憎しみと怒りが渦巻く中で・・・目覚める魔獣・・・。
ブラックとイエローがお互いに想いを伝え合おうと戦う中、
地下闘技場で目覚めつつある邪悪な鼓動
鼓動は形を成し
ゴールドたちを追い詰める。
憎悪と怒りが闘技場を満たしていく時
狂気の宴は意外な展開を迎える・・・・・・。
PAS 第22話 合成獣
ポケモン・・・・・・。
非常に純粋な存在である彼らは、トレーナーと呼ばれる人間と共に暮らし、触れ合うことにより様々な変化を見せる。
悪にも染まるし、正義の力を揮うかもしれない。今、最上階で戦っている人物の言葉を借りるならば
「正しい、優しい気持ちで育てれば、いつまでも友だちでいてくれる。・・・・」
そんな彼等を弄ぶ人間に、誕生する意思があった・・・・・・。
バッジの力を取り込み体長が5メートル、体格も3倍ほどになったデオキシス・・・。此処、地下闘技場を禍々しきプレッシャーが包み込む。
巨大化は収まったようで、これ以上大きくなるような様子は見られない。巨大化した以外の変化点といえば、形態が標準型になっているところであろうか。
老婆の奇妙な笑い声も、ゴールドたちの声や会話もいつしか途切れ、静寂が訪れる・・・。
禍々しいプレッシャーは、間違いなくあの巨大化したデオキシスから放たれているのだが、デオキシスはピクリとも動かない。
「・・・・・・何故、動かない?アタシの技量じゃ命令は聞けないって言うのかい?!」
老婆は一人騒ぐ。その声に反応したのだろうか、巨大化したデオキシスは静かにその大きくなった右腕を天に向ける。
その大きさの為か、ゆっくりとした動きを見せたデオキシスに対して、シルバーたちは即座にポケモンたちに迎撃姿勢をとらせた。
雰囲気からゴールドは戦闘不能になった自分の手持ちをボールに回収すると、グリーンとサファイアをつれて距離をとった。
ゴールドが距離をとり終わると、それを待ったいたと言わんばかりにバトルは始まった・・・。
天に向けられていた右腕がゆっくりと下りてくると、手のひらがちょうどシルバーたちの上に来た。
一瞬で危険と判断する面々、各自バラバラに散って手のひらから距離をとる。
距離をとった直後、巨大化デオキシスの全身の色が変化し始める・・・。真っ赤、炎を思わせるような赤だ。
そして、色が変わると手のひらにエネルギーの収縮が見え始める。そしてしばらくするとそのエネルギーを一気に放った。
手のひらから放たれたものは、烈火。その威力は凄まじく、直撃した部分の床を一気に吹き飛ばした。吹き飛ばされた箇所は大きな穴が開いている。
そして、開けられた穴からはプスプスと物が焼ける音と、異様な熱が放たれている。 陽炎が見えるほどだ。
その戦慄の光景に、シルバーたちは放たれた烈火の熱さとは対照的に、凍り付いている。
「・・・フェフェフェ・・・・完成した、完成したぞ・・・。コレだ、コレが、アタシの欲した力だ!!フェーーーフェフェフェ!!!」
老婆の狂気に満ちた笑い声にシルバーたちは純粋に恐怖を覚えた。しかし、そんなシルバーたちに構うことなく巨大化デオキシスはゆっくりと手をクリスの前に持っていく。
再び、エネルギーの収縮が見え始める。しかし、目の前にいる純粋な恐怖の対象に竦み動くことのできないクリス・・・。
「ク、クリス!!!避けろ!!!」
外野で見守っていたゴールドの絶叫を聞いて、何とか意識を持ち直すクリス。自分の上空で振りかざされた手から逃れるようにメガぴょんの背に乗ると一気に走り出す。
クリスは巨大化デオキシスの周りをぐるぐると走って逃げる。それに対して、巨大化デオキシスは振りかざした手でクリスを追い回す。
「シルバー、今よ!!」
クリスの声を聞いたシルバーはギャラドスに攻撃を命じる。
「ギャラドス、“ハイドロポンプ”!!!」
シルバーの赤い色をした、色違いギャラドスは口から猛烈な勢いをした水流を吐き出すと、巨大化デオキシスの身体を狙う。
「ルビーくん、僕達も!!」
「OK!!」
シルバーの攻撃に続いて、ルビーとミツルも攻撃を命じる。
「RURU、“サイコキネシス”!!」
「MIMI、“たつまき”!!」
それぞれ、別の位置、別の方向から巨大化デオキシスに攻撃を仕掛ける。それぞれの攻撃がほぼ同時に巨大化デオキシスを捉えると、巨大化デオキシスは
クリスを追うのを止めて、シルバーのほうに振り向いた。
(・・・!!!)
振り向いた巨大化デオキシスと眼があってしまうシルバー。そのプレッシャーに気圧されてしまう。
シルバーとギャラドスに手を振りかざすと、また身体の色が変化し始めた・・・。今度は、黄色をしている。ピカチュウを連想させるような黄色だ。
向けられた手にバチリ、バチリと帯電現象が見られる。 どうやら、雷を放つようだ。
帯電していた電気が、一点に“じゅうでん”される。集束される電気エネルギーはいつしか球体を形成し始める。その行動から次に放たれる技が分かる。
「・・・“でんじほう”・・・!!」
シルバーは自身に向けられた狂気から逃れるために、ギャラドスをボールに戻すと手から走って逃げる。
巨大化デオキシスは“でんじほう”を維持したまま手だけでシルバーを追いかける。その間にもルビーとミツルの攻撃は続く。
「ロゼリア、キミも頼む。“マジカルリーフ”!!」
「コンディションは最悪だけど、頼むよCOCO・・・。“ねこのて”!!」
ルビーとミツルはさらにボールからポケモンを呼び出して、攻撃に参加させる。しかし、先ほどまで戦闘不能だった身体では思うように攻撃できない。
それ以前に、攻撃そのものがダメージを与えているのか不明である。確実に身体を捉えている攻撃もあるのだが、
その攻撃に対して巨大化デオキシスはピクリとも反応を見せない。いや、一度だけ反応を見せていた・・・。
(そういえば、何で追い回される対象が私からシルバーに変わったのかしら・・・?)
メガぴょんの背に乗って、ふと考えるクリス。 もちろんその間にも、シルバーは逃げ続けるし、ルビーとミツルの攻撃は続いている。
「・・・そんな小僧一人に構わずに一気に吹き飛ばしちまいな!!」
老婆の声は部屋全体に聞こえるが、巨大化デオキシスはシルバーだけを追い掛け回す。
「ック、生みの親であるアタシの言うことを聞けないって言うのかい?!生体兵器の分際で生意気な!!」
“生体兵器”、この一言が老婆の口から話された瞬間、巨大化デオキシスはシルバーを追い回すのを止めた。
それと同時に維持していた“でんじほう”のエネルギーを空気中に散らしてしまった。エネルギーを散らすと、身体の色は元のデオキシスの色に戻った。
((こいつが、ダイゴさんの言っていたホウエンにも起こる影響の元凶・・・。))
老婆の話した言葉は、巨大化デオキシスだけでなくルビーとミツルにも影響を与えていた。そして、例外無くゴールドたちジョウト組にも影響を与える。
「・・・・・・“生体兵器”・・・・・・??」
シルバーはぼそりと呟く。
「どういうことですか、説明してください・・・!!」
クリスは老婆に対して叫ぶ。
「フェフェフェ、どうもこうも無い・・・。その言葉どうりさ、こいつはお前達の元仲間が扱う予定の全国支配専用の兵器さ・・・。
コイツの力は伝説のポケモンだって目じゃない、ミュウツー以来の戦うための兵器さ。フェフェフェ・・・・・・。」
老婆は奇妙な笑い声を上げながら、話を続けようとしたが、ゴールドはある言葉に大きく反応した。
「“兵器”・・・だと?」
ゴールドは外野から、老婆に話す。 ゴールドの表情に驚きと混乱が同時に現れる。
「フェフェフェ・・・そうだ、心を待たざるから兵器・・・。なにか語弊が在ったかい?フェフェフェ・・・。
そういえば、お前達の元仲間も心を封じてやったから、実質、兵器なのかも知れないねぇ。フェフェフェフェフェ・・・。」
ゴールドの全身を恐怖と狂気からの寒気が襲うが、それも一瞬のこと。即座に、その寒気は怒りと憎悪の熱さに包まれる。
「ざけんなぁーーーーーーーーー!!!」
怒りの絶叫と共に、ゴールドはボールから自分のポケモンたちを全て呼び出した。
全員、戦闘不能となっているはずなのだが、ゴールドの想いに呼応して全員、力を取り戻した。
「フェフェフェ・・・仲間を利用されたことがそんなにも悔しいかい?序でにいいことを教えてやるよ、アイツはねぇ心は封じてあっても記憶は封じていないんでねぇ・・・
仮に、心が開放されても今まで自分のしてきたことに一生苦しみ続けるのさ、フェーーーフェフェフェ!!!」
狂気に満ちた老婆の笑い声に、シルバーもクリスゴールドと同じ感情に襲われる。
「・・・外道が・・・!!」
「最悪・・・。絶対に許せない!!」
シルバーとクリスも全ての手持ちをボールから開放した。彼らもまた、主人の想いに呼応して力を取り戻す・・・。
ルビーとミツルは、その雰囲気に恐怖を覚えた。憎しみ、怒り、悲しみ、恐怖・・・。数々の負の感情が部屋全体を包み込んでいた。
老婆に突っ込んでいく、ジョウト組。老婆は、巨大化デオキシスの影に隠れる。
「フェフェフェ・・・。コイツは兵器だからねぇ・・・。純粋な敵意に対しては容赦なく力を揮うよ!!フェーーフェフェフェ!!!」
その言葉どうり、巨大化デオキシスは攻撃形態に姿を変えると、その巨体を活かしてゴールドたちのポケモンをまとめて、“ばかぢから”で豪快になぎ払う。
攻撃を受けたポケモンたちは、壁にまで吹き飛ばされる。そして、壁に激突すると壁にひびをつくる・・・。
「「「まだだ!!!」」」
ジョウト組の声が重なると、彼らのポケモンたちは立ち上がり再び突っ込んでいく・・・!!!
「フェーーーフェフェフェ!!!何度来ても同じことだ、勝てるはずが無いんだよ!!!」
老婆の元へ行こうとするポケモンに、巨大化デオキシスは立ちふさがり“ばかぢから”でなぎ払おうとした。
「2度も3度も、同じ手はくわねぇっつーの!!!」
ゴールドの声と共に、彼らのポケモンたちが同時に遠距離からの攻撃を仕掛ける。
放たれる、水流、深緑の光、烈火・・・・・・。 それらの力と巨大化デオキシスの腕がぶつかり合うと、激しい相殺の衝撃と光が発生する。
「これだけの力だ、太刀打ちできまい!!!」
シルバーの言葉どうり、巨大化デオキシスは力を相殺しきれず攻撃を全身に受けると、巨体は床に大きな音を立て倒れた。
倒れる寸前で巨大化デオキシスの影から逃れる老婆、それをゴールドたちは見逃さなかった。
「逃がさない・・・、アナタだけは!!!」
クリスの叫びと同時に、ポケモンたちは同時に老婆へその攻撃の手を向ける。
老婆に向けて放たれる攻撃は、突如出現した“ミラーコート”で弾き返された。反射された攻撃が、ゴールドたちを襲う。
「フェフェフェ・・・その程度で兵器は壊れはしないよ・・・。だが、貴重な物に傷をつけた罪は重い!!!」
いつの間にか防御形態に姿を変えていた巨大化デオキシスは、老婆への“ミラーコート”を解除すると再びゴールドたちの前に立ちふさがる。
「うっぷ・・・・・・。」
部屋全体を包み込む負の感情がさらに増大する。醜すぎる人間の感情にミツルは吐き気を覚える。
「ミツルくん・・・。この戦いは続けていいのかな・・・?」
ルビーの疑問は解消されること無く、目の前ではゴールドたちが巨大化デオキシスと戦いを繰り広げる。
正義、悪、関係無くただこの部屋全体を包み込む純粋な怒り、憎悪、狂気・・・。この雰囲気に感化されて、ゴールドたちのポケモンも禍々しき雰囲気を放っている。
閉鎖的な空間が、怒りや憎しみを凝縮し全てを見失わせる。いつしか本来の目的さえも忘れ、倒すために、殺すために動き戦う。
「フンッ、コレはまたとんでもない雰囲気だ・・・。」
ブルーを肩に俵を持つような形で運んできた、黒いスーツの男が闘技場の扉から姿を現した。
黒いスーツの男はグリーンとサファイアが倒れている場所を発見すると、そこにブルーを投げた。投げられたブルーは受身を取ることも無くそのまま床に落ちる。
((あの男は・・・!!))
その様子を見ていたルビーとミツルは、見覚えのある黒いスーツの男に警戒する。その様子に気がついた黒いスーツの男は、目の前で起きている狂気の戦いは無視して
ルビーとミツルのほうを見ると、ニヤリと笑みを浮かべるとゆっくりと歩いて2人に接近する。
「ルビーくん、あの男に見覚えあるよね?」
「もちろん・・・思い出したくも無いけどね。」
2人は警戒を迎撃に変えて、ポケモンたちを前に出させる。その様子に黒いスーツの男は足を止めて2人に話しかける。
「敵意と憎悪丸出しの戦いは、アイツ等のように憎しみや怒りに取り込まれてわれを見失わせる・・・。お前達もアイツ等のようになりたいのか?」
ゴールドたちを指差して話す男に諭されて、とりあえず2人はポケモンたちの迎撃を解かせ警戒させる。
「安心しろ・・・。お前達に直接手を下す気は無い。少々、あのババアに要があってな。」
そういい残すと黒いスーツの男は胸に赤い「R」のエンブレムを輝かせながら老婆の元へ向かう。2人はそれをただ見送るしかできなかった。
「今のヤツの形態では速さが無い!!撹乱して攻撃する!!!」
シルバーの声を聞いたゴールドとクリスは、各々素早いポケモンたちで撹乱しながら攻撃させる。
「エーたろう!!」
「ウインぴょん!!」
2人のポケモンがものすごい速さで、巨大化デオキシスを圧倒、撹乱しながらちまちまと攻撃を加える。
「・・・切札だ、マニューラ!!!」
シルバーの影からニューラーの進化系マニューラが姿を現すと、2匹の攻撃に参加する。
(アイツがいるのか・・・・・・。)
黒いスーツの男は自分の息子の姿を横目で確認したが、すぐに視線をはずし老婆の元へ向かう。
「おい、例の物だ・・・。増幅器を貸せ。」
「フェフェフェ・・・。いいのかい?お前の息子がいるようだが・・・?完成品にしてしまって・・・フェフェフェ・・・。」
その一言を聞いた黒いスーツの男は、非常に鋭い目つきで老婆を睨む。老婆はその視線から感じられる殺意に恐怖を覚え、無言でバッジエネルギー増幅器を渡した。
黒いスーツの男は、おもむろに懐からある箱を取り出した。そして、その箱を開けると、中から2枚の綺麗な羽を取り出した・・・。
「“にじいろのはね”、“ぎんいろのはね”か・・・。押収しておいて正解だったな・・・。」
すでに失われていたと思われていたこの2枚の羽は、仮面の男事件の時に抜け落ちた羽だ。偶然その羽を拾っていた民間人からそれを押収したものである。
増幅器の中心部に羽を押し込むと、増幅器のスイッチを入れた。
「フェフェフェ・・・いよいよ、できちまうんだねぇ・・・。フェフェフェ・・・。」
スイッチの入った増幅器は、2枚の羽を解析し始める。電子音が何度と鳴り響く。
(しかし、この憎悪と怒りが渦巻く中でどんなものかな・・・。)
増幅器から光が放たれると、その光は真っ直ぐに巨大化デオキシスの身体を捉えた。光は巨大化デオキシスを包み込むと、巨大化デオキシスはその身体を縮め始めた。
その光景にゴールドたちも、ルビーとミツルも、老婆と黒いスーツの男は釘付けになった。
光は次第に強くなりこの部屋にいる全ての視界を奪う。光の中、巨大化デオキシスは進化し始めた・・・。
(愚かな生命・・・。憎しみと怒りに感情を支配されて全てを見失う・・・。守られている現実に気がつけず・・・。私を“兵器”と呼ぶ・・・。)
突如、部屋にいた全員の頭の中に言葉が伝えられる。俗に言うテレパシーのようなものだろうか。
(力に固執し戦う愚かな生命・・・。力のために私を創り出したというのなら・・・。その罪は大きい・・・。)
静かで、落ち着いた声として脳は理解しているようだ。だが、その発信者は分からない。だれも聞き覚えの無い声だ。
いつしか、光は収まり全員に視界が戻る。目を開けてすぐには周りが見えないが、しばらくすると見え始めてきた。
巨大化したデオキシスのいた場所には、別のポケモンがいる。大きさは大人一人くらいだ。
本来、オレンジ色であるはずの部分は紫色に変わっており緑色の部分も若干黒まじりのダークな緑色に変わっている。
姿はまるで、古代の神話に出てくるような悪魔のようだ。
「アレが、完成品か・・・。」
黒いスーツの男がぼそりと呟くと、男の頭の中に再び声が聞こえる。
(サカキ・・・。私を創り出した愚かな生命の一つ・・・。目的は知らないが力に取り付かれる愚かな生命に変わりない・・・。)
「フン、お前か・・・。ブラックがミュウツーの声を聞けると言っていたが、こういうことか・・・。」
(ブラック・・・。私を制御するためだけの存在・・・。マサラの者・・・。どうせ、愚かな生命だろう・・・。)
巨大化デオキシスの進化形態は、周りを見渡す。 そして、ゴールドたちに目を向ける。
(怒りと憎しみに取り込まれた愚かな生命・・・。人間は感情的過ぎる・・・。かりそめの理性では本能を隠すことはできない・・・。)
「あのポケモン、こっち見てるのか??」
ゴールドは向けられている視線に戸惑う。クリスとシルバーは一応手持ちたちに警戒態勢をとらせる。
(なんにせよ私の怒りは収まることは無い・・・。私を“兵器”と呼び・・・。傷つけ・・・。ポケモンたちを憎しみに感化させるとは・・・。
人間は愚かな生物だ・・・。私を生み出した者よ・・・。この力で私は・・・・・・!!!)
巨大化デオキシスの進化形態は、片方の腕をゴールドたちに、もう片方をサカキたちに向けた。そして、テレパシーで全員に語りかける。
(愚かな人間達よ聞け・・・。わが名は合成ポケモン キメリアン・・・。私は全ての人間に罰を与える・・・。人間に授かった力で・・・。
この世界から人間を・・・。根絶する・・・!!!)
「フェフェフェ・・・。そんな強がりをいくら言おうと無駄さ、フェフェフェ・・・。お前はポケモンである以上、主人の命令に絶対服従なんだよ!!
フェフェフェ、ボールに戻してしまえば、お前などいくらでも改造できるわ!!!フェーーフェフェフェ!!!」
そういうとキクコは元々デオキシスが入っていたボールを取り出すと、ボールにキメリアンを呼び戻そうとした。が、
(“でんげきは”!!!)
向けられていた手から、雷の波動を放ちキクコが手にしていたハイパーボールを手から落とさせた。
落ちたボールを拾おうとすると、落ちたハイパーボールにさらに“でんげきは”を放ちハイパーボールを破壊した。
(これで私を縛るものはいない・・・。愚かな人間達よ・・・。私が根絶しよう・・・。)
「キクコ、上に言ってブラックを呼んで来い・・・。こうなった時のための対処をアイツは知っているからな・・・。」
サカキがキクコに命じると、キクコは闇にまぎれて姿を消そうとした。
(私を“兵器”として生み出した者よ・・・。お前を逃がしはしない・・・!!!)
キクコに対して攻撃を仕掛けようとするキメリアンの前に、サカキとサイドンが立ちふさがった。
「飼い犬に手をかまれるとはな・・・。」
サカキが呟くとその間にキクコは姿を消した。キクコを逃がしたことによりキメリアンはその攻撃対象をサカキに移す。
(私は飼われた覚えは無い・・・。そしてこれからも誰の支配下にも置かれない・・・。その前に人間を根絶する・・・。)
睨みあうサカキとキメリアン。サイドンは角をグルグルと高速で回転させてその回転音でキメリアンを威嚇する。
キメリアンは今度はゴールドたちに思念波を送る。
(愚かな人間・・・。憎しみに身を任せ、ポケモンたちを傷つける・・・。私はトレーナー全てを否定する・・・。故に、お前達も否定する・・・。)
ゴールドたちに向けられていた手が帯電現象を見せる。パチ、パチと電気が満ちてきている証拠だ。
「憎しみ・・怒り・・・?オレたちがか・・・??」
いつの間にか、失われていた理性。本能のままに敵対するものを攻撃しようとする原始からの意思。
だが、今それに気付こうと後の祭りだ。 キメリアンは、全ての人間をその力で根絶しようというのだ。
「オレらの責任なのか・・・??・・・オレはただ、あの婆さんが人でなしだから・・・・・・。」
「私達が憎しみを抱いたから? でも、あんなことされたら、誰だって・・・・・・。」
後悔するゴールドとクリス。それに対して、シルバーは冷静に2人に話す。
「・・・責任を感じているなら、今は、アイツを止めるぞ・・・。」
シルバーはマニューラをだけを残し、他のポケモンたちをボールに戻すとルビーとミツルを呼ぶ。
「・・・姉さんとサファイア・・・。一応、あのツンツン頭を連れて脱出しろ。足止めは、俺達でしておく・・・。」
ルビーとミツルは頷くと、倒れたままの3人をポケモンたちを使って移動させながら扉を目指す。
(愚かな・・・。言ったはずだ・・・。人間は全て根絶すると・・・。)
3人を運び出して脱出しようとするルビーとミツル。そこに向けてキメリアンは手を向けた。
「・・・姉さんにこれ以上、危害は加えさせない・・・。やるなら俺達を倒してからにしてもらおうか・・・。」
俺達という言葉通り、何とか気を持ち直したゴールドとクリスはそれぞれ手持ちのポケモン一匹をを残して、他はボールに戻す。
マニューラ、エビぴょん、バクたろう・・・。残されたポケモンたちは、各々の主人の前に立つとキメリアンに敵対心を見せる。
(人間に忠誠を誓う・・・。彼等も同罪だ・・・。命を弄ぶ人間に従うというならば・・・。私は、容赦なく倒す・・・。)
ルビーとミツルが部屋から出たのを確認すると、サカキはゴールドたちに声を掛ける。
「互いの利害は同じはずだ・・・。共同戦線といくか・・・。」
しばらくの無言・・・。返答は無かった。だが、確認は取らずともその答えは決まっていた。
「「「「いくぞ!!!」」」」
ロケット団の野望は、意外な展開を迎えた。本来、支配下に置かれる予定だったキメリアンの反乱・・・。
伝説のポケモンにも引けを取らないとされる戦闘能力。そして、謎の変色能力。
人類根絶を狙うキメリアンの暴走をはたして止めることができるのだろうか・・・?
そしてブラックの元へ向かったキクコ・・・。
これが、最悪の悪夢を引き起こすとは誰が予想しただろうか・・・・・・?
第23話へ・・・