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 流れていた時間、動いていた世界に取り残されて・・・・・・。







PAS(red side) Phase.11 贖罪の旅路(中編)−ジョウト地方にて−








いつしか、季節が真夏と呼ばれる季節になる頃

旅人は強烈な日差しに気が滅入ってしまい、木陰でその日差しから逃れる。

そして最近、支給された最新型のポケギアで時間と現在地を確認すると

時刻は昼下がりで、現在地はジョウトの地方の外れ。

思った以上に早くジョウト地方に入り、旅が順調に進んでいることに一人驚く。

結構、人助けや聞き込みなど欠かさずやっているはずなのだが・・・

とりあえずしばらくの休息を取るには十分な時間がある。



カントーと並び、都会のジョウト地方なのだが、都市部から少し離れれば

少し前まで滞在していたホウエンほどではないが、自然が満ち溢れる世界になっている。

場所が変われば気候も変わり、気候が変われば自然が変わる。

草原を駆け回っていたのはジグザグマやマッスグマだったのに

コラッタやオタチにそれが変わっている。

だが、今見ているこの風景と、向こうで見た風景、そしてここに来るまでに見てきた様々な風景

これらには全く同一の時が流れているような気がする。

果てしなく続く生命の連鎖と、季節によって姿を変えてそして今の状態に戻る永遠の生命。

木陰に座り込んで一息ついていると、腰に付けているボールホルダーがやたらガタガタ動く

どうやらこのなかで生きる生命たちは、自分と同じ時を歩んでくれる生命たちは

気が滅入るほどの日光を浴びたくてしょうがないようだ。



生命たちをボールから解放してやると、黄色で小さい身体の電気ねずみとぐるぐる渦巻きボディが真っ先に草原に飛び出した。


あまり遠くに行って迷子にならないといいのだが・・・・・・


続いて紫がかった毛色の神秘的な生命と大きな身体の植物のような生命が一緒に気持ちよさそうに日光を浴びる。


元々太陽の光を自分の力に変換できる彼等のことだ。この気が滅入るほどの日光は丁度いいのかもしれない。


大きな翼の生命は大空を楽しそうに飛んでいる。食いしん坊の居眠り好きは、案の定、昼寝をし始めた。


昼寝の後はまたやたら食うんだろうなぁ〜。近くに野山はあっただろうか?


(主人・・・)


別格のボールから解放されたその存在は、人型の生命で人語まで使いこなすと言う不思議な生命。

それまでにそういう生命と接点がなかった訳でないので、特に気にしてはいない。

寧ろ、そのことを不思議がらずに普通に話すことが当たり前になったいる。


「お前もお日様の光を浴びたら?」


少々嫌みったらしく言うと、雰囲気でそれを嫌そうにしているのが解る。


「へへへ・・・じゃあ、隣へどーぞ」


全ての生命が同じように日光を好むかどうかは解らない。

どうやら“彼”は、この強すぎる日差しを主人と同様に少々嫌がっているようだ。

殆ど徒歩と空からの探索をしながらの旅路は、言葉で説明できないほど大変である。

その疲れだろうか、旅人は大きく伸びをすると木陰に身体か覆われるように上手に寝そべった。



(では、しばらくの間私が番をいたしましょう・・・。)


「おう、頼むわ。」



相当な段階の意思疎通が出来ているのだろう。

主人の様子を見て、その生命は主人の疲労を見切っていたようだ

旅人はゆっくりと目を閉じると、ものの5分もしないうちに眠りにつくと

主人を見守る生命は、その隣で壮大な緑と木々の茶色をその目に見続けた・・・・・・










 リュラルで失い、ホウエンで取り戻した前向きに生きると言うこと。


本来ならそれを信じて、そして自分を信じて、そうやってもう一度やり直していく


はずなのだが、彼に与えられた時間は短すぎた。


大切なものを失って1年もしないうちに責任は容赦なく彼を追い詰めた。


非情に思えるが、それが人間が生きる世界である。社会とは本当に厳しいものだ・・・


自ら吹っ切るというよりも吹っ切らせる、他者が吹っ切るといった受動的な生き方は本当に苦しい。


だがそれも、彼の能力の高さと犯してきた罪がそうさせる訳であり


それを拒むことは社会が許さない。なにより、生きていくにはそうするしかない。











そんな当たり前の社会の動きを夢に見ている間

普段と違った気配を覚えて旅人は目を覚ました。



「あ・・・レッドさん・・・ですよね・・・・・・?」



女性の声が聞こえる。どこかで聞いたような女性の声だ。

声だけでは誰かわからなかったので、レッドは起き上がってその顔を見た。


「・・・おお!! 久しぶり!!!」


靄が晴れた快感に、思わず大きな声が出てしまった。

その声量に、目の前の女性は驚いている。



目の前に居る女性は、以前、レッドがあの事件を起こした街で

復興作業をしていた時にお弁当を作って届けていた少女だ。


「あれから、2年ぶりくらいですかね・・・?」

「そうだな・・・」


思い出の女性との会話しながらレッドを見守っていた生命こと

キメリアンはレッドと目線を合わせると、何かを確認しあい、ボールへと戻っていった。


「綺麗になったなぁ。」

「そうですか?」


世辞ではなく心からの感想。

2年も会わないでいると、人はここまで変わるということが良くわかった。

お弁当を作ってきてくれた時は、かわいい女の子だったのに

今、この娘を説明するには“綺麗なお姉さん”ということ言葉に変わる。

しばらく簡単にお互いの近況を報告しあった(無論レッドは嘘を話したが)。



「レッドさん、結局来てくれませんでしたよね・・・」



そんな会話の最中に急に声のトーンを落として話し出した彼女に少々驚く


「・・・・・・ああ、ゴメン。」


とりあえず謝った。今、彼女が暗くなってしまったのは自分の責任なのだから。



彼女の言葉から解ることはどうやら自分は彼女を“待たせていた”ようで

様々な記憶の中から彼女との約束を思い出す・・・・・・






「レッドさん、あの、復旧作業が終ったら・・・・・・」

「ん・・・・・・?」

「あの、その・・・・・・」

「どうしたの?」

「アサギには、アサギにはもう来てくれないんですか??」

「そんなことは無いさ。・・・また、会いに来るよ」

「・・・・・・!!! ありがとうございます!!!」

「ありがとう? へへ、全く面白いなぁ。」






こういう会話を記憶の中から思い出した。

この記憶が正しければ確かに自分は、彼女に会いに行く約束をしていたことになる。


「ゴメン!! あれから本当にゴタゴタしてて・・・遊びに行く暇がなかったんだ。」


記憶が明確になってきたので、今度は頭を深々と下げてしっかりと謝る。


(オレ・・・本当にこんなことばっかだな・・・・・・)


似たような思い出が、約束を破るという思い出が次々に思い出されてレッドの頭と心を乱していく。

そんなレッドの態度に彼女は落胆の溜め息を吐いた。


「・・・もう、いいですよ」


許された理由がよく解らず、レッドは頭の上に?マークを浮かべている。

解っていないようなので、レッドに自分が思っていたことを全て打ち明けてあげることにした。


「私、レッドさんのこと好きだったんですよ。」


突然の告白に、レッドの頭の中は大混乱だ。

無論、彼女の言葉が過去形ということにも気付いていない。



「え、え、え、・・・ええ??」



お間抜けな言動をするレッドに彼女は顔を曇らせた。








とりあえず立ち話では落ち着かないと思った彼女は

丁度これから向かうはずだった彼女の家へと向かうことにした。

レッドはその話に合意して、ポケモンたちのニックネームを大きな声で叫んで呼び戻した。

元々あの街に住んでいた彼女だったが、両親の都合で引っ越したらしい。

あの街もそこまで田舎という訳ではないが、より田舎へ越してくるとは

物好きか、都会に疲れた隠居生活者か、自然大好きな人くらいだろう・・・

もしかしたら念願のマイホームを建てたは良かったが、安い土地がそこしかなかったとか。

いろいろ考えられる可能性があったが、別に自分には大して関係はないだろう。



いつの間にか冷静な思考ができるようになっていたことに驚く。

とりあえず気は十分に紛れたので、多少、彼女とましな会話は出来そうだ。

到着した家はごくごく普通の一軒家で、中流家庭の家であること解る。


「おじゃまします」


挨拶もそこそこにレッドは彼女に連れられて、居間へと案内された。

他愛もない会話をしながらくつろいでいるように指示をうける

椅子に座るとお茶と簡単な茶菓子を差し出されたので頭を下げる。

そして彼女が目の前に座ると、先程の話が始まった。








「今だから話せますけど、私、レッドさんのこと大好きでした。」


2度目のそのセリフにまた冷静さを欠きそうになったが、今度は言葉をよく考える。

この言葉は過去形であり、今は大した意味を持っていない。


「・・・じゃあ、今は他に好きな人が?」

「というよりも・・・彼氏が居ます。」


驚きよりも納得の感情が大きかった。

素直に祝福の思いが心から溢れてきた。


「成程。そういうことか、・・・おめでとう。」


レッドの反応に彼女は大げさな溜め息をついた。


「嫉妬、とかしてくれませんよね・・・・・・」

「・・・嫉妬・・・?」


レッドには話がちんぷんかんぷんだ。

恋愛の話がどうこう以前に、何故彼女が自分に今までのような話をしたのかも謎だし

何故自分が嫉妬しなければいけないのかはわからない。

彼女は自分の考えることをレッドに説明してあげようかと思ったが

それはとっても悔しいことで、しかし所詮は淡い想いだったと、自己解決するには丁度良い。



「レッドさん、一つ覚えておいてください。」



いろいろとあきらめた彼女は、教える立場のような口ぶりでしみじみ話しだした。







「人の想いは無限じゃありません。・・・ずっと人を一途に思っていられません。

そんなに強い人間は存在しませんし、していたとしたらそれは偽りです。

特に、女の心変わりは早いですよ。」








右手がズキンと痛んだ。


心もズキンと痛んだ。






その後、彼女はくどくどと話をしてくれたようだが、レッドの心に残ったのはその一言だけだ。

夕食の時間になる前にレッドは彼女にお礼を言って、彼女の家から後にした。

ホーホーの声が聞こえる静まり返った林道を一人歩きながら、先程の話をふと考えながら歩みを進めた・・・





手ごろな値段の宿泊施設に今日も泊まる。

これは協会の経費から落とされるので(無論、限度はある)問題はないのだが、これもそれも

最近、ポケモンセンターの宿泊施設(と言っても、毛布やシャワーを貸し出してくれる程度だが)が

有料化されたのがそもそもの問題。 流石に今泊まっている宿泊施設の値段よりは遥かに安いが

あの程度のサービスに金を支払うのは少々もったいない気がしたし、どうせ自腹を切る訳ではないのなら

こういった場所に泊まったほうが、食事と大きな風呂まであって得なのだ。



(・・・明日からか・・・・・・)



風呂につかりながら、明日からの日々を考える。

明日からはジョウト中を回ってジムリーダーたちに頭を下げて、残党たちを探し出さなくてはいけない。

そんなことを考えながら、今日、あの時痛んだ右手を見る。

未だ癒えぬ右手の傷。とても醜く、そして痛々しい。



傷を眺めていると、ふと、風呂の湯気の中にクリムの姿が見えた・・・



(・・・こうやってお前の姿が見えるってことは、まだオレはお前を想っている証拠だよな・・・・・・)



だが、今日の話が思い出されて、自然とその言葉を呟いていた。



「・・・ずっと人を一途に思っていられません。・・・か。」



寂しく呟かれた言葉。

いつか自分は彼女を乗り越えて、また新しい人を好きになっていく・・・

運命や絶対といった言葉は非現実なんだと

そしてそれを証明したのは自分自身であると

それが解りだしてきた自分と世界が寂しく思えた。

いつしか流れてきた涙が頬を伝ってお湯の中に消えていく。

未だ見えるクリムの姿に、レッドは立ち上がると湯気の中のクリムを抱きしめようとした。





空を切る両腕にレッドは激しい絶望を覚えた。


しばらく呆然と涙を流していると


たくさんの結論と希望が頭の中を駆け巡った。


世界と社会と自分と時が全て一つに繋がっていく・・・


辛く苦しく、悲しく寂しい結論だったが、心残りはあるが、今の自分に丁度良い結論だった。









朝。宿泊施設を後にしてレッドはジョウトの街を巡り始める。

広さから推測してみて、ホウエン地方ほどの時間は掛からないだろう。

あの街や思い出の街を巡って、ジムリーダーたちへの贖罪をしながら

ロケット団残党の行方を他のエージェントと共同しながら探す。



ジムリーダーに会う時は、自分がここに来たことを誰にも話さないように頼み込んで

その分も含めて、贖罪をしていく。

灯台の掃除、挑戦者の相手、書類整理から街の人のお願いを聞いたり・・・

様々な経験と仕事をこなしながらいつしか自分の誕生日を迎えて

レッドは23歳となった。

もうそれだけの月日が流れているのだ。

変わっているものは多かったが、変わらないものもあった。

街の風景、自然の風景や様子は変わっていなかった

だがそれらは、無限に続いていくものであり、無限に続くことのない人の心などと

比べるには少々基準が大きすぎる。







いつしか暑い夏が徐々に終わりを告げようとしていた・・・・・・








早朝、宿泊施設で朝の仕度を整えてチェックアウトし、外の空気を吸っていた

レッドおポケギアが呼び出し音を鳴らした。





「集合地点、Xポイントが判明しました・・・・・・。」





大きな鼓動の音がレッドの中で一度なった。

協会のあの男からの業務連絡にはタウンマップの情報が添付されていた。





「エージェントの皆さん、発見次第、一掃してくれてかまいません。」






この贖罪の旅路が、自分の罪を償っていく旅路である以上

彼等に対する贖罪も必要であるし、なにより必ず償わねばならない身分だ。





Xポイント・・・そこは、カントーとジョウトの狭間 シロガネ山・・・・・・





既にジョウトの全てのジムリーダーに贖罪を果たしたレッドは

ある考えがあったので、その情報を得た途端にボールからプテラのプテを呼び出した。

己の導きだした結論を心の糧として、レッドはプテの翼でシロガネ山へと向かう。





自分と同じように時に取り残された彼等を救うためならば


どんなに憎しみを持たれていようとも、必ず責任を負わなければならない。


あの話から導き出した結論が、統べる者としての生きかただと思うのならば


これから始まる日々がどんなに辛くとも、生きていける気がした。







夏の終わりの朝

雲一つ無い晴天の空に、その空を真直ぐに駆ける青年の姿があった。








Phase.12へ・・・