いや、返す言葉がなかった。


「お前のcollegaコッレーガってのは、図鑑を持っている者とかジムリーダー、四天王たちだけか?? 私たちは暗い過去だから、collegaコッレーガじゃないってか??

サカキ様ならそんなこと言うはずないけどな・・・・・・」

「・・・・・・」


2人の間に気まずい空気が漂う。そんな状態がしばらく続く間に、ロケット団員たちはてきぱきと作業を進めて

囚われていた仲間たちを助け出してしまった。



「中途半端な責任で人の上に立てると思うな・・・・・・このgiudaジューダが!!!」



レッドの行く手を阻んでいたボムのポケモンたちが一斉に“
じばく”した。

その爆風によってレッドの身体は宙を舞った。そして力なく大地に叩きつけられるとレッドの視界はぼやけて、そのまま意識を失った。















 襲い掛かってきたポケモン達を、ニョロとフッシーだけで撃退すると。

再び無数のポケモン達がビルの窓から地下から空から襲い掛かってきた。

しかし、その攻撃をレッドはフッシーの“
つるのムチ”で捌くと、ニョロの拳で片付けていく。

その様子を遠くから見つめる3人の男と1人の女・・・・・・。






後に伝説となる、“レッドのロケット団単独撃破”はこの名も知らぬ廃墟街で起こった。













Phase.2へ・・・