白虎降臨、そして・・・。
狂気と化した男は、狂気のポケモンの背に乗って
ただ、破壊と殺傷を求め続けた・・・。
立ち向かう3人の少年少女。
3対1の激しい戦い。
ぶつかり合う意思と意思。
毒に倒れる仲間・・・。
激闘の行方は・・・・・・?
PAS 第16話 決着!! 西側侵入経路の攻防!! その2
4匹のポケモンと4人のトレーナーが、バトル場で激しい戦いを繰り広げている・・・。
「ジュカイン、“れんぞくぎり”!!」
緑色の髪をした少年、ミツルはジュカインに攻撃を命じる。
「ちゃも、“スカイアッパー”!!」
独特の発音でバシャーモに攻撃を命じる少女、サファイア。
「・・・、MIMI、・・・・・・“みずのはどう”・・・。」
弱りきった声ながらも何とかミロカロスに攻撃を命じる少年、ルビー。
「その程度の攻撃で、俺を満足させられる訳がねぇだろうがぁ!! ウインディ、なぎ払え“しんそく”!!」
白毛のウインディは主人からの命を受けて全身からオーラを発生させると、3人の少年少女たちのポケモンにそのまま突っ込む。
異常に早く加速された白毛のウインディは主人を背に乗せたままでも、躊躇無く3体のポケモンに突っ込み、3体を移動時の衝撃波で吹き飛ばした。
その衝撃波は凄まじく、自分達のポケモンとさほど距離をとっていなかった少年少女トレーナーもまとめて吹き飛ばす。
ポケモンたちへのダメージはさほどではなかったが、トレーナー達へのダメージは予想以上に大きかった。
中でも、ルビーは受身一つ取ることができずそのまま床に叩きつけられた。
その姿を見て、不気味な笑みを白毛のウインディの背に乗って浮かべるスキンヘッドの眉無し男、ニードル。
この4人による3対1の戦いは熾烈を極めた。
本来ならルビーたちが人数差で押し切れそうなのだが、先ほどまでの戦いで疲弊した身体と傷ついたポケモンたちではニードルの猛攻を凌ぐので精一杯だ。
そして何よりも、ルビーに放たれた“どくばり”の毒の余威がルビーを衰弱させ、残りの2人のお荷物となってしまっていた。
サファイアがお荷物となったルビーをカバーするため、実質、人数差は関係ないに等しい。
しかし、そのカバーも手が回らないほどルビーたちは追い詰められていた・・・。
ルビーを除く2人は立ち上がると、ニードルを睨みつける。それを見たニードルは歯をむき出しにして狂気の笑みを浮かべて2人を威圧する。
「1人脱落か・・・。ハハハ・・・。さて、おかわりといくか!!」
白虎ウインディは再びニードルを背に乗せたまま全身からオーラを発生させる。
((くる・・・、ならば・・・!!))
ちゃもとジュカインが各々のトレーナーの前に立って構える。ルビーのMIMIは倒れたままの主人を守るように“ミラーコート”を展開している。
「ウインディ、“しんそく”!!」
ニードルの声と同時に、白虎ウインディは先ほどと同じように突っ込んできた。 しかし、ルビーは脱落者扱いのようでサファイアとミツルの2人に向かって突っ込んだ。
「ちゃも!!」
「ジュカイン!!」
ちゃもとジュカインは主人の声を聞くと、主人を抱きかかえてその攻撃を跳躍して回避する。
「何ィ!! 猪口才ないなガキ共が!!」
攻撃を回避された為に、勢いあまって白虎ウインディは対面の壁まで駆け抜けてしまった。
その隙に、サファイアはルビーに駆け寄ると肩を持って立ち上がらせた。
「ミツル!!今のうちに扉を開けるったい!!」
ミツルは頷くと、このバトル場の出入口に接近した。そしてその扉に手をかけた・・・。
「チィィィ・・・!! ウインディ、反転しろ!!」
ニードルは白虎ウインディに反転を命じる。 その間にサファイアはルビーをちゃもに預けて、MIMIと一緒に扉を目指す。
ミツルはジュカインにサファイアたちを連れてくるように命じる。 だが・・・
「逃がさねぇよ・・・。白虎の力を舐めるなァ!!」
ニードルが怒声を上げると白虎ウインディは、赤いオーラに包まれた。 自身の毛色が原因なのだろうか、赤いオーラは際立って見える。
赤いオーラがその量を増やすと、白虎ウインディは口から紅蓮の劫火を吐き出した!!
放たれた劫火は、一瞬の内にルビーたちの元へ到達する。しかし直撃寸前でMIMIが“ミラーコート”を自身の意思で展開した。
鏡面の壁は、紅蓮の劫火を跳ね返した。 跳ね返った劫火はニードルと白虎ウインディの元へ・・・。
「MIMI、すごいったい!!」
「さすが、ルビーくんのポケモン!!しっかりしてる!!」
サファイアとミツルはMIMIを撫でて、感謝の意を表す。 一方、当のMIMIの主人はちゃもの腕の中でぐったりしている。
とにかく、ルビーたちは出入口の扉を開こうとした。
「ウインディの特性を知っているか・・・? 【もらいび】だ・・・。それがたとえ己が炎であったとしても!!」
その声に、2人の安堵は砕かれた・・・。
どうやら、白虎ウインディは跳ね返された炎をエネルギーとして取り込こんだようだ。多少、白色の毛が焦げてはいるが元気そのものだ。
現状を見た2人はとにかく、このバトル場からの脱出を試みた。 だが、白虎ウインディが“しんそく”でみたたび突っ込んできた。
ミツルが出入口の扉を開けるよりも早く、白虎ウインディの攻撃が炸裂する。
「ヒャハハハハハァァァ!!!」
ニードルの狂気に満ちた笑い声が聞こえると、出入口周辺に居たはずのルビーたちとポケモンたちは大きく吹き飛ばされていた。
“しんそく”によって生じる衝撃波の凄まじさを物語る・・・。
辛うじてポケモンたちに守られたため、トレーナーへの被害は少ない。ジュカインはミツルを守り、MIMIはサファイア、ちゃもはルビーを守った。
しかしながら、その衝撃によって全員意識が混沌としているようだ。
ニードルは飛ばされたトレーナーとポケモンたちを見る。 すると、主人を守らなかったポケモンがいることに気がついた。
上唇をぺロリと舌で舐めると、ニードルはちゃもとルビーの方を向いた。
「お荷物を守ったか・・・。 不幸だったなぁ!!」
白虎ウインディはちゃもとルビーに飛び掛った。 その瞬間に起き上がったサファイアは、ちゃもに命令する。
「ちゃも、“スカイアッパー”!!」
サファイアの声を聞いたちゃもは、覚醒すると目の前から飛び掛ってくる白毛の巨体に強烈なアッパーをお見舞いする。
その拳は、白虎ウインディの顎を完璧に捉えた。 その一撃にはさすがの白虎ウインディも仰け反りそうになった。
「ちゃも、休まず攻撃ったい“ブレイズキック”!!」
ちゃもは床を両足で蹴って跳躍すると、白虎ウインディの顔を側面から右足で打ち抜く。直撃した箇所には爆炎が発生して、さらに攻撃の効果を高める。
仰け反りそうな状態にさらに攻撃を受けて、白虎ウインディの身体は一気にぐらつき、白虎ウインディの瞳がフッと白くなる。
サファイアが追撃を掛けようとした刹那、白虎ウインディの瞳に黒が戻る。その瞳からは憎しみからの力を感じ取れた。
「言ったはずだぜ・・・。こいつの特性は【もらいび】だとなぁ!!」
仰け反りそうになって不安定な白虎ウインディの背に何とかしがみつきながらニードルは言った。
すると、白虎ウインディの全身の毛が逆立ち憤怒の表情と雰囲気を露にする。 そしてその怒りの矛先は当然のことちゃもに向けられた。
振り下ろされる白虎ウインディの大きな前足。ちゃもは床に強烈に叩きつけられて、無理やり押し倒された。
ちゃもはじたばたして必死に抵抗を試みるも、白虎ウインディの力に抵抗できずそのまま攻撃を受ける。
「ウインディ、“かみくだく”!!」
白虎ウインディは口を大きく開くと、ちゃもの身体に噛み付いた。 何度も何度も噛み付かれ、バトル場に何ともむごい音が響き渡る・・・・・・。
攻撃を受けて身体を痙攣させるちゃも、それを見てにたつくニードル。 すると、再び白虎ウインディから赤いオーラが発生する・・・。
自身のポケモンへの残虐行為への精神的苦痛から声も出ないサファイア。付き合いが長い分、その苦痛は並ではない。
白虎ウインディは、口から紅蓮の劫火を今にも放とうとしている。
そのとき何とか朦朧とする意識から立ち直ったミツルとジュカインは、火炎の射程内にルビーの存在を確認した。
(助けなきゃ・・・・・・。)
「ジュカイン、“こうそくいどう”でルビーくんの元へ行くんだ。」
ミツルの命令に従いジュカインは高速で移動する最中にルビーを確保すると、火炎の射程内から離脱する。
離脱して数秒後、白虎ウインディはちゃもに火炎を放射した。 ほぼ零距離での“かえんほうしゃ”だ。床は熱で砕け塵と化した。
ちゃもはその炎をその身に受けて、その場で戦闘不能、そして大やけどをおった。 いや、一部は炭化しているかもしれない・・・。
ニードルはそんな姿になったちゃもを見て、鼻で笑った。 サファイアは目の前が真っ暗になり、MIMIの後ろで気絶してしまった。
実質、一人となったミツル。残存戦力はジュカインとロゼリアのみ・・・。とてもではないが、現在の白虎ウインディを止めるには分が悪すぎる。
タイプ相性、疲弊、守らねばならない者2人・・・。攻撃を仕掛けたとして、どれだけの結果が見込めるのか、そんなのは考えずとも分かる。
嫌でも頭をよぎる、最悪の事態。攻めることもできず、守りきる保障も無く、逃げることもままならず、正に八方ふさがりだ。
一人冷や汗を流し必死に思考するが、その時間さえも剥奪される。 白虎に・・・。
「タイマンだなぁ・・・、燃えるぜぇ、ヒャハハハハァ!!!」
怒り狂う白虎ウインディはニードルを背に乗せたまま、“しんそく”の構えを取る。 ジュカインの腕にはルビー、その背にミツル。
回避以外、この攻撃を凌ぐ術はない。 ミツルはとりあえず、ルビーとサファイアを安全な場所に退避することにした。
(敵は超高速で突っ込んでくる・・・。しかも、移動中は衝撃波が・・・。)
目を瞑り、次の一手を考える。しかし、すでに白虎ウインディは“しんそく”による攻撃を開始した。
「小僧ォ、終わりィだぁあああぁ!!!」
狂気の声を上げて迫り来るニードルと白虎ウインディ、ミツルは瞑っていた目を開く、心で強く念じる。
(ボクも信じるから、キミも、キミも信じて!!!)
「この一瞬を見切る、ジュカイン“みきり”!!」
ジュカインは“しんそく”の攻撃を見事に見切り、攻撃を回避した。 しかし、衝撃波がミツルとジュカインを襲う。
「“こうそくいどう”!!」
必死にジュカインにしがみつき、衝撃波を耐える。 そして、ジュカインはミツルの命令どうり、よろめきながらも高速で移動して距離をとる。
その移動先には、ルビーのMIMIと気絶したサファイアが。サファイアの身体をジュカインは腕に収めた。
「MIMI、君も一緒に来るんだ。」
ミツルがMIMIに話しかけると、MIMIは頷いた。しかし、MIMIはどうやら主人は自分で守ると言いたげな瞳でミツルを見た。
その瞳をみて、ミツルはジュカインにルビーをMIMIに渡すように言った。 しかし、そのやり取りの間に白虎ウインディは赤いオーラを身体から放っていた。
(対トレーナー用のポケモン・・・。白虎を止めるには・・・・・・。)
ジュカインとMIMIはひときわ大きな岩の影にルビーとサファイアを運んだ。そして、ミツルがニードルの様子を確認しようとした瞬間であった。
「ウインディ、“かえんほうしゃ”!!」
あの紅蓮の劫火がミツルとジュカインを襲った、しかしそこは機転の利いたMIMIが“ミラーコート”を瞬時に展開して辛うじて“かえんほうしゃ”を防ぐ。
跳ね返された火炎は、白虎ウインディを捉えるが、【もらいび】によってたいした効果はなかった。
(もう、やるしかない・・・!!!)
ミツルはジュカインの背に乗ると、“こうそくいどう”で白虎ウインディの元へ接近する。
「真っ向勝負かぁ? 受けてたってやるよォォォ!!」
狂気の叫びと共に、白虎ウインディの身体から赤いオーラが発せられた。 “かえんほうしゃ”を仕掛けるようだ。
真っ直ぐ接近してくるミツルとジュカインに対して、“かえんほうしゃ”を放つ、放つ、放つ。
しかし何れも“こうそくいどう”のスピードにはついていけず、ミツルとジュカインの接近をニードルは許す羽目になった。
ジュカインは両腕の葉にエネルギーを送り込むと、葉は緑色の光を放ち始めた・・・。
「“リーフブレード”!!」
白虎ウインディから零距離を奪うと、右腕の葉で白虎ウインディの足元を強烈に切りつけた!!
「チィィ!!何だぁ!!!」
“リーフブレード”によって発生した衝撃波で、白虎ウインディの足を止めるとそのまま高く上へと跳躍するジュカイン。
「絶対に、勝つ!!!」
ミツルの気迫のこもった声と共に、ジュカインは左腕の葉でニードル自身を狙った!!
「楽しませてくれるじゃねぇかぁ!!! 小僧ォォォ!!!」
白虎ウインディは“しんそく”でジュカインの攻撃を回避すると、即座に反転して“かえんほうしゃ”の攻撃態勢をとった。
ジュカインは上空で“しんそく”の衝撃波を受けてバランスを崩していた。 しかし、容赦なく放たれる紅蓮の劫火。
(ボクを信じて!!!)
「ジュカイン、“みきり”!!」
ジュカインはミツルを乗せた状態で、なおかつ上空でバランスを崩し、さらに背後を取られている。
「ジュカイン、右だぁ!!!」
背に乗っているミツル本人が火炎の射線を見て、ジュカインに回避するべき方向を伝えた。
その声を聞いたジュカインはそのまま、体勢を崩しながらも“かえんほうしゃ”を見切った。
そして、床に着地するとその反動と共にもう一度跳躍。ニードルに左腕の葉で渾身の“リーフブレード”を放った!!
「チィィィィッ!!!」
渾身の攻撃は白虎ウインディの背を捉えて、床に屈せさせた。白虎ウインディは顔を歪ませる。さらに、発生した衝撃波は、その背からニードルを吹き飛ばした。
吹き飛ばされたニードルは辛うじて受身を取って即座に跳ね起きると、白虎ウインディの元へ向かおうとする。
しかし、そこへ一個のモンスターボールが投げられた。 ボールからは、小さな草ポケモン ロゼリア が現れた。
「これが、ポケモンとトレーナーが信頼しあう力によってできる技です!! 最後は、あなたの技で倒す!! ロゼリア、“ミサイルばり”!!!」
ミツルのロゼリアからたくさんの針が飛んで、ニードルの衣服だけに針は刺さり、岩にニードルを標本のように拘束した。
「う、動けねぇ・・・。小僧、味な真似を・・・。」
ニードルはギリギリと、歯軋りした。口元からは多量の涎が垂れ始めている・・・。
ミツルはニードルが動けないことを確認すると、ほっと胸をなでおろした。 そして、安心のあまりヘニャリとその場に座り込んでしまった。
「か、か、勝ったのかな・・・。」
ミツルが一人呟いた。 今すぐに、この場所を離れてルビーとサファイアの介抱をしなくてはならないのだが、腰が抜けてしまい動けなかった・・・。
そんなミツルの背後に忍び寄る大きな影・・・。ミツルはその存在に気付くことができなかった。
ニードルはその影の主を見るとニヤリと不気味な笑みを浮かべた。 影の主は、ボロボロになったジュカインをその大きな口で咥えている。
「ウインディ、その小僧をぶっ潰せ!! “かえんぐるま”!!!」
ミツルは完全に気が抜けていて、どうすることもできなかった。白虎ウインディはジュカインを投げ飛ばすと、火炎を身にまとい、突っ込んでくる!!
迫り来る、白虎ウインディ・・・。動くこともできないミツル・・・。 そこへ・・・!!
「・・・・時の流れはうつりゆけども、変わらぬその身のうつくしさ。その身にまといし美しも不思議なうろこ、ポケモン・ミロカロス、“みずのはどう”!!」
ミロカロスから放たれた“みずのはどう”は、白虎ウインディを捉える水のエネルギーを波動として打ち付けた!!
弱点である“水”の攻撃を受けた白虎ウインディは、流石にその場にうずくまった。
「excellent!! MIMI、最高の攻撃だ!!」
岩の上に立つ男。 いや少年はポロックケースからポロックを一つ出すと、MIMIと呼ばれたミロカロスに与えた。ミロカロスはそのポロックを喜んで食べる。
「ルビーくん!!!」
ルビーは岩の上からMIMIと一緒に飛び降りると、ミツルの傍に着地した。
「毒の余威が治まりやがったか・・・。きにくわねぇなぁ!!」
ルビーはとりあえずニードルの存在は無視して、ミツルが戦闘中にサファイアを介抱してきたことと、自身の手持ちとサファイアの手持ちを治療済みであることを伝えた。
その話を聞いたミツルは、サファイアが目覚めるまでしばらく休み次の階へ上るという考えをルビーに伝えた。
しかし、次の階に上って戦い続けるほどの戦力は残っておらず、此処である程度の休息を取ったら一度態勢を立て直すことにした。
とにかく、ルビーたちは自分達のポケモンの治療に時間を掛けた。ルビーはサファイアの介抱をしながらポケモンと人間の治療を行う。
ニードルは薬の副作用なのだろうか、口から涎を垂らしながら気絶してしまった。
そんなこんなで、数十分の時が流れた・・・・・。
第17話へ・・・