AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する



 夕暮れのアサギシティ・・・2人の男は最後の決着をつける・・・。





キメリアンはレッドの元に納まった

それは計画通りだったのだが

真の計画の発動にはキメリアンが必要だった

キメリアンを欲するサカキ

キメリアンを守ると決めたレッド

再び敵同士となった2人は最後の決着をつける、

謎の声が聞こえるこの場所で

レッドはこの戦いの結末に何を得るのだろうか・・・













 PAS 第28話 決着は影を残して

















中にキメリアンが捕獲された状態で、マスターボールはレッドの懐へと収まった。

そして、レッドはある方向を見る。夕日を全身に受けてオレンジ色に輝く一人の男を。


「・・・解らない事だらけだ・・・。」


レッドが出現した場所は、グリーンやサカキたちがいる場所からそう遠くではなかった。ゆえに、キメリアンとの一部始終は見られていた。

その光景に、感動するもの、困惑するもの、驚愕するものとそれぞれの見解があったが、今、レッドに声を掛けられているこの男は異質な思いを抱いていた。


「解る必要性は無い。いいから、さっさとキメリアンを渡せ。」


夕日をこんなにも全身に受けているはずなのに、この男の邪悪が影と闇を作り出して男に黒い力を授けている。

レッドはある程度予想できていた返答に、困惑することなくまだ動かすことが出来る右腕をボールホルダーにまわした。

聞きたいことは山ほどあるが、これ以上この男から聞き出すことは出来ないだろう。そしておそらくこの男は何も話さないだろう。

真相はあの男の闇に紛れ、現実もあの男の闇に傷つけられ、多くのものを失った。この感情が表れないはずが無い。

キメリアンを説得して捕獲した直後であるが、キメリアンの嫌っていた人間の醜い感情がレッドを包む。

それは、人間として当然のことであろう。

レッドはこの感情を処理しないことには全てを終わらせることはできない気がした。


「綺麗ごとは抜きでいい・・・。ケリをつけよう。」


夕日を背に受けた影響か、はたまた彼自身の闇なのか、レッドは影と闇に包まれて、その表情さえも確認できない。

右手に握られたモンスターボールから呼び出された翼も漆黒の色をしている。

その翼がレッドの身体に重なると、サカキは指を弾いてニドキングを自分の前に立たせた。



(オレの力に目覚めるか・・・・・・。てっきり兄貴の力に目覚めると思ったがな・・・。)



レッドの脳裏に過去に聞いたことがあるような男の声が聞こえたような気がした。

だが、特に気に留めることなくレッドは前に歩みを進める。サカキも一歩、また一歩と歩き出す。

光を受けても闇に包まれる男と闇を纏う男の距離が、少しずつ近づき始めた・・・・・・。




















 「“
こうそくいどう”!!」

突如、レッドは地面を蹴ると同時に背中のプテにそう命じると、レッドの身体は1メートルほど浮かび上がり低空を駆ける。

一気に詰まった距離、そしていつの間にか握られていたモンスターボール。そのボールからミュウツーがスプーンを持った状態で飛び出してきた。

ニドキングの太い腕から放たれる強烈な一撃と、ミュウツーのスプーンが激しくぶつかり合う。


その間にレッドはサカキを超えてグリーンたちの元へと移動した。

レッドはミュウツーに背を向けたまま、グリーンとブルーにリザードンとカメちゃんを返却した。


「・・・この戦いは、お前達は関係ないから・・・。」


悲しそうでもあり、冷たそうな声と言葉を2人に話すと、2人の返答を待たずレッドはイエローの元へ向かい、傷ついたピカとニョロを回収する。

2匹はそれほど傷ついてはいない。その理由は倒れているイエローのお腹の上で同じく倒れているエーフィーのブイが物語っている。


バトルタワー崩壊と同時に、“
バリアー”をなるべく広く展開。周囲にいたレッドのポケモンとイエローを守ったのだ。

サカキのニドキングに救出されるまで、瓦礫の重圧に耐えれる“
バリアー”を張り続けたので、その体力は限界を迎えていた。

そんな事は知らないが、レッドは倒れているブイを一撫ですると、まだ元気な2匹をボールに戻してボールホルダーに収めると

反転してサカキの元へと、再び“
こうそくいどう”し始めた。



「フン、“
じわれ”!!」


ニドキングはミュウツーとの殴り合いの最中に、フェイントを交え、そのフェイントに掛かった隙に大地を強打した。

強打と同時に大地に100メートル近い亀裂が生じた。その直後、ミュウツーの足元が崩れ、そのまま大地に落ちていった。



「調子に乗りすぎたな・・・。」



何時の間にかサカキの背後に立つレッド。右腕でサカキを指差しているのだが、その腕の上に伸びる背中のプテの首。

その口は大きく開かれて、今にも“
かみつく”か“はかいこうせん”を放とうとしている。

動きを取れなくなったサカキ、その間に大地の亀裂に落ちたミュウツーが念の力を用いて浮いてきた。

そして、浮遊した状態でレッドが命じなくともサカキに手を向けて今にも念撃を放とうとしている。


しかし、そんな状況でもサカキは余裕の表情を浮かべている。レッドはその表情にハッとして即座にその場所を離れようとした。

距離をとろうとしたレッドの左足を、地面から現れたポケモンの手が掴む。手の形状から、レッドはこのポケモンがダグトリオであることを瞬時に判断した。


「背後に移動されたのに、無警戒なはずがないだろう。」


「最悪、道連れか・・・・・・。オレはお前と心中するつもりは無い。」


レッドに対して背を向けて話すサカキ。仮にこの状況でミュウツーが何らかの念撃を放てば、サカキの背後にいるレッドへ被害が及ぶことは確実である。

そして、プテが“
はかいこうせん”を放てば、離脱できないレッドも余波を受けてしまう。だからといって、“かみつく”を放とうものなら

左足を掴むダグトリオに足をプレゼントしかねない。現実、左足を掴んでいたダグトリオは、爪を立てており、先ほどからその爪が血が滲むほど食い込んでいる。


行動を起こさなければ、左足に大きな傷を作られて失血で気絶、もしくは死が待っている。気絶をしたら、結果的に死が待っている可能性が高いが。

通常の人間、トレーナーならばこの状況下、損得を考えて適切且つ、効果的な行動を迅速に導き出すのはほぼ不可能であろう。

だが、今この状況下にいるのはレッドである。レッドはニヤリと口元だけ笑みを浮かべるとその行動に出た。





「プテ、“
はかいこうせん”!!」




迷うことなく宣言された自己犠牲。そう思われたが、攻撃の先として示されたレッドの右腕の先は自らの足元であった。

光線が大地に突き刺さると、強烈な爆発を引き起こした。その一撃で足元のダグトリオは手を緩めざるを得なかった。


しかし発生した爆風からは逃れることは当然出来ず、レッドの全身にミシッと嫌な音がした。無論サカキも背後から爆風を受けたのでそのまま吹き飛ばされて

自ら発生させた大地の亀裂に落ちていった。ニドキングはサカキを追って、亀裂の中に身を投げた。

レッドは全身に走る激痛に耐えながら、肩で息をしている。今の衝撃で、左肩の出血が激しくなり、左腕を伝って大地を赤に染める。



(・・・長時間は持たないな・・・・・・。)



薄々感じ始めた死。下手をすれば、戦いに勝利しようが死を免れることは出来ないだろう。

仮に生物学的な死を乗り越えたとしても、社会的、世間的に死を迎えることは確実である。

2度目の死を迎えようとしている自分に、あの声が再び聞こえてきた。



(・・・どうだ、“力”が欲しくないか? 死をも恐れない、いや、逆に死を求める“力”だ・・・。)



この声に応えていけないような気がしたが、短時間で決着を望むならば微力であろうと“力”は欲しいところである。

レッドが決断に戸惑っていると、突如、レッドの足元が隆起してそこからニドクインが“
どくばり”を尖らせて大地を割って襲い掛かってきた。

思考に気をとられ判断が鈍っていたがプテの機転で上空へと回避して、その一撃を何とかしのいだ。

どうやらサカキとの決着はまだついてはいないようだ。

飛び出してきたニドクインに対してミュウツーはスプーンを形成すると激しく打ち合う。

しかし、ミュウツーの背後の大地の亀裂からスピアーが猛スピードで突っ込んできた。

そして、そのスピードを利用して両腕の太い針でミュウツーの身体を貫いた。その一撃で身体の動きを奪われたミュウツーにニドクインの“
どくばり”が刺さる。

何とかその一撃にも耐えて、ミュウツーは自らの意思で念撃を身体から放って、纏わりつく2匹を吹き飛ばした。


「ミュウツー!! くそっ!!!」


レッドは上空からプテと共に降りてこようとすると、ミュウツーは思念波でレッドに語りかける。

(来るな・・・、これは罠だ・・・・・・!!!)

時既に遅く、レッドのちょうど真下からニドキングが両手の鋭い爪を光らせて大地を割って飛び掛ってきた。



「・・・っ!!!!!」



間一髪、レッドはボールから、キメリアンとの戦闘で傷だらけのゴンを呼び出して“
メガトンパンチ”で応戦させた。

まさかそんな巨体のポケモンが突如出てくると思わなかったニドキングは、驚きのあまり攻撃が出来ず

メガトンパンチ”で顔面を捉えられて、大地にそのまま叩きつけられた。


さらに、その追い討ちに400キロを超える巨体+引力による加速によって放たれる“
のしかかり”を受けた。

その一撃にニドキングは押し潰されたが、辛うじて掘り進んできた大地がクッションとなって衝撃を吸収してくれていたので、

戦闘不能だけは何とか免れることが出来た。しかし、それでも身体は麻痺状態である。身動き一つ出来ない。


レッドはミュウツーを即座にボールに戻すとゴンもボールに戻した。

だが、戻したのは良かったが、スピアーとニドクインに囲まれてしまった。

改めてサカキという男に畏怖した。だが、それを表情に表すことは無く、地面から2メートルほどの上空で鋭い瞳で周囲を警戒する。



(・・・こうやって、姿を現さないところを見ると・・・・・・。今のオレの体調に薄々、いや、ほとんど感づいているか・・・。)



先ほどよりもレッドは息を荒くしている。疲労と失血による脱力感、精神的圧迫、そして何より、勝利したとしても何も無い絶望がレッドを攻める。

身体が求めている短期決着、しかし現実は長期戦・・・。逃げ出すことも許されず、戦わないことも選択できず、勝利しても何も無く・・・・・・。

せっかく蘇生した命も何のために・・・。いっそ、死のほうが楽だったかもしれない。全てを捨てて楽になれたかもしれない。


(求めろよ・・・“力”を・・・。捨てちまえ、全てを・・・・・・。何も無い、お前には何も無い・・・。生きていてもしょうがないぞ・・・・・・。)


再び聞こえ出すあの声がレッドを誘う。だが、こんな逃避する力は求めたくなかった。この力を求めるならば、死んだほうがましだ。


そうレッドのプライドが、この声と力を拒む。 しかし、それでも声はレッドに語りかける・・・。



(プライドが許さないか・・・。だったら、お前の望む形で“力”を貸してやる・・・。捨てるのは“他”ではない・・・・・・

“己”を捨てろ・・・。生きていてもしょうがない、生きていく意味が無いお前が、全てを背負え・・・・・・。

そうすれば究極の自己犠牲の“力”を与えてやる・・・・・・。)






(・・・オレは・・・、オレは・・・、オレは・・・・・・!!!)





レッド静かに瞳を閉じると、一人うなだれた。

そこへ、容赦なく攻撃を加えるスピアー。両腕の針がレッドに迫る。

スピアーの針がレッドを貫こうとした瞬間、プテは“
はかいこうせん”を放ち、スピアーを焼き払った。


その間、レッドはうなだれて瞳を閉じた状態を維持していた。ただ、維持していない状態といえば、右腕をスピアーの方向に向けていたところであろう。

地面に力なく落ちていくスピアー。それに便乗するかのように、レッドはボールホルダーからモンスターボールを一つ落とした。


落ちた先はニドクインの足元だった。ニドクインは落ちてきたそのボールを破壊しようと、踏みつけようとした。

足を上げてボールに狙いを定める瞬間に、ボールの開閉スイッチが起動しそこからニョロボンのニョロが姿を現した。

ニョロは“
ばくれつパンチ”をアッパー放ち、ニドクインの顎を捉えた。ニドクインはその一撃に気絶してしまい、後に倒れてしまった。


その時もレッドにはたいした変化は見られなかったが、唯一変化したといえば、右腕をニョロと同じくアッパーの状態にしたいるところであろうか、

よく見ると、ニョロも右腕でアッパーを放っていた。 どうやら、レッドの“統べる者”の力である、ポケモンとトレーナーとの“同調”現象が起きているのだ。

本来、対象のポケモンが傍に居ないと発生しないのだが、どうやら“力”を受け入れたことによって“同調”の効果範囲が広がったようだ。


レッドが何も指示を出さなくてもプテは下降してレッドを地面に立たせた。おそらくこれがレッドの意思なのだろう。

静まり返る周囲に、レッドはうなだれながらも警戒しているようだ。その証拠に、ニョロがキョロキョロと辺りを見回している。

しかし、レッドは何を思ったかうなだれるのをやめてニョロをボールに戻した。


それと同時に、地中からボスゴドラと共にサカキが姿を現した。


「終わりにするか・・・レッド・・・。キメリアンを渡せば、多少は楽になったものを・・・。」


「・・・・・・アイツの憎しみはオレが背負う。オレがアイツを守る。・・・アイツの憎しみの輪廻はここで終わりにする。」


「綺麗ごとは抜きなんだろう・・・。本音はどうなんだ?」


「オレはアイツの憎しみの代弁する、そしてそれに便乗して自分の憎しみも放つ、それだけだ。」


何か、吹っ切れたような感じがするレッドにサカキは、フンと鼻で笑うとボスゴドラを自分の前に出した。


「そうか、なら話は早い・・・。お前を潰して、力ずくで奪わせてもらう。人を信じようとするようになったヤツだ、完成品にはもってこいだ。」


「アイツの憎しみの輪廻は終わりにするって言っただろ。・・・何に変えてでもお前を潰す、アイツを守るためならな・・・・・・・。」






狂気に満ちた雰囲気が2人の間に広がっていった・・・・・・。






















 レッドとサカキの死闘を見守ることしか出来ない仲間達。

しかし、中にはこの戦いの狂気に非常に嫌悪を覚えるものもいた。


両者、欲望のままに相手を倒そう、殺そうとする。ポケモンバトルとは逸脱したその戦いに正義は存在しない。

キメリアン、そして己の憎しみで戦うレッド、キメリアンを利用し、新たな憎しみを生み出そうとするサカキ。

あんなに、ポケモンのことを愛して、キメリアンとの間に絆を設けた青年が、ポケモンと人間との新たな可能性を示した青年が

たった一人で憎しみで戦い、傷つく姿はとても痛々しかった。


当然の報いであるといえばそうかもしれない。青年はそれだけの罪を犯してきたのだから。

だからと言って、ただ無碍に自己犠牲を主張して、自分が傷つくことを恐れず、

何時しか憎しみに囚われて、自分の行動によって傷つく人のことを忘れてしまうことは、さらに罪を背負わせることになってしまう。

守りたい、役に立ちたい、だから、自分を傷つける・・・。

永遠に解決されることの無い、新たな輪廻がレッドを苦しめ続けるのだ。


「・・・何も出来ないんですか・・・・・・?」


クリスの悲しい呟きが、死闘を見守る仲間達に聞こえたが、誰も彼等を止めれる人はいなかった。

この事件の結末が、こんな憎しみに満ちて、正義も無く、新たな悲しみを生み出す戦いであると誰が予想しただろうか。

自己嫌悪に陥り、宛無き憎しみに苦しむか、憎しみを生み出し続けるか。どちらも悲しい結末だった。


「・・・ああ・・・・・・。」


グリーンの悔しそうな声が、クリスへと返された。

最後の最後で強烈に味わう事となった、“無力”。友、仲間を救うこの出来ない悔しさが仲間達を包んでいく。

確かにレッドが勝利すれば、グリーンたちの期待は裏切らないことになる。

だが、その勝利のために新たな苦しみを背負わなければならないのだ。

“無力”がまた新しく罪の意識を生み出してしまった。


「・・・だが、俺たちがアイツを支えてやることは出来るはずだ・・・・・・。」


仲間達はそのグリーンの一言を信じるしかなかった。

障害がどれだけあるかはわからない。だけど、そう希望を持っていればこの戦いを純粋に応援できる気がした。












そして、決着の時は訪れた・・・・・・。



















 (ポケモン制御能力・・・80%ってところか・・・。だが、その技なら放てるはずだ・・・。)


レッドの頭の中であの声が聞こえている。レッドは今から自分がしようとしていることを告げてみた。

その回答がこれであった。この回答が正しいとすれば、後はタイミングだけである。


(この技を放てるのは、一回限り・・・・・・。確実なタイミングを見つけないと・・・・・。)


そうレッドは思うが、じっくりとそのタイミングを計ることはできない。

滴り落ちる血が、残り時間が少ない事を告げている。


(今の状態を維持していられるのは・・・おそらく後、3分くらい・・・・・・。その間に技を決めないと・・・・・・。)


レッドは身体を過度に動かしてしまう“同調”状態を避けて、体力の限界を迎える前に目的を達成しなくてはならない。

右腕でボールを掴むと、そのボールからニョロを再び呼び出した。

ニョロは先手必勝と、素早くボスゴドラの前に突っ込んでいく。それに対してボスゴドラは待ちかまえている。

「ニョロ、“
ハイドロポンプ”!!!」

いきなり大技で攻めに来るレッドを見て、サカキはニヤリと笑みを浮かべた。

「ボスゴドラ、“
まもる”!!」

ボスゴドラは防御姿勢をとって、ニョロから放たれる水流から身を守った。


(焦っちゃダメだ・・・。でも、焦らないと・・・厳しいものがあるな・・・・・・。)


レッドは既に顔面蒼白。見るからに限界が近いことが解る。


(・・・タイムリミットを早めてやるか・・・。)


サカキはさりげなくボールを地面に落とすと、そのボールから出てきたポケモンが見えないように自分の影で隠した。

その呼び出されたポケモンは“
あなをほる”で地中に潜っていった。

「悪いが、一気に決める!!」

ニョロは防御姿勢をとっているボスゴドラに組み付くと、ボスゴドラを無理矢理巻き込んで、地面の上を回転していった。


「ニョロ、“
じごくぐるま”!!!」


レッドの声と同時に、ニョロはボスゴドラを投げて地面に叩きつけた。

回転のエネルギーを用いた投げ技にボスゴドラは大きなダメージを負った。


(このペースで頼む・・・!!)


レッドの願いどおり、ニョロはボスゴドラに馬乗りになるとそのまま顔面に強烈な拳を放った。

その一撃に流石のボスゴドラも戦闘不能になってしまった。 サカキはボスゴドラをボールに戻すと、新たなボールを手にとって

今度はサイドンを呼び出した。サイドンは角のドリルを回転させてレッドとニョロを威嚇している。


(残り・・・2分くらいか・・・?)


若干ぼやけてきた視界を、何とか気力で元に戻してサカキの姿を見ようとしたが、ぼやけている間にどうやら姿を消してしまったようだ。

(地中に潜られた・・・・・!?)

このまま地中で時間を潰されたら敗北は必至である。何としてもサカキを地中から引っ張り出さなくてはならない。

(どうする・・・、どうすればヤツを地上に引っ張り出せる・・・??)

レッドはあたりを見渡すと、ニドキングが作り出した“
じわれ”があることに気がついた。

(迷っている時間は無い・・・!!!)

レッドはニョロと共に大地の亀裂に降りていった。亀裂内部は案外狭く、プテの翼がギリギリ動かせる程度であった。


「オレのフィールドに入るとは、愚かな!!!」


突如、亀裂の壁からサイドンの腕が伸びてきて、レッドとプテを亀裂の壁に引っぱって強烈にたたきつけた。

その衝撃に、レッドの傷口から再び激しい出血が始まる。

レッドは意識を失いそうになったが何とか歯を食いしばって耐えた。

「ニョロ!!!」

レッドの必死の声にニョロはサイドンの腕が伸びている壁を、拳で叩き壊すとその中にいたサイドンとにらみ合った。

そこには、サイドンだけでなくサカキの姿もあった。


「この亀裂と共に心中するんだな・・・。サイドン、“
マグニチュード”!!」


サイドンが地面を強烈に踏みつけると、大きな揺れと共に亀裂が崩壊を始めた。

瓦礫が崩れ、無数に上から降り注ぐ。サカキは安全な地上へと避難するためにサイドンと共に“
あなをほる”で移動してしまった。


(・・・・・・ラスト・・・1分・・・・・??)


実際、それほど持つかどうかはわからない。落ちてくる瓦礫をプテが必死に耐えて何とか地上へと上っていく。

ニョロも岩壁の出っ張りを掴みながら地上へと上っていく。

そして何とか上りきり、地面に足をつけた瞬間であった。



「・・・・・・ッ!!!」



レッドの足に鋭い痛みが走った。彼の足をダグトリオが引き裂いていた。新たな出血箇所が出来てしまいレッドはその痛みと出血に意識が遠のいてきた。

ダグトリオは一仕事を終えるとレッドの前に立ち、勝ち誇り顔のサカキの元へと戻っていった。


「キメリアンを渡せ。それともそいつのために命を無駄にするか・・・??」


レッドはプテ無しでは立つこともできなくなっていた。そんなレッドにその言葉を返す気力は無かった・・・。しかし、



「・・・オレの・・・・・・勝ちだ・・・・・・。」



最後の気力を振り絞ってレッドはボールからフッシーを呼び出すと、続けてピカを呼び出した。


「フフフ・・・・・そんなに死に急ぐほどマヌケとは思わなかったな・・・。失望だ。」


レッドは瞳を閉じると、大きく深呼吸をした。そして、その息を吐き出すと同時に瞳を開いた。


「この、タイミング・・・。慢心して、気を抜いて地上に出てくるこの一瞬・・・。待ってたんだ・・・・・・。」


レッドの後にニョロが回り込むと同時に、“同調”現象が発生した。


「ピカ、フッシー・・・。心を一つにするんだ・・・・・・。お互い・・・を信頼するんだ・・・。そして、オレのことを信じてくれ・・・!!!」


レッドは天高く右腕を上げた。その様子に危険を感じたサカキはサイドンと共に“
あなをほる”で一度、地中に逃れて様子を見ようとした。しかし、


(サカキ、逃がさん!!!)


自らの意思で現れた、ミュウツーが“
サイコキネシス”でサイドンとサカキ、そしてダグトリオの動きを止めた。

「・・・ッ! 貴様・・・!!!」

身動きが出来ないサカキ、レッドはそのままフッシーとピカに攻撃を命じた。



「ピカ、フッシー、“
サンダープラント”!!!」



ピカとフッシーはレッドの言葉に頷くと、フッシーの頭の上にピカが乗り、ピカは全てのエネルギーをフッシーに向けて放出した。

フッシーは全身に受けた雷のエネルギーを一点に集中し、自らのエネルギーとして転換していく。

そして、転換されたエネルギーがフッシー本来の草のエネルギーと交じり合う。



「乾坤一擲、コレが、今、オレに出来る全てだ!!!」



ピカはエネルギーを使い果たし、フッシーの頭から転げ落ちると、それと同時にフッシーの背中の花から2色の螺旋の光線が放たれた。

光線の通る道は、その莫大なエネルギーが通過する影響で吹き飛ばされていく。



「いっけぇぇぇぇぇぇーーーーーー!!!!!」



レッドの絶叫のと同時にその一撃はサイドンに命中した。その瞬間、莫大なエネルギーが解放されて、とてつもない爆発を引き起こした。

爆発と言っても、エネルギーの爆発である。熱が発生した訳ではなく、エネルギーそのものが螺旋の状態を維持できず、拡散してしまったのだ。

緑、いや、鮮やかなエメラルドの輝きを放つ光が、サカキとサカキのポケモン達全てを包み込んだ。

光を受けたサカキのポケモン達は、全て戦闘不能となっていた。しかし、サカキは辛うじて立っていた。

その光景を見たレッドは、力無く後に倒れてしまいそうになったが、ニョロが後から支えた。


「・・・・・・この一撃は、対キメリアン用に開発、研究、訓練しておいた技だ・・・・・・・。この、技で無理なのか・・・・・・。」




「フフフ・・・・・・緑の・・・、“植えつける”力を利用した合体攻撃・・・。地面タイプのポケモン・・・に強烈な電撃を与えるとは・・・・・・。


成程、地面タイプであろうが、何であろうが、・・・直接、内部にエネルギーを植えつけるのか・・・・・・。」



サカキの身体はフラフラと揺れ始めた。それと同時に、レッドの呼吸も弱々しくなっていく。



「流石だレッド・・・・・・。フフフ・・・お前なら乗り越えて・・・いけるだろう、・・・これ・・・からを・・・・・・。」



サカキがその場に崩れるように倒れると、レッドも同時に気を失った。この瞬間、今回の事件は終結したのであった。






















夕日は地平線に消えると、夜の闇が辺り一帯を包み込んだ。


闇の中で各々、今回の戦いとこれから、そしてもう一つの“これから”を考えた。


それから数時間後、救助隊と警察が彼等の前に現れたときには、サカキの姿は無かった。














そして、この物語の主人公達が目覚めるのは数日後の話である・・・・・・。














 第29話へ・・・