愛する者のもとへ走れ!! そして降り立つ絶望集合体・・・。
グリーン敗北・・・。
打ち砕かれる希望。
絶望と後悔、悲しみだけが残り、得るものは何一つなく・・・。
そして、更なる追い討ちをかけようと動き出すプロジェクト。
だが
絶望に眼を覆っていては一筋の光明を見ることはできない。
直視しろ絶望を・・・。
解き放て悲しみを・・・。
そして
愛する者の元へ走れ!!!
PAS 第20話 最後の希望、始まる絶望
ブルーの悲痛な叫びは4階全体に響き渡った。
親友同士が痛めつけあう現実と、愛するものが傷つけられた現実が彼女を叫ばせた。
頬を伝う涙は止まることなく流れ続ける・・・。
最悪の結果として覚悟していたとはいえ、実際に起こってみるとその覚悟は簡単にぶち壊される。
ブルーは両手で顔を覆い眼を堅く瞑り全ての現実から逃避する。
(何も見えない、何も聞こえない、何も感じない・・・。)
心の中に閉じこもり、与えられた現実を全て否定する。
だがそんなブルーの前に立つ男、サカキはブルーを現実に引きずり戻す。
「ボスゴドラ、“アイアンテール”!!」
ブルーは視界を自ら封じているのでサカキがボールからボスゴドラを出したのも、そのボスゴドラが今、自分に攻撃を仕掛けようとしていることも知らない。
ボスゴドラの尾は鋼鉄のように硬化されると、尾をフルスイングして叩きつけようとする。 もちろん、このような一撃が直撃すれば運よければ骨折。
最悪ならそのまま息絶える。 だが、前記のようにブルーはこの事実を知らない、いや、知ることができない。
無論、ブルーは今も顔を覆い現実逃避の真っ最中だ。
さすがに、主人を守ろうとカメックスのカメちゃんと、ニドクインに姿をかえたままのメタモンのメタちゃんがその一撃から主人を庇う。
鈍い音が響くとニドクインの姿のメタちゃんが衝撃で壁にたたきつけられる。 その威力は“へんしん”の効力が消えてしまうほどだ。
しかし、そんな音がしようが、壁の小さな破片が身体に当たって傷をつけても、今のブルーには何も感じない。
暗い絶望の中で彷徨い続けるブルー。
そう暗い絶望の中で・・・・・・。
ひんやりとした空気があたり全体を包んでいる。 そこで聞こえるのは複数の弱々しい息遣い。
部屋は暗く、電灯一つ点いていない。 動きたくても身体にはしる激痛。言葉を発しようにも、声を出す気力も無い。
(誰か・・・。落ちてきたみたいだ・・・。誰だろう・・・。ルビー君かな・・・?)
パラパラと今だ瓦礫の落ちる音が聞こえる。だが、そんな音に興味は示せない、いや、示す気力も無い。
ただ、此処へやってきたものが誰かという事実だけが知りたかった。
誰かは、落ちてきたものを調べるために激痛がはしる傷だらけの身体を何とか動かしてそこへ向かう。
よろよろと暗闇の中を歩く。 しかし、音がした場所を特定することもできない。
「大丈夫ですか・・・・・・・。 名前をおっしゃってください・・・・・・・。 ボク、ミツルです・・・・・・・。」
出ないと思っていた声は、以外に出た。何故かは解らない、とにかく声が出た。
しかし、声が出たのはよかったが返事をするものはいない。 ミツルは絶望感に襲われる。
(終わりなのかな・・・。ボクはここで終るのか・・・。ちょっと天狗になっていたのかもしれないな・・・・・・・。)
後悔、後悔、後悔・・・。
後悔が絶望を後押しして、ミツルの気力を奪う。 立ち上がれた身体も力無く崩れ落ちようとした瞬間であった。
「ミツル・・・・・・。ホウエンのトレーナーの一人か。 オレだ、ゴールドだ。すまねぇが、手を貸してくれ・・・。」
崩れ落ちそうだった身体は、力を取り戻し再び動き出す。 今度は声のするほうへ・・・。
暗闇の中、模索しながら進むのでスピードは遅いが着実に声の主の場所へ接近している。
安心感、孤独からの脱出・・・。 心から湧いてくる力、眼から湧いてくる涙。
暗闇の中で忘れていたことに気付く・・・。
“希望”・・・・・・。
絶望の中、暗闇と孤独がミツルの心を侵食し暗闇以外に目の前を暗くしていて、忘れ去っていた。
いや、“希望”という言葉の存在さえも忘れていたような気がする・・・。
「今・・・。今、今行きます・・・・!!」
ミツルは涙声で自分の必死の力で叫ぶ。
一筋の光明が希望を呼んだ・・・・・・。
ボロボロにされながらも、主人を守り続けるカメちゃん。もうすでに何発の“アイアンテール”をその身に受けたことか・・・。
だが、その事実にブルーは気付くことは無い。 絶望にとらわれ、希望を見失い、現実を逃避する彼女には・・・。
「フン、まだ立っていられるか・・・。そいつをなぶり殺しにしたところで価値は無い。ボスゴドラ、“はかいこうせん”でトレーナーごと消せ。」
サカキが低い声でボスゴドラに命じると、ボスゴドラは攻撃を中断して、“はかいこうせん”発射姿勢をとる。
それに対してカメちゃんはブルーの前で精一杯身体を広げて仁王立ちをする。 意地でも主人に傷一つ負わせることが無いようにするようだ。
「命が惜しくないのか・・・。主人思いの良いポケモンだが、お前を失った主人は悲しむだろうな・・・。」
サカキの言葉にも耳を傾けず、とにかくブルーを守ろうと仁王立ちし続ける。
(たとえこの身が朽ち果てようとも、今までの苦難を共に乗り越えてきた主人を守れるというなら悔いは無い・・・。 オレをここまで成長、進化させてくれた・・・。
この恩を返すのに十分すぎる・・・。)
「恩返しをするなら、生きてなきゃダメです・・・。命を懸けて大切と言える人の為に本当にできる恩返しは、生きることです!!」
ボスゴドラから放たれる“はかいこうせん”・・・。閃光はカメちゃんを真っ直ぐに捉えようとしている!!
「チュチュ、“10まんボルト”!!!」
カメちゃんの影から一匹の雌のピカチュウが姿を現し強烈な電撃を放つと、“はかいこうせん”を相殺した。
「お目覚めか・・・・・・。イエロー・・・・。」
サカキが嫌味を込めて呟くと、カメちゃん後に、先ほどまで気絶していたイエローの姿があった。
「私には戦う力はありません・・・。だけど、大切な人たちを想う力と、守る力だけは持っています!!!」
力強いイエローの声にサカキは口元でけで笑みを浮かべる。その態度は非常に高圧的だ。
「今更、お前が起きようと何も変わらんし、守ることもできない・・・。 それを現実と知るんだな。」
「・・・だけど、私がブルーさんを守ったということだけは、今変わったはずです!!!」
いつもの調子と違い、食って掛かるイエロー。それに対してサカキは、現実を突きつけ続ける・・・。
「お前が寝ている間にグリーンはアイツに敗れたぞ・・・。しかも、無様な姿をわざわざブルーの前に晒していたな・・・。いや、あれはアイツの所為か・・・。」
その一言にイエローは衝撃を受けた。 そして、今だ顔を覆ったままのブルーの方に視線を移すとブルーの心理状態を察した。
(だからブルーさんは・・・・・・。)
「そうだ・・・。アイツについて少し説明してやろう・・・。今のアイツはなぁ・・・・・・」
サカキが全てを話そうとした瞬間であった。
「語られることが事実だとしても、現実だとしても・・・。イエローの想いは、そう簡単に揺らがないわよ!!!」
こもった感じの声がサカキとイエローの耳に入った。声の主は、顔を覆っていた両手を解き放つと、立ち上がった。
「イエロー・・・。レッドへの想いは揺るがないわよね?」
ブルーの顔には涙の痕と、赤くなった眼。
「ブルーさん・・・・・・。」
「いいから!!アンタのレッドへの想いは揺るがないの?!どうなの!!!」
しかし、その瞳は力強く、闘志に満ちている。
「私、私は・・・・・・。」
改めてレッドへの想いを確認してみる。
自分や仲間や親友を傷つけた彼を本当に私はまだ好きなのだろうか?
無関係な人々に迷惑をかけて、被害を与えている彼を・・・。
悪の組織の首領となった彼を・・・。
私達の敵となった彼を・・・。
そういえば、何故この戦いに参加したのだろか?
レッドが好きだからこの戦いに参加した?
また一緒に居たいから?
前のような生活に戻りたいから?
それともレッドが憎いから?
アサギに来る前、一番大きく強い意志を持っていたはずのなのに、深く考えれば考えるほどイエローの心は揺らぐ。
見た目で混乱しているのが分かるほどイエローの心の揺らぎは表に出ていた。 その姿を見たサカキは笑みを浮かべる。
「何が、想う力だ・・・。戯言を言うな。」
サカキの一言にイエローはさらに混乱する。そしてその隙に、ボスゴドラに“はかいこうせん”を命じる。
ブルーは表情に焦りと苛立ちを表す。 そしてイエローにもう一度問う。
「イエロー。簡単な質問よ・・・。」
その間にも、ボスゴドラは“はかいこうせん”の発射姿勢を整え、今度はイエロー共々消し飛ばそうと最大出力まで力を蓄える。
「アンタはレッドを“愛している”?! “好き”じゃなくて、“愛している”??」
ブルーの質問を聞いた瞬間、イエローの中で全ての物事が繋がった気がした。
「愛して・・・・・・。」
揺るがない想いは、軽くない。 好き嫌いでは得ることのできない想いだ。
カントー出発前、自分で話した愛するということと、今、自分で感じている愛するということは違うものだとはじめて気がついた。
揺らぐ程度の想いで此処まできた。 だが、これから先は揺らがない力強い想いが必要である。自分のためにもレッドのためにも。
単純な答えのはずなのに、もやもやが晴れていく気分と同時に固い決心と、想いがイエローの心を満たしていく・・・。
(揺るがない想い・・・。これが本当の“愛”だとしたら・・・。私は何か掴める気がする。)
「私は・・・、私は・・・、レッドさんを・・・、愛しています・・・。この想いは揺るぎません、いや、揺るがせません!!!」
イエローの瞳に力強く真っ直ぐな光が宿る。その声を聞いたブルーにも同じような光が瞳に宿る・・・!!
「まったく・・・。言ってくれるじゃない。 これなら、こっちの覚悟もできるわ!!!」
しかし、ボスゴドラのエネルギーのチャージは終了していた。イエローたちに閃光が放たれる!!!
「ピッくん、“このゆびとまれ”!!」
いつの間にか姿を現していたピクシーのピッくんが高々と指を上げると、ボスゴドラは攻撃対象をそちらに変更した。
“はかいこうせん”の射線は、ずれて壁を破壊する。その一撃にピッくんは戦闘不能となってしまった。
「チィッ、2度も同じ手だと!? 気に食わない女だ!!!」
サカキは舌打ちすると、ボスゴドラに次の攻撃を命じる。
「ボスゴドラ、“アイアンテール”!!!」
ボスゴドラは再び尾を鋼鉄のように硬化させると、勢いをつけてフルスイングする。
今度はその長い尾のリーチを活用してイエロー達をまとめてなぎ払おうとしているようだ。
しかし、その一撃はカメちゃんが“からにこもる”で甲羅に籠もって尾の一撃を防ぎきった。
「イエロー、走って!!! アンタの愛する人の元へ走りなさい!!! どんな現実が待ち構えていても、アンタの想いがあれば大丈夫!!!」
「は、はいっ!!!」
イエローはボールを一つ手に取ると、そのボールからドードリオのドドすけを呼び出すとその背に飛び乗った。
「ブルーさん!!早く!!!」
イエローはブルーに手を伸ばしたが、ブルーは笑顔でその手を拒絶する。
「アタシはここでコイツを何とかするわ・・・。 大丈夫だから、アンタはレッドを・・・・・・取り戻してきなさい!!!」
ブルーは笑顔を見せる。この笑顔はグリーンに別れ際に見せていた笑顔と違い、非常に力強く、希望に満ち溢れている。
その笑顔を見たイエローは、一瞬不安そうな表情をしたがすぐに手を下げて負けじと力強く活き活きとした表情を見せる。
イエローは、チュチュを回収するとドドすけに最高速度で移動するように命じる。
命じられたドドすけはボスゴドラとサカキの真横を疾風のごときスピードで駆け抜けて、エレベーターのある部屋を目指す。
「逃げられると思うな・・・。」
サカキが呟くと、新たなボールからスピアーを呼び出して“こうそくいどう”で追撃に行くように命じた。 だが、
「アンタの相手は、アタシよ!! カメちゃん、“ハイドロポンプ”!!!」
ブルーはカメちゃんを甲羅に入るように命じると、その甲羅の上に乗り、しがみついた。そして、主人の命令どうり“ハイドロポンプ”を両肩の水砲から放つと
カメちゃんの身体は、水流の勢いで猛スピードで加速するとスライダーのように滑ってボスゴドラとサカキ、そしてスピアーを吹き飛ばした!
しかも、移動時に使用される水流でさらに追撃をかける。 撥ねられたと思ったら今度は水流で押し流す。2段構えの戦法だ。
カメちゃんは壁に激突寸前で止まると、甲羅から手足を出してサカキたちがいる通路の方をブルーと共に見る。
(イエロー・・・。アンタには話せなかった。レッドの今の状態を・・・。だけど、どんなことがあろうとも間違いなくレッドだから・・・。
信じてあげて、取り戻してあげて・・・。レッドの心を!!!)
希望という名の光射すところに、絶望という名の影あり・・・・・・。
ミツルとゴールドは何とか身体を動かして、仲間達を介抱した。
その間にフロアの電灯を点けると、瓦礫の下敷きになっているグリーンとリザードンの姿があった。
瓦礫をどけてグリーンも介抱する頃には、クリスやシルバーそしてルビーが何とか意識を取り戻していた。
各々、心や身体に傷を負いながらも何とか立ち直りできそうだった。 そして、ある程度の情報交換が済んだころフロアに怪しげな影が迫っていた・・・。
「フェフェフェ・・・。元気を取り戻したようだねぇ・・・。さぁ、宴の始まりだよ・・・フェフェフェ・・・。」
グリーンや自分の手持ちの介抱する一行に、禍々しきプレッシャーを与える存在が徐々に近づいてくる。
その距離は扉をはさんで10メートルほどだろうか、強大なプレッシャーに発生元の距離が分かるほどだ。
一行に緊張が走る・・・。
プレッシャーの発生元はフロアの扉を破壊するとその正体を一行の前に晒す。
オレンジと緑色をした人型の生命体。腕は片方は4本指ながらも手を形成しているが、もう片方は2本の縄のようだ。
怪しげに光る瞳・・・・・・。 そう、その名を デオキシス・・・!!!
デオキシスの出現に驚く一行。そんな一行に構うことなく、デオキシスは攻撃を開始する。
ものすごいスピードでまず目に付いたゴールドの元へ駆ける。 その間に、デオキシスの姿は変化し始めると手を形成していた腕はもう片方と同じで
2本の縄に変化する。また、頭部にも若干の変化があるようだ。
デオキシスはその縄状の腕を自分の前で交差させると、腕と腕との交点に電気が帯電し始めた・・・。
「なっ・・・!!!」
ボロボロながらも主人を守ろうとバクフーンのバクたろうがボールから飛び出してデオキシスに突っ込む。
それに対してデオキシスは、帯電していた電気を一点に集中させて球体を作る。 そして腕の交差を解き放つと、球体は突っ込んできたバクたろうに直撃する。
直撃の瞬間、パンッ!!と破裂音に酷似した音がフロア全体に響いた。そしてバクたろうの全身に強烈な電撃が放たれる。
そのまま力なく倒れるバクたろう。 電撃の影響で身体が麻痺しているようで、ピクピクと痙攣している。
「んのやろー!!!」
ゴールドはボールからポケモンたちを呼び出す。 しかし、何れも全身ボロボロだ。
デオキシスはゴールドのポケモンたちに視線を移すと、縄のような両腕を撓らせて“ばかぢから”でなぎ払う。
ゴールドのポケモンたちは全て数十メートル先の壁まで吹き飛ばされた。それを眼をやるだけで確認すると、今度こそとゴールドに向かって駆ける。
「ギャラドス、“ハイドロポンプ”!!」
赤いギャラドスは水流を発生させて、ゴールドに襲い掛かろうとするデオキシスを押し流す。押し流されたデオキシスは、身体が非常に軟弱なようで、その場でうずくまる。
「・・・今がチャンスだ、総力を挙げて叩く!!!」
シルバーの一声でクリス、ミツル、ルビーは一斉にデオキシスに攻撃を放つ。
「メガぴょん、“はっぱカッター”!!」
「RURU、“サイコキネシス”!!」
「MIMI、“みずのはどう”!!」
それぞれの主人から命を受けて、デオキシスに攻撃を集中的に叩き込む。新緑の刃は身体を切り裂き、超念動で全身を粉々にするような圧迫を
そして、水のエネルギーを波動にして撃ち込む・・・・・・。
確かにダメージは与えているが、なにぶん攻撃側のポケモンたちは先ほどまで戦闘不能に近い状態でいた者もおり、今もそのダメージを引きずっているので
思った以上のダメージをデオキシス与えることができない。 しかし、そこへ・・・
「お前達、気合でぶっ飛ばせ!!!」
ゴールドの絶叫と共に、ゴールドの手持ちたちが一斉にデオキシスに攻撃を仕掛ける。 全員肉弾戦の構えでデオキシスに飛び掛った。
いわゆる“ふくろだだき”でデオキシスを攻撃をする。 ゴールドはその様子を見ると、仲間達に笑顔で親指を立てる。
「ヘヘヘ・・・。気合と根性なら負けねーつうの。」
その言葉の直後、鈍い音が数回した。 すると、ゴールドのポケモンたちが全員戦闘不能になっていた。
「なっ・・・・・・。」
ゴールドがあんぐりと口を開いていると、姿を変えたデオキシスの姿が・・・。
丸い感じの身体に、平べったい板のような両腕。 先ほど見せていたシャープで、力強そうな姿と打って変わって今度は重々しくどっしりしている。
倒れているゴールドのポケモンたちに共通して打撃痕が残っているところを見ると、どうやらそれぞれに“カウンター”を放ったようだ。
(成程、ねえさんの話どうりだ・・・。時と場合によって姿を変えて多種多彩な戦法を取る。 コイツがデオキシスか・・・。)
シルバーは、思考をめぐらせながらブルーの話を思い出す。
(どの形態も一長一短・・・。こちらがこいつを倒すには一短を狙えば・・・。)
結論が出た以上、今度は実行に移すだけである。 だが、そのフロアにあの邪悪で奇妙な笑い声が突如聞こえ始めた・・・・・・。
「フェフェフェ・・・。“媒体”でも十分そうだけどねぇ・・・。だが、せっかくだから実験はやらせてもらうよ!!!」
突如、デオキシスの背後に暗い闇が出現したと思うとそこから老婆は出現した。老婆は手に持っていた不思議な円盤状の機械をデオキシスに向けた。
「24個のバッジの力・・・。開放!!!」
老婆の持つ機械は凄まじい光を放ちだした。 その光にその場にいた全員が視界を奪われた・・・・・・。
光が何とか収まったようなので、眼を開ける面々。 視界に入ってくるのは3メートルほどの大きさに姿を変えたデオキシスの姿であった。
一見すると何も変わっておらず防御形態のままで大きくなっただけのように見える・・・。 いや、大きくなり続けている・・・。
「フェフェフェ・・・・・・。 さぁ、お前の力を見せてみろ!!! フェーーーーフェフェフェフェ。」
老婆の奇妙な笑い声がフロアを包む。 急激に大きくなり続ける目の前のポケモンに圧倒され、声が出ないシルバーたち。
フロアには、ただ、老婆の奇妙な笑い声が響き続けた・・・。
だが、これが“全て”の希望を駆逐する絶望の塊であることに気付く者は誰一人としていなかった・・・・・・。
エレベーターを降りると、目の前に広がる外の風景。外は夕方になり始めていた。
おそらくこの部屋は元々は展望室だったのだろう。イエローは真っ直ぐ前を見つめると、大きな机と大きな椅子が在る。
その椅子は小刻みに揺れており、誰か座っているのが分かる。 椅子は背もたれのほうを向いているので誰が座っているのか分からない。
だが、背もたれからはみ出して黒髪と、どこかで見覚えの在るツンツンヘアーを見るとイエローの中である人物が特定できた。
その机に接近しようとすると、床に大きな穴が開いていた。 その穴をのぞくと、下の階の様子が分かる。
イエローはその穴を避けて机へと接近する。接近すると、規則正しい寝息が聞こえてくる、 おそらく椅子に座っている人は居眠りをこいているのだろう。
この寝息にも、イエローには聞き覚えがある。 最近、といっても1年ほど前までは、ほぼ毎日自分の真横で聞こえていた寝息だ。
イエローはさらに机に接近する。 机に接近してみると、机には難しそうな本が数冊おかれており背表紙のタイトルには何れも「統率学」という言葉が書かれている。
自分が知っている彼は、まずこんな分厚くて難しそうな本は読まないだろう。 実践で理解していくタイプの人間だからと知っているからだ。
また一歩、机に接近する。 そして、椅子で寝ている人に声を掛けようとした瞬間、その人は大きく伸びをすると気持ちよさそうな声を出した。
その行動に、驚くイエロー。 驚きのあまり動きを止めてしまった。
そんなことを知っているのかどうかは分からないが、椅子で寝ていた人は首を回してほぐすと「ヨシッ」と声を出して膝を叩くと、椅子を回転させてイエローの方を向いた。
「久しぶりだな・・・・・・。イエロー。」
優しく、暖かい声でイエローに話しかける男性は、黒いスーツを身にまとい、胸に赤い「R」のエンブレム・・・。 黒髪に黒い瞳・・・。
瞳の色が違うが、その輪郭、顔のパーツ、声、髪の毛全てが彼と同じだ。いや、彼本人だ。
「・・・レッドさん。」
イエローは悲しそうでありながら、喜びを含んだ声で目の前の人に返事をする。
だが、返事をされた目の前の人物は、瞳を閉じてため息を一つ吐くと、瞳を開いてその黒い瞳でイエローを見つめる。
「レッド・・・・・・か。 オレはブラック・・・なんだけどな・・・。」
ブラックは、非常に申し訳なさそうにイエローに言うのであった・・・。
いよいよ、再会した2人。
そして、プロジェクトによって変化を遂げるデオキシス。
サカキと対峙するブルー・・・。
最大の悪夢と究極の奇跡の時まで、カウントは始まった・・・・・・。
第21話へ・・・