真実は打ち明けられた・・・・・・
PAS(yellow side) Phase.12 語られる真実 −本当の理由−
何故グリーンのタンスの奥にレッドのポケギアが在るのか?
そもそもそんなことを知っているブルーもブルーだが
(恐らく、服を借りた時などに偶然に発見したのだろう)
いくら彼等が無二の親友とは言え、親友のポケギアをまるで隠すように
タンスの奥にしまいこむことは通常しないだろう。
第一、その行動の意図が見えない。
仮に例えば風水のような何かのまじないのようなものだとしよう。
だとすればそのポケギアをいつ、どこで、どうやって入手したのだろうか
単純にレッドからもらったと言うのならば、その時点でレッドの理由を知っているはずである。
また、奪った、拾ったとしても、それはまた同じある。
それらを無視して、次に問題なのは入手した時期だ。
ブルーの言葉から解るように、レッドのポケギアと解るほど最近まで(といっても当時だが)
使用されていた訳であり、レッドが買い換えて、もしくは別のポケギアを入手してそれを使わなくなった。
と言うのならその時からグリーンはレッドのことについて何かを知っていたことになる。
もしもレッドが、それ以前にポケギアを変えていたとしたら
イエローを除く全員に行った謝罪と贖罪の時にそういう話があったとしてもおかしくない。
第一に、連絡を取り合わずにそういうことをするのは不可能だ。
そしてどこで入手したのだろうか。
レッドがこのポケギアを捨てたと言うならば、ゴミ捨て場かゴミ箱を漁ったということになる。
それはまずグリーンのキャラクターとしても考えられないし
ゴミを捨てると言う、普段何気ない行為からそれを探り当てる行為は難しく
その日にその場所で捨てる事が分かっているか、それが不要になるものと分かっている必要がある。
偶然レッドの家のゴミ箱を、または近くのゴミ捨て場を漁っていたら
レッドのポケギアが在ったなんてことは絶対にありえない。
まさかレッドがどこかでポイ捨てしたと仮定して(個人情報保護の面では絶対にありえないが)
それを拾ったと言うなれば、グリーンはレッドに始終つきまとわなければならない。
そんな不審な行動をとることなど考えられないし、そんな余裕は無かったはずだ。
このことを証明することが出来るのは、当時、そして今の彼女のブルーだからこそである。
故に、ポケギアを持っていたということは・・・・・・
「ポケギアには何か知られてはいけない内容があるわけね。」
つらつらとブルーは説明して、そして最後に一言でまとめた。
ブルーは一応覚悟を決めていたグリーンに、“レッドのポケギアを隠し持っていた”ことから考えられる
その目的の可能性を推測、予想してそれを前もって論破。
それらがグリーンの逃げ道にならないように釘を刺したのだ。
伊達にタマムシ大学で研究員として活躍し、そして、学者としての道を志してはいない。(専攻は全く違うが)
「仮に、レッドのポケギアに“女”の情報が在ったとしても、それはそれで大きなヒントになるわ・・・」
完璧に追い詰められたグリーンは、最後まで戸惑い、躊躇し続けた。
愛しの彼女とジョウトの後輩達から、そしてイエローからの視線がさらにグリーンを追い詰める。
「・・・俺も、レッドを現状を知っている訳ではない・・・・・・ただ・・・」
グリーンは複雑そうな表情をしながら、苦しそうに語り始めた。
「アイツが、レッドが此処を立ち去る必要性があった事と、その理由は知っている・・・それだけだ。」
それ以上、語りたくない。
と言いたげな切なく苦しそうな表情でグリーンは顔を逸らすと突き刺さる視線を拒んだ。
辛そうな彼氏を見るのは嫌だったが、ここで、そしてこのタイミングで全てを話して解決しなければ
大切な何かがうやむやになって、何かが嫌だった。
「・・・じゃあ、アタシ、レッドのポケギアもって来るわね・・・・・・」
グリーンはブルーを止めなかった。 ブルーが部屋を立ち去ると無言と重苦しい空気だけが残る。
誰一人何も話さず、時を刻む音が聞こえるだけだ。
あまり時間を掛けずにブルーは部屋に戻ってきた。 ただ単純にポケギアを持ってきただけのようだ。
「とりあえず・・・座りましょうか・・・・・・。」
立ち尽くしていたグリーンを椅子に座らせるのと
いまだ少々の混乱を見せる後輩達を落ち着かせるための言葉を
全員素直に聞き入って、その言葉通りに従う。
全員が座ったところでブルーは持ってきたポケギアをテーブルの上ゴトリと置いた。
グリーンとブルー以外の視線が置かれたポケギアをその目で見る。
そして本当に存在したそれに驚きを隠すことが出来ない。
「どうするグリーン・・・追い詰められて話していくのと、自分から全てを話すのとどっちが楽かな?」
ブルーの冷たく静かな怒声にグリーンはさらに追い詰められた
彼女は今までのことの原因まで考えて、そのことを怒っているのだろう。
事実、今までのことはこのレッドの事が発端となっている。
最後まで躊躇し続けたグリーンだったが
「後者だ・・・。」
その一言の後、一息おいてから、覚悟を決めて全てを語り始めた・・・・・・
時はあの日の夜に戻る・・・・・・
「全てを明かすことは出来ない・・・。けど、要点だけ伝えておきたいんだ。」
「・・・ああ。」
しばらくの間をおいて、レッドは考えながら話し始めた。
「・・・ロケット団の残党が、どうやら脱獄したらしくてな・・・・・・」
グリーンはその言葉に驚いたが、あえて聞き返さずにその話を聞き続ける。
レッドの方は、相当言葉を選んで話しているようで次の内容を話すのに
少し時間が掛かってしまっている。
「・・・それを・・・それを、もう一度捕まえなおしたいって思っているんだ・・・」
「・・・自分の意思でか?」
ここでグリーンは初めて言葉を返した。
レッドの言葉に何かおかしなところを感じたからだ。
「・・・一応・・・な・・・・・・」
その反応は明らかに何か外部からの圧力があったことを示唆していると言えるだろう。
だが、こうやって言葉を選びながら話していることを考えれば
おそらくその背後にある権力を警戒してのことだろうと、容易に想像がつく。
それが理解できるのならば、レッドが隠そうとしている以上は、これ以上の追求は出来ないだろう。
「とにかく、オレは何とかしなくちゃいけないんだ・・・自分のためにも・・・・・・」
「・・・そうか。」
しばらくの沈黙が受話器と受話器で共有された。
夜のマサラに何かのポケモンの鳴き声が聞こえた・・・
「・・・脱獄した団員はおそらく再び集結して、
もう一度ロケット団として機能しだすと予想されるらしい・・・・・・」
沈黙を割ったのはレッド。
もとより聞き手になっていたグリーンが沈黙を割ることは考えられないが
「・・・だろうな。」
当然のことに当然の返事を返す。
あの組織の恐ろしさは、団体行動力の高さにあるといっても過言ではない
“首領”の命で戦い、略奪や生体実験を行う。
だからと言って別に単独の能力が低い集団と言うわけでもない。
過去に対峙してきた敵たちがそれを証明している。
「それを・・・それをさ、何とかしなきゃいけないんだ・・・・・・ハハッ・・・一人でな・・・・・・」
「なっ!!」
乾いた笑いが混じったレッドの言葉に耳を疑った。
単独でロケット団と渡り合うなど不可能な話である。
明らかに外部圧力はレッドを抹殺しようとしているとしか思えない。
「お前・・・!!」
「大丈夫だよ。・・・ただ、集結前に叩くしか方法は無いけどな・・・」
レッドは心配する親友に優しく声を掛けてなだめると、唯一の解決方法を辛そうな声で話した。
それにしたってどれだけの数の敵を相手にするのかなど、容易に想像がつく。
はっきりって自殺行為である。
「・・・・・・一人で全て背負い込もうとしなかった点と、話をした点は評価する。だが、お前はこれからどうするつもりだ?」
もう既に9割方は一人で背負い込んでいるのだが、こうやって相談してきたことが残りの1割だ。
まるでその比率は、今の夜のマサラの闇と光のようだ。
「・・・行くさ。」
既に覚悟を決めているレッドは、切ない声で一言返した。
「なら、俺も連れて行け。」
グリーンの当然の思い。親友としてライバルとして、この危機を一緒に解決したいと思う。
・・・そうやって今まで、多くの事件や戦いを乗り越えてきたのだから。
「ダメだ。」
しかしレッドは即座に力強く否定した。
恐らく、最後の光明でさえも断ち切ろうというのだろう。
月明かりが雲に隠されて、漆黒の闇がマサラを包んだ。
「イエローはどうするつもりだ?」
本当にイエローのことを思うというよりも、彼の弱いところついて考え直させるのが目的だった。
この言葉は相当効果があったようで、レッドは黙りこくってしまった。
「・・・悲しむぞ、お前がまた無茶をしにいくと知れば」
追い討ちをかけるように言葉を畳み掛ける。
無二の親友にどんな事情があろうとも、命だけは失ってはいけない。
「一つ、一つだけ考えがあるんだ・・・・・・。」
「考え?」
だがレッドは、その言葉を待っていたと言わんばかりに、話のペースを上げる。
どうやら、こうやって相談してきたのは、このことの為らしい。
話を考え直させるつもりが、逆効果になってしまったようだ。
「もう、アイツをオレの為に待たせるのは嫌なんだ・・・」
レッドの決意の言葉を聞いて、グリーンは少し緊張し始めた、
この後話される言葉は相当な覚悟と思いで話す言葉であるから
一字一句聞き逃さずに、聞き入る必要があると感じたのだ。
「だから、オレは・・・お前にイエローを任せたい。」
「・・・・・・どういう意味だ?」
壮大な覚悟をしていたが、親友の話した言葉は無責任にイエローを放棄しようとしていた。
聞いた瞬間は、多少その気持ちも分かったが、よくよく考えてみれば酷い話である。
弟子をそんなに軽く扱われては困る。流石に怒りがこみ上げてきて、こういった返答になった。
「解釈もお前に任せる。オレはお前を一番信用しているから、こういうことが頼める。それだけだ。」
全く回答になっていないその言葉に、グリーンは怒りを声に表現した。
「頼るのは別にいい・・・ただな、それが何の解決になるんだ?!お前の思いはその程度か!!」
珍しく声を上げて話すグリーンにレッドも熱くなってしまったらしく
同じような調子でその問いかけに答える。
「だからこそなんだ!!! 一番大切で、愛しいヤツだから・・・だから、もう、オレの為にアイツを待たせたくない!!」
レッドはその調子で言葉を続ける。
「アイツは待っててくれるから!! 帰ってこれるかどうかさえ判らないオレでも待っててくれるから!!! だから、だから、もう・・・・・・」
熱くなりすぎて泣き声になっているのが受話器で声を聞いていて判った。
「・・・・・・すまない。」
涙を流しているであろう親友に、そして自分が思う以上に、彼女のことを思っている親友に素直に謝罪の言葉がでた
誰よりもイエローの事を思っているからこそ、導き出した結論。
恐らく、この話自体、唐突に通知されたことなのだろうと推測できた。
もしも、もっと前から通知されていたことならば(脱獄を前もって通知することは出来ないが)
きっと全く違った結論が導き出されていただろう。
「・・・そこで、もう一つお願いがあるんだ・・・・・・」
レッドはまだ少し涙声の状態で話し始めた。
グリーンは再びその言葉を聞き入る。
「無い頭で考えた、オレが悪役になってイエローと別れる方法は何とかできた。
だから、後はこのことを隠し通すのに協力して欲しい。」
グリーンはしばらく返答を迷った。
だが、仲間のことを考えた末に導き出した結論ならば、そして何より無二の親友の結論ならば
それに賛同することが正しいことだと思った。
「具体的には何をすればいい・・・。」
グリーンの返答に、レッドは心から感謝した。
そしてレッドが示した具体的な行動の内容は以下の通りである。
・自分が(レッドが)本当はどこで何をやっているかを、誰にも話さないこと。
・自分はどこか他の女にはまって、その女のところに行った。という話にすること。
・何か自分の行方や目的がわかってしまうものがあったら、処分及び口止めをすること。
何故レッドが此処までこんなことを徹底したかは、よくわかっている。
それはレッドが、ただでさえも仲間思いで絆の強い後輩や彼女、そして同期を
この問題に巻き込みたくなかったからだ。
恐らく、いや、絶対にこの問題が仲間達に知れ渡っていたら
レッドに協力を申し込むか、嫌でも追いかけて助けに行っただろう。
それは自分自身の思いが証明してくれている。
このことに気がついてから、レッドは仲間を信頼していなかったわけではなく
最高の信頼をしていた、してくれていたことがよく分かった。
「グリーン、今まで話してきたことは絶対誰にも言わないでくれ」
「・・・分かった。」
ガチャリと電話は切られ、マサラの深夜の電話は終わりを告げた・・・。
「・・・・・・ッ!!!」
止めどなく悔し涙が流れて、悔しさのあまり近くのテーブルを思い切り強打したことを鮮明に覚えていた。
だが、現実に自分はレッドを助けることが出来ない。そして、出来なかった。
「・・・だからこそ俺は、レッドの約束に応えることが唯一出来ることを精一杯やった。」
親友との約束を破ったことを後悔しながら、グリーンは自らが知る全てを話した。
話を聞いた後輩とブルーは驚きのあまり、時が止まっていた。
誰も話そうともせず、グリーンを咎めようともしなかった。
愛する人を裏切ったと見せかけて、大切な仲間達を守るために、たった一人で戦いに行った。
しかもその戦いは、元は自分が原因とは言え、生き残れるかどうかさえも不明な戦いで・・・・・・
「・・・俺がレッドの言葉に惑わされすぎて、ブルーとイエローに多大な迷惑をかけたことは本当に謝る。」
謝って許されることではないがと付け加えて、グリーンは椅子に座った状態で頭を下げた。
本当はブルーとイエローはグリーンのことを咎めたかった。
だがブルーはその受けた衝撃の大きさに、黙りこくってた。
同じようにジョウトの後輩達も黙ってしまっている。
もしもレッドが本当に他の女のところで何かしているとか、本当は長旅に出たかったぐらいの
簡単で軽い理由だったら「流石、レッドね(バカね)」ぐらいで笑って、文句でも言って
終るつもりだったのだが、グリーンの話を総合すれば、彼は命に関わるであろう問題を
たった一人で解決しようと旅立ったといっているのだ。
その理由は笑って許すにはあまりにも重過ぎた・・・・・・
「・・・なんで、なんで・・・・・・」
突如イエローはその沈黙を破って、追い詰められた人ような弱った声を出して錯乱し始めてしまった。
受けた衝撃が、他の人に比べて大きかったのだ。
それもそうだろう。
この真実、事実が、あの日あの時解っていたならばどれだけ違う結論が出ていたことか・・・
それを考えるたびに激しい嘔吐感を覚えて身体がガクガクと震え、顔色は青白くなっていく。
吐き気を催すほどの自己嫌悪と後悔が全身を駆け巡り
レッドを信じ切れなかった自分を恥じた。そして、取り返しのつかないことをした自分が
この世に存在する何よりも汚く思えて、純粋に死にたいと思った。
グリーンの親友を想う心と優しさがまるで暴力のように感じた。
そして、レッドの深い愛情はまるで非常に鋭利な刃物で
イエローの心に生傷をつけて尚且つ刃物は心を抉った。
その日、イエローはブルーにつれられて、イエローの自宅へと帰っていった。
ジョウト組もいろいろ考えることがあるらしく、各々自宅へと帰ることにした。
一人残されたグリーンは、今日のことを深く深く考えた。
(レッド・・・すまない・・・・・・)
そう思いながらも、いつか明かさねばならない日が来たはずであると
自分で自分の行動を正当化することしか出来なかった。
目の前にあるレッドのポケギアを見つめると、改めて親友の大きさを知った。
「・・・・・・早く、帰って来い。」
ポケギアに向かって一言呟くと、グリーンは眼を瞑って再び、今日のことを考えるのであった。
時は再び流れていく・・・・・・
Phase.13へ・・・