AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する



 一応の終結・・・。 しかし、目覚めない一人の少女・・・・・・。







やっと動き出した警察

救われる仲間達・・・・・・。

死傷者は100人以上を超えて

歴史に残る大事件となった。

事件発生から1週間・・・。

いまだ目覚めることがない

1人の少女がいた・・・・・・。














 PAS 第29話 始まりに必要なもの














 新聞やテレビ、ラジオといったマスメディアは、今回の事件を大々的に報じた。

報道は当事者の心を考えず、非常に鋭利な刃物で傷つける。


「“死傷者 100名以上 歴史的惨劇”」


程度から始まれば



「“現場にいた生き残ったトレーナーたちに共通する不審な影。”」



「“首謀者失踪 変わりに拘束された青年 その素顔に迫る・・・!!”」



「“ロケット団の新兵器?? 謎の光の柱を独自に検証”」



「“凄惨な事件の裏側。町に残されていた女性が語る恐怖とは・・・・・・。”」




報道の矛先は、グリーンたちだけでなくナナミやオーキド博士、マサラ、トキワの人々に向けられて連日の質問攻めをうけた。

無論、グリーン、ブルー、ゴールドやクリスといった彼等は、それ以上の質問攻めである。

対して、レッドは・・・・・・。
















 ぼやけた視界に映るのは白い壁、白いカーテン。白い布団に白いベッド。

白い枕に白い天井・・・・・・。白くて、清潔感のある部屋だった。

ぼやけた視界、そしてぼやけた頭でもこの白さは理解できた。

辺りを見渡そうと起き上がろうとするが、全身に走る激痛がその動きを止めさせた。

特に左肩の痛みは尋常ではなく、少しでも動かそうものならこの場で失禁しかねないほどだ。


とにかく、首だけ動かして解る範囲の部屋の状況を確認してみる。

まず、激痛が走った左肩に瞳を移すとそこのは、部屋と同じように白く清潔感のある包帯がグルグル巻きにしてあった。

包帯は左肩を固定するように非常に固く巻かれており、この包帯を外さないことには、両手で顔を洗うことは不可能であろう。

次に右側に瞳を移す。左肩とは対照的にグルグル巻きの包帯は無い。だが、目障りなほど多くの機材と、点滴のチューブが瞳に映る。

試しに右腕を動かしてみると、点滴のチューブが引っかかって動かすことが出来ない。

身体の自由を奪われている事が解ると、大きなため息をついた。


しばらく、白い天井を見つめてボーっとしていると、ハッと何かに気がついたようで、多少は動かすことが出来る右腕で腰の辺りを触る。

そして、求めていた存在が無いことに気がつくと、左右に首を振って目的のものを探す。

それでも見つからない目的物に、痺れを切らしたのか、全身の激痛に歯を食いしばって耐えて無理矢理起き上がった。

左肩に力がこもると、地獄の激痛が襲ったが涙を流して、声を殺して耐えるとベッドから降りて、右腕を拘束する点滴の針を口で引き抜いた。

立ち上がってみて解る、長時間このままでいたという事実。足に力など入らず、その場で倒れてしまった。



「・・・あ、あ、あ・・・うぐっ・・・!!!」



全身を走った電撃に酷似した激痛が、殺していた声を蘇生させる。それと同時に眼は涙目になっていた。しかし、

それでも右腕を巧く使って立ち上がり、目的物を探す。 部屋にその目的物が無いことがわかると、スライド式のドアを開けて、部屋から出た。


白い回廊と窓から差し込む光、その幻想的な風景に心をとらわれることなく、ただ、目的物を探す。

しばらく歩いていると(歩くといっても、激痛のために一歩ごとの距離も少なく、踏み出すのも遅い)正面のほうから、白い服を着た女性が近づいてくる。

何か、しゃべっているようだが、何故かわからないがその声を聞き取ることが出来ない。その女性が駆け寄ってくると身体は自然と崩れるように倒れた。

再びぼやけてくる視界と頭。先ほどの白い服を着ていた女性が何かを叫んでいるように感じた。それから、数分もしないうちに、激痛も薄れいつしか

気を失っていた・・・・・・。
























 「・・・・・・さん、・・・ドさん、・・・レッドさん。 声が聞こえますか?」


少々強い口調で、キツイ感じの女性の声が聞こえる。痛みの果てに、どうやら気絶してしまったようだ。

薄っすら瞳を開けて、ぼやけて映る視界の先に再びあの白い部屋が映し出される。

いつの間にかベッドに逆戻りしていた現実に、落胆のため息を吐くと、しょうがなく、声の主に言葉を返す。


「全身が痛いけど、・・・意識はあるよ。」


ぼやけた視界はいつしか、頭のぼやけと共に薄れ始め目の前の白い服を着た女性、おそらく声の主の姿形を映し出した。

30代後半くらいの女性。白い服と単純に思っていたが、よくよくみるとその服は看護師の服であることに気がついた。

それを裏付けるように、彼女の頭には俗に言う“ナースキャップ”が被らされている。

白い部屋、回廊、点滴、包帯、看護師・・・・・・。それから推測するに、この場所が始めて医療施設であると解った。

その一人の看護師が、「今度は、無茶して起き上がったりしないでくださいね。」と叱りつけるように言うと、


その看護師は部屋を去った。そして、入れ違いになるようにスーツを着た男が数人入ってきた。

中でも特に眼光が鋭い40過ぎの男性がレッドに鋭い視線を送ると、ベットに寝ているレッドに話し始めた。


「まずは、回復おめでとうといっておこう・・・。マサラタウンのレッド・・・・・・いや。ロケット団首領ブラック。」


その名を呼ばれた瞬間、今までのぼやけていた頭に蘇ることが無かった、気絶してここに運び込まれるまでの記憶が蘇った。


サカキとの決着、警察と救助隊の介入、搬送される仲間たち・・・・・・。


全て自分が起こしたに等しい愚行が、今の結果である。 そして、此処は・・・・・・・。


「あんた、刑事か・・・・・・。別にオレは全ての罪を背負うつもりだ。それが仕事なんでね・・・。」


此処は警察病院・・・。罪人を治療しその責任を確実に負わせる為の場所。


「その歳で社会の裏も知ってるって顔だな・・・・・・。二十歳にもならない若造のする顔じゃないぞ・・・。」


「・・・・・・仲間たちは・・・一緒に助けられた仲間達は、無事なのか・・・?」


刑事は、後ろに立っていた男に手を差し出すと何か書類を受け取る。そして、その書類に書かれた文面をしょうがなしなしといった態度で読む。


「ッ・・・えー、グリーン、ブルー、イエロー、ゴールド、クリス、シルバー・・・・・・。何れもジョウトのコガネシティの

大きな病院で療養中だ。意識はほぼ全員戻っているそうだ。カントー四天王は、前科があるとの理由で治療を拒否。独自に撤退。

ホウエン四天王及びツワブキダイゴ、ルビー、サファイア、ミツルはデボンコーポレージョンの介入で別の専用医療施設で現在治療中・・・。

ロケット団関係者と思われる人物、及び構成員は同じくコガネの警察病院で治療中。だ、そうだ・・・。」


書類を後の男に渡すと、刑事はレッドに鋭い視線を送ると、少々ドスが聞いた声でレッドに「まだ、質問はあるか。」と聞いた。

レッドは、痛みに耐えてでも捜し求めた目的物について聞いてみた。


「・・・オレの、仲間はどうしたって聞いたんだぜ? まだ、重要な仲間が残ってるぞ・・・・・・。」


鋭い視線に屈することなく、レッドは刑事を見る。


「・・・あのな、仮にもポケモンを利用してこれだけの被害を出せる人間に、ポケモンを手元においておくと思うか?

自分の力の強大さに、気がついていないのか・・・お前は?」


「・・・・・・とにかく、無事なんだな?」


「1匹を除いて、全員回復装置で回復済みだ。飯もしっかり与えているし、多少の自由も与えてある・・・。」


除かれた1匹は間違いなく、マスターボールに収められたキメリアンだろう。レッドはそう瞬時に判断するとキメリアンの治療を求めようとした。


「・・・悪いが、本来話したいことはこんなことではない。・・・・・・本題を済ませた後なら、いくらでも情報はやる・・・。」


刑事の後ろに立っていた、書類を渡した男とは別の男が、大きなアタッシュケースをもってレッドに話を始めた。


「レッドさん、こんにちは。」


刑事とは対照的に非常に好意が持てる優しい声をしている。だがその声から話される残酷な内容はレッドは驚愕した。





















 そして、また幾日かの時が流れた・・・・・・。
























 「・・・301号室の女の子、まだ目が覚めないらしいわよ・・・・・・」


「・・・なんでも、あの事件のショックじゃないかって・・・・・・」


「・・・完全に原因不明・・・一生あのままの可能性があるんだって・・・・」


「・・・ええ、あの若さで・・・・・・」


ヒソヒソと聞こえるおばさんの声が異様に耳障りだった。



「・・・ったく、噂話ならもっと小さい声でしろよな・・・・・・。」



その301号室で椅子に座りながらため息をつく一人の青年。左肩には包帯とギブスが取り付けられている。

この部屋は個室なので、今、この部屋には噂話の女の子と青年の2人きりである。

部屋にある窓から温かい日差しと、そよ風が部屋に入ってくる。その、気持ちのいい気候に青年は右腕だけで伸びをした。


「・・・・・・なぁ、イエロー・・・。どうして、お前だけ起きてくれないんだ・・・・・・。」


青年の悲しい声と共に、点滴の雫が落ちる。胸が本当にわずかだが上下しているので呼吸をしているのがわかる。

もう既にレッドがこの場所に来てからかれこれ1週間は経過している。イエローは一度も起きるそぶりを見せない。

レッドが来るまでは仲間達や伯父が来て世話をしていたが、レッドが来てからはレッドが全て一人で全てを行っている、

あの事件から一ヶ月、多少、報道も収まり、仲間達は平穏な生活を取り戻し始めていた。

対してレッドは、アサギシティの復興とアサギシティの住民への贖罪を行いながらイエローを世話するという生活を送っていた。

全治六ヶ月と診断された左肩の変わりにポケモン達が(特にニョロが)動きレッドを支えていた。


「・・・イエロー・・・・・・。」


レッドは右手でイエローの右手を握る。少し力を込めて握ってみてもイエローからの握り返しは無かった。

また、今日もイエローは目覚めることなく眠り続けるのだ・・・・・・。



(求めろよ・・・“力”を・・・。捨てちまえ、全てを・・・・・・。何も無い、お前には何も無い・・・。生きていてもしょうがないぞ・・・・・・。)




あの時、サカキとの決戦の時に聞こえた声が言っていた言葉。この言葉の意味が少しずつ解り始めていた・・・・・・。

実際、事件を起こした人間が復興に行き、贖罪をしたとして何が待っているのか・・・。

白い目で見られ、罵声を浴びさせられて、憎しみを持たれて、終いには石まで投げられて・・・。

故郷に帰ったとしても、もう既にそこは故郷ではなく、レッドを受け止めてくれる場所ではなかった。

一応、暖かく迎えてくれた仲間達。だが、その心に本当に自分を許してくれたかどうかは疑わしいものだ。

そして止めに、目覚めてくれないイエロー。


もう、何も無かった。


生きていることが辛く感じた。


全てを投げ出したくなった。


そして、あの男と交わした契約・・・・・・。優しい声とは裏腹に、自分を信じてついて来てくれたロケット団員達を裏切ることになる契約。

全ての信頼を失い、贖罪できる道を選んでも、裏切り、ただ、一人苦しむことしか出来なかった。


(・・・サカキ、この苦しみの果てに一体何が待っているんだ・・・・・・。“これから”って、この苦しみのことなのか・・・・・・?)


そんなことを悩んでいるうちに、窓から射す光の色はあの時と同じ色に染まり、そよ風は冷たくなっていた。

レッドはイエローの身体に障ると思い、椅子から立ち上がり窓を閉めた。夕日がレッドの身体に当たると、その光でレッドの瞳から落ちた雫が輝いた。

いまだ黒いレッドの瞳。本来の赤を取り戻すのにはどうすればいいのかは誰にも解らない。

そしていつものように、イエローのベッドの隣に簡易ベッドをセッティングして、部屋の扉に“面会謝絶”の札を下げる。

特別に受け取ってある部屋の鍵で扉を閉めると、これもまたいつものようにレッドは病院の設備を使わせてもらい風呂に入る。

復興作業はかなりハードな肉体労働なので、レッドでも結構な汗をかく。しかし、その汗も誰のために流すものなのか、誰が求めた汗かはわからない。

報われることの無い汗を流して、今日もレッドは一人、眠り続けるイエローの隣で、窓から見える星空を眺めながら眠りにつくのだ。











 「レッドさん、私達は若いアナタの可能性を摘み取るつもりはありません。 そこで、どうでしょう。私達と司法取引しませんか?」


大きなアタッシュケースから取り出された膨大な書類をレッドの膝辺りに置く。その書類の山から、一枚の紙を抜き出すとそれをレッドに見せる。


「このままいけば、アナタの罪状からいって間違いなく死刑は免れません。でも、死なんて甘いことで全ての責任を清算しようなんて思ってませんよね?」


見せ付けられた紙には、司法取引に関する手続きの説明と、その取引内容が書いてあった。


「・・・取引内容 今回の事件の罪全ての無効化 取引対象 ポケモン協会のエージェントとして従事。 謎のポケモンの生体調査・・・・・・。」


謎のポケモンとは間違いなく、キメリアンのことであろう。だが、先ほどの刑事の口ぶりからもう既にこの契約は結ばれているに等しいだろう。

なぜなら、謎のポケモンの生体調査は既に行われていると思われるからだ。要するに、この手続きは確実にしなければならないのだ。

レッドはどこか、死で全てから逃れることが出来るという考えがあったので、この取引に非常に絶望していた。

そんな中で何とかレッドは男に質問する。


「この、協会のエージェントって何だ?」

「前の仕事の強化版ってトコですよ。給料も前よりいいですし、相当おいしい話だと思いますよ。」

「・・・・・・いつから協会は、タカ派が動きやすくなったんだ?」

「アナタが居ない間ですよ。」


レッドはため息をつくと、その手続き用紙をさらに見つめる。


「贖罪するには、今は自由にならないといけないはずですよね・・・・・・。」


怪しく微笑む男に、かなりの警戒心を抱きながらもレッドはその取引に応じることにした。


(すまない、ロケット団の皆・・・・・・。)


心から溢れる罪悪感がレッドを責める。残された団員達は、長い時間をかけて罪を償っていくというのに、レッドはその時間にとらわれることはない。


「ありがとうございました。」


男はアタッシュケースに書類の山と一緒に手続きの用紙をしまうと、レッドと刑事に一礼してその場を去った。


「そういうことだ・・・。あと、お前のポケモンはこちらで預かっている。退院時に返す。」


刑事はそういい残すと、連れの男達と共に部屋を去った。一人部屋で寝ているレッドは再び目覚めた時と同じ状態に戻った。

だが、違うことがある。

それは、レッドの瞳から溢れ頬を伝うことなく流れ落ちていく涙。

申し訳ない気持ちでいっぱいのレッドの瞳から、ボロボロと涙がこぼれた。


(・・・オレは最悪だ・・・・・・。)


ただひたすら、涙を流し続けた・・・・・・。










 射し込んできた朝の日差しが、レッドの顔を照らす。その顔にははっきりと涙の後が残っていた。

今日も、後悔と苦しみだけの一日が始めるのだ・・・・・・。

イエローの様子を確認してみる、その様子は昨日と何も変わっておらず今日もおそらく彼女は眠り続けるのだろう。

レッドはいつもどおり、自分の支度を整えて洗顔等を済ませると再びイエローのほうを見た。

イエローを見つめ続けると、自然とレッドの手はイエローの頬を撫でていた。







人肌の温かさと綺麗な肌の手触りが、撫でた手から伝わった。



そのまま手で、イエローの顔のパーツ一つ一つを確認するように撫でていく・・・。



頬から唇、唇から鼻、鼻から瞼、瞼から額、瞼から前髪。


触るたびに湧いてくるのは、愛しさ。


その愛しさは、レッドの右手をイエローの後頭部に回させた。


右腕全体を使いイエローの身体を自分のほうに起こす、首が安定しないので右手で器用に支える。


「・・・イエロー・・・・・・。」


レッドは肩の高さをイエローに合わせるようにしゃがみこむと、イエローを右腕一本で抱きしめた。


イエローの身体は、力なくレッドの左肩に倒れこんだ。 もちろんレッドには激痛が走る。


しかし、レッドはその痛みをこらえてイエローを抱きしめ続けた。


レッドはイエローの左肩と首の間に顔をうずめるようにしてイエローを抱きしめる、そして、その温かさを感じる。


しばらくその状態を続けると、レッドは抱きしめる腕の力を弱めてイエローの身体を自分から離した。


右腕一本で支えられるイエローの身体。レッドはその力ない姿を見ると、涙を流し始めた・・・。



「・・・苦しみも、悲しみも、憎しみも、後悔も、耐えてみせるよ・・・・・・」



レッドは今だ眠っているイエローに対して、涙を流しながら静かに語りかけた。



「・・・罪も、責任も、運命も、全部背負ってみせる・・・・・・」



右腕の力を調整すると、レッドは静かにイエローの身体を自分に引き寄せた。



「・・・だから・・・・・・」



静かに重なり合う唇と唇。




朝の日差しが2人を優しく包み込んだ・・・・・・。



レッドはそっと唇を離すと、先ほどと同じようにイエローの身体を引き寄せて抱きしめた。



「・・・だから、だから、せめて、せめて、お前だけは目覚めてくれ・・・・・・お前の痛みも悲しみも背負うから・・・・・・」



今まで以上にイエローの身体を抱きしめながら、イエローの耳元でそっと、しかし、力強く囁く。







「・・・・・・世界で一番、お前が・・・愛しいんだ・・・・・・」























 闇の中で一人、ぽつんと俗に言う“体操座り”で塞ぎこむ少女・・・。



大切な人を救うために彼女は、時を奪われた。



禁忌の力に手を出した代償は大きく、永遠の闇の中でたった一人塞ぎこむだけ。



光が射すわけでもなく、音もせず、気配もしない、完全に闇の中に一人・・・・・・。



動くことも許されず、許しを請うことも出来ず、話すことも許されない、ただ、闇の中に一人・・・・・・。



暖かいのか、寒いのか、冷たいのか、熱いのか、全ての感覚を奪われ、ただ、闇の中に一人・・・・・・。



一人ぼっちで悲しいのか、怖いのか、怒っているのか、嬉しいのか、全ての感情を奪われて、ただ、闇の中に一人・・・・・・。



元より、生きているのか、死んでいるのかも、どちらでもないのかも解らない、ただ、闇の中に一人・・・・・・。



時が止まり、闇の中に一人・・・・・・。










そこへ、懐かしい何かを感じた気がした。


闇の中に光が射し込む感覚があった気がした。


その光を掴みたい気がした。


光を浴びたい気がした。


包まれたい気がした。



















 唇に暖かな感触を感じると、ぼやける視界と頭が存在している感覚が戻ってきていた。

ぼやけているのに上半身で感じる温もり・・・・・・。

その温もりを求めていた気がして、そのままなされるがままにしていた。



「・・・だから、だから、せめて、せめて、お前だけは目覚めてくれ・・・・・・お前の痛みも悲しみも背負うから・・・・・・」



耳元で聞こえてきた、懐かしい人の声に頭のぼんやりが晴れていく気がした。


(・・・レッドさん・・・・・・。)


レッドの暖かい吐息が耳にあたると、身体がビクリと反応してしまいそうになる。

しかもそんな状態のまま力強く抱擁されると、イエローの顔はどんどん赤くなっていく、それと同時に鼓動も速くなる。





「・・・・・・世界で一番、お前が・・・愛しいんだ・・・・・・」





再び囁かれた言葉。言葉の吐息でさらにビクリとなった身体をレッドは力強く抱きしめて離さない。

もう、この次点で限界に等しいのだが、今度は囁かれた言葉の意味を理解すると、あまりの嬉しさと恥ずかしさに身体をレッドの身体にうずめた。





「・・・・・・本当、ですか・・・・・・。」













「・・・・・・へッ・・・・・・??」




素っ頓狂な声をレッドは上げると、右腕の力を抜いてイエローの顔を見ようとした。

だが、イエローはレッドの激痛が走る左肩にしがみついて、俯いているので顔を見ることが出来ない。

イエローは元々、こんな赤くなってしまった顔でレッドと顔を合わせることなんて出来なかった。

だが、イエローの顔を見ようとしたレッドの顔も真っ赤だった。

絶対に起きるはず無いと思っていたので、彼女に誠心誠意の想いを、伝わるはず無い想いを伝えていたのに、

よもや、それが聞かれてしまうとは・・・・・・。

あまりの恥ずかしさに、どんどん顔面が紅潮し鼓動が速くなる。


「あ、あ、あ・・・そうだ、そうだ!連絡しないと・・・・・・。」


レッドはイエローから離れると、扉を開けて部屋を出て行ってしまった。


「あ、レッドさん、待って!!!」


離れてほしくない、傍に居たい、もっと近くにいたい・・・・・・。

その想いからレッドを呼び止めようと手を思い切り伸ばしたが、レッドの服の端さえも掴むことができず掴んだのは空気だけだった。


「・・・・・・私だって、私だって・・・・・・」


イエローの瞳から涙がこぼれた。


















 この後、レッドの連絡で駆けつけた仲間達。

泣き続けるイエローを慰めるブルーとクリスが必死になっていた。

泣き止んだ後、イエローと対面する仲間達。

やっと、全てが終わり、

そして全てが始まろうとしていた・・・・・・。












 最終話へ・・・