事件発生から1年という時間が流れた・・・・・・。
「・・・!!! ・・・その話は本当なんだな・・・・・・?」
「嘘を話してもしょうがないじゃないですか・・・・・・。」
レッドの瞳に涙が溢れた。男は、自分の机の引き出しから一つのディスクを取り出すと、レッドに渡した。
「・・・初仕事ですね・・・・・・。くれぐれもそのディスクを無くさないようにしてくださいね。
それと、情報を頭に叩き込んだらそのディスクは処分してください。」
男は前あったときと同じように、笑顔と優しい声で残酷な現実を伝えた。
ディスクを握り締めて、俯いているレッド。レッドは若干の涙声ながらも、はっきりと返事をすると、部屋を後にした。
レッドを見送る男はその表情を崩さず笑顔のままだった。
自宅へと帰ると、レッドはパソコンを立ち上げてドライブにディスクをセットする。
パソコン特有の読み込む時の音が、静まり返る夜のマサラのレッドの家に響く。
そして、読み込みを完了を告げるメッセージが画面に表示されると情報を確認する。
(・・・・・・!!! こ、これは・・・・・・!!!)
レッドはディスクをドライブから抜き取ると、力強くディスクを折り曲げてへし折った。
(・・・・・・そうか。・・・・・・じゃあ・・・・・・。)
PAS 第30話(最終話) 闇を背負って・・・。
「イエロー、その、なんだ、えーっと、あの、ほら・・・・・・」
「もう、何ですか? はっきりしてください。」
「あのさ、・・・デートしないか・・・・・・?」
「えっ・・・・・・?」
ただいまの時刻、正午。アサギシティ復旧作業も本日で終了となる。
レッドは昼食を食べながらポケギアで、愛しの、いや、世界で一番愛しの彼女に連絡を取る。
「・・・デート・・・ですか・・・?」
「そ、そう、デート。」
赤面しながら話すレッドの姿を見て、周囲から笑い声が聞こえてくる。
「若いなぁ、彼女をデートに誘うのにあんなに真っ赤になりやがって。」
「名前の通り、真っ赤になってらぁ。・・・まるで、茹ダコだなぁ。」
一人の現場のおじさんがそんなことを言うと、現場を担当するおじさん集の間に大きな笑い声が響く。
その声を聞くと、レッドの顔はより一層真っ赤になった。
1年の月日は長い・・・・・・。
あんなにも、レッドの存在を許せなかったアサギの住民も
レッドの性格とキャラクターもあるだろうが、毎日誠実に働き、心からの謝罪を続けるレッドを許し始めていた。
全ての人がレッドを許したわけではないが、その雰囲気は町全体に広がっていた。
今では一時期あった石を投げられることや、陰口を叩かれることもなくなり
逆に、好意的に声を掛けてくれたり、レッドの作業に協力したり、弁当を持参しないレッドに弁当を作ってきれたりする人も出てきた。
「お・・・、今日も来たぞ・・・・・・。」
現場のおじさんの一人が声を上げると、レッドに接近する一人の少女・・・。
「あ、いつもありがとな。」
「い、いえ、私が好きでやってることですので・・・・・・。」
「・・・ッ!!!」
ポケギアでの会話を中断して、レッドは少女から弁当を手渡しで受け取ると笑顔でお礼を言った。
その笑顔に頬を赤らめる少女と、会話が聞こえていたためにポケギアの先でピシッと青筋を立てるイエロー。
「お、今日は唐揚げ入りじゃん。 君のは味付けが上手だから、何個もいけちゃうよ。」
「滅相もない!!本当に普通の唐揚げです!!!」
「・・・・・・。」
ポケギアでの会話を忘れ、少女と談笑するレッドと少女。
それに対してピシッ、ピシッと音を立ててイエローに青筋が立つ。
「あちゃぁ・・・・・・。アイツは、仕事も出来るし、人柄もいいし、ポケモンに優しいし、顔もそこそこいいのに、女との付き合いがヘタなんだよな。」
現場のおじさん集は、弁当を食べながらレッドの様子に釘付けである。
レッドはポケギアの存在に気がつかないまま、弁当を食べながら少女と談笑している。無論、この間レッドのポケギアは会話モードである。
「レッドさん、あの、復旧作業が終ったら・・・・・・」
「ん・・・・・・?」
「あの、その・・・・・・」
「どうしたの?」
「アサギには、アサギにはもう来てくれないんですか??」
「そんなことは無いさ。・・・また、会いに来るよ」
「・・・・・・!!! ありがとうございます!!!」
「ありがとう? へへ、全く面白いなぁ。」
頬を赤らめる少女、笑顔のレッド。別にレッドは一切その気は無いのだが、その言動は間違いなく勘違いする人が出てもおかしくないだろう。
弁当を食べ終えると、少女は頬を赤らめたまま空の弁当箱を回収して軽くスキップしてその場を去った。
その表情は幸せなのだろう、にやけている。
「あ、ポケギア・・・・・・。」
会話モードのままのポケギアを見て、その相手がイエローだと解るとレッドはとりあえず声を掛けてみた。
「もしも〜し、まぁ、切れてるだろうな・・・・・・。また、謝っとかないと。」
「・・・・・・レッドさんの・・・・・・。」
レッドはポケギアから聞こえてきたイエローの小さな声に驚いて、ポケギアに耳を近づける。
「お、そろそろくるんじゃねぇか? いつもの一言が・・・・・・。」
現場のおじさん集は、“恒例のイベント”を楽しそうな瞳で見つめる。
「もしもし?イエロー、まだ聞いてる?」
「・・・・・・レッドさんの・・・・・・。」
イエローは思い切り息を吸い込む。レッドはより小さくなったイエローの声を聞き漏らさないように、ポケギアを耳にさらに近づける。
「レッドさんの、レッドさんの・・・・・・レッドさんのバカぁ!!!!!」
ポケギアから聞こえてきたイエロー全力の怒声に、レッドの鼓膜は一気に振動する。その声量にレッドはその場に倒れてしまった。
「プッ・・・・・・ククク・・・ハハハハハ!!!」
現場のおじさん集はその様子を見て笑い転げた。辺りに、品の無い、しかし豪快な笑い声が響き渡る。
(笑い事じゃないよ・・・・・・。でも、オレ何かしたかな・・・・・・??)
鈍すぎるレッドには永遠には解らないだろう。
そして、全員が昼食を食べ終えると最後の復旧作業が始まった。
「グリーン、話しておきたいことがあるんだ・・・。」
いつになく真剣な声が受話器から聞こえる。今の時間は深夜1時。
事の重大さは時間帯とこの声の調子から把握できる。
「・・・・・・どうした、お前が相談してくるとは珍しいな。」
別に他愛も無い相談なら2人でよくしている。だが、間違いなくこの相談は軽い話ではないだろう。
「全てを明かすことは出来ない・・・。けど、要点だけ伝えておきたいんだ。」
「・・・ああ。」
最近感じる、親友が離れていく感覚。
距離をとられているのは解っているのだが、未だにその根本的な打開策は見つかっていない。
レッドはレッドなりに、謝罪と“お詫び”を無い時間の合間で仲間達に行ってきた。
飲み会を開いたり、バトルの相手になったり、遊びに行ったり・・・・・・。
普通に付き合っているはずなのに、“償い”という言葉がいつもレッドの傍にある。
一度、レッドに「過去を引きずるな」と言ってみたが、「引きずらなければならない過去もある」と返されてしまった。
いつもレッドの傍に居るようで傍に居ないイエローも、この事を相当気にしているようだ。
そういえば・・・イエローへの“お詫び”は未だに済ませていないようだな・・・・・・。
様々なことが頭の中を駆け巡った、そして、話されていくレッドの話にグリーンは驚きを隠せなかった。
「はぁ・・・・・・、神様、もしもいらっしゃるのでしたら、イエローの機嫌をどうか直しておいてください・・・・・・。」
黒い瞳のままのレッドは、待ち合わせ場所のトキワの森の大きな桜の木の下で待っている。
桜の木は季節はずれのため、花は咲いておらず葉もついていない。 要するに季節は冬だ。
今日は、昨日何度も頭を下げて、何とかOKしてもらったデートの日である。
しかしながらOKしてもらったというのは半ば間違いであり、正確には
「明日の・・・機嫌次第で決めます・・・。」
若干、怒り気味、すね気味の声で返された返事に、レッドは苦悩するばかりだ。
普段絶対に祈ることは無い神にまで祈るのだからその苦悩は計り知れない。
「・・・・・・あの、お待たせしました・・・・・・。」
一人苦悩のあまり頭を抱えるレッドの背後から、かわいらしい声が聞こえてきた。
声を聞いた瞬間、ドクンと大きい鼓動が聞こえた気がした。
「あ、いや、オレも今来たところだか・・・・・・」
やってきたイエローを見た瞬間、レッドの言葉は途切れた。
元より細身なので、寒がりの彼女は白いふかふかのロングコートをまとってやってきた。
コートだけでなく、全体的に白で統一されたファッションである。
その姿は、この季節に合わせて言えば雪の精とでも呼ぶべきだろうか・・・・・・。
“かわいい”だけでなく、“きれい”や“美しい”の形容詞が似合うようになってきた彼女にレッドは釘付けである。
1年間まともに接する機会もなく(流石に記念日やイベント、行事の時は別だが)久々にあって意識するのは
・・・18歳になり大人の魅力を醸し出し始める彼女の変化・・・。
ますます自分のものにしたい欲求(一応、自分のものにしたのだが)が高まるが、逆に自信を喪失の材料が増えた訳で、非常に微妙な気持ちだ。
寒さなのか、ここに来るのに急いで来てくれたのか、その理由は定かでは無いが彼女は顔を真っ赤にしている。
なんとなく凝視されているような気がしたが、まぁ、気のせいだろうとレッドは軽く流していた。
(それより今日は・・・・・・。)
レッドは今日、決意していることがあった。
そのことを思うだけで、レッドの胸は締め付けられた。
(今日は、レッドさんが私のものだって周りに解らせます!!!)
対して、イエロー本日の決意。
目の前にいる青年、いや、成年に対する日増しに高まっていく独占欲に今日、終止符を打つのだ。
終止符を打つと言うと語弊があるかもしれないが、正確には、二度と独占欲が起きないように嫉妬しないようにするのだ。
その方法はいくつかあるだろうが、その一つとして他者にこの人が誰かの所有物であることを示すという方法がある。
この考えなら、レッドに甘えることも出来るので一石二鳥だ。
しかし、久々に会った彼はかっこよくなりすぎている。
いつものジャケットは今日は長袖なのだが、そのジャケット越しからでも解るたくましくなっている身体、
また少し高くなった身長、より凛々しくなった顔、そして頼りがいある人間のオーラが全身を力強く包んでいる。
結構長い期間付き合っている仲だが、この人を嫌いになる要因を見つけるのは難しい(鈍感なところは除かれるが)
人に好かれやすい性質の彼である、だからこそ自分一人は誰よりも特別な存在でいたい・・・
いつの間にか彼に見とれていたらしく、頭の中で巻き起こったレッドへの想いが彼女の頬を赤く染めていた。
(・・・・・・?)
ほんの一瞬見せたレッドの悲しげな表情に、イエローは何かデジャブするものがあった。
不安・・・・・・
自分を奈落の底へ叩き落した不安によく似ている不安・・・
不安といえば、レッドの今だ元に戻らない瞳の色も非常に気がかりである
その不安の正体を探ろうとすると、嫌な胸騒ぎが起こる。
(これからレッドさんとデートなのに・・・・・・私がこんな調子じゃ、ダメだよね・・・)
不安を無理矢理押さえ込んでイエローは笑顔を作りレッドに声をかける。
「で、今日は何処に連れて行ってくれるんですか??」
いかにも楽しみといった感じの声と雰囲気でイエローはレッドに話しかける
「今日は、1年間まともにデートも出来なかったから、お詫びにお前にいくつかプレゼントしたいんだ」
「プレゼントですか?」
「そ、イエローがコレといってほしいものが今無いなら、オレからイエローにアクセサリーをプレゼントしたいんだ」
「アクセサリー・・・」
きょとんとしたままのイエローが可愛く思えて、いつの間にかレッドはイエローの頭を撫でていた。
「本当は今日買っていこうと思ったんだけど、・・・その、・・・・・・イエローと一緒に居る時間を多くとりたかったから・・・」
どんどん紅潮していくレッドの顔。そんなレッドがおかしく見えて、イエローはクスクスと笑った。
「・・・・・・ったく、笑うなよ・・・。」
「だってレッドさんの顔、真っ赤ですよ」
「・・・と、とりあえず、店は目星がついてるんだ。ジョウトまでいくから今日はリニアで移動だけどいいよな?」
「はい。」
快いイエローの返事を聞いたレッドは、そのままイエローの手を引いてリニアの駅があるヤマブキシティへ向かった。
「・・・・・・一人で全て背負い込もうとしなかった点と、話をした点は評価する。だが、お前はこれからどうするつもりだ?」
グリーンの当然の疑問、だが、レッドは一切の迷いもなくグリーンに返した。
「・・・行くさ。」
「なら、俺も連れて行け。」
「ダメだ。」
グリーンの即座の返答も、レッドの即座の返答によって返される。
結局、レッドが何もかもを一人で背負うのだ。 支えたいという思いなど意味を成さなかった。
「イエローはどうするつもりだ?」
このグリーンの言葉にレッドは流石に黙りこくった。
「・・・悲しむぞ、お前がまた無茶をしにいくと知れば」
「一つ、一つだけ考えがあるんだ・・・・・・。」
「考え?」
「もう、アイツをオレの為に待たせるのは嫌なんだ・・・」
マサラの夜は静けさを保ったまま、過ぎていく・・・・・・
「はい、到着。」
コガネシティの裏路地で行われていた露店。コレがレッドの言っていた店のようだ。
アクセサリーや服、小物からポケモン用のドレスアップ用品まで様々な種類の露店が出店している。
イエローも女の子だ、光物や可愛いものに自然と目が行く。
いつの間にか瞳を輝かせているイエローにレッドはホッと一息ついた。
そのままの雰囲気で、手をつないで話をしながら露店を見て回る2人・・・
途中、一軒のアクセサリー屋でイエローが足を止めた。そして、一点を凝視している。
・・・・・・どうやら、お気に入りの一品があったようだ。
「イヤリング・・・・??」
「あ、いえ、別に欲しいってわけじゃ・・・・・・」
イエローが見ていたのは小さな銀のリングに小さな赤く透き通った石がついた
シンプル且つかわいらしいデザインのイヤリングだ。
「その割には、じっくり見てるな」
「見るくらいは別にいいじゃないですか。もう」
からかうように話すレッドにイエローは,頬を膨らませて少しすねている。
その仕草が妙に可愛く感じてレッドはイエローの頭を撫でた。
「・・・じゃあ、もう少し見て回ってみてから決めるか。」
レッドは店のおじさんに売らずにとっておいてくださいとお願いすると
店のおじさんは快諾してくれたので、2人は再び他の店を見て回り始めた・・・。
それから数時間後、昼食を済ませた2人は先ほどの店にいた
「おじさん、コレもらえますか?」
「え、ちょ、レッドさん!」
先ほどのイヤリングをどんどん買ってしまおうとするレッドをイエローは静止した。
「それ結構値段張りますよ・・・」
申し訳なさそうな声でレッドに言うと、レッドは大げさにため息をついた
「コレはオレからのプレゼントだから、気にするなって。」
「じゃあ、おじさん! あの、一組と単品で一つだけってお願いできますか?」
おじさんはその意図を理解したようでまたしてもそれを快諾してくれた。
(値が張るんじゃないのか・・・・・・現金なやつだなぁ・・・)
一人その意図が解せず困惑するレッド。財布の中身を心配しだした。
だが、瞳を輝かせているイエローを見ていたら何だかそれもいいかと思えてきたらしく
レッドは財布からお札を一枚取り出した・・・。
購入後、早速イエローは両耳にイヤリングをつけた。
かわいらしく輝くイヤリングはイエローに非常に似合っている。
レッドは残り一つの用途が未だにわからず、無くした時のスペアと思っていた。
「レッドさん、ちょっと・・・・・・」
「ん?」
イエローに呼ばれて振り向くと、イエローが頭を下げるように言ってきたので
言われるがまま頭を下げてみた。すると、耳に何か金属製の物を取り付けられた感覚がした。
「おそろいです・・・。」
「・・・おそろい??」
レッドは耳に手を当てて耳についている何かを触る。
その形状からコレはあのイヤリングだということがわかった。
「これでレッドさんと、いつでも一緒です・・・・・・」
その言葉と一緒にレッドの腕に抱きついたイエローの顔は、例えようがないくらい紅潮していた。
無論された本人であるレッドも、これまたイエローに負けないくらい紅潮している。
その状態からどういう風に動いていいか分からず、その場で硬直してしまう2人・・・・・・
数分間その場で立ち止まられてしまったので、おじさんは頃合を見てわざとらしい大きな咳払いをした。
その音にビクンと2人は反応して2人はほぼそのままの状態で店を後にした。
いつしか時は流れ、コガネの街を夕焼けが街を焼く頃、2人はアサギシティにいた。
正確には、再び建造中のバトルタワーの太い鉄骨の上。非常に危険な所なのだが2人は寄り添って座り
静かに、海と夕日を眺めていた・・・・・・
「きれいだよな・・・・・・」
「・・・はい」
2人の間に静かな会話が行われる。
「イエロー、夕日嫌いだよね」
「・・・前は好きでしたけど、今は嫌いです」
何故嫌いかなんて、野暮な質問は2人の間に交わされることはない。
無論、例の一件がこの街で起き、凄惨な技や人間の醜い感情が渦巻いたのはちょうどこの時間帯である。
もう少し日が落ちてくれば、彼とあの人物との一応の決着をつけた時間も迎える。
「もう一つ、イエローにプレゼントしたいものがあるんだ・・・」
レッドはおもむろに立ち上がり、ボールからプテを呼び出すとプテに翼になってもらう。
「イエロー、おいで」
レッドはイエローを立ち上がらせると、イエローはレッドの首に腕を回し彼の胸に収まる。
その状態を確認したレッドはイエローの足をすくい上げると、イエローを姫抱きの状態にした。
「ちょっと寒いけど、我慢してくれよ・・・」
レッドはイエローに一言呟くと、鉄骨を蹴って空をへ飛んだ。
飛び上がると同時にプテはその翼を大きく広げて、主人たちを空へ導く・・・
ゆっくりとしたスピードで飛んでいるのだが正面から吹いてくる風は結構寒い。
そんな環境でも、レッドはイエローを抱えたまま夕日に向かって飛んでいく・・・
いつの間にか陸地はなくなり海上に出ていた。
普通、こういう状況になったら恐怖するものだがその恐怖なんて忘れるほどの
感動的な光景がイエローとレッドの目の前に広がっていた・・・・・・
丸くて、大きくて、そしてほんのり暖かい・・・
海と空を薄っすらオレンジに染めて、大きな大きな夕日が2人の目の前にある。
「イエローにこの景色をずーっと見せたかったんだ」
レッドが優しく話しかけたが、イエローは目の前の美しい光景に瞳と心と声を奪われていた。
その様子を見たレッドはホッとした表情で優しく微笑んでいた。
しばらくその景色を2人で眺めていたが、夕日を浴びて輝くイエローはとても綺麗で
レッドは夕日そっちのけでイエローを見ていた。
「イエロー、夕日まだ嫌い?」
レッドの問いかけにイエローは我を取り戻し、しばらく考え込んで一言返した。
「・・・もう、嫌いじゃないです・・・・・・」
「それは良かった」
「あなたと見れる夕日なら・・・・・・いつでも大好きです」
イエローはレッドに抱きつく腕の力を強めた。
「ありがと」
レッドは照れながら返事をするが、夕日の色によってその顔の紅潮はわからない。
夕日が沈みはじめてそろそろ半分が海に沈む頃。2人は陸地に戻った。
その後、2人はコガネへ戻りリニアでカントーヘ戻っていった・・・・・・
「グリーン、今まで話してきたことは絶対誰にも言わないでくれ」
「・・・分かった。」
ガチャリと電話は切られ、マサラの深夜の電話は終わりを告げた・・・。
「・・・・・・ッ!!!」
近くにあったテーブルを思い切り叩くグリーン。
溢れる涙、そしてこぼれゆく涙・・・・・・
親友の為に何も出来ない自分の情けなさに嫌気が差してきた。
流れる涙を拭くこともせずグリーンは、その場で立ち尽くし涙をこぼし続けた・・・・・・
「今日はありがとな」
「い、いえ、お礼を言うのは私です!!」
イエローの自宅前で2人は立って話をしている。
時刻は今、午後7時。今の季節は日が落ちるのが早いのであたりはもう真っ暗だ。
レッドはイエローが今日は満足といった顔をしているのを見てとても嬉しくなった
だが、この嬉しさを思うほど、今から自分がすることに胸が痛んだ。
暗闇の中でも分かる、レッドのつらそうな表情にイエローは心配そうな顔をする。
「レッドさん?」
イエローはレッドに声を掛けてみた。
その返事は、突然の抱擁
「レ・・・レッド・・・さん・・・・・・」
イエローはびっくりしたが、そのままなされるがままにしていた。
「・・・・・・イエロー、大切な話があるんだ・・・・・・」
耳元で囁かれる言葉は、今日一日一緒に居て一度も聞くことがなかった感じの声だ。
「・・・話ですか・・・?」
イエローはその声に応える。
レッドは抱擁を解き、イエローをちゃんと立たせた。
その時のレッドの表情は何時になく真剣だったので、
心のどこかで願っていたあの時が来たのかとイエローは思っていた。
そう、レッドからのプロポーズ・・・・・・。
一年前のあの日までは、イエローはレッドの花嫁となるべくずっと修行がてらの
家政婦の仕事をしていた。おかげで今となっては、家事全般は得意分野の一つだ。
今もなおこの仕事は続けており、生計を立てている。
今までずっと、年齢的にもう少し後にしたほうが様々な準備が出来るとの理由で
2人は貯金等の下準備をし続けていた。
レッドも社会的に何とか復帰、仕事も特例処置との事で前の職場へと復帰している。
それなりに安定する仕事であるし、そこそこ貯まってきた貯金。
なにより、1年間まともに触れ合うことも出来なかったり、あんな事件の後でも
嫌いになることなく、愛し続けることができたこの人となら
今すぐでは無いが、2人としてのスタートラインにだって立てると思えるのだ。
イエローの頭の中を、今までのレッドとの思い出が思い出されてきた・・・・・・
トキワの森で助けられたこと
男装して助けに行ったこと
ナナシマでのこと
一年前の事件のこと
大きな事柄から、ほんの些細な日常のことまで、たくさんのことが思い出されてきた
イエローの鼓動は速くなってきた。
今か今かと、自分が一番期待している言葉をレッドから出てくるようにと、祈りながら待つ。
数秒間がまるで何十分のように感じてきた・・・・・・
そして、レッドの口から言葉が話し出された
「イエロー、オレ、・・・・・・他に、他に好きな人が出来たんだ・・・・・・。」
「えっ・・・・・・」
イエローは始め、その言葉の意味が理解できなかった。
この人は何をしゃべっているのだろうと、疑問さえ抱いた。
もしかしたら聞き違えかと思い、もう一度、レッドに聞き返した
「もう一度、お願いできますか?」
「何度でも言うよ、イエロー、他に好きな人が出来たんだ。」
今度は、はっきりとした口調でレッド話した。
この口調では、絶対に聞き違いなんて事はありえない。
イエローの瞳から涙が自然とポロポロこぼれだした
望んでいた言葉と、現実の言葉のあまりのギャップに何一つ話せなかった。
本当は、どうしてとか、相手は一体誰なのか、もう一度考え直してもらえないかとか
たくさんのことを話したかったが、口がうまく動かなかった。
こぼれ出る涙、何かを話そうとして口を動かしているが発声されない声。
レッドはそのあまりにも痛々しいイエローの姿に、猛烈な後悔をした。
だが、レッドはその状態のままイエローに背を向けると
暗闇の中にその姿を消していった・・・・・・
「ごめんな、本当にゴメンな・・・・・・」
涙を流しながら、レッドは一人マサラの自宅へと戻っていく。
くしゃくしゃのままの顔でレッドは自宅へと着くと部屋の明かりをつける。
明かりによって照らし出されたのは
既に用意済みの荷物であった・・・・・・・
それを見た瞬間、レッドは声を上げて泣いた。
「ごめん、本当にごめん・・・オレが全部悪いんだ・・・・・・」
泣きながらレッドは全ての旅支度を整えると、家の戸締りをして街の出入口に向かい歩き出した
(もう、泣くことも許されない・・・オレの贖罪の旅路は・・・ここから始まる・・・・・・。)
レッドは街の出入口に到着すると、夜のマサラタウンに別れを告げた。
そして、2人は別々の道を歩みだす・・・・・・
その先は交わるのだろうか、それとも、もう交わることもないのだろうか・・・
今、贖罪の旅と傷心の心の物語が始まろうとしていた・・・・・・・
Pocket monster special Afterwards Story Chapter 1 〜真ロケット団編〜 終
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