意思を持ちし魔獣(キメリアン)・・・・・・、絶体絶命の危機・・・・・・
散華する命・・・・・・。
魔獣に対抗する面々・・・。
しかし、希望なくただ終わりを告げていく。
その中でも繰り広げられる、力への執着。
醜き人の欲望に憤怒する魔獣
魔獣は人を滅ぼさんとその力を解放する・・・。
PAS 第24話 魔獣開放
(お前達を倒せば、後は世にはびこる人間を滅ぼすだけだ・・・。)
キメリアンは両手をサカキ、シルバー、クリス、ゴールドの四人に向けた。
「フン、我が組織はお前のような存在とは相性が悪いのかもな・・・。」
前例として、ミュウツーの存在が上げられる。 ミュウツーは研究所を破壊して逃亡。
その後、レッドたちと共同戦線を張ってサカキの野望を食い止めるのに大きな役割を果たした。
だが、そのミュウツーも今やロケット団の手中である。
テレパシーとの会話を交えながら、4人は向けられた手から距離をとって散開する。もちろんポケモンたちも一緒だ。
「・・・悪いが、お前のわがままで人間は滅ぶ訳にはいかない。」
シルバーの声と共にマニューラは“ふぶき”をキメリアンの手に向けて放つ。
凍てつく程冷たい風がキメリアンの全身を包む・・・。
(愚かな・・・・・・。)
キメリアンはその風の中、みるみる身体の色を変えていく。 いつしか、紫色だった部分が燃えるような赤に変わった。
(“せいなるほのお”!!)
両手を組んで放たれた、強力な炎が凍てつく風を無効化していく。そして、炎の余力はマニューラを襲う。
余力といっても、通常のポケモンの“かえんほうしゃ”以上の威力を残している。
(自分の身体については熟知しているようだな・・・。“レインボーボディ”・・・厄介な特性だ。)
サカキのサイドンはその身体でマニューラとシルバーに襲い来る炎を受ける。属性的に炎に強いサイドンならでわの援護方法だ。
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
無言で見つめ合う父と子。即興でこれほどのコンビネーションが出来るとなると親子の絆を感じずにはいられない。
そんな2人に気を止めず、サイドンはサカキが前もって命令してあった行動をとる。
床を力強く踏みつける。すると、一直線にひびが入り、床を割る。その上に立っていたキメリアンはその断層の中に落ちてしまった。
(この人、強い・・・!!)
(オッサン何者だよ・・・。)
ゴールドとクリスがサカキの戦闘の技量に呆気に取られていると、サカキはサイドンに命令を出しながらゴールドたちを叱責する。
「ぼやぼやするな!!ヤツをこの断層に閉じ込めるぞ!!!」
サイドンは再び床を大きく踏みつける。すると床が揺れだし大きな“じしん”を引き起こした。
その大きな揺れにバチルタワーも大きく揺れる。ピシリと壁にひびが入ったり、支柱の一部が欠けはじめた。
「オイ、オッサン!!閉じ込めるってまさかこの建物ごとか?!」
「エビぴょん、“じしん”!!」
クリスはエビぴょんに命令すると、エビぴょんは床を拳で強打すると先ほどよりも揺れは弱いが“じしん”が発生した。
ゴゴゴと音を轟かせ、床は揺れる。その揺れにさらに床や壁、支柱にひびが入る。
「ク、クリス?!」
クリスの行動に驚くゴールド。それもそうだろう、身勝手な大人の言うことを簡単に聞いてしまうその心と、下手をすれば自分達の身の安全さえも保障されない。
あたふたするゴールドに対して、シルバーは“じしん”を放つことが出来るポケモンであるリングマを呼び出した。
リングマも“じしん”を引き起こそうと足を高々と上げた。
「ストップ、ストップ!!!」
ゴールドは大声でリングマを制止する。シルバーはキッとゴールドを睨みつける。
「あのな、オレたちにだって責任があるんだぜ。閉じ込めるとか、捕まえるとか、まるでこれじゃあ、臭いものにフタしてるだけだぜ。」
「小僧、心配するな。このビルを崩壊させるのはあくまでも保険に過ぎない・・・。」
サカキの返答に、シルバーとクリスも驚く。
「もう少しすれば、ヤツがアイツを何とかする算段だ。」
“ヤツ”という言葉に、ゴールドたちの表情が強張る。今や、心から敵といえるレッド、いや、ブラックが此処に来るのだ。
万が一あのポケモンを方法はどうあれ何とかした後、ブラックは再び敵としてゴールドたちの前に立ちふさがるだろう。
そう思いながらも、今はその算段に期待するか、建物ごと閉じ込める以外に対処法は無いように3人には思えた。
(フン、保険が無くとも我が物にする算段もあるがな・・・。ただ、あのキナ臭いババアが気になるな。あのババアだけは信頼できねぇ・・・。)
サカキの胸中を知るものは誰一人としていなかった。
(その程度の攻撃で私を倒せるとでも思ったのか・・・?)
そこへ思念波によるテレパシーによって、4人の脳内に声が響く。 どうやら、キメリアンが断層を上ってきた。
キメリアンには翼が無いので、飛翔するという行為が出来ない。 正確には、可能なのだが・・・。
「キサマは元々、人間の力を借りなければ真の力を発揮することは出来ないようになっている。」
サカキから放たれる言葉に、キメリアンは憎悪を覚える。
「あきらめろ。」
残酷な一言。流石にその言葉にはゴールドたちも怒りを覚えた。
全力を発揮することが出来ないことだけでなく、一つの命として、意思として存在を認められない全否定の言葉に憎悪は増していく。
(お前に私の存在の否定する権利は無い・・・。全力ならいくらでも出してやる・・・。お前達を消し飛ばす程にな!!!)
キメリアンは断層から這い上がり床に足をつけて立つと、エネルギーを全身に集める。その様子がわかる理由として、身体のいたるところに
エネルギーの集束現象が見え始めた。静止してしまっているキメリアンに、サカキはサイドンに攻撃を命じるが、3人は顔を背け攻撃させない。
「お前達どうした?今が好機会だぞ・・・。全力で攻撃を仕掛けるぞ。」
「そいつが言ってることは間違ってねーよ・・・。誰だって、ポケモンだって意思を持ってるんだ。自由に生きることは許されるはずだ。」
「時と場合を考えろ小僧。コイツを自由にすればどれだけの別の意思が傷つけられ、消えていくかをな・・・。」
「だいたい、おめぇ達が悪ぃんだろーが!!!何でアイツを生み出したんだ?!!」
サカキは、ゴールドの前までゆっくりと歩いた。
「ガキ、俺達はもう後には引けねえ・・・。此処まで首を突っ込んだ時点で覚悟しておくんだったな。」
片手でゴールドの胸倉を掴んで持ち上げて目の高さを無理やり合わせる。睨みあう2人。黒い瞳と金の瞳が真っ直ぐとぶつかり合う。
「汚ねぇ、汚ねぇよ・・・。勝手すぎるだろぉ!!!」
「世の中、その勝手を突き通したヤツが一番偉くて、強いんだ・・・。綺麗ごとだけで世の中が動くと思うな!!!」
「・・・・・・ッ」
一喝されたゴールドの瞳に薄っすらと涙が潤む。それでも、視線を逸らさずサカキと睨みあう。
「だから、人々は力を渇望する。それが理に反していようとな。」
(お前は未だに私を力を得るための道具程度にしか思っていないようだな・・・。)
ゴールドとサカキが話す間に、キメリアンはその姿を変貌させていた。両腕が異常なほど大きくなり、手は無くなり変わりに筒状になっている。
要するに両腕が砲塔のようになっている。また、両足は鉤爪のように変化して、身体をしっかりと固定できる用になっている。
「・・・ッ、広範囲殲滅形態(バーストフォルム)を自ら引き出したか。・・・・・・マズイな。」
サカキはゴールドの胸倉を掴む手を緩めてゴールドを開放する。
(お前を消し飛ばした後、私の手によって欲望に塗れる全ての人間は根絶される・・・。)
キメリアンは両手をサカキに向けた。サカキはサイドンをボールに戻すと、扉のほうを向く。
「ガキども、外へ出るぞ・・・。」
「外へ出たら、あのポケモンが逃げてしまいます!!」
今まで、シルバーと共にゴールドを見守っていたクリスが唐突に口を開いて叫ぶ。
「・・・・・・大丈夫だろう。あのポケモンの狙いは、そいつだからな。」
同じくシルバーも口を開いて、冷静にクリスをなだめる。
「第一よ、外に出てどうするってんだよ・・・。」
沈み気味の声でゴールドがサカキに問う。
「この閉鎖空間では逃げ場が無いからな。今のヤツが本気を出した場合、この街は塵一つ残らない。」
サカキはあっさりと答える。しかし、その言葉の意味はあっさりと受け入れれるほど単純な問題では無い。
「ってか、何でアンタがそんなことを知ってるんだよ?」
ゴールドの素朴な疑問。いや、ゴールドだけでなくシルバーとクリスも思っていたことだろう。
「造命主が結果を知らないでどうする。いちいち、結果が知れないものなど造りだすはずが無いだろう。」
「じゃあ、アンタは始めから街一つ消し飛ばすようなヤツを造ったって訳か・・・。生き物としての意思も、命も無視して・・・・・・・。」
「兵器に心は不要だ。」
ゴールドは握りこぶしを両手で作りサカキを睨みつける。その表情は怒りが現れている。
「結局はアンタもさっきのバアさんと一緒じゃねーか・・・。そうやってアンタらの身勝手で!!」
「だったらお前はオレのしたいことを達成してくれる手駒になってくれるか? お前の先輩のようにな。」
見下すようにゴールドと対話するサカキ。最後の一言に我を忘れそうになるゴールドをシルバーとクリスが必死に静止する。
「とにかく、ヤツと此処で対峙するのは得策ではないだろう。迂闊に力を解放されたら、崩壊に巻き込まれてペシャンコだ。」
事実、壁や支柱のひびは大きくなっている。あまり此処で大きな戦いが発生したら、タワーは崩れるだろう。
しかも、此処は地下一階。救出さえも困難な状況で此処にいたら、まず命の保障は無いだろう。
シルバーとクリスはゴールドを掴んで扉を目指す。サカキとポケモンたちはキメリアンと睨みあいながら背を見せずに後退する。
それに対して、キメリアンは左腕の砲塔をサカキとポケモンたちに向けた。
(“エアロブラスト”!!)
左腕の砲塔から、無色透明の空気弾が発射される。その威力は、ルギアの比ではない。
「ック!!!」
床に直撃した空気弾はその衝撃波で、サカキとポケモンたち、そして、ゴールドたちを壁にまで吹き飛ばした。
直撃点となった床は抉り取られたように大きな穴を開けている。
(フェフェフェ・・・。これで、まだ本気じゃないってんだから・・・すごいねぇ・・・フェフェフェ。)
壁に叩きつけられて朦朧とする意識の中で、あの老婆の声が聞こええる。
(キクコが来たってことは、アイツが来たか・・・。)
立ち上がり、声がしたと思う方向を向くとそこには、闇の中で笑う老婆、キクコの姿があった。
しかし、サカキが期待していた、レッドの姿は無い。よくよく目を凝らすと、キクコの衣服が赤く染まっていることが分かる。
(愚かな人間が増えたか・・・。まとめて消してあげよう・・・。)
キメリアンは両腕の砲塔を構える。右腕の射線上にはサカキが、左腕の射線上にはキクコがいる。
「ガキども、さっさと行け。邪魔だ。」
ピクピクと手や、足、膝を震わせながらゴールドたちは立ち上がると扉を目指して歩き出す。それを横目で確認すると、サカキはボールからサイドンを呼び出した。
(ブラックに何かあったか・・・?まさか、イエローにやられたのか・・・?
とにかくコイツの力は誰にも渡さん・・・。最悪でもオレの手中に収めねえとな。全計画が台無しだ・・・。)
扉が閉まる音が聞こえる。それと同時にサカキはサイドンに攻撃を命じながら距離をとって射線上から離れる。
キクコも同じようにゲンガーをボールから呼び出して、同じように距離をとって攻撃を命じる。
(悪いねぇサカキ・・・。レッドがいない今、アイツを手に入れるにはアンタが持っているものが必要だもんでねぇ!!)
サイドンの攻撃対象と、ゲンガーの攻撃対象は同じだ。それは、サイドンとゲンガー!!
(愚かな人間よ・・・。消えろ!!!)
両腕の砲塔から攻撃が放たれる。左腕からは“せいなるほのお”、右腕からは“エアロブラスト”が放たれる。
射線上から距離をとったにしても、その攻撃から放たれる熱波と衝撃波がサカキとキクコを襲う。
また、本命の攻撃そのものは壁や支柱を傷つけていく。特に、“エアロブラスト”の一撃は壁を貫き、大きな穴を開けた。
「「・・・ッ!!」」
熱波や衝撃波からのダメージを何とか耐えたサカキとキクコは、新たなボールを手にとってボールからポケモンを呼び出す。
「ダグトリオ!!」
「クロバット!!」
呼び出された2匹の攻撃対象は、同じである。
「“きりさく”!!」
「“ヘドロばくだん”!!」
2匹の攻撃はキメリアンを狙う。圧縮された毒性の強い球体がキメリアンの顔面を捉えると、足元を鋭い爪で切り裂かれる。
(鬱陶しい・・・。愚かな人間どもの味方をするか・・・。邪魔だ!!!)
2匹のポケモンに対して両腕の砲塔が向けられる。今度は砲塔の発射口付近にエネルギーの集束する。
(“はかいこうせん”!!!)
砲塔から強烈な光を伴って光線が放たれる。しかし、2匹は持ち前の素早さでその攻撃を回避すると、再び同じ攻撃を繰り返す。
その度に放たれた光線が壁や支柱を破壊し、傷つける。その間も、サイドンとゲンガーは取っ組み合い互いに技を繰り出し続ける。
(潮時か・・・? この場でババアを葬っておきたかったが、時間が無いな・・・外でケリをつけるか。)
サカキはサイドンとダグトリオに合図を出すと、2匹は床に穴を掘って姿を消した。その間にサカキはボスゴドラをボールから呼び出して地中へと姿を消した。
(サカキめ・・・。アイツがいないならこのポケモンを抑える術はない。アタシも一時退却とするかねぇ・・・。)
キクコの身体が闇に包まれだすとその姿はポケモン達と共に消えていた。
(建物が崩壊するか・・・。愚かな人間も外へと出たようだ・・・。いいだろう、外にいる全てのトレーナーも人間もまとめて根絶してやる・・・。)
キメリアンは両腕の砲塔を結合すると一つの大きな砲塔へと変化させた。
(“はかいこうせん”!!!)
大きな砲塔から極太の光線が放たれる。光線は斜めに天井と、壁との境目に直撃する。
直撃した場所には、大きな大きなトンネルが造られている。そしてそれは外への道となった。
一方、ゴールドたちは先ほどは見つけることも出来なかった階段を発見し、そこから一階へと上る。
上っている間、聞こえてくるのは激しい爆音と崩壊音である。
またその影響なのだろう、天井からは電灯や天井の破片が落ちてきて床を汚している。
3人が階段を上がると、正面ロビーへと出た。そこには、十数人のロケット団員と赤地のスーツの男が倒れていた。
それらを助けようと思ったが、焦げて壊れている玄関から見えるルビーとミツルの姿を見た瞬間、その暇は無いとわかった。
「RURU、おつかれ・・・。もうボールに戻って・・・。」
「MIMI・・・・・・。」
2人のポケモンは戦闘不能となり、バタリとその場に倒れこんだ。
目の前には、数十人のロケット団員が各々ポケモンを展開している。ぱっと見ただけで、ルビーたちの目の前には30を超えるポケモンたちが居る。
マタドガス、ハブネーク、アーボック、ウツボット、ニャース・・・・・・。悪そうなポケモンが群れを成している。
そして、ルビーたちの後には気絶し倒れているグリーン、ブルー、サファイアの3人が・・・。
「シルバー、クリス、行くぞ!!!」
3人はボールからポケモンを呼び出すとルビーたちの援護に入る。しかし、こちらが攻撃を仕掛けると、何方向からも攻撃が飛んでくる。
それの攻撃を必死に捌くために、3人は全てのポケモンをボールから解放する。正面入り口は大混戦となった。
(あれ・・・・・・。イエローさんが居ない・・・・・・。)
混戦の中、イエローがいないことに気がついたクリス。一時的に、攻撃をポケモンたちの判断に任せて気絶しているグリーンとブルーに声を掛ける。
「グリーンさん、ブルーさん、イエロー、イエローさんは??イエローさんは何処にいるんですか?!」
気絶している2人の肩や、頬を叩いて2人を起こそうとするが、2人に反応は無い。
あまり時間を取ることはできない。本来なら、即座にポケモンたちに命令を下さないと彼等は混乱してしまうかもしれない。
今、手持ちのポケモンたちが混乱してしまったら、ゴールドとシルバーの足を引っぱりかねない。その結果、大怪我でもしたら・・・。
とにかくクリスは気絶する2人を起こそうと、何度も何度も頬をぶってみる。
「グリーンさん、ブルーさん!!!」
感情がこもればこもるほど、頬をぶつ力は強くなっていく。いつしか、2人の頬は真っ赤になっている。
「・・・い・・・た・・・。」
「ブルーさん!!」
「・・・・う・・・うぅ・・・。」
「グリーンさん!!」
こうなったら、とクリスが秘伝の足技を繰り出そうとした瞬間、グリーンとブルーは起き上がりクリスを静止する。
「・・・クリス、落ち着いて・・・。12回もおまけをもらったから、頭はスッキリしているわ・・・。」
「・・・第一、足で何するつもりだ・・・。」
真赤に顔を腫らした2人はとにかくクリスを落ち着けた。落ち着いたクリスは2人に問う。
「イエローさんは、イエローさんは何処にいるんですか?!」
驚いたのはグリーンだけだった。グリーンはすぐさま周りを見渡すとイエローの姿が無いことに気がついた。
「・・・・・・レッドに負けた後、一体、何が起きた・・・?」
グリーンは片手で顔を覆って眼を瞑って記憶をたどるが、覚えているのはミュウツーの強烈な念動によって身体に凄まじい圧力をかけられたことまでだ。
混乱するグリーンに対して、ブルーはニヤリと笑みを浮かべる。
「イエローは今、最上階でレッドと戦っているハズよ。」
ブルーの一言に仲間達は驚いた。戦闘中だったゴールドとシルバーも一瞬気が抜けるほどであった。
「・・・・・・。」
口をポカーンと開けて絶句するグリーン。彼のあの美形な顔がアホ面になっている。世の女性が見たら、彼に対する評価が変わるだろう。
「・・・・・・う、う、うそ、嘘です、よね???」
クリスも現実が受け止められず、驚いて目が点になっている。それもそうだろう
いくらカントー四天王事件を解決に導いた程の実力を持っているとはいえ、バトルが嫌いで、なにより、傷つけることが嫌いなイエローである。
それが、バトルの鬼、尚且つ、今や他者を傷つけることにためらいの無いレッドと戦うなんてまず考えられない。
レッドに並ぶほどの実力者であるグリーンを此処までボロボロにした実力者である。
「ブ、ブ、ブ、ブルーさん?!な、何、考えているんですか?! 相手はレッド、ううん、ブラックなんですよ・・・勝ち目なんて・・・?!」
「勝たせる気なんて無いわ・・・。取り戻しに行かせたの。」
グリーンもクリスに便乗して、ブルーを問い詰めようと思ったが、ブルーの言葉を聴いてハッと気付いた。
「・・・・・・成程な。お前は、気付いていたんだな。レッドの状態について。」
「ちょっと、親分さんとお話したからね・・・。おかげで、イッ、・・・・・・肋骨がバキバキだけど・・・。」
ブルーは話すのも辛そうだったので、グリーンが手を差し伸べようとしたが、グリーンの全身にも激痛が走る。
その激痛をなんとか耐えて、ブルーと背中合わせで座る。こうすることで彼女を支えようと思ったのだろう。
「・・・あの馬鹿、イエローにも同じ目を合わせたら本気でぶん殴るか・・・。」
「そうね、・・・・・その時は、アタシも混ぜ・・・てね・・・。」
「ちょっと、勝手にお2人で盛り上がらないでください!! レッドさんに何が起きてるんですか?!」
2人の会話に割って入ると、2人は同じような表情でクリスに言う。
「アイツのことはイエローに任せておけばいいわ。イエローのことは心配しないで。とにかく、現在の状況を説明して。」
「俺たちは、俺たちに出来ることをすればいい・・・。身体は動かないが、自分の身を守ることくらいは何とかできる・・・。
クリス、お前はルビーとミツル、そしてサファイアを守ってやれ・・・・・・。」
2人は笑顔を浮かべて、クリスを元気付けるとクリスから、現状の説明を受ける。説明を受けた2人は、始め御伽噺のように感じたが、真剣な表情で話すクリスを見て
それが事実であると認識せざるを得なかった。大方の説明を受けると、グリーンはクリスを速く行くように急かした。
クリスはコクリと頷いて急かしを受け入れると、心配そうにな表情をしたが、手持ちたちを呼び戻してルビーたちの防衛に向かう。
「ところで、アンタ・・・。動ける手持ちなんているの・・・・・・??」
「・・・・・・お前と同じだ・・・。」
2人は無言で左手と右手を重ねる。そして重ねあった手を握り締めあうと、もう片方の腕でボールを掴んでポケモンを呼び出す。
「アラ・・・。奇遇ね・・・・・・。」
「・・・・・・コイツしか思い浮かばなかったからな・・・。」
ボールから呼び出されたのは、片方の翼がへし折れた、ボロボロで片目も開かないリザードンと、
腹側、そして背中側の両面にひびがはいった甲羅を身にまとい、片方の水砲の先端が欠けたカメックスだ。
もうすでに、お互いの全てのポケモンは戦闘不能状態だ。その中でも、この2匹は主人を守ろうとする意思が強かったのだろう、
残り少ない気力を振り絞り、2匹は主人達の前に立つ。 そう、いつしか2人を取り囲んでいたロケット団員から守るために・・・。
「怪我して動けない美女に、よってたかって・・・・・・。ホント、何考えてんだか・・・・・・。」
「・・・・・・頼むぞ、・・・リザードン!!!」
リザードンと、カメックスの咆哮が響き渡った・・・。
各自、ロケット団員と交戦し始めて数分たった。
ルビーたちを守る、クリス。 クリスを守るゴールドとシルバー。 そして、グリーンとブルー。
そこへ大地を割って現れたのは、サカキとボスゴドラであった。サカキとボスゴドラはクリスとルビーたちの近くに現れた。
そして、時を同じくしてタワーの影にキクコが姿を現した。といっても、グリーンとブルーの近くなのだが。
「天候や地形を利用すればアイツは倒せる・・・。そして弱体化したところを、頂く!!!」
さらに、ダグトリオとサイドンが地中から姿を現した。それと同時に、キクコと共に姿を消していた、ゲンガーとクロバットが突如、影から姿を現した。
「フェーフェフェフェ!!!サカキ、マスターボールは頂くよ!!!」
ゲンガーとクロバットは真っ直ぐサカキの元へと向かう。それに対してサイドンとダグトリオが応戦に向かう。
取っ組み合いになるゲンガーとサイドン、ダグトリオは“どろかけ”でクロバットを狙うが、いとも簡単に避けられてしまう。
「クロバット、“あやしいひかり”!!!」
クロバットは口を大きく開けて、強烈な光を発光する。その光をまともに見てしまったサカキは脳に強烈な光のイメージを焼き付けられて錯乱してしまう。
サカキを守るように構えていたボスゴドラもその光を見てしまい、主人同様、錯乱状態だ。
その隙に、クロバットはサカキの懐に取り付くとそこからマスターボールを取り出すと、ボールを口に咥えて主人の元へと帰ろうとした。その瞬間、
地中から突如、強烈な閃光が放たれ光の柱が形成された。光の柱に直撃してしまったクロバットはフッと姿が消えてしまった。いや、消滅してしまった。
光の柱は、その後も数秒間発生したままだった。そして光の柱にその場に居た全ての人が目を奪われていると、辺りは静寂に包まれた・・・。
静寂の中で耳をすますと、光の柱の発生地点に出来た大きな穴からガシャリ、ガシャリと音が聞こえだした。
その音は徐々に大きくなり、この場所へと近づいてきていることが分かる。その音に、全ての人とポケモンが動きを止めていた。
(愚かな人間どもよ・・・。・・・・・・始まりだ・・・。)
その場にいる全てのものへ送られる思念波。思念波の主は、大地を踏みしめると、とうとう外の世界へと解放された。
「・・・あれが、キメリアンか。」
グリーンは呟いた。その戦闘力に驚きを隠すことが出来ないのか、無感情な声で呟いた。
キメリアンは結合していた砲塔を解除して両腕とも砲塔の状態にする。そしてその砲塔でサカキとキクコを狙う。
2人が対極の位置に居たため、両腕を思い切り広げて狙う。そして、砲塔の先端部にエネルギーの集束現象が起こりは始めた・・・。
攻撃の発射直前、キクコはマスターボールの消滅によって狂ってしまっていた計画に憤りを感じていた。
「まったく、どうして・・・。それもこれも、レッドが死んで使い物にならなくなるから悪い・・・。アタシの計画が完璧に崩れたよ・・・。」
その声は、はっきりとグリーンとブルー、そして、ゴールドとシルバーの耳に聞こえていた。
「「「「なっ・・・・・・!!!」」」」
よく見ると、キクコの衣服は血でべっとりだ。そして、いつもの杖にも血痕が確認できる。
驚愕のグリーンたちにかまうことなく、キメリアンは両腕から“はかいこうせん”を放つ。
閃光は真っ直ぐにサカキとキクコに向かって行く。その間に、光線に接触してしまったポケモンや人間が吹き飛ばされたりケガをしたりしている。
しかし、その攻撃をいとも容易く回避する2人。そして、すぐさま反撃に出る。
「ゲンガー、キメリアンをやっちまいな!!!アタシの手にはいらないなら、そんな物はいらないよ!!!」
「失敗作に用は無い・・・。サイドン、ダグトリオ、キメリアンをやるぞ。 造り方は分かっているからな・・・。」
(私が操れないと解ると、今度は私を殺すか・・・。いいだろう、やってみろ!!!)
キメリアンに襲いかかる3匹のポケモン。だが、その攻撃が命中する前に何か念のようなもので動きを止められる。
そして、身体の自由は奪われメキメキと音がし始める。
「・・・ッ!!!“サイコブースト”か!!!」
サカキの絶叫の後、放たれた強烈な念動がその場に居た全てのポケモンとトレーナーを吹き飛ばした。もちろん、グリーンたちも例外ではない。
キメリアンよりも前に存在していたビルや建築物の全てのガラスは砕け散り外壁全てに大きなひびが入る。
しかし、その攻撃のダメージによるショックよりも、レッドが死んだというショックのほうが大きかった・・・・・・。
「キクコ・・・本当なのか・・・さっきの・・・話は・・・。」
辛うじて発声できた声でグリーンはキクコに問う。もちろん、全員吹き飛ばされたショックで倒れている。
「・・・フェフェフェ・・・あぁ・・・事故だったけどねぇ・・・・・・イエローを殺そうと思ったら・・・レッドが庇いやがるから・・・
刺しちまったよ・・・杖の仕込み刀でねぇ・・・フェフェフェ・・・・・・。」
キクコの声に力は無かった。何かあきらめを感じさせるような声だ。もとより、相当なダメージを受けたということも考えられるが。
その返答に、身体の痛みが原因でなく涙がこぼれた。
「ううっ・・・う・・・・っく・・・うぅううう・・・・・・。」
グリーンは叫びたいのに、叫ぶ力も無かった。もう、何も出来なかった。 いや、強いて言うなら泣くことと、自分を責めることなら出来た。
その会話を聞いた、他の仲間達も、同じく何も出来なかった。
もう、希望なんて見えなかった。
第25話へ・・・