簡単ファイル共有の時計付きファイルマネージャ―



明かされる真実、ぶつかり合う2人・・・。





 “統べる者”・・・。

いわゆる、トレーナーの才能の一つ。
 
能力名はポケモン統制。
 
現状における能力は、ポケモンを自由自在に操作、制限することができる、

ブラックの才能である。

その力ですでに多くの被害が出ている・・・。

そして、いよいよ

その力の真実が明かされようとしていた・・・・・・・。














 PAS 第21話 明かされゆく真実












 黒い瞳の中に金髪の女性の姿が収まっている。その女性はその黒い瞳の主を、じっと見つめている。

無言のまま時が流れる・・・。 下のほうから、床に開いた大きな穴を通って時折、凄まじい轟音や、声が聞こえてくる。

声の内容を把握することは難しいが、とにかく複数の声が入り乱れている。

金髪の女性、イエローは黒い瞳の主であるブラックに、いやレッドに話したいことがいっぱいあった。

だが、彼にこうも真っ直ぐ見つめられると何故か声が出てこない。

再会の喜び? 積もりに積もった憎しみ? そうではない。

本当に、真っ直ぐに見つめられているのだ。

今だかつて、ここまで自分を真っ直ぐと見つめられたことは無い。

目の前の彼と付き合っていたときも、こんなことはなかった。

ただ、そんな視線の中で感じることは一つ・・・・・・。


(この視線には想いが・・・無い。)


ふと、ブラックはイエローから視線を逸らす。直後、両手で顔を覆うと大きく呼吸をする。

その様子を見たイエローは、反射的にブラックに声を掛けようとした。


「レッ「ここに来たってことは、とにかくオレに用があるんだな・・・。」


イエローの呼びかけに割って入り、イエローの声をかき消す。その声は悩み苦しみの声だ。

顔を覆っていた手を離すとブラックは椅子から立ち上がった。しかし、立ち上がるまでの動作が非常に何か迷いをかき消すような動作にイエローは見えた。

椅子から立ち上がったブラックはイエローに背を向けると、ボールを一つ手に持った。


「オレは此処に来た部外者を排除するのが、“ここ”での役目だ・・・。」


ブラックのボールを握る手に力がこもり始める。


「用件があるなら、オレを倒してからにしてくれ・・・。」


突如変わった口調に、驚くイエロー。 その口調は非常に冷たく、高圧的だ。

だが、イエローはこの言葉からも不思議な感覚を感じ取る。


(動作はあんなにも感情的なのに、どうして言葉はこんなにも想いが無いんだろう・・・?)


元々、感受性の強いイエローは先ほどからのブラックの言動に違和感を覚えて仕方が無い。

口調や声のトーン、雰囲気はあんなにも冷たくて高圧的なのに、話される言葉には想いが無い。

まるで、機械が話しているように言わされている気がしてならなかった・・・。


















 「よかったのか?」

「何がよ?!・・・ック!!!」

ブルーの顔面すれすれをスピアーの両手の針が通り過ぎる。その一撃の後、カメちゃんが拳でスピアーをブルーの前から追い払う。


「イエローにレッドの状態を説明しなかったことだ・・・。」

「あの子なら、絶対気がついてくれるはず。 そして、唯一救える存在だと想うから・・・。 “
ハイドロポンプ”!!!」


追い払ったスピアーに対してカメちゃんは水流を発生させて追撃をかける。 しかし、その攻撃は回避されるとスピアーは再びブルーの元へ迫る。

「第一ね、“レッドの心は意図的に封じ込めました”なんて話を聞かせたら、あの子は自分を見失っていたわ。 憎しみの対象をアンタに向けて・・・。」

「頭のきれる女だ・・・。 お前もブラックの元で働いたらどうだ? “
ダブルニードル”!!!」

サカキのスピアーはカメちゃんを狙うことなく、ブルーを狙い続ける。 もうこれはポケモンバトルではない。

「給料はいいのかしら??だったら、内部から崩壊させてあげるわよ!! グランブル、“
こわいかお”!!!」

カメちゃんの応戦の中、ブルーはボールからグランブルを呼び出すと“
こわいかお”をさせる。

サカキのスピアーはグランブルの顔の表情に一瞬畏怖した。カメちゃんはその隙を逃さず両肩の水砲をスピアーに向ける。

「もらった!!“
ハイドロポンプ”!!!」

「フンッ、甘いな・・・。 “
あなをほる”!!!」

突如、カメちゃんの足元の床が隆起するとそこからダグトリオが現れた。ダグトリオの不意の登場と攻撃によってカメちゃんは水砲の射線を天井にずらしてしまった。

射線はずらされ天井に向けて放たれた水流は分厚い水の壁を形成する。その間にダグトリオはブルーに向けて一直線に接近する。

「グランブル、“
かみくだく”!!!」

ブルーに対して鋭い爪を見せながら突っ込んでいくダグトリオに、グランブルはその大きな口を開けたまま飛び掛った。

思い切りダグトリオに噛み付こうとした瞬間、ダグトリオは地中に身を隠してその攻撃を回避する。

攻撃の回避の直後、サカキがボスゴドラの背に乗って一気に距離をつめてきた。 廊下は先ほどまでのカメちゃんの水流によって水浸しだが、

その中をボスゴドラがドスドスと音を立てて力強く走ってくる。その勢いでカメちゃんを突き飛ばすと、ブルーとグランブルの前に立った。

ボスゴドラの静止を合図にスピアーとダグトリオが足元に集まると、サカキはボスゴドラの背から降りた。


「詰みだ・・・。」


冷酷に言い放たれる言葉。 それでもブルーは強気な表情をし続ける。


「ここは盤面じゃないから何が起こるか分からないわよ?」


ニッコリと笑顔を浮かべてサカキに挑発的な態度を取り続ける。

「フン、これが先ほどまで絶望の中に居た人間だと誰が思うか・・・。」

「まぁ、あの子のおかげでしょ。あの強い意志は絶対にレッドを救えるわ・・・。だって、アタシが救われたんだもの・・・。」

ジリジリとさらにブルーとの距離をつめるサカキとそのポケモンたち。しかし、いくら詰め寄られてもブルーは一切動じない。

「あの子の強い意思の中にある、希望への力はレッドの心の呪縛だって開放できる・・・。」

「絵空事をぬかすな。意思や想いだけで人が救える訳がないだろう。」

「アンタだって薄々気付いているんじゃないの? 精神操作を行っている以上、シロガネ山でアタシたちとの接触した後の変化ぐらいは報告されているでしょ?

仲間を傷つける痛みにアイツは泣いたのよ・・・。十二分にアイツの心に訴えることはできるわ。あの後アンタたちがさらに強い精神操作を行ったとしても、

想い人と2人きりになれば嫌でも、心を封じられていようとも、アイツの本質が変わらない以上、自分を取り戻せる!!」



「フ・・・。だがな、開放したとしてもプロジェクトは進むぞ。別にブラックを維持できないとすればオレが変わりになれば良い。」



その一言を聞いた瞬間、ブルーの表情は凍りついた。一気に顔が青ざめる。



(レッドは変わりに過ぎない・・・。別に、レッド元々必要ではなかった・・・。)



「・・・じゃあ、アンタなんでレッドに力を与えたのよ?」

「“万が一の保険”だ。まぁ、戦力的な価値としても評価はしていたがな・・・。 特に、お前達を叩くにはもっとも効率が良い。」

ブルーの表情に衝撃と怒りがあらわになる・・・。彼女も此処まで人の為に怒りの感情を覚えるのは久しぶりだ。

親友を傷つけられた、利用された怒りが彼女の両手を握りこぶしにする。

初めてこの想いを抱いたのは、ウバメの森での戦いだ。唯一、肉親のような存在であったシルバーを傷つけられたときに初めて覚えた。

同じ苦しみを感じることのできないもどかしさと、大切な人を傷つけられる悲しみが怒りとなって全身を包む。


「2年間、イエローへの想いを利用したり、じわじわと洗脳していくのはなかなか良い研究になったそうだ・・・。本当に純粋なヤツは手玉に取りやすいとな・・・。」


ブルーの怒りのボルテージがグングン上昇していく・・・。 その証に、ブルーの両手の握りこぶしは震えている。


「まぁ、イエローへの想いを利用した分、お前の話もあながち絵空事とは言えなくなってきたな。フフフ・・・。」


怒りのあまり、ブルーはサカキに掴みかかろうとした。だが、ボスゴドラの腕が伸びてきて、ブルーの身体ごと壁にたたきつけてそのまま拘束する。


「無力だな・・・、ブルー。この戦いの真実を知りながらもお前は何もできずじまい・・・。愛し合う2人は、互いを傷つけあい。お前の愛する男は、ボロボロにされ、

仲間達はプロジェクトのための人柱・・・。フフフフフ、ハハハハハ!!」


サカキの笑い声がブルーの耳に嫌というほど聞こえる。 その笑い声を聞きながら、頬を伝う涙・・・。

無力な自分が悲しかった、無力な自分が悔しかった、・・・・・・だが、変えた運命がある。


「・・・アタシは・・・無力じゃない・・・。グリーンとイエローをレッドの・・・所に導いた・・・。それさえもアンタの盤面どうり進んだとしても・・・

2人の・・・2人の心に伝えた・・・。怒りにとらわれない・・・レッドを助けうる・・・真っ直ぐな想い・・・・・・。」


この状況下でも強気な言葉を話し続けるブルーの存在が癪に障ったのか、サカキは指をパチリと弾くとボスゴドラはブルーを拘束する腕の力を強めた。

その力で、ブルーが背にしている壁にひびが入りはじめた。


「・・・・・・・グリーンには・・・十分に伝わってなかった・・・けど・・・イエローには・・・伝わったはず・・・後は・・・2人の・・・絆・・・・・・。」


最後の言葉を言い終える前に、ブルーは力なく首を前に垂らすと気絶してしまった。その様子を見ている間に、グランブルとカメちゃんはダグトリオとスピアーから

攻撃を受けて戦闘不能となっていた・・・。

ボスゴドラが腕から力を抜くと、ブルーはそのまま床に倒れこんだ。それを見下ろすサカキ・・・。

サカキはボールに自分の手持ちと、ブルーの手持ちを戻すとブルーをつれてエレベーターの部屋に向けて歩き出した。

















 (いつか、レッドさんが言ってたっけ・・・。自分がポケモンバトルが好きな理由・・・。)


ブラックの言葉を受けてイエローはふと思い出す。










 暖かい日差しが、木々の葉と葉、枝と枝とのスリットから差し込んで、木陰との間に幻想的な雰囲気とを醸し出している・・・。

そんな木々の中でも、一際大きな木の下で座り込む2人の男女・・・。

男の方は、黒髪に赤い瞳。 黒い半袖のシャツに青いジーパン。 女のほうは、金髪に黒く透き通ったような瞳。 黒い長袖のシャツに、黄色い上着、黒いズボン。

2人の間に会話があるわけではなく、ただ、2人で一緒に座っているのだ・・・。

とても、ゆっくりで穏やかな時が流れているように感じてしまう。

女のほうがふと、男のほうに質問する。


「そういえば、レッドさんってどうしてバトルが好きなんですか・・・?」


非常に優しい声で、レッドに問いかける。 その質問に対してレッドは天を見つめながら答える。

その姿を見た女は、天を見ながら考え込むレッドがとてもかっこよく見えた。 その姿に見とれて、いつしか顔を赤く染めていた。


「明確には説明できないかもしれない・・・。闘争心を煽られるからとか、勝利の爽快感とかもあると思う。 だけど、一番感じているのは

相手との交流だと思う。作戦やポケモンとの連携で“相手”という人間を感じたり理解できるからだと思うな・・・。」


女に負けないほどの、優しい声で言葉を返す。 視線はまだ天を見つめている。 真っ直ぐな視線だ。

話の最中も女はレッドを見つめていた。いや、見とれていた。そんな彼女に気付かずに、天を見ていた顔を彼女に向ける。

急に振り向かれたのでびっくりして、すでに真っ赤になっていた顔をさらに真っ赤にする。

「じゃあ、イエローが絵を描いたり、釣りしたりするのが好きな理由を教えてよ。」


優しい笑顔でイエローに問うレッド。 イエローが赤面していることなどまったく気がつかずそのまま話を続ける・・・・・・。















(この後、好きな理由を答えるのに必死だったんだよね・・・。頭の中に、レッドさんのことしかなくて答えるのが大変だったなぁ・・・。)





ほほえましく、自分を幸せにしてくれる彼との思い出は、今するべき行動を指し示す・・・。









(私の、あなたへの想いを感じ取ってください!! 伝えます、私の想いをあなたへ!!!)



いつしか、イエローのほうを向いていたブラック。 その手に握られていたボールからポケモンが呼び出される。

「さっきの戦いでの疲労を癒すために、いままでのメンバーはそこの回復装置で回復中だ・・・。」

イエローの後のほうにある回復装置を指差すブラック。イエローはそれを確認すると、中には6つのボールが入っていて回復中であることがわかる。


「だから、ベストメンバーでいかせてもらう!!!」


ボールから姿を現したのは、イエローも見覚えのあるポケモンだ・・・。

お腹の模様に渦、湿り気を帯びている身体、太い腕に足・・・。 その名をニョロボン・・・。

どうやら、ブラックの言うベストメンバーとは彼らのようだ・・・・・・。

「・・・ッ、でも、負けられない・・・。 行って、チュチュ!!」

イエローもボールからピカチュウのチュチュを呼び出した。だが、チュチュもニョロボンもその相手に困惑気味だ。

「ニョロ、オレを信じろ・・・。」

ブラックはその黒い瞳でニョロと見つめあう。しばらくその状態が続くと、ニョロはコクリと頷くと、チュチュに対して格闘戦の構えを取る。

その間、イエローもチュチュを必死に説得する。

「チュチュ、レッドさんに想いを伝えるためなんだ・・・。お願い、力を貸して・・・!!」

イエローの必死の願いを聞き入れると、チュチュもコクリと頷き、その身体に帯電させ始めると、ニョロを睨む。






2人の間の時が止まる・・・・・・。






「行くぞ・・・。」

静かに呟かれる言葉、その声と同時に、2人の戦いは始まった・・・・・・。








 「ニョロ、“
かげぶんしん”!!」

ブラックの命令どうり、ニョロは幾つもの分身を発生させる。そして、その分身たちと共にチュチュに襲い掛かる。

「負けてられない・・・。チュチュ、こっちも“
かげぶんしん”!!」

チュチュも分身を発生させてニョロへと攻撃を仕掛けようと突っ込んでいく。

そして、分身たちが交差する瞬間、激しい技の応酬となった。

「“
ばくれつパンチ”!!」

ブラックの声と同時に正面のチュチュに拳を放つ。しかし、それは分身の一つで、逆に自分の位置を知らせることになってしまった。

「チュチュ、“
でんきショック”!!」

しかし、寸前で分身を別の分身に身を紛れ込ませ攻撃を回避する。 今度はニョロが位置を知らせてしまったチュチュを狙う。

「“
れいとうビーム”!!」

ニョロの指先から青白い光線が放たれる。光線は真っ直ぐ飛んで正面に居たチュチュを捉えた。だが、それも分身の一つであった。

外れた光線は床に直撃すると、一帯を凍結させる。その直後、チュチュからの攻撃を避けるためにニョロは分身の中に身を紛れ込ます。

その動作が非常に速かったので、ニョロを攻撃しようとしていたチュチュが勢いあまって攻撃を仕掛けに姿を現してしまった。

「チュチュ、“
でんき・・・ってあれ?」

トレーナーであるイエローも動きについていけず、危うく攻撃を命じてしまうところであった。チュチュが分身に再び身を紛れ込ませようとしている間にニョロは

分身内で“
こころのめ”を発動させる。 そして、分身内で密かに攻撃のチャンスをうかがうチュチュの姿を捉えた・・・。

すると、ブラックはニヤリと笑みを浮かべた・・・。


「ニョロ、“
ばくれつパンチ”!!!」


ニョロは眼を閉じた状態で、気配を察知した方向に思い切り拳を放つ。その一撃は、分身内いるチュチュを完璧に捉えると、エレベーターの扉にぶっ飛ばした。

その衝撃にエレベーターの扉がへこむ・・・。その下でぐったりとするチュチュ・・・。イエローの表情は一気に青ざめた・・・。

慌ててイエローはチュチュに駆け寄るとボールに戻し、トキワの力で回復し始めようとしたが、目の前にブラックが立ちこちらを見下ろしていた。


「これで終わりか・・・?」


イエローに冷たい言葉をかけるブラック。イエローは純粋に恐怖を覚えた・・・。今だかつて、彼からこんな恐怖を受けたことがないイエローは非常におびえていた。


(怖い、怖い、怖い・・・。 ・・・だけど、負けられない・・・あきらめられない・・・伝えたい!!!)


心から湧いてくる想いの力が、イエローの震える手足に力を与える。そしてイエローは別のボールを手に取るとポケモンを呼び出す。

「行って!!ドドすけ!!!」

呼び出されたポケモンはドードリオのドドすけだ。 ブラックはそれを確認すると、イエローから距離をとって指をパチリと弾いた。


「ニョロ、やれ・・・。」


一言呟くと、ニョロはドドすけに襲い掛かる。襲い掛かってくるニョロに対してドドすけも応戦する。

「ドドすけ、“
ドリルくちばし”!!」

ドドすけの一撃がニョロに放たれる。が、ニョロにくちばし3つを脇にしっかりと捕まえられてそのまま“
ちきゅうなげ”された。ドドすけは床に強烈にたたきつけられる。

それを見たブラックは、グリーン戦と同様に机に戻り椅子に座って本を読み始めた。 その様子ではまるでバトルに関心をもたれていないようだ。


(このままじゃ、想いは伝えられない・・・!!)


イエローは何を思ったか、ブラックの元へ駆け寄ろうとドドすけとニョロとの戦っている間を通ってブラックの元へ向かう。

その時、ちょうどニョロが“
ばくれつパンチ”を放とうとしていた瞬間であった。 そこを、タイミングよく通り過ぎようとしていた・・・。

そんなことにまったく気付かず、イエローはブラックの元へ向かう・・・。








ニョロの拳がイエローを捉えようとした瞬間であった。








「ニョロ、寸止めだ!!!!!」

ブラックの絶叫が部屋全体に響く・・・。その声を聞いたニョロは命令どうり拳をイエローへ直撃寸前で止める。

イエローも驚いていたが、一番驚いていたのは他でもないブラック本人だった。


(どうした、オレ・・・。今、殴らせてしまえば全部終わりだったはず・・・。なのに、何故だ??イエローを傷つけることをオレは望まない??)


ブラックは椅子から立ち上がると、ニョロを呼び戻す。そしてニョロはそのままボールへと戻された。

「ちゃんと、私と戦ってください!! そうやって私と向かい合わないのは卑怯です!!」

イエローから抗議の声がかかると、ブラックはボールを手に取ると机を飛び越えてイエローの前に立った。


(たったそれだけの為に、あの危険な場所へ走ったのか??何故だ??)


イエローの行動にさらに惑わされるブラック。表情にこそ出してはいないが、思考回路は異常事態だ。


(とにかく、この迷いもイエローを消し去れば・・・。 消し去る・・・? オレは何故イエローを消し去るんだ??)


残されてるレッドの本質が、イエローへの攻撃、又は、弱者への攻撃を躊躇わせていた。

「いいだろう、真っ向勝負といこうじゃないか。」

ブラックは自分の身にまとっているスーツを、乱れていないのに乱れを直した。 イエローはドドすけの元に駆け寄ると、ブラックを見つめる。

その瞳は闘志に燃えているようであり、何か訴えかけるような瞳をしている。 その瞳に、ブラックはまた戸惑う。

戸惑いの中ボールを掴み、カビゴンのゴンを呼び出した。


(戸惑いがあるならば、感情に身を任せてみるまでだ!!)


イエローもドドすけをボールに戻し、今度はゴローニャのゴロすけを呼び出した。


(レッドさんにもっと、私を伝えたい・・・。だったら私は、心に従う!!)


呼び出された2匹は、主人たちの闘志に感化されて即座に対戦相手を睨む。


「ゴローニャか・・・。相性は今までの戦績から見ても、タイプ的に見てもあまりよくないが・・・負けはしない!!」


その言葉は、まるでレッドの言葉のようだった。イエローは、その声を聞くと自分がやっていることの正しさと効果に嬉しくなる。

言った本人も、その言葉に何故か充実と爽快感を覚える・・・。いつしか、常に発していた黒く、相手を畏怖させるようなオーラは出ていなかった。


「私だって負けません!!」


イエローの表情がどんどん明るくなって、活き活きしてくる。 それに釣られてブラックも表情が活き活きし始める・・・。


「ゴン!!!」

「ゴロすけ!!!」



2人とも同時に自分のポケモンに声を掛ける、声を掛けられた2匹は同時に戦闘姿勢をとった。


もうすでに、2人の間に言葉なんて要らない・・・。 お互いの想いをぶつけ合うバトル・・・。それだけで全てを伝え合える・・・。


見つめ合う2人に戸惑いも、憎しみも無い。あるのは、相手を知ろうとする想いと、純粋な勝敗への執着のみ。









「「うおおおおおおお!!!」」










2人の声が、部屋いっぱいに響き渡った・・・・・・。











 ブルーの託した想いは、見事にレッドを開放しようとしていた。

だが、この戦いはレッド救出だけが終結の条件ではないようだ・・・。

バトルタワーの地下闘技場で始まってしまった、悪夢。

希望の影に絶望あり・・・。

最大の希望の影に、最悪の絶望あり・・・・・・。









 第22話へ・・・